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11
西V o l . 43 2016.04

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  • [発行日]平成28 年4月[発 行]国立大学法人 滋賀大学[編 集]滋賀大学広報室     〒522-8522 滋賀県彦根市馬場一丁目 1-1

         TEL.0749-27-7524

    滋賀大学広報誌

    株式会社みずほ銀行       

    伊勢

    麻衣子

    さん

    滋賀大学教育学部附属小学校

    教諭 西嶋

    さん

    集卒業生の

    いま

    Vol.43

    Vol.43

    データサイエンス学部新設に向けて

    〈おうみ学術出版会〉誕生

    2016.04

  • 3

    CONTENTSVol.43

    3 学長からのメッセージ「きらきら輝く滋賀大学」に向かって

    データサイエンス学部新設に向けて

    〈おうみ学術出版会〉誕生 ̶ 新方式の本作りで ̶

    滋賀大学長 位田 隆一

    「きらきら輝く滋賀大学」に向かって

    滋賀大学長 位田 隆一い  だ  りゅう いち

    学 長 か ら の メ ッ セ ー ジ

    クラブ&サークル インフォメーション漕艇部

    女子ハンドボール部

    少林寺拳法部

    軽音楽部

    16教育学部

    教育学部

    経済学部

    経済学部

    表紙解説明治後期の理科教科書―『小学理科』

    比良暮雪と竹生島

    19

    留学体験記ノルウェー留学で学んだこと 経済学部 4回生 柿木 知足

    18

    4 新役員メッセージ

    滋賀大学のいま 附属学校園における学習発達支援

    5年一貫による教育プログラムについて

    8

    在学生のいま学生による教育活動団体ILE~科学ワークショップによる社会および子どもへの学習推進活動~

    インターンシップと様々な就職支援活動

    14

    学生支援 食と健康 ~滋賀大生の生活習慣~

    12

    卒業生のいま西嶋 良 さん (滋賀大学教育学部附属小学校 教諭)

    伊勢 麻衣子 さん (株式会社みずほ銀行)

    10

     このたび新しく学長に就任しました。私は4年間の任期

    において、「きらきら輝く滋賀大学」に向けて、大学の教育・

    研究、そして社会との連携を推し進めていく所存です。

     今や国立大学は、大学改革、社会への貢献、人文社会系の

    再編成、財政削減など、様々な批判と要請に直面し、激動の

    時代に入っています。多くは的外れで、大学とは何か、学問と

    は何か、人文社会科学の意義などが、社会に十分に理解され

    ているとは思えません。しかし、これまで大学は、あまりにも社

    会との関係をおざなりにしてきており、とくに目に見える生産

    活動とは距離を置く人文・社会系や教員養成系は、研究成果

    が必ずしも社会の抱える課題と結びついてはいませんでし

    た。こうした大学の姿勢が、いま問われているのです。

     滋賀大学は、今年度から第3期中期計画期間に入り、新

    しい時代を迎えます。滋賀大学が、この激動の時代を乗り

    越えて、これまで築き上げた知的資産を基礎として、新しく

    「きらきら輝く滋賀大学」となるために、次の3つを柱とし

    ます。

    1)現代社会の課題とその解決に貢献する大学であること

     大学が社会の中の知的創造の場である以上、常に社会

    の抱える様々な課題を意識しつつ研究します。すべての研

    究が実用的であれ、といった薄っぺらい考えではなく、個々

    の研究が社会とのかかわりを常に意識し、社会の様々な事

    象や活動の理論的な基盤を明らかにしていく作業だという

    ことです。その中でも、分野横断的に「課題解決型・提言型」

    の研究を進めることは重要です。社会の中に大学のこのよ

    うな知的貢献があってこそ、そこで学ぶ学生諸君の知的好

    奇心を掻き立て、地域に貢献する人材、世界に飛び出す人

    材に成長するのです。

    2)人社系と理系の「文理融合」による逆Π(パイ)型教育研

    究とΓ(ガンマ)型人材育成

     2017年度から本学は全国で初めてのデータ・サイエンス学

    部を新設します。これは理系学部ですが、現代社会はもはや理

    系と文系が分かれていては進歩・発展しません。現実の社会は、

    自らの専門分野を縦軸に、相互に理解しあい全体を俯瞰する力

    を横軸に、文系と理系が常にそれぞれの強みを生かしつつ融

    合していっています。これからの滋賀大学は、経済と教育をそれ

    ぞれ縦軸に、データ・サイエンスを横軸にして、教育・研究を進

    めます。これを逆Π(パイ)型といいます。教育の学生も経済の

    学生もデータの理解と取扱いを会得し、データ・サイエンスの学

    生は、教育や経済を中心にその他の様々な領域の基礎的知識

    を習得することで、どの分野にでも応用のきく人材に育っていき

    ます。これをΓ(ガンマ)型人材育成と考えています。

    3)地域に根ざし世界に飛び出すグローバルな視野と活動

     いまやあらゆる人間活動がグローバルに結びついていま

    す。国内やまた地元滋賀においても、世界を相手に活躍し

    ている企業や団体、個人があり、学生たちもグローバルな活

    躍を目指しています。教育学部が育てる「教師」は、児童や

    生徒が世界で活躍する夢を描くことの後押しをします。経済

    は、地域・国・世界の境界なくグローバルな経済が日常生活

    と密接に結びついています。そしてデータは国境を越え世

    界中を飛び回っています。いまや、滋賀大学が地域に根ざ

    しつつ培ってきた能力と活力を、これまで以上に世界に向

    かって伸ばしていく時です。

     この4月に入学される新入生諸君は、この滋賀大学の発

    展に自ら貢献し、自ら新しい道を切り開いていく主役であ

    り、「きらきら輝く」滋賀大学の新しい歴史の証人ともなるの

    です。若い力と意欲の学生諸君と、伝統と経験に裏打ちされ

    た力を持つ教職員とが、しっかりタグを組んで、新しい時代

    に乗り出しましょう。

    特集6

    「湖水浦廻り 名所・寺社便覧図蹟」より

    3

    CONTENTSVol.43

    3 学長からのメッセージ「きらきら輝く滋賀大学」に向かって

    データサイエンス学部新設に向けて

    〈おうみ学術出版会〉誕生 ̶ 新方式の本作りで ̶

    滋賀大学長 位田 隆一

    「きらきら輝く滋賀大学」に向かって

    滋賀大学長 位田 隆一い  だ  りゅう いち

    学 長 か ら の メ ッ セ ー ジ

    クラブ&サークル インフォメーション漕艇部

    女子ハンドボール部

    少林寺拳法部

    軽音楽部

    16教育学部

    教育学部

    経済学部

    経済学部

    表紙解説明治後期の理科教科書―『小学理科』

    比良暮雪と竹生島

    19

    留学体験記ノルウェー留学で学んだこと 経済学部 4回生 柿木 知足

    18

    4 新役員メッセージ

    滋賀大学のいま 附属学校園における学習発達支援

    5年一貫による教育プログラムについて

    8

    在学生のいま学生による教育活動団体ILE~科学ワークショップによる社会および子どもへの学習推進活動~

    インターンシップと様々な就職支援活動

    14

    学生支援 食と健康 ~滋賀大生の生活習慣~

    12

    卒業生のいま西嶋 良 さん (滋賀大学教育学部附属小学校 教諭)

    伊勢 麻衣子 さん (株式会社みずほ銀行)

    10

     このたび新しく学長に就任しました。私は4年間の任期

    において、「きらきら輝く滋賀大学」に向けて、大学の教育・

    研究、そして社会との連携を推し進めていく所存です。

     今や国立大学は、大学改革、社会への貢献、人文社会系の

    再編成、財政削減など、様々な批判と要請に直面し、激動の

    時代に入っています。多くは的外れで、大学とは何か、学問と

    は何か、人文社会科学の意義などが、社会に十分に理解され

    ているとは思えません。しかし、これまで大学は、あまりにも社

    会との関係をおざなりにしてきており、とくに目に見える生産

    活動とは距離を置く人文・社会系や教員養成系は、研究成果

    が必ずしも社会の抱える課題と結びついてはいませんでし

    た。こうした大学の姿勢が、いま問われているのです。

     滋賀大学は、今年度から第3期中期計画期間に入り、新

    しい時代を迎えます。滋賀大学が、この激動の時代を乗り

    越えて、これまで築き上げた知的資産を基礎として、新しく

    「きらきら輝く滋賀大学」となるために、次の3つを柱とし

    ます。

    1)現代社会の課題とその解決に貢献する大学であること

     大学が社会の中の知的創造の場である以上、常に社会

    の抱える様々な課題を意識しつつ研究します。すべての研

    究が実用的であれ、といった薄っぺらい考えではなく、個々

    の研究が社会とのかかわりを常に意識し、社会の様々な事

    象や活動の理論的な基盤を明らかにしていく作業だという

    ことです。その中でも、分野横断的に「課題解決型・提言型」

    の研究を進めることは重要です。社会の中に大学のこのよ

    うな知的貢献があってこそ、そこで学ぶ学生諸君の知的好

    奇心を掻き立て、地域に貢献する人材、世界に飛び出す人

    材に成長するのです。

    2)人社系と理系の「文理融合」による逆Π(パイ)型教育研

    究とΓ(ガンマ)型人材育成

     2017年度から本学は全国で初めてのデータ・サイエンス学

    部を新設します。これは理系学部ですが、現代社会はもはや理

    系と文系が分かれていては進歩・発展しません。現実の社会は、

    自らの専門分野を縦軸に、相互に理解しあい全体を俯瞰する力

    を横軸に、文系と理系が常にそれぞれの強みを生かしつつ融

    合していっています。これからの滋賀大学は、経済と教育をそれ

    ぞれ縦軸に、データ・サイエンスを横軸にして、教育・研究を進

    めます。これを逆Π(パイ)型といいます。教育の学生も経済の

    学生もデータの理解と取扱いを会得し、データ・サイエンスの学

    生は、教育や経済を中心にその他の様々な領域の基礎的知識

    を習得することで、どの分野にでも応用のきく人材に育っていき

    ます。これをΓ(ガンマ)型人材育成と考えています。

    3)地域に根ざし世界に飛び出すグローバルな視野と活動

     いまやあらゆる人間活動がグローバルに結びついていま

    す。国内やまた地元滋賀においても、世界を相手に活躍し

    ている企業や団体、個人があり、学生たちもグローバルな活

    躍を目指しています。教育学部が育てる「教師」は、児童や

    生徒が世界で活躍する夢を描くことの後押しをします。経済

    は、地域・国・世界の境界なくグローバルな経済が日常生活

    と密接に結びついています。そしてデータは国境を越え世

    界中を飛び回っています。いまや、滋賀大学が地域に根ざ

    しつつ培ってきた能力と活力を、これまで以上に世界に向

    かって伸ばしていく時です。

     この4月に入学される新入生諸君は、この滋賀大学の発

    展に自ら貢献し、自ら新しい道を切り開いていく主役であ

    り、「きらきら輝く」滋賀大学の新しい歴史の証人ともなるの

    です。若い力と意欲の学生諸君と、伝統と経験に裏打ちされ

    た力を持つ教職員とが、しっかりタグを組んで、新しい時代

    に乗り出しましょう。

    特集6

    「湖水浦廻り 名所・寺社便覧図蹟」より

  • 54

    新役員メッセージ

     今年度から新たに理事に就任

    することになりました三ツ石で

    す。新入生の皆さんとともに、フ

    レッシュな気持ちでスタートを切

    りたいと思っています。また今年

    度は第三期中期目標・計画期間の初年度でもあります。新入生に

    とっても、滋賀大学にとっても、今年は大事な年です。このメッセー

    ジの機会をお借りして、大学構成員の方々に次の三つのことをお

    伝えしたいと思います。

     第一に、現在、全国の大学ではさまざまな「改革」が進行していま

    す。これは積極的に見れば、国内だけでなく、グローバルなレベル

    で進む知の枠組みの問い直しに深く関連していると思います。昨

    年9月、英国グラスゴーで開かれたヨーロッパ国際教育協会大会

    に参加してみましたが、ここで世界の多くの大学関係者がアカデ

    ミックな交流の拡大に向けて熱い議論を交わしていました。大学

    の講義室で教えられる知識や考え方は長い年月をかけて確立した

    専門知の体系ですが、現代市民社会が変化し続けるなかで、それ

    に対応した新たな知の構築が大学のなかだけでなく、国民国家の

    枠を超えて問われています。

     この関連で、第二に、知の問い直しは「社会的要請」に対応して

    進められるとされています。昨年6月、文部科学省が人文社会系と

    教員養成系の学部・大学院に対して「社会的要請の高い分野に転

    換する」ことを求めた通知が出されました。しかし本学の佐和前学

    長が指摘した論点に示されるように、大学は、産業界が「有用」とす

    る科学・技術の振興やそのための人材養成に向かうだけでなく、長

    期的に見て、21世紀の地球社会が必要とする人文知とその価値を

    積極的に支える人材の養成を求められています。

     このように見ると大学はどのように自己改革すべきでしょうか。こ

    れが第三のことですが、わたしは、学生の皆さんも含めた大学構成

    員全員が既成の枠組みにとらわれない観点で自由な活動と対話・

    交流を深め、「精神を備えた専門人」たる市民である必要があると

    考えます。そうした姿勢が、次世代の滋賀大学の新しい価値を生み

    出すものと確信しています。

    理事(総務・企画担当)・副学長

    三ツ石 郁夫

     新入生の皆さんは高校までの

    教育で、さまざまな教科の勉強を

    してこられたと思います。教科に

    もよるでしょうが、高校ではこれ

    まで知的遺産として蓄積されて

    きた知識をたどり習得することが中心になってきたと思います。

    一つの問いに対して一つの正解があるものだということを前提と

    して勉強してきたと思います。

     しかし大学では、それだけでなくこれまでの知識が何によって

    成り立っているのか、そこには別の見方や新しい問題があるので

    はないかというように、既存の知識を相対化し新しい問題を発見

    する能力が重要になってきます。

     高校までの勉強と大学で求められる探究的な態度との間には

    そうしたギャップがあるので、大学での授業や勉強にとまどう場

    合もでてきます。こういう不連続といいますかギャップを解消する

    ために、近年は筆記試験に頼らない入試制度のしくみをつくった

    り、学生が積極的に授業に参加するアクティブラーニングの方式

    を導入したりという形で、授業改善に取りくみはじめています。

     しかし、一番大切なことは、やはりみなさん自身が4年間の間

    に、何を学び将来どういう仕事をし、社会に貢献していきたいの

    かについて、授業や講義、ゼミでの先生や先輩とのディスカッショ

    ンのなかで、あるいは読書やボランティア活動、旅行といったさま

    ざまな活動のなかで、自分なりに方向を見出していくことです。大

    学は、高校生まではできなかったような経験や、より広い世界と

    の出会いができる場所です。学生にとって学びがいのある大学、

    教員にとって教えがいのある大学、これは大学が効率と成果を求

    めてさまざまな改革をしていく場合でも基本的に重要なことで

    す。流動化する社会のなかにあって、大学での経験や出会いが人

    生にとって意味のある場になるよう、教育・研究環境の一層の整

    備に取り組んでいきたいと思います。皆さまのご協力、よろしくお

    願い致します。

    理事(教育・学術・国際担当)・副学長

    喜名 信之

     皆さん、こんにちは。

     新しく滋賀大学の理事・副学長

    に就任した須江雅彦です。

     今日、ICTの進化などにより

    人々が音声や画像など様々な情

    報を共有し、世界の人々とも容易に直接つながることができる社

    会、ローカルがグローバルにつながる社会へと進展しています。

     私たちの社会には数多くの課題がありますが、こうした状況をも

    踏まえ、どのように社会のための役割を果たしていくべきなので

    しょうか。

     日本では高齢化とともに少子化による人口減少への対応が課題

    とされていますが、一方世界人口はすでに73億人を超え当面年間

    8,000万人ものペースで増加を続けると見込まれています。人口

    増加の大半は開発途上にある国々であり、世界では食料、環境

    など地球全体の持続可能性に関わる問題への対応が大きな課題

    となっています。

     今日私たちが享受している日本の豊かさは、こうしたダイナミック

    で多様な文化と状況を持つ世界の人 と々共に生きる中で、先人たち

    の知恵と工夫、そしてたゆまない努力によって確保されているという

    ことを忘れてはなりません。世界は相互に繋がっているのです。

     滋賀は、地味豊かで歴史と文化の豊潤な土地です。いうまでも

    なく、中世史の中でも重要な場所であり、戦国の武将たちは、この

    地を足掛かりに夢の実現に向け、邁進しました。

     皆さんはその滋賀で、これから滋賀大生として過ごすことにな

    ります。どういう思いを持ち、何を目指しているのでしょうか、様々

    なのでしょう。限られた時間を楽しくそして有意義に使い、自ら目

    標を定め、その実現に向けて道筋を計画し、それをマネジメント

    できるようになってください。そして、地域や社会、そして日本と世

    界の明日を担う青年として成長されていくことを願っています。

    For a better society, for a better worldの視点を持ち、自らの

    学びを続けてくださいね。

     私としても、皆さんの学びを応援するこの滋賀大学を更に進化、

    発展させていくために微力ながら努力していきたいと考えています。

    理事(社会連携担当)・副学長

    須江 雅彦

    54

    新役員メッセージ

     今年度から新たに理事に就任

    することになりました三ツ石で

    す。新入生の皆さんとともに、フ

    レッシュな気持ちでスタートを切

    りたいと思っています。また今年

    度は第三期中期目標・計画期間の初年度でもあります。新入生に

    とっても、滋賀大学にとっても、今年は大事な年です。このメッセー

    ジの機会をお借りして、大学構成員の方々に次の三つのことをお

    伝えしたいと思います。

     第一に、現在、全国の大学ではさまざまな「改革」が進行していま

    す。これは積極的に見れば、国内だけでなく、グローバルなレベル

    で進む知の枠組みの問い直しに深く関連していると思います。昨

    年9月、英国グラスゴーで開かれたヨーロッパ国際教育協会大会

    に参加してみましたが、ここで世界の多くの大学関係者がアカデ

    ミックな交流の拡大に向けて熱い議論を交わしていました。大学

    の講義室で教えられる知識や考え方は長い年月をかけて確立した

    専門知の体系ですが、現代市民社会が変化し続けるなかで、それ

    に対応した新たな知の構築が大学のなかだけでなく、国民国家の

    枠を超えて問われています。

     この関連で、第二に、知の問い直しは「社会的要請」に対応して

    進められるとされています。昨年6月、文部科学省が人文社会系と

    教員養成系の学部・大学院に対して「社会的要請の高い分野に転

    換する」ことを求めた通知が出されました。しかし本学の佐和前学

    長が指摘した論点に示されるように、大学は、産業界が「有用」とす

    る科学・技術の振興やそのための人材養成に向かうだけでなく、長

    期的に見て、21世紀の地球社会が必要とする人文知とその価値を

    積極的に支える人材の養成を求められています。

     このように見ると大学はどのように自己改革すべきでしょうか。こ

    れが第三のことですが、わたしは、学生の皆さんも含めた大学構成

    員全員が既成の枠組みにとらわれない観点で自由な活動と対話・

    交流を深め、「精神を備えた専門人」たる市民である必要があると

    考えます。そうした姿勢が、次世代の滋賀大学の新しい価値を生み

    出すものと確信しています。

    理事(総務・企画担当)・副学長

    三ツ石 郁夫

     新入生の皆さんは高校までの

    教育で、さまざまな教科の勉強を

    してこられたと思います。教科に

    もよるでしょうが、高校ではこれ

    まで知的遺産として蓄積されて

    きた知識をたどり習得することが中心になってきたと思います。

    一つの問いに対して一つの正解があるものだということを前提と

    して勉強してきたと思います。

     しかし大学では、それだけでなくこれまでの知識が何によって

    成り立っているのか、そこには別の見方や新しい問題があるので

    はないかというように、既存の知識を相対化し新しい問題を発見

    する能力が重要になってきます。

     高校までの勉強と大学で求められる探究的な態度との間には

    そうしたギャップがあるので、大学での授業や勉強にとまどう場

    合もでてきます。こういう不連続といいますかギャップを解消する

    ために、近年は筆記試験に頼らない入試制度のしくみをつくった

    り、学生が積極的に授業に参加するアクティブラーニングの方式

    を導入したりという形で、授業改善に取りくみはじめています。

     しかし、一番大切なことは、やはりみなさん自身が4年間の間

    に、何を学び将来どういう仕事をし、社会に貢献していきたいの

    かについて、授業や講義、ゼミでの先生や先輩とのディスカッショ

    ンのなかで、あるいは読書やボランティア活動、旅行といったさま

    ざまな活動のなかで、自分なりに方向を見出していくことです。大

    学は、高校生まではできなかったような経験や、より広い世界と

    の出会いができる場所です。学生にとって学びがいのある大学、

    教員にとって教えがいのある大学、これは大学が効率と成果を求

    めてさまざまな改革をしていく場合でも基本的に重要なことで

    す。流動化する社会のなかにあって、大学での経験や出会いが人

    生にとって意味のある場になるよう、教育・研究環境の一層の整

    備に取り組んでいきたいと思います。皆さまのご協力、よろしくお

    願い致します。

    理事(教育・学術・国際担当)・副学長

    喜名 信之

     皆さん、こんにちは。

     新しく滋賀大学の理事・副学長

    に就任した須江雅彦です。

     今日、ICTの進化などにより

    人々が音声や画像など様々な情

    報を共有し、世界の人々とも容易に直接つながることができる社

    会、ローカルがグローバルにつながる社会へと進展しています。

     私たちの社会には数多くの課題がありますが、こうした状況をも

    踏まえ、どのように社会のための役割を果たしていくべきなので

    しょうか。

     日本では高齢化とともに少子化による人口減少への対応が課題

    とされていますが、一方世界人口はすでに73億人を超え当面年間

    8,000万人ものペースで増加を続けると見込まれています。人口

    増加の大半は開発途上にある国々であり、世界では食料、環境

    など地球全体の持続可能性に関わる問題への対応が大きな課題

    となっています。

     今日私たちが享受している日本の豊かさは、こうしたダイナミック

    で多様な文化と状況を持つ世界の人 と々共に生きる中で、先人たち

    の知恵と工夫、そしてたゆまない努力によって確保されているという

    ことを忘れてはなりません。世界は相互に繋がっているのです。

     滋賀は、地味豊かで歴史と文化の豊潤な土地です。いうまでも

    なく、中世史の中でも重要な場所であり、戦国の武将たちは、この

    地を足掛かりに夢の実現に向け、邁進しました。

     皆さんはその滋賀で、これから滋賀大生として過ごすことにな

    ります。どういう思いを持ち、何を目指しているのでしょうか、様々

    なのでしょう。限られた時間を楽しくそして有意義に使い、自ら目

    標を定め、その実現に向けて道筋を計画し、それをマネジメント

    できるようになってください。そして、地域や社会、そして日本と世

    界の明日を担う青年として成長されていくことを願っています。

    For a better society, for a better worldの視点を持ち、自らの

    学びを続けてくださいね。

     私としても、皆さんの学びを応援するこの滋賀大学を更に進化、

    発展させていくために微力ながら努力していきたいと考えています。

    理事(社会連携担当)・副学長

    須江 雅彦

  • 76

    特 集

     滋賀大学の〝夢〟 ― 出版会創設がようやく実現! じつは、その思

    いが公表された6年前は、逆風が吹いていました。平成16年の国立

    大学法人化前後に生まれた多くの小規模な大学出版会が経営難に

    陥っていたのです。その跡追いとならぬよう、永遠のブランド〝おうみ〟

    にあやかり、メード・イン・オウミの学術を、地域の他の大学や出版社

    と協働して世に問い続けようと、〝連携出版方式〟を工夫しました。そ

    して昨年暮れ、本学・滋賀県立大学・サンライズ出版の3者が学術出

    版事業推進協定を締結、おうみ学術出版会が発足したのです。

     学術出版とは何か ―― それは、「次世代の学術発展を支えうる

    出版」です。具体的には、少なくとも次の条件を充たしていることで

    す。1)分野を越えて読まれる文体で書かれ、 2)立論の根拠が明示

    され、 3)索引を備えていること。

     出版会組織は、経営面にかかわる運営会議と、本作りを進める

    編集会議で構成されます。とくに編集会議の成否は、協定3者から

    の担当者たちの〝熱い協働〟にかかっています。専門家だけが喜

    ぶ、昔の学術出版とは異なります。若い才能の開花も支援します。

     なお、準備過程では、京都大学学術出版会を始め、多くの大学出版会

    のご協力を得ました。また、東京の編集者たちのお知恵も借りました。

     ロゴには、渡来文化の地らしく漢字を使

    おうと考え、「淡海」(アフミ、オウミ)の頭字

    を選びました。約3千年前の青銅器の銘文

    の中でも、古体をとどめる「水」と「炎」の2字

    を集字したものです。

     創刊冊は、本年3月に出しました。書名は

    『江戸時代近江の商いと暮らし ― 湖国の歴史資料を読む』。本学

    経済学部附属史料館の共同研究成果の報告です。

     これから先、おうみ学術出版会が意識する、ゆかりの文人はさま

    ざまでしょう。でも、小野妹子どの、紫式部さま、藤樹先生、芭蕉翁、

    直弼公などは片時も忘れがたいお名前ではないでしょうか!

    〔横山俊夫〕

     すでに新聞等でも報じられておりますように、滋賀大学の「デー

    タサイエンス学部」新設構想は大きな注目を集めています。本稿執

    筆時点(1月末)で、3月中旬に文部科学省に提出する膨大な認可

    申請書類の準備作業も大詰めをむかえており、多忙な毎日が続い

    ています。ここでは、データサイエンス学部新設構想の経緯や育成

    する人材像について説明します。なお、私自身は昨年5月より滋賀

    大学にクロスアポイントメントの形で着任し、新学部の人事などに

    携わってきました。また本年4月より滋賀大学専任となり、入学試験

    の準備など新学部の立ち上げに専念いたします。

     滋賀大学では、以前より第3学部構想が検討されていました。し

    かしながら、滋賀大学として特色の出せる具体的な構想がなかな

    か打ち出せない状況にありました。1年半ほど前に、日本学術会議

    より「ビッグデータ時代に対応する人材の育成」という提言が出さ

    れ、ビッグデータ時代におけるデータサイエンティストの育成が我

    が国にとって喫緊の課題であることが指摘されました。佐和隆光前

    学長が、この提言の重要性に着目し、データサイエンス学部新設

    構想を掲げて学内の意見を集約し、文部科学省との交渉に精力的

    〈おうみ学術出版会〉誕生― 新方式の本作りで ―

    データサイエンス教育ワークショップで新学部カリキュラム構想を語る姫野哲人推進室准教授

    滋賀大学本部での協定書調印式、2015.12.25

    制作は泉屋博古館館長小南一郎氏

    に取り組まれました。データサイエンティスト育成の重要性は文部

    科学省においても強く認識されており、滋賀大学の新学部構想の

    先進性への評価も高く、構想は急速に現実味を帯びて行きました。

    私も1年ほど前に、佐和前学長よりデータサイエンス教育研究推進

    室長就任への打診をいただきましたが、前学長の先見性・リーダー

    シップに感銘を受けました。また、大学全体として教員及び学生

    定員増が見込まれない状況の中で、滋賀大学全体の発展の観点

    から新学部設立に協力されている滋賀大学のスタッフの姿勢に、

    感心しました。

     滋賀大学の構想に関する文部科学省の高い評価は、滋賀大

    学より申請した「人文社会系大学から文理融合型大学への転

    換 ― データサイエンス教育研究拠点形成のための大学間連携

    の推進 ―」が、新学部設置に先立ち、平成27年度「国立大学改革

    強化推進補助金」交付対象に選ばれたことにも示されています。

    その選定理由としては以下のように、構想の先進性が高く評価さ

    れています。――『大胆なガバナンス改革と学内資源の再配分等

    による日本初の「データサイエンス学部(仮称)」を設置。データサ

    イエンスを含む自然科学分野の多様な領域の英知を大学間連携

    により結集し、先行事例のない最先端の教育プログラム・教材・教

    授法の開発や教育の質保証システムを確立。人文社会系大学から

    文理融合型大学への転換に向けた先行モデルを提起。』――この

    補助金により、現在新学部設置に向けた施設の改修も進められて

    います。

     新学部で育成する人材像は、文理融合型の人材です。データ

    サイエンスの技術的な基礎は、データアナリシス(統計学)および

    データエンジニアリング(情報工学)です。これらは言わば理系的

    な技術ですが、ビッグデータ時代において最も価値のあるデータ

    は人々の行動(購買、移動、健康等)に関するデータであり、広い意

    味での社会的なデータです。この意味で、データサイエンスの応用

    領域は文系的なものと言うことができます。我々が考えるデータサ

    イエンティストの人材像は、理系的な基礎の上に、社会的なデータ

    を分析しその中から新たな価値を生み出すまでの能力を備えた人

    材です。このような人材を卒業させることによって、データサイエン

    ティスト育成に対する社会の要請に真にこたえることができます。

    新学部のカリキュラムでは、1年生より4年生まで、実際のデータを

    分析するプロジェクト型の演習を積み重ねることにより、データか

    ら有用な情報を取り出す成功体験を積み、価値創造能力の育成を

    はかることとしています。新学部のカリキュラムについては、広く外

    部の関係者からもアドバイスをいただいており、昨年12月4日、5日

    の両日にはデータサイエンス教育のあり方に関するシンポジウム

    を行いました。5枚の写真はその時の光景です。

     インターネットや計測機器の発展は今後も続き、分析すべき

    データは増え続けると予想され、データサイエンス学部の未来

    は明るいと考えています。皆さまのご支援をよろしくお願いいた

    します。

    同ワークショップで挨拶する佐和前学長

    同ワークショップ2日目の光景

    同ワークショップで新学部の未来を語る筆者同ワークショップでの質疑応答

    データサイエンス教育研究推進室室長 竹村 彰通

    データサイエンス学部新設に向けて

    76

    特 集

     滋賀大学の〝夢〟 ― 出版会創設がようやく実現! じつは、その思

    いが公表された6年前は、逆風が吹いていました。平成16年の国立

    大学法人化前後に生まれた多くの小規模な大学出版会が経営難に

    陥っていたのです。その跡追いとならぬよう、永遠のブランド〝おうみ〟

    にあやかり、メード・イン・オウミの学術を、地域の他の大学や出版社

    と協働して世に問い続けようと、〝連携出版方式〟を工夫しました。そ

    して昨年暮れ、本学・滋賀県立大学・サンライズ出版の3者が学術出

    版事業推進協定を締結、おうみ学術出版会が発足したのです。

     学術出版とは何か ―― それは、「次世代の学術発展を支えうる

    出版」です。具体的には、少なくとも次の条件を充たしていることで

    す。1)分野を越えて読まれる文体で書かれ、 2)立論の根拠が明示

    され、 3)索引を備えていること。

     出版会組織は、経営面にかかわる運営会議と、本作りを進める

    編集会議で構成されます。とくに編集会議の成否は、協定3者から

    の担当者たちの〝熱い協働〟にかかっています。専門家だけが喜

    ぶ、昔の学術出版とは異なります。若い才能の開花も支援します。

     なお、準備過程では、京都大学学術出版会を始め、多くの大学出版会

    のご協力を得ました。また、東京の編集者たちのお知恵も借りました。

     ロゴには、渡来文化の地らしく漢字を使

    おうと考え、「淡海」(アフミ、オウミ)の頭字

    を選びました。約3千年前の青銅器の銘文

    の中でも、古体をとどめる「水」と「炎」の2字

    を集字したものです。

     創刊冊は、本年3月に出しました。書名は

    『江戸時代近江の商いと暮らし ― 湖国の歴史資料を読む』。本学

    経済学部附属史料館の共同研究成果の報告です。

     これから先、おうみ学術出版会が意識する、ゆかりの文人はさま

    ざまでしょう。でも、小野妹子どの、紫式部さま、藤樹先生、芭蕉翁、

    直弼公などは片時も忘れがたいお名前ではないでしょうか!

    〔横山俊夫〕

     すでに新聞等でも報じられておりますように、滋賀大学の「デー

    タサイエンス学部」新設構想は大きな注目を集めています。本稿執

    筆時点(1月末)で、3月中旬に文部科学省に提出する膨大な認可

    申請書類の準備作業も大詰めをむかえており、多忙な毎日が続い

    ています。ここでは、データサイエンス学部新設構想の経緯や育成

    する人材像について説明します。なお、私自身は昨年5月より滋賀

    大学にクロスアポイントメントの形で着任し、新学部の人事などに

    携わってきました。また本年4月より滋賀大学専任となり、入学試験

    の準備など新学部の立ち上げに専念いたします。

     滋賀大学では、以前より第3学部構想が検討されていました。し

    かしながら、滋賀大学として特色の出せる具体的な構想がなかな

    か打ち出せない状況にありました。1年半ほど前に、日本学術会議

    より「ビッグデータ時代に対応する人材の育成」という提言が出さ

    れ、ビッグデータ時代におけるデータサイエンティストの育成が我

    が国にとって喫緊の課題であることが指摘されました。佐和隆光前

    学長が、この提言の重要性に着目し、データサイエンス学部新設

    構想を掲げて学内の意見を集約し、文部科学省との交渉に精力的

    〈おうみ学術出版会〉誕生― 新方式の本作りで ―

    データサイエンス教育ワークショップで新学部カリキュラム構想を語る姫野哲人推進室准教授

    滋賀大学本部での協定書調印式、2015.12.25

    制作は泉屋博古館館長小南一郎氏

    に取り組まれました。データサイエンティスト育成の重要性は文部

    科学省においても強く認識されており、滋賀大学の新学部構想の

    先進性への評価も高く、構想は急速に現実味を帯びて行きました。

    私も1年ほど前に、佐和前学長よりデータサイエンス教育研究推進

    室長就任への打診をいただきましたが、前学長の先見性・リーダー

    シップに感銘を受けました。また、大学全体として教員及び学生

    定員増が見込まれない状況の中で、滋賀大学全体の発展の観点

    から新学部設立に協力されている滋賀大学のスタッフの姿勢に、

    感心しました。

     滋賀大学の構想に関する文部科学省の高い評価は、滋賀大

    学より申請した「人文社会系大学から文理融合型大学への転

    換 ― データサイエンス教育研究拠点形成のための大学間連携

    の推進 ―」が、新学部設置に先立ち、平成27年度「国立大学改革

    強化推進補助金」交付対象に選ばれたことにも示されています。

    その選定理由としては以下のように、構想の先進性が高く評価さ

    れています。――『大胆なガバナンス改革と学内資源の再配分等

    による日本初の「データサイエンス学部(仮称)」を設置。データサ

    イエンスを含む自然科学分野の多様な領域の英知を大学間連携

    により結集し、先行事例のない最先端の教育プログラム・教材・教

    授法の開発や教育の質保証システムを確立。人文社会系大学から

    文理融合型大学への転換に向けた先行モデルを提起。』――この

    補助金により、現在新学部設置に向けた施設の改修も進められて

    います。

     新学部で育成する人材像は、文理融合型の人材です。データ

    サイエンスの技術的な基礎は、データアナリシス(統計学)および

    データエンジニアリング(情報工学)です。これらは言わば理系的

    な技術ですが、ビッグデータ時代において最も価値のあるデータ

    は人々の行動(購買、移動、健康等)に関するデータであり、広い意

    味での社会的なデータです。この意味で、データサイエンスの応用

    領域は文系的なものと言うことができます。我々が考えるデータサ

    イエンティストの人材像は、理系的な基礎の上に、社会的なデータ

    を分析しその中から新たな価値を生み出すまでの能力を備えた人

    材です。このような人材を卒業させることによって、データサイエン

    ティスト育成に対する社会の要請に真にこたえることができます。

    新学部のカリキュラムでは、1年生より4年生まで、実際のデータを

    分析するプロジェクト型の演習を積み重ねることにより、データか

    ら有用な情報を取り出す成功体験を積み、価値創造能力の育成を

    はかることとしています。新学部のカリキュラムについては、広く外

    部の関係者からもアドバイスをいただいており、昨年12月4日、5日

    の両日にはデータサイエンス教育のあり方に関するシンポジウム

    を行いました。5枚の写真はその時の光景です。

     インターネットや計測機器の発展は今後も続き、分析すべき

    データは増え続けると予想され、データサイエンス学部の未来

    は明るいと考えています。皆さまのご支援をよろしくお願いいた

    します。

    同ワークショップで挨拶する佐和前学長

    同ワークショップ2日目の光景

    同ワークショップで新学部の未来を語る筆者同ワークショップでの質疑応答

    データサイエンス教育研究推進室室長 竹村 彰通

    データサイエンス学部新設に向けて

  •  附属特別支援学校では、平成17年4月から校内に学習・発達

    支援室を設置し、附属幼稚園・小学校・中学校における学習や生

    活、行動等に配慮や支援が必要な幼児・児童・生徒に対して定期

    的に巡回相談を行うなどサポートルーム事業を実施しています。

     教育学部障害児教育講座や附属特別支援学校の教員が附属

    学校園の特別支援教育コーディネーターと連携し、学級担任等

    と相談する体制が確立してきたことで、各学級において、発達障

    害の可能性のある児童生徒を含め複数名の「気になる子」の早

    期からの対応の必要性が明らかになってきました。

     平成26、27年度には、文部科学省から「発達障害の可能性の

    ある児童生徒の早期支援研究事業」の委託を受け、附属小・中学

    校を対象に早期支援のためのアセスメント体制の確立と学習

    面・行動面で困難を示す児童生徒を含むすべての児童生徒の自

    尊感情を育むインクルーシブな指導方法の開発を目標として取

    り組みました。

     平成26年度は、従来の体制と併せて附属特別支援学校勤務経

    験者2名が、平成27年度は新たに1名が実務家型アドバイザーと

    して関わりました。附属小・中学校において特別な教育的支援が

    必要となる児童生徒の実態把握や担任教師の学級運営につい

    ての情報収集や面談、また対象

    となる児童生徒の観察ならびに

    授業研修会での児童生徒の捉え

    方や授業の中での支援の方法

    のアドバイス、学生支援ボラン

    ティアの指導を行いました。

     附属小学校では、学年の教員集

    団、特別支援教育コーディネー

    ター、実務家型アドバイザー、特別

    支援学校学習・支援室教員が集ま

    り、インシデント・プロセス法※によ

    る授業研修会を7月~12月の間に

    計12回実施しました。ケース児童の特性、行動の背景や課題を明ら

    かにすることで、より良い学びを生む方策について協議をしました。

    担任教師、学年、学校として、クラスすべての児童にとってのユニ

    バーサルデザインを意識した授業づくりにつながりました。

     発達障害等に係る子ども

    たちへの教師の課題意識が

    高まり、普段見過ごしていた

    子どもたちの様子や行動面

    での変化についての理解が

    深まり、確かな子どもたちの

    実態把握とその子どもに

    あった支援、授業の中での

    配慮、どの児童生徒も生き生

    きと学べる授業づくりについ

    て学ぶことができました。

    8

    滋 賀 大 学滋 賀 大 学 い まい まのの

    附属学校園における学習発達支援滋賀大学教育学部附属特別支援学校 久保 容子

     経済学部では、平成26年度から5年一貫制による教育プログ

    ラムを導入しました。これは、学部学士課程4年間と大学院博士

    前期(修士)課程2年間の通算6年間の教育課程を5年間で終え

    学士と修士の学位を修得することができるというものです。平成

    26年度の学部入学生から適用が始まりましたので、本年度(28

    年度)の学部3年生が初めてその適用を受けることができる学年

    になります。

     現代の複雑化し高度化する経済社会にあって、高度な専門性

    を有する人材へのニーズは高まっています。ビジネス戦略や政

    府・自治体の政策の企画立案と運営には、ますます高度な専門

    性に基づく問題発見・解

    決能力が求められていま

    す。学部レベルを上回る

    水準の専門性を有する人

    材の育成が、国立大学法

    人としての本学に求めら

    れているのです。

     他方で、学ぶ側から見

    ると、大学生・院生の期間が6年間となってしまうことは、時間的

    にも経済的にも負担の大きいことです。

     5年一貫制は、高度な専門性を有する人材の育成という社会

    のニーズに応えるとともに、その期間を短縮し負担を軽減するこ

    とで、より多くの人に対して、大学院レベルの教育へアクセスする

    機会を広げていくことをねらいとしています。

     このようなプログラムは他の大学においても導入が始められ

    ており、その制度設計は大学によっていろいろ工夫されていま

    す。本学の5年一貫制の特徴は、学士課程4年+修士課程1年の

    コースと学士課程3年+

    修士課程2年のコースを

    学生が自らの学習の進行

    状況や進路の計画に従っ

    て選択することが可能で

    あるという制度設計にし

    ている点です。

     学士課程3年+修士課

    程2年の場合、修士課程

    の学修期間はしっかりと

    確保できます。より早く専

    門性が高度な学習に取

    組みたい方に適していま

    す。この制度の場合、学士

    課程を卒業せずに大学

    院に進学してしまう制度

    の卒業を通常の4年ではなく3年間の学習で認定する制度(早期

    卒業制度)の導入が前提なので、この3年での早期卒業における

    卒業資格の質の保障をどのように行うか、という問題がありま

    す。3年での卒業認定は、修士課程における2年間の学習による

    専門性レベルの引き上げも含めて認定するものなので、万が一

    修士課程の学習が完遂できない場合に学士の資格も得られな

    い、というリスクがあるのです。この点については、正式な学士資

    格の認定は、修士課程で

    の学習成果を評価して、

    その後に学士資格を事後

    的に認定するという仕組

    みによって、質を保障する

    枠組みとしています。

     学士課程4年+修士課

    程1年の場合、3+2の制度

    と比較すると大学院進学の意思決定を遅らせることができるの

    で、学部の学習をじっくり進めたい方には適しています。修士課程

    の学修期間が短くなってしまうという課題がありますが、本学の制

    度では学部の4年生時に大学院の科目を先取り履修により学習す

    るという仕組みを設け、この課題を克服すると同時に、学部の学

    習と大学院のそれとを継ぎ目なく接続できるようにしています。

     このように、本学部の二つの5年一貫制の仕組みには、一長一

    短がありますが、短所の部分を小さくする工夫をしています。学

    生一人一人が自分の学習進度と将来の目標に合わせていずれ

    かの制度を選び、密度の濃い5年間の学習を通じて大学院修士

    レベルの高度専門性を有する人材を育成していくことができる

    ものと期待しています。

    5年一貫による教育プログラムについて経済学部長 小倉 明浩

    9

    実務家型アドバイザーの先生方

    附属小学校での研究授業の様子

    インシデント・プロセス法による授業研修会の様子

    ※インシデント・プロセス法発表者(授業研修会では授業者)の短いインシデント(出来事・事象)をもとに、参加者の質問を通じて事例の概要を整理し、原因と対策を考えていく方法

    学生支援ボランティアとのミーティングの様子

    早期支援研究事業とは

    早期支援のためのアセスメント体制の確立

    インシデント・プロセス法による授業研究会

    学習支援活動を通しての教師としての成長

     附属特別支援学校では、平成17年4月から校内に学習・発達

    支援室を設置し、附属幼稚園・小学校・中学校における学習や生

    活、行動等に配慮や支援が必要な幼児・児童・生徒に対して定期

    的に巡回相談を行うなどサポートルーム事業を実施しています。

     教育学部障害児教育講座や附属特別支援学校の教員が附属

    学校園の特別支援教育コーディネーターと連携し、学級担任等

    と相談する体制が確立してきたことで、各学級において、発達障

    害の可能性のある児童生徒を含め複数名の「気になる子」の早

    期からの対応の必要性が明らかになってきました。

     平成26、27年度には、文部科学省から「発達障害の可能性の

    ある児童生徒の早期支援研究事業」の委託を受け、附属小・中学

    校を対象に早期支援のためのアセスメント体制の確立と学習

    面・行動面で困難を示す児童生徒を含むすべての児童生徒の自

    尊感情を育むインクルーシブな指導方法の開発を目標として取

    り組みました。

     平成26年度は、従来の体制と併せて附属特別支援学校勤務経

    験者2名が、平成27年度は新たに1名が実務家型アドバイザーと

    して関わりました。附属小・中学校において特別な教育的支援が

    必要となる児童生徒の実態把握や担任教師の学級運営につい

    ての情報収集や面談、また対象

    となる児童生徒の観察ならびに

    授業研修会での児童生徒の捉え

    方や授業の中での支援の方法

    のアドバイス、学生支援ボラン

    ティアの指導を行いました。

     附属小学校では、学年の教員集

    団、特別支援教育コーディネー

    ター、実務家型アドバイザー、特別

    支援学校学習・支援室教員が集ま

    り、インシデント・プロセス法※によ

    る授業研修会を7月~12月の間に

    計12回実施しました。ケース児童の特性、行動の背景や課題を明ら

    かにすることで、より良い学びを生む方策について協議をしました。

    担任教師、学年、学校として、クラスすべての児童にとってのユニ

    バーサルデザインを意識した授業づくりにつながりました。

     発達障害等に係る子ども

    たちへの教師の課題意識が

    高まり、普段見過ごしていた

    子どもたちの様子や行動面

    での変化についての理解が

    深まり、確かな子どもたちの

    実態把握とその子どもに

    あった支援、授業の中での

    配慮、どの児童生徒も生き生

    きと学べる授業づくりについ

    て学ぶことができました。

    8

    滋 賀 大 学滋 賀 大 学 い まい まのの

    附属学校園における学習発達支援滋賀大学教育学部附属特別支援学校 久保 容子

     経済学部では、平成26年度から5年一貫制による教育プログ

    ラムを導入しました。これは、学部学士課程4年間と大学院博士

    前期(修士)課程2年間の通算6年間の教育課程を5年間で終え

    学士と修士の学位を修得することができるというものです。平成

    26年度の学部入学生から適用が始まりましたので、本年度(28

    年度)の学部3年生が初めてその適用を受けることができる学年

    になります。

     現代の複雑化し高度化する経済社会にあって、高度な専門性

    を有する人材へのニーズは高まっています。ビジネス戦略や政

    府・自治体の政策の企画立案と運営には、ますます高度な専門

    性に基づく問題発見・解

    決能力が求められていま

    す。学部レベルを上回る

    水準の専門性を有する人

    材の育成が、国立大学法

    人としての本学に求めら

    れているのです。

     他方で、学ぶ側から見

    ると、大学生・院生の期間が6年間となってしまうことは、時間的

    にも経済的にも負担の大きいことです。

     5年一貫制は、高度な専門性を有する人材の育成という社会

    のニーズに応えるとともに、その期間を短縮し負担を軽減するこ

    とで、より多くの人に対して、大学院レベルの教育へアクセスする

    機会を広げていくことをねらいとしています。

     このようなプログラムは他の大学においても導入が始められ

    ており、その制度設計は大学によっていろいろ工夫されていま

    す。本学の5年一貫制の特徴は、学士課程4年+修士課程1年の

    コースと学士課程3年+

    修士課程2年のコースを

    学生が自らの学習の進行

    状況や進路の計画に従っ

    て選択することが可能で

    あるという制度設計にし

    ている点です。

     学士課程3年+修士課

    程2年の場合、修士課程

    の学修期間はしっかりと

    確保できます。より早く専

    門性が高度な学習に取

    組みたい方に適していま

    す。この制度の場合、学士

    課程を卒業せずに大学

    院に進学してしまう制度

    の卒業を通常の4年ではなく3年間の学習で認定する制度(早期

    卒業制度)の導入が前提なので、この3年での早期卒業における

    卒業資格の質の保障をどのように行うか、という問題がありま

    す。3年での卒業認定は、修士課程における2年間の学習による

    専門性レベルの引き上げも含めて認定するものなので、万が一

    修士課程の学習が完遂できない場合に学士の資格も得られな

    い、というリスクがあるのです。この点については、正式な学士資

    格の認定は、修士課程で

    の学習成果を評価して、

    その後に学士資格を事後

    的に認定するという仕組

    みによって、質を保障する

    枠組みとしています。

     学士課程4年+修士課

    程1年の場合、3+2の制度

    と比較すると大学院進学の意思決定を遅らせることができるの

    で、学部の学習をじっくり進めたい方には適しています。修士課程

    の学修期間が短くなってしまうという課題がありますが、本学の制

    度では学部の4年生時に大学院の科目を先取り履修により学習す

    るという仕組みを設け、この課題を克服すると同時に、学部の学

    習と大学院のそれとを継ぎ目なく接続できるようにしています。

     このように、本学部の二つの5年一貫制の仕組みには、一長一

    短がありますが、短所の部分を小さくする工夫をしています。学

    生一人一人が自分の学習進度と将来の目標に合わせていずれ

    かの制度を選び、密度の濃い5年間の学習を通じて大学院修士

    レベルの高度専門性を有する人材を育成していくことができる

    ものと期待しています。

    5年一貫による教育プログラムについて経済学部長 小倉 明浩

    9

    実務家型アドバイザーの先生方

    附属小学校での研究授業の様子

    インシデント・プロセス法による授業研修会の様子

    ※インシデント・プロセス法発表者(授業研修会では授業者)の短いインシデント(出来事・事象)をもとに、参加者の質問を通じて事例の概要を整理し、原因と対策を考えていく方法

    学生支援ボランティアとのミーティングの様子

    早期支援研究事業とは

    早期支援のためのアセスメント体制の確立

    インシデント・プロセス法による授業研究会

    学習支援活動を通しての教師としての成長

  • 10 11

    大学時代は人生の夏休み勉強やバイト、旅行などやりたいことにチャレンジ!

    滋賀の学校教育の最先端を担う研究校に勤務大学と協働しながら、生活科教育の在り方を探る

    ■自分の適性をとらえて教員の道に

     最初から将来の道を教員に絞っていたわけではなく、将来的な選択肢の存在も考慮して滋賀大学教育学部の情報教育課程を選びました。入学時は、教員になる他に、IT関連の一般企業に就職する可能性もあると考えていたのです。 高校まではひたすら武道の道にのめりこみ、部活のことばかり考えていましたが、大学入学後は多様な分野に興味が向きました。高校生の時はまともに勉強できていませんでしたが、在学中は自分で学んでいたと思います。将来の可能性も考え、教員免許の他に、初級システムアドミニストレータという国家資格も在学中に取得しました。 大学では、哲学専攻のゼミに所属していました。卒業論文で自分の論を展開できたことが、在学中の一番大きな学びだったのではないかと思います。親身になってご指導いただいた先生から、大学院に進んで哲学者を志す道へのお誘いもいただき、教員・哲学者・情報系の技術者の3つの選択肢の間で迷いましたが、比較的オールマイティーなのが自分のよさではないかと考え、最終的には自分の力を幅広く生かせる小学校教員の道を選びました。

    ■ 戸惑いながらも結果を出す努力を続ける

     初任校は長浜市立速水小学校でした。先輩の先生方のことをよく見て、自分なりのスタイルを模索していました。自分の強みを生かしたいということも考えてICT活用の実践を重ね、長浜市の論文募集で奨励賞もいただきました。 現在は公立学校の教員を辞し、滋賀大学の教員として、滋賀大学教育学部附属小学校で勤務しています。本校は滋賀の教育界をけん引する研究校としての任を担っており、教育実習でお世話になった学校でもあります。私の年齢で本校に来るのは珍しく、当時から在任されている先生方には、「まさかこんなに早く戻ってくるとは」と、驚かれました(笑)。 突然の異動と不慣れな研究教科に戸惑う毎日でしたが、少しずつ研究に対する自分なりのアプローチの方法を考えるようになってきました。自分にできる最善を上回るような結果を求められる状況で、悩み続ける日々を過ごしています。 実習生の指導をしたり、研究者と共同研究に取り組んだりするなど、滋賀大学とのかかわりももちながら仕事をしています。母校に戻って仕事ができることを面白く思いながら、子どもの育成・教育研究・学生の指導のいずれをも大切にしなければならないと考えています。

    ■ 多くのことをため込む学生生活で蓄えを豊かに

     教育実習や講義を通して、これまでよりも身近な距離感で、学生のみなさんの悩みや不安を感じています。自分も試行錯誤する毎日ですが、人の能力は結局のところ、それまでに蓄えてきたもので決まるのではないかと思います。滋賀大学に在籍される間に、ぜひ様々なため込みをしてください。

    滋賀大学教育学部附属小学校 教諭 西嶋 良 さんにし じ ま   り ょ う

    長浜市出身。平成19年4月、滋賀大学教育学部情報教育課程文化情報コースに入学。同23

    年3月に卒業後、長浜市立速水小学校へ赴任し、3年生・5年生・6年生を担任。同26年4月か

    ら滋賀大学教育学部附属小学校に勤務。生活科を研究教科とする。子どもたちに慕われ、

    現在担任する1年生にいつもまわりを囲まれながら生活している。高校時代は近畿大会に

    出場するなど部活に打ち込み、剣道三段。

    株式会社みずほ銀行 伊勢 麻衣子 さんい  せ   ま  い  こ

    大阪市出身。平成26年3月、滋賀大学経済学部企業経営学科卒業。同年4月、「みずほ銀行」

    に入社。難波支店に配属され、現在に至る。中堅・中小企業RM(リレーションシップマネジ

    メント)を担当。大学生活4年間、約2時間かけて大阪から彦根まで通った頑張り屋。その中

    でも塾講師や飲食関連、テレフォンアポインターなど、様々な職種のアルバイトを経験する。

    趣味は旅行。

    卒 業 生 のいま

    ■ 中小企業に融資や課題解決を提案

     現在、「みずほ銀行」難波支店で中堅・中小企業RMとして20社ほどの顧客を担当しています。中堅・中小企業に対して融資やさまざまな経営課題についてのご提案をさせていただくのが仕事です。直接経営者の方々とお話ができるのも大きな魅力ですが、お客様のお困りごとが当行の提案で解決し、感謝のお言葉をいただけることがとても嬉しいですね。その反面、限られた時間の中で成果を出さなければならず、提案の前に社内協議が求められるといった厳しさもあります。学生時代と違って、独断で安易にものごとを進めることは許されません。

    ■ 春はお花見 冬はキャンパスで雪合戦

     名門彦根高商の後身である滋賀大は経済、経営に関する授業が多く、ゼミも充実しており、近江商人の歴史から現代の経済学まで幅広く学ぶことができました。私はふだんあまり目を向けることのない途上国の貧困や成長問題について考えるゼミに属していましたが、これらの問題についてほかのゼミ生とじっくり議論することができたのはとても良い経験だったと思います。 彦根は良い意味でのんびりしており、自

    然に恵まれた学習環境でした。春は彦根城周辺でお花見、冬は雪合戦をして遊びました。大阪はほとんど雪が降らないので、同じ近畿圏でもこんなに気候が違うのかと驚いたことを覚えています。

    ■ 企業説明会に参加して人脈を広げる

     滋賀大の卒業生には大手企業の役員を務める方も多いと聞いており、就活では業界を絞らずにさまざまな企業の説明会に行くことを心がけていました。説明会に行くと他大学の友達もできます。私はその人たちとも積極的に仲良くなり、お互いに企業の人えらびの傾向や特徴など、就活に関する情報交換を頻繁に行っていました。自分だけでは得られる情報に限りがあるため、人脈を広げることはとても重要でした。 また3回生の夏ぐらいから企業のインターンに行くようになり、ここでの経験が就活本番での面接対策に役立ったかもしれません。 今社会人になって痛感しているのは、自由な時間は学生時代だけだったなということ。大学生活は“人生の夏休み”といわれますが、何もせずに過ごすのではなく、自分がしたいこと、興味のあることに思い切ってチャレンジしてください。学生時代の経験をその後の人生設計に生かしていただければと思います。

    10 11

    大学時代は人生の夏休み勉強やバイト、旅行などやりたいことにチャレンジ!

    滋賀の学校教育の最先端を担う研究校に勤務大学と協働しながら、生活科教育の在り方を探る

    ■自分の適性をとらえて教員の道に

     最初から将来の道を教員に絞っていたわけではなく、将来的な選択肢の存在も考慮して滋賀大学教育学部の情報教育課程を選びました。入学時は、教員になる他に、IT関連の一般企業に就職する可能性もあると考えていたのです。 高校まではひたすら武道の道にのめりこみ、部活のことばかり考えていましたが、大学入学後は多様な分野に興味が向きました。高校生の時はまともに勉強できていませんでしたが、在学中は自分で学んでいたと思います。将来の可能性も考え、教員免許の他に、初級システムアドミニストレータという国家資格も在学中に取得しました。 大学では、哲学専攻のゼミに所属していました。卒業論文で自分の論を展開できたことが、在学中の一番大きな学びだったのではないかと思います。親身になってご指導いただいた先生から、大学院に進んで哲学者を志す道へのお誘いもいただき、教員・哲学者・情報系の技術者の3つの選択肢の間で迷いましたが、比較的オールマイティーなのが自分のよさではないかと考え、最終的には自分の力を幅広く生かせる小学校教員の道を選びました。

    ■ 戸惑いながらも結果を出す努力を続ける

     初任校は長浜市立速水小学校でした。先輩の先生方のことをよく見て、自分なりのスタイルを模索していました。自分の強みを生かしたいということも考えてICT活用の実践を重ね、長浜市の論文募集で奨励賞もいただきました。 現在は公立学校の教員を辞し、滋賀大学の教員として、滋賀大学教育学部附属小学校で勤務しています。本校は滋賀の教育界をけん引する研究校としての任を担っており、教育実習でお世話になった学校でもあります。私の年齢で本校に来るのは珍しく、当時から在任されている先生方には、「まさかこんなに早く戻ってくるとは」と、驚かれました(笑)。 突然の異動と不慣れな研究教科に戸惑う毎日でしたが、少しずつ研究に対する自分なりのアプローチの方法を考えるようになってきました。自分にできる最善を上回るような結果を求められる状況で、悩み続ける日々を過ごしています。 実習生の指導をしたり、研究者と共同研究に取り組んだりするなど、滋賀大学とのかかわりももちながら仕事をしています。母校に戻って仕事ができることを面白く思いながら、子どもの育成・教育研究・学生の指導のいずれをも大切にしなければならないと考えています。

    ■ 多くのことをため込む学生生活で蓄えを豊かに

     教育実習や講義を通して、これまでよりも身近な距離感で、学生のみなさんの悩みや不安を感じています。自分も試行錯誤する毎日ですが、人の能力は結局のところ、それまでに蓄えてきたもので決まるのではないかと思います。滋賀大学に在籍される間に、ぜひ様々なため込みをしてください。

    滋賀大学教育学部附属小学校 教諭 西嶋 良 さんにし じ ま   り ょ う

    長浜市出身。平成19年4月、滋賀大学教育学部情報教育課程文化情報コースに入学。同23

    年3月に卒業後、長浜市立速水小学校へ赴任し、3年生・5年生・6年生を担任。同26年4月か

    ら滋賀大学教育学部附属小学校に勤務。生活科を研究教科とする。子どもたちに慕われ、

    現在担任する1年生にいつもまわりを囲まれながら生活している。高校時代は近畿大会に

    出場するなど部活に打ち込み、剣道三段。

    株式会社みずほ銀行 伊勢 麻衣子 さんい  せ   ま  い  こ

    大阪市出身。平成26年3月、滋賀大学経済学部企業経営学科卒業。同年4月、「みずほ銀行」

    に入社。難波支店に配属され、現在に至る。中堅・中小企業RM(リレーションシップマネジ

    メント)を担当。大学生活4年間、約2時間かけて大阪から彦根まで通った頑張り屋。その中

    でも塾講師や飲食関連、テレフォンアポインターなど、様々な職種のアルバイトを経験する。

    趣味は旅行。

    卒 業 生 のいま

    ■ 中小企業に融資や課題解決を提案

     現在、「みずほ銀行」難波支店で中堅・中小企業RMとして20社ほどの顧客を担当しています。中堅・中小企業に対して融資やさまざまな経営課題についてのご提案をさせていただくのが仕事です。直接経営者の方々とお話ができるのも大きな魅力ですが、お客様のお困りごとが当行の提案で解決し、感謝のお言葉をいただけることがとても嬉しいですね。その反面、限られた時間の中で成果を出さなければならず、提案の前に社内協議が求められるといった厳しさもあります。学生時代と違って、独断で安易にものごとを進めることは許されません。

    ■ 春はお花見 冬はキャンパスで雪合戦

     名門彦根高商の後身である滋賀大は経済、経営に関する授業が多く、ゼミも充実しており、近江商人の歴史から現代の経済学まで幅広く学ぶことができました。私はふだんあまり目を向けることのない途上国の貧困や成長問題について考えるゼミに属していましたが、これらの問題についてほかのゼミ生とじっくり議論することができたのはとても良い経験だったと思います。 彦根は良い意味でのんびりしており、自

    然に恵まれた学習環境でした。春は彦根城周辺でお花見、冬は雪合戦をして遊びました。大阪はほとんど雪が降らないので、同じ近畿圏でもこんなに気候が違うのかと驚いたことを覚えています。

    ■ 企業説明会に参加して人脈を広げる

     滋賀大の卒業生には大手企業の役員を務める方も多いと聞いており、就活では業界を絞らずにさまざまな企業の説明会に行くことを心がけていました。説明会に行くと他大学の友達もできます。私はその人たちとも積極的に仲良くなり、お互いに企業の人えらびの傾向や特徴など、就活に関する情報交換を頻繁に行っていました。自分だけでは得られる情報に限りがあるため、人脈を広げることはとても重要でした。 また3回生の夏ぐらいから企業のインターンに行くようになり、ここでの経験が就活本番での面接対策に役立ったかもしれません。 今社会人になって痛感しているのは、自由な時間は学生時代だけだったなということ。大学生活は“人生の夏休み”といわれますが、何もせずに過ごすのではなく、自分がしたいこと、興味のあることに思い切ってチャレンジしてください。学生時代の経験をその後の人生設計に生かしていただければと思います。

  • 滋賀大学保健管理センター 所長・教授 山本 祐二

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    学生支援 滋賀大学保健管理センター S u p p o r t f o r S t u d e n t s

    「食と健康 ~滋賀大生の生活習慣~」

     現代社会において食生活の乱れ、運動不足といったライフスタイルから肥満となり、肥満に起因する血圧上昇及び血糖上昇・脂質異常などの代謝異常が相まって脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を患って人生の質(QOL:quality of life)が低下してしまうことが問題となっています。この稿では現代の若者の生活習慣を取り上げます。滋賀大生の皆さんが健康に関心を抱き、より健康な学生生活を送る一助となれば幸いです。 「学生の健康白書2010(国立大学法人保健管理施設協議会編)」によると体格的に大学生は、男性のおよそ1割がBMI(体格指数:Body Mass Index、注1)25以上の肥満、女性のおよそ2割がBMI 18.5未満の痩せを呈しています。朝食を摂る習慣のない学生は、男子の1年生で6%、4年生で20%、女子の1年生で2%、4年生で8%と学年が上がるにつれ増加しています。 さて滋賀大生の皆さんの状況は健康的でしょうか?平成27年度に実施した学生定期健康診断の結果をみてみましょう。

     滋賀大生において男子のおよそ1割は、BMIが25以上の肥満を呈し、女子のおよそ1割は、BMIが18.5未満の痩せを呈しています(図1)。

     肥満は、高血圧、糖尿病といった生活習慣病を引き起こす最上流に位置し、最初に是正すべき病態です。エネルギー摂取量が消費量を上回る状態で引き起こされるので、肥満解消の基本は日々過食を避けて運動をすることです。 逆に痩せは、エネルギー摂取量が消費量を下回る状態で引き起こされる低栄養状態です。一人暮らしなどで毎日の食事がきちんと摂れていない時や、酒に溺れてアルコール依存症でまともな食事を摂っていない時などに、低栄養状態に陥ってしまいます。また痩せようとして無理に食事を減らしてはいけません。

    滋賀大生の朝食摂取

    滋賀大生の肥満度

    滋賀大生の運動・睡眠・喫煙

    バランスのとれた食事を摂ろう

     1年生は男女とも8割以上が「毎日朝食を摂る」と回答していますが、学年がすすむと男子で5割前後に、女子で6割までに低下しています(図2)。「朝食を摂らない」と回答した人が1割近くいることは残念です。

     思春期において朝食の摂取回数が多い方が、むしろ体重増加が少ない(Pediatrics. 2008;121:e638‒45)という報告があります。ダイエットのために朝食を抜くなんてことはダメですよ。また外食への依存度が高いと肥満や糖尿病の発生を押し上げる(米国心臓協会学術集会、2015年11月、オーランド)との報告もあります。なるべく自炊したほうがよさそうですね。外食するにしても栄養バランスに注意しやすい、学生食堂などで食事するようにしましょう。

     運動をしないと回答した人は、4割近くに上ります(図3)。2、3年生は身体活動が活発ですが、受験勉強を終えたばかりの1年生や就職活動まっただ中の4年生は運動習慣がないようです。日頃から体を動かすことを意識し、筋肉を鍛え・維持しておくことは、老後の心身機能の低下(フレイル)の予防に役立つでしょう。

     18才から60才までの人は健康のために7時間以上の睡眠時間が推奨されています(Sleep. 2015 Jun 1; 38(6): 843‒844.)。しかし滋賀大生のうち睡眠時間が7時間以上十分とれている人は4割前後しかおらず、残りの者は睡眠が不足しているように見受けられます(図4)。慢性の睡眠不足は眠気や集中力の低下から事故の原因となり、また生活習慣病や鬱病のリスクを高めます。休日に寝だめが必要な人は、普段の睡眠時間が足りていないのかもしれません。

     喫煙が健康によくないことは十分周知されていますが、滋賀大生も上級生になるにつれ男女ともに喫煙経験者が増加しています(図5)。喫煙は寿命を縮めますが、早く禁煙すればその影響は少なくて済みます(British Medical Journal. 2004 June 26; 328(7455): 1519.)。喫煙習慣のある人は直ぐに断ち切りましょう。喫煙は自分自身だけではなく、周囲の人にも受動喫煙のかたちで健康被害を及ぼします。

     私たちはたった一つの細胞である受精卵から発生し、成人の体はおよそ60兆個の細胞で維持されていると言われていますが、そこまで成長し維持していくために必要な栄養素はすべて外部から得ています。私たちは口から食べたものでできているわけで、食べたものが文字通り血となり肉となっているのです。食事がとても大切である所以です。 次に大学生になって自炊や外食する機会が多くなり、食生活が乱れていると感じている皆さんに最適な食事方法を簡単に紹介します。

     「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病学会編・著、写真)は糖尿病患者の食事指導のために考案されました。特定の品目の摂取や制限にこだわった「~なんとかダイエット」ではなく、栄養バランスを考えた健康的なカロリー制限方法です。 食品交換表には、日本人の食卓に上りそうな品目が主な栄養素別に表1から表6に分類され、80キロカロリーを1単位とし、1単位にあたる食品の重量で示されています。表1は主食となる穀類など、表2は果物、表3は肉・魚などのおかずとなる蛋白質源、表4は乳製品、表5は油脂を含むもの、表6は野菜などです。 カロリー設定は、標準体重(注2)に身体活動係数を乗じて算出します。すなわち一日の摂取カロリー=標準体重(kg)×25~30(軽労作)、30~35(通常労作)、35~(重労作)です。一日の必要単位数を朝昼夕の三食に割り付けます。栄養配分は日本人の摂取基準で、おおよそ蛋白質15:脂質25:糖質60です。例えば一日1600キロカロリーなら20単位なので、表1に11単位、表2に1単位、表3に4単位、表4に1.5単位、表5に1単位、表6に1単位、調味料に0.5単位と割り付けます。さらに表1の11単位を三食に割り付けて、朝食に3単位、昼食に4単位、夕食に4単位と割り付けます。朝食の主食(表1)3単位は、お米なら150g、食パンなら6枚切り1枚半に相当することがわかります。「今朝はご飯ではなくうどんが食べたいな」と思ったなら、表1の中でうどんを探して同じ単位数分を交換すればよいのです。おかずなら表3の中で同じように交換します。 慣れると目分量でおおよその単位数がわかるので、ごはんを少なめによそったり小鉢を一品追加したりして、食事のバランスをとれるようになり自炊や外食の際に大変役立ちます。ラーメンライスが炭水化物の塊であることがわかりますよね? 自身の日常生活を見直してみることが、健康への第一歩です。少しでも健康によいことを始めることが出来たなら大丈夫です。広報誌「しがだい」第37号14頁に「朝から始まる快適生活!」として取り上げましたが、貝原益軒の「養生訓」には健康生活へのヒントがたくさん著されています。興味ある方は是非ご一読を! 最後になりますが、