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NCNP ANNUAL REPORT 2012–2013 NCNP 最新動向

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Page 1: NCNP ANNUAL REPORTNCNPの年報2012–2013が完成しましたのでお届けします。これまでは、センター内にある施設ごとに年報を作製して参りました。これら施設ごとの年報は、それぞれの施設の年間の活動を記録し、関係

NCNPANNUALREPORT2012–2013

NCNP 最新動向

2013年11月発行

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12

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Page 2: NCNP ANNUAL REPORTNCNPの年報2012–2013が完成しましたのでお届けします。これまでは、センター内にある施設ごとに年報を作製して参りました。これら施設ごとの年報は、それぞれの施設の年間の活動を記録し、関係

NCNP の年報 2012–2013 が完成しましたのでお届けします。これまでは、センター内にある施設ごとに年報を作製して参りました。

これら施設ごとの年報は、それぞれの施設の年間の活動を記録し、関係者にお読みいただき、ご批判、ご評価いただくと共に、研究者自ら研究を振り返る機会にもなっております。

本年は、これに加えて NCNP 全体の年報を作製しました。NCNP の活動、研究成果などを、広く国民の皆様に知っていただくには、これまでの施設ごとの年報は内容もボリュームも不向きでありました。そこで、その年度のセンター全体の研究活動を一冊にまとめ、簡潔かつわかりやすくお知らせすることになった次第です。

今、わが国の健康・医療に関する研究開発のあり方が政府の中で検討されています。日本版NIH構想もそのひとつです。わが国には6つのナショナルセンターがあり、当センターもそのひとつです。ナショナルセンターは国民の健康を守り、病気を克服するために研究所と病院を併せ持つ研究開発型の独立行政法人として整備されました。わが国にはナショナルセンター以外にも健康・医学・医療に関する国立あるいは独法の研究機関は多くありますが、病院を併設するものはありません。ナショナルセンターに課せられた役割は、研究の成果を医療現場に繋げる、あるいは病院において検証することにあり、この点が最大の特徴でもあります。

NCNP は精神・神経・筋・発達障害の4分野を扱っていますが、これらの領域の疾患の多くが、まだ、未解明であり、根治的治療法が開発されておりません。一日も早く、これらの疾患の病因・病態を解明し、根治療法を患者様にお届けできるよう、センター職員は一丸となって頑張っています。この年報はその成果を集約しています。今、どこまで研究が進んだか、是非お読みいただき、感想をお寄せ下さい。

NCNP年報発行にあたって

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

総長 樋口 輝彦

巻頭言

Greetings from the President

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NCNPのミッション私たちは、医療と研究が一体となった国立高度専門医療研究センターとして、 基本理念のもと、5つのミッションを掲げ、活動しています。

基本理念病院と研究所が一体となり、精神疾患、神経疾患、筋疾患、及び発達障害の克服を目指した

研究開発を行い、その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図る。

1

2

3

4

5

研究・開発国立高度専門医療研究センターとして、精神・神経疾患等の臨床研究推進のための中核的役割を担い、基礎研究はもとより、臨床研究、治験の円滑な実施を行っていきます。また、多くの外部施設との共用研究基盤整備を行い、研究資源の適切な活用を実現する司令塔機能を果たすこと等を通じて、国際水準の研究成果を継続的に創出することを目指しています。

医療の提供精神・神経疾患等の研究成果を活かし、患者様の生活の質の向上を目指した医療を提供します。特に、希少疾患や重症・難治性疾患等については、症例、臨床情報の集約を行い、高度先駆的な医療を提供していきます。また、これらの疾患の特性による、患者様のご家族や介護者等の身体的、精神的、経済的負担等にも配慮した支援も行っていきます。

人材育成レジデントや流動研究員等への充実した教育・指導システムによって、専門性を有するリーダー的人材の養成を進めるとともに、医療従事者等に対する各種モデル的研修・講習の実施を推進しています。また、地域医療の指導的役割を担う人材や臨床研究の推進者を育成し、医師、研究者以外の職種にも対応した課程の整備にも着手しています。

情報発信精神・神経疾患等に関する基本情報や、予防・診断・治療法等について、様々なメディアや関係機関を通じて、適切な情報発信を行っています。特に災害等の緊急時においては、蓄積した信頼性の高い研究成果に基づく実用性のある情報提供を迅速に行っていきます。

政策提言精神・神経疾患等に関する政策の企画・立案に関して、先行研究の分析、疫学研究、臨床研究等により、様々なサポート・貢献をしています。また、医療政策や自殺対策等の緊急性の高い課題に対し、国内外での研究成果や実態調査結果等に基づく、専門的な政策提言を行っています。

2 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 3National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

●NCNP(エヌ・シー・エヌ・ピー)とは、独立行政法人国立精神・神経医療研究センターの英語表記 NationalCenterofNeurologyandPsychiatryの頭文字をとった略称です。

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4 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

CONTENTS

巻頭言 総長 樋口輝彦

NCNPのミッション P2

■研究と医療 2012–20131.神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が筋肥大を促進する機構を解明 P8

2.RNAや DNAを標的とする新たな細胞内分解システムの発見 P10

3.精神疾患のバイオマーカー研究 P12

4.夜型社会が引き起こす抑うつと体内時計の変化 P14

5.「脱法ドラッグ」の基礎研究から実態調査、治療の提供まで P16

6.慢性疾患患者の治療継続フォローアップシステムを開発 P18

7.新たに開設された専門疾病センター:睡眠障害センター P20

8.パーキンソン病臨床研究サポートチーム:TeamJParis 設立 P22

9.バイオバンク~次世代の医療のために~ P24

10.研究所で生まれたシーズを病院で Firstinhuman 試験として実施 P26

11.筋ジストロフィー臨床試験ネットワークを発足 P28

12.統合的脳画像を用いた多施設共同研究拠点への飛躍 P30

13.認知行動療法の研修と普及 P32

■NCNPの活動 2012–2013 広報活動 P36

社会貢献活動 P38

人材育成 P40

組織図・各施設の役割 P42

財務状況 P44

沿革・問い合わせ先 P45

NCNPANNUALREPORT

2012–2013

ハイパーソニック・セラピー研究の為に開発した、100kHzまで再生可能な映像音響呈示システムと、帽子型の超小型ポジトロン断層装置PET-Hat。人間の耳に聞こえない高い周波数成分を豊富に含む音が中脳・間脳を活性化する現象を応用することにより、うつ病をはじめとするさまざまな精神疾患の予防と治療をめざすハイパーソニック・セラピーの開発に取り組んでいます。(神経研究所 疾病研究第七部)

5National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

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Research and Medical Activities 2012–2013

7National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)6 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

研究と医療 2012–2013NCNP が挑戦するさまざまな研究と医療から、 最新の取り組みをご紹介します。

研究所3号館

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8 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 9National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が筋肥大を促進する機構を解明

神経型一酸化窒素合成酵素の活性化が筋肥大を促進する 機構を解明神経研究所 遺伝子疾患治療研究部

筋力トレーニングやリハビリテーションにより、骨格筋を使えば使うほど筋重量は増加し、筋肥大を起こします。逆に、寝たきりや骨折等に伴うギプス固定によって筋肉を使わなくなると、筋萎縮が進行します。このような運動・不動に伴う筋重量の変化は経験的には知られていますが、その分子メカニズムは明らかになっていませんでした。私達は負荷依存的に筋肥大が起こる新しいメカニズムを発見し、筋萎縮軽減・予防薬開発の可能性を提示しました。

左から、伊藤尚基研究員、武田伸一部長、鈴木友子室長

細胞培養の様子

細胞内シグナルを活性化する Ca2+シグナルの発見

次にNO/peroxynitriteが、細胞内のシグナル因子を活性化する機構に注目しました。私たちはNO/peroxynitriteが細胞内のCa2+

濃度を上昇させることを明らかにし、そのターゲットとして陽イオンチャネルTRPV1を同定しました。TRPV1は43度以上の熱や、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンによって活性化されます。そこでカプサイシンをマウスに投与した結果、負荷をかけずとも細胞内のシグナル因子が活性化され、筋肥大が促進されました。カプサイシンの投与は微小重力や除神経によって生じる筋萎縮の軽減にも繋がったことから、細胞内のCa2+濃度を制御することにより、今後、新しい筋萎縮軽減・予防薬の開発に繋がる可能性を明らかにしました。

今後の課題

私たちの発見は、従来考えられてきた筋の成長とは異なり、筋への負荷を細胞内のシグナル因子の活性化へと結び付ける新たな視点を与えました。しかしながら、今回私たちが注目したTRPV1チャネルは、神経系の細胞において痛みを伝える受容体として知られていることから、カプサイシンそのものを筋萎縮治療薬として用いることはできません。今後、骨格筋特異的にTRPV1チャネルに作用する薬剤の開発、またはTRPV1以外に筋肥大を促進するチャネルを同定することにより、より実現可能な筋萎縮治療薬の開発に繋がると考えています。

図1:タンパク質合成と分解の関係骨格筋の重量はタンパク質合成と分解のバランスによって決まります。タンパク質合成が勝る時は筋肥大を生じ、逆に、タンパク質分解が勝る時は筋萎縮を生じます。

図4:本研究の概念図nNOSは骨格筋への負荷により活性化され、NOを産生します。その後、活性酸素産生酵素であるNOX4との協働作用によりパーオキシナイトライトを産生し、TRPV1を活性化することで細胞内のCa2+濃度を上昇させます。この細胞内Ca2+濃度が上昇することが細胞内のシグナル因子mTORの活性化に繋がり、筋肥大を促進します。またTRPV1を活性化させる薬剤であり、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンによりTRPV1を活性化することによって、筋肥大が促進され、筋萎縮が軽減されることが明らかになりました。

筋細胞膜 ジストロフィン複合体

nNOS

nNOS

骨格筋への負荷

筋小胞体筋肥大筋萎縮の軽減

NOX4(ONOO-)

TRPV1

mTORP70S6K

Ca2+

O2-

NONONO

NO

O2-

O2-

O2-

peroxynitrite

p筋肥大/筋萎縮の背景

筋萎縮はガン、腎不全、エイズ、敗血症および糖尿病を含む多くの病気に伴って生じます。また高齢化社会を迎えた日本では、加齢、寝たきりや骨折によって生じる筋萎縮は、深刻な問題となっています。

リハビリや筋力トレーニングなどの筋肉への負荷によって筋肥大が促進されることは経験的によく知られていることですが、なぜ筋肉に対する負荷に応じて、細胞内の筋肥大を促進するシグナルが活性化されるのかは明らかになっていません。そのため、現時点では筋重量を増やす(筋肥大を起こす)方法は運動しかなく、筋肉に対する負荷と細胞内シグナル分子の活性化を結び付ける分子メカニズムを明らかにすることは、新たな筋萎縮の予防/治療法の開発に繋がります。

骨格筋への負荷を細胞内シグナルへと 伝える分子の発見

骨格筋への負荷によって細胞内のシグナル因子が活性化されることで、筋肥大が起こります。その負荷を細胞内へと伝える因子として、骨格筋の細胞膜に局在し、筋収縮等の負荷から筋を守っているタンパク質分子群(ジストロフィン複合体)の一分子、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)に注目しました。nNOSは、骨格筋に対する負荷や筋収縮依存的に一酸化窒素(NO)を産生する酵素です。骨格筋に過剰な負荷をかけることで、筋肥大を誘導した結果、nNOSは負荷直後に活性化され、この急速な活性化が筋肥大に必要であることを発見しました。さらに、nNOSに よ り 産 生 さ れ たNOが活性酸素と反応することでperoxynitrite(ONOO-)となったことから、負荷依存的にNO/peroxynitriteが産生されることが、筋肥大を促進するきっかけとなることがわかりました。

タンパク質合成

タンパク質分解

タンパク質合成

タンパク質分解

筋肥大 筋萎縮

図3:nNOSは負荷依存的な筋肥大を促進するnNOSの筋肥大における機能を解析した結果、nNOS欠損型マウスは筋肥大誘導時においても筋線維が太くならず、負荷依存的な筋肥大が起こりにくいことがわかりました。

筋細胞膜

Laminin-2

Sarcoglycans

Sarcospan AQP4

nNOS

NOSyntrophins

O2-

peroxynitrite(ONOO-)

血管拡張筋衛星細胞の活性化

Dystroglycans

Dystrobrevin

Dystrophin

F-actin

細胞内骨格

細胞質

筋基底膜

d g b b

b

a

a

a

図2:ジストロフィン複合体(タンパク質分子群)の模式図骨格筋細胞膜には、細胞外基質と細胞内骨格を繋ぐジストロフィン複合体が存在します。nNOSはジストロフィン複合体の一分子であり、収縮等の刺激によって一酸化窒素(NO)を合成する酵素です。

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10 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 11National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

RNAやDNAを標的とする新たな細胞内分解システムの発見

RNAやDNAを標的とする新たな細胞内分解システムの発見神経研究所 疾病研究第四部

私たちの身体は約60兆個とも言われる数の細胞からできています。ひとつひとつの細胞の中には、遺伝子の本体としての役割を果たすDNAという物質が入っています。細胞の中では日々、このDNAの情報をもとにRNAという物質がつくられ、さらに一部のRNAからは、その情報をもとにタンパク質がつくられています。これらの物質は私たちの生命活動にとって欠かせないものですが、一方でRNAやタンパク質の異常な蓄積がさまざまな病気の原因ともなることがわかってきています(図1)。たとえばRNAの過剰な蓄積が主な原因となる病気としては、失明の原因ともなる加齢性黄斑変性症(萎縮型)、筋力の低下を主症状とする筋強直性ジストロフィーなどが報告されています。また、徐々に筋肉が動かなくなる難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患の一部にもRNAの代謝異常が発症に関与することが示唆されています。

DNAからRNAやタンパク質が必要に応じてつくられることに加えて、これらの物質が適切に分解されることが、私たちの健康な生活において重要であると考えられるのです。

研究成果:RNautophagyおよびDNautophagyの発見

私たちはリソソームがRNAやDNAを直接取り込み、分解するという新たなオートファジーシステムを発見し、これらを「RNautophagy(アールエヌオートファジー)」および

「DNautophagy(ディーエヌオートファジー)」と名付け、世界に先駆けて報告しました。さらにこれらのシステムがエネルギーを必要とすることや、リソソームの膜に存在するLAMP2Cというタンパク質がRNAやDNAの受け取り手として働くことも見出しました。(図2、3)

今後期待される展開

RNautophagy/DNautophagyの発見は、神経や筋肉の難病などのさまざまな病気の病因解明や治療法開発へと応用されることが期待されます。私たちは現在、RNautophagy/DNautophagyがどのようなRNAやDNAを標的とし、どのような病気と関わっている可能性があるのか、研究を進めています。

図3:RNautophagyによりリソソームに取り込まれたRNAの電子顕微鏡写真:楕円状の影がリソソームであり、その内側の黒い点がリソソームに取り込まれたRNAをラベルしたもの。(nm:ナノメートル)

図2:RNautophagy/DNautophagyの 仕 組 み(モデル図): リソソームの表面にあるタンパク質LAMP2CがRNAやDNAの受け取り手となり、続いてRNAやDNAが直接リソソームに取り込まれ分解される。

LAMP2C

RNAまたはDNA

細胞内

リソソーム

取り込み 分解

リソソーム:細胞内のゴミ処理場

細胞の中にはリソソームと呼ばれる小器官が存在します。その中にはDNAやRNA、タンパク質、脂質、糖質などさまざまな物質を分解するための酵素が豊富に含まれており、細胞内のゴミ処理場のような役割を果たしています。リソソーム中のRNA分解酵素の欠損は、白質脳症の原因となることが知られています。

細胞内には、ゴミとなる物質などをリソソームに運んで分解するシステムが存在し、オートファジー(自食作用)と総称されています。これまで細胞内のタンパク質や小器官を標的としたオートファジーは知られていましたが、RNAやDNAそのものを標的にしたものは知られていませんでした。

DNARNA

RNA タンパク質

RNAやタンパク質の異常な蓄積が病気の原因に

❹❸

1:左から株田智弘室長、和田圭司部長、藤原悠紀研究生    2:研究室での実験の様子3,4:世界トップクラスの学会、KeystoneSymposiaにて“Thetopabstracts”に選出

図 1

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12 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 13National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

精神疾患のバイオマーカー研究

精神疾患の バイオマーカー研究病院、トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)、神経研究所 疾病研究第二部・第三部

うつ病、双極性障害、統合失調症は臨床上、見分けることが難しい場合が少なくありません。これらの精神疾患は、慢性化して年単位での治療を受ける場合も多く、休職、失業、自殺などの重要な要因となっています。しかし、診療においては、診断や経過判定指標となる客観的なバイオマーカーが確立しておらず、診断は問診に基づいて主観的に行わざるを得ないのが現状です。そのことにより、健康診断などによる早期発見や、かかりつけ医による診断が難しくなっています。さらには、新しい治療薬開発の障壁にもなっています。そこで、私たちは、病院と研究所、TMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)の共同体制により、精神疾患のバイオマーカー開発研究を行っています。

患者様の血液・脳脊髄液等試料を収集し、ゲノムDNAや脳脊髄液中のタンパク、末梢血のRNAなどのバイオリソースの構築を行い、これまでに2000名以上からの協力を得ることが出来ました。

今年度は、抗うつ薬の反応性を規定する遺伝子としてCUX1を発見した論文(Sasayama et al., Pharmacogenomics J, 2013)、末梢血の遺伝子発現を規定するSNPsを多数同定した論文(Sasayama et al., PLoS One, 2013)、双極性障害の有力なリスク遺伝子CACNA1Cが統合失調症の認知機能に影響を与えることを示した論文(Hori et al., Sci Rep, 2013)、統合失調症の脳脊髄液中のオキシトシン濃度が陰性症状と逆相関することを示した論文(Sasayama et al., Schizaphr Res, 2012)、統合失調症やうつ病では脳脊髄液中のIL-6濃度が上昇していることを示した論文(Sasayama et al., J Psychiatr Res, 2013)、安定同位体を用いた呼気ガス検査を用いて、統合失調症ではフェニルアラニン代謝が低下していることを初めて明らかにした論文(Teraishi et al., Transl Psychiatry, 2012)、デキサメタゾン/CRHテストで評価したストレス反応の違いによって、うつ病患者の病前性格が異なり、亜型分類に寄与することを示した論文(Hori et al., J Affect Disord, 2013)などが主な成果です。

プロテオーム解析研究

現在、研究所疾病二部、疾病三部およびTMCが協力して、精神・神経疾患の脳脊髄液バイオマーカー探索を行っています。まず、比較的少数の統合失調症・健常対照検体に対して質量分析計を用いた網羅的タンパク質解析を行い、差の認められた分子について、より大規模な検体数の再現確認実験を免疫吸着(ELISA法)で行いました。その結果、診断や症状評価等への使用が期待できるマーカーが複数みつかりました(特許出願中)。現在、CSF検体をさらに集めつつ(図2)、神経内科疾患や他の精神疾患のマーカー探索を精力的に行っております。

精神疾患脳脊髄液検体の収集

近年、精神疾患のバイオリソースとして、脳により近い脳脊髄液(CSF)が再注目されています。そこで、研究所疾病三部ではセンター病院やTMCと協力して、精神疾患や健常対照者の脳脊髄液の収集を行っております。検査の苦痛や副作用を軽減するよう、ていねいな麻酔のうえ特殊な針を用いて腰椎穿刺を行っており、約9割の方が採血と同等以下の痛みであったと回答しています(図1)。現在までに470検体以上のCSFが集まっており、国内はもとより世界でもトップレベルのリソースとなっております(表1)。これらを利用し、網羅的解析を含む様々な研究が進行中です。

精神疾患バイオリソースを利用した研究とバイオマーカーの探索

2000 検体以上J Psychiar Res 2012

Oxytocin

オッズ比 4.8 (P = 0.0000023)The Pharmacogenomics Journal (in press)

680 分子を解析 平均に差のある分子 統合失調症の一部で変化 多検体を用いた検証 (ELISA)

陰性症状

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

Cont Sch

脳血液関門で働くP糖タンパクをコードするABCB1の機能低下型多型がうつ病リスクと関連することを報告

神経突起伸長などに重要な役割を果たすCUX1 の遺伝子の違いによって抗うつ薬への反応性が大きく異なることを発見

脳脊髄液中のオキシトシンレベルは統合失調症陰性症状と負の相関

プロテオーム解析

世界最大級のリソース構築

Schizophr Res 2012

日刊工業新聞2012.2.16 朝刊掲載

統合失調症の有力バイオマーカー23分子にまで絞り込み、現在解析中

DNA

脳脊髄液

0

1

2

3

4

5

cont sch-2024681012

cont sch

図2:脳脊髄液検体数

図1:腰椎穿刺時の疼痛(採血を10点として)

9.4%

28.1%

62.5%

採血より痛い(15点以上) 採血と同等

(5~ 15点)

採血より痛くない(5点以下)

2009/11

2010/2

2010/5

2010/8

2010/11

2011/2

2011/5

2011/8

2011/11

2012/2

2012/5

2012/8

2012/11

2013/2

2013/5

900

800

700

600

500

400

300

200

100

0

診療目的穿刺研究目的穿刺

表1:精神疾患脳脊髄液検体

脳脊髄液統合失調症 180大うつ病 106双極性障害 69健常対照者 101その他 14合計 470

1:プロテオーム解析(網羅的タンパク質解析)に用いる高性能質量分析装置と、功刀浩部長、服部功太郎室長、宮崎美知代研究員、後藤雄一部長(左から)2:検体からタンパク質を抽出し、比較のために標識する3:データベースを用いて個々のタンパク質を同定し比較定量する4:プロテオーム解析で得られたマーカー候補分子について、エライザ法など、より簡便で定量性の高い方法を用いて検証する

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14 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 15National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

夜型社会が引き起こす抑うつと体内時計の変化

夜型社会が引き起こす 抑うつと体内時計の変化精神保健研究所 精神生理研究部

進行する生活の夜型化:過去70年以上にわたり、日本人の生活は劇的に夜型化が進みました。国民生活時間調査(NHK放送文化研究所)によれば1941年には国民の90%は22:50に就寝していましたが、2000年にはその時刻が1:00まで遅くなりました(図1)。一方で、登校・出社時刻があるため、覚醒時刻にはほとんど変化がありません。結果的に日本人の生活スタイルは夜型化し、かつ睡眠時間は大幅に短縮しました。「寝る間を惜しんで…」「寝食を忘れて…」など睡眠をとら

ずに働くことを美徳と考えてきた日本人ですが、そろそろ限界に近づいているようです。電車の中は居眠りする人々であふれ、眠気による交通事故など睡眠問題に関連するトラブルが頻発しています。

夜型と抑うつ

私たちの研究室では、このようなライフスタイルが現代人の心身に及ぼす影響を調べています。最近になり、夜型生活が抑うつのリスクを高めることが明らかになってきました。一般成人1170名および睡眠リズムが著しく偏る概日リズム睡眠障害(睡眠・覚醒リズム障害)の患者様を対象にした調査の結果、夜型生活になるほど気分が低下し、夜型生活者の約4割、概日リズム睡眠障害患者に至っては7割以上の方が抑うつ状態に陥っていました(図2)。また、夜型の人々で抑うつが強まるメカニズムとして、短時間睡眠(睡眠不足)と体内時計の異常の二つが独立して関連していることが明らかになってきました。

なぜ夜型生活になってしまうのか

体内時計は環境光で調節されます。ヒトの体内時計の特徴として、午前中の光は体内時計を朝型、午後から深夜にかけての光は夜型に向かわせます。したがって、いったん夜型生活に入ると夜間照明のためにさらに夜型が強まるという悪循環を引き起こします。では、そもそもなぜ夜型生活に陥ってしまうのでしょうか。夜型の人々は大きく二つに分類され、必ずしもすき好んで夜更かしをしているケースだけではなく、体内時計の周期(概日リズム周期)が長すぎるため早寝ができないケースがあることが分かりました。特に、睡眠時間が日々遅れてゆく重篤な睡眠・覚醒リズム障害(非同調型)の患者さんでは極端に体内時計の周期が延長していることを厳密な実験から世界で初めて明らかにしました。

今後の課題

夜型生活者や睡眠・覚醒リズム障害の患者さんでは、社会スケジュール(睡眠)と生体リズム(ホルモン・自律神経など)との間に時差ぼけが生じており、抑うつや心身の不調の原因となっています。これを社会的時差ぼけと呼びます。私たちの研究室では、現在、その詳細なメカニズムの解明に取り組んでいます。また、体内時計の周期や振幅を簡便に測定するための分子診断法の開発を進めており、実用化につながる成果が得られつつあります。

睡眠不足が抑うつを引き起こす神経基盤

脳機能画像研究の結果、8時間睡眠時に比較して、平日に相当する5日間×4時間の睡眠不足後には、他人の恐怖表情などネガティブな感情刺激を受けた際に、不安の強さに比例して、左扁桃体の活動が高まりやすくなることが分かりました。この扁桃体の過剰反応は、睡眠不足時には充足睡眠時に比較して腹側前帯状皮質から受けるブレーキが効きにくくなったために生じていることが分かりました(図3)。

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%

リズム障害(49名)

夜型(141名)

標準型(664名)

朝型(365名)

71.1%

42.6%

29.5%

19.7%

図1:一日の時刻と睡眠をとっている人の割合(NHK放送文化研究所、国民生活時間調査の結果から作成)

図2:睡眠リズムと抑うつの関係睡眠リズムが夜型になるにつれて抑うつ状態の人の割合が増加する。

図4:夜型・概日リズム睡眠障害の体内時計周期異常横軸が一日の時刻(0時~24時)で黒い横棒が睡眠時間帯を示す。縦に約1ヶ月分の記録がある。強い夜型では寝付きが悪く、寝不足のため週末は昼近くまで寝だめをしている。睡眠相後退型では明け方に寝て昼過ぎに覚醒。非同調型では24時間リズムを保てず、睡眠時間帯が日々後退してゆく。外界の時間が分からない隔離実験室で精密測定した結果、体内時計には大きな個人差があり、夜型生活者の一部や非同調型患者では体内時計周期が顕著に長いことが分かった。

図3:睡眠不足による抑うつメカニズム睡眠不足後には腹側前帯状皮質からのブレーキが弱まり、情動調節を司る扁桃体の過活動が生じやすくなっていた。

1:左から、北村真吾研究員、三島和夫部長、元村祐貴研究員2:長期隔離試験室の一部。環境刺激を一定にした居住スペース(寝室・バストイレ付き)で数週間過ごし睡眠や体内時計の精密測定を行う3:隔離試験室に隣接した実験室でホルモンや遺伝子機能を測定

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16 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 17National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

「脱法ドラッグ」の基礎研究から実態調査、治療の提供まで

「脱法ドラッグ」の基礎研究から実態調査、治療の提供まで精神保健研究所 薬物依存研究部

「脱法ドラッグ」の乱用・依存が社会問題化しています。「脱法ドラッグ」とは、薬理作用が麻薬や覚せい剤に類似しているにも関わらず、その化学構造式の一部が異なるために、麻薬や覚せい剤としての法規制を受けない薬物の総称です。規制を受けないから、麻薬や覚せい剤よりは害が少ないだろうと考えがちですが、実はそうではありません。「くすり」としての審査を受けていないために、逆に、麻薬や覚せい剤より依存性・神経細胞毒性が強い物が少なくありません。私たちは、「脱法ドラッグ」問題について、依存性・神経細胞毒性研究から、乱用実態の把握調査、依存症者の治療までを手がけています。

違法な薬物の使用経験者は約251万人

そもそも、わが国には違法な薬物を使ったことのある人は何人くらいいるのでしょうか?私たちは1995年から、全国の15歳以上の住民5,000人に対する薬物使用に関する調査を行ってきています。その結果、これまでに何らかの違法な薬物の使用を経験した人は、15歳以上の国民の2.7%(約251万人)に達することがわかりました。その割合は、多い順に有機溶剤で1.6%(約148万人)、大麻で1.2%(約114万人)、覚せい剤で0.4%(約38万人)です。

「脱法ドラッグ」には依存性がある

脱法ドラッグの依存性は「条件付け場所嗜好性試験」という手法で評価します。試験では、白黒2区画の試験用ボックスを使用します。まず、薬物投与による条件付けを行います。マウスは夜行性動物です。白い箱の中よりも黒い箱の中を好みます。そこで、マウスに薬物を繰り返し投与して、白い箱の中にいれる条件付けを行います。薬物に依存性を引き起こす作用(多幸感や陶酔感)があるならば、マウスは白い箱に長く滞在するようになってしまいます。「脱法ドラッグ」には、この依存性が認められます。こうした研究から、脱法ハーブに含まれる合成カンナビノイドは、大麻よりも10倍程度強力な依存性を有する事が判明しました。

「脱法ドラッグ」の神経細胞毒性は強い

マウスの脳神経細胞を利用して、脱法ドラッグの毒性評価を実施しています。脳神経細胞に「脱法ハーブ」抽出成分を添加すると、わずか2時間後には「細胞数の減少・神経線維の断絶」といった非常に強力な細胞毒性が出現しました。脱法ハーブに含まれる合成カンナビノイドは、大麻と比較して非常に強力な細胞毒性を引き起こすことが明らかになりました。「脱法ドラッグ」には強力な急性の神経細胞毒性があり、人間でも脳神経細胞を破壊してしまうことが推測されます。

薬物依存症治療のための認知行動療法の開発とその普及

私たちは薬物依存症患者に対して、動機付け面接、随伴性マネージメント、薬物使用モニタリングなどを取り入れた、ワークブックを用いた集団認知行動療法を開発し、その実施・普及にあたっています。

薬物は乱用しないことが何より大切ですが、不幸にして依存してしまった場合には早期発見、早期治療が重要です。

「脱法ドラッグ」が原因での入院・通院例が激増

薬物の乱用・依存は精神的不調を生み出します。その結果、精神科病院へ入院・通院する例が絶えません。私たちは、薬物の乱用・依存が原因で全国の精神科病院に入院・通院した方々の原因薬物を調べてきました。最近では、原因として最も多い薬物は覚せい剤ですが、2番目に多い薬物は睡眠薬・抗不安薬という医薬品でした。医薬品の処方法に一部問題があることを伺わせますが、2012年に初めて「脱法ドラッグ」を調べてみたところ、「脱法ドラッグ」は2番目に多いという結果になりました。「脱法ドラッグ」の乱用・依存の激増ぶりがうかがえます。

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薬物使用が原因で精神科病院に入院・通院した人の原因薬物の割合%

覚せい剤 有機溶剤 鎮痛薬 大麻睡眠薬・抗不安薬 脱法ドラッグ

条件付け場所嗜好性試験Conditionedplacepreference(CPP)法

薬物精神依存形成能を予測

溶媒 薬物

マウス脳由来の神経細胞

脱法ハーブ成分の添加(2時間後)により細胞毒性が惹起される。

正常 脱法ハーブ成分で処理

ワークブック第1回 なぜアルコールや薬物をやめなきゃいけないの?第2回 引き金と欲求第3回 精神障害とアルコール・薬物乱用第4回 アルコール・薬物のある生活からの回復段階第5回 あなたのまわりにある引き金について第6回 あなたのなかにある引き金について第7回 生活のスケジュールを立ててみよう第8回 合法ドラッグとしてのアルコール第9回 マリファナはタバコより安全?第10回 回復のために―信頼、正直さ、仲間第11回 アルコールを止めるための三本柱第12回 再発を防ぐには第13回 再発の正当化第14回 性の問題と休日の過ごし方第15回 「強くなるより賢くなれ」第16回 あなたの再発・再使用のサイクルは? SMARPP-16、SMARPP-28、自習ワークブック「SMARPP-Jr.」

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1.0

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1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011年

何らかの薬物

15歳~64歳における違法薬物生涯経験率%

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2.5 2.6 2.72.7

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2.02.2

2.62.9

1.4

有機溶剤 大麻覚せい剤 MDMA

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慢性疾患患者の治療継続フォローアップシステムを開発

慢性疾患患者の治療継続 フォローアップシステムを開発精神保健研究所 社会精神保健研究部

身体疾患にはうつ病等の精神疾患が高頻度に合併し、両疾患の重症化や予後不良と関連することが明らかになってきています。NCNPでは、慢性疾患患者のうつ病の評価と治療に関する連携モデルを開発することより、身体疾患とうつ病等の治療の最適化を促進し、健康寿命の延伸を目指すナショナルプロジェクトを開始しました。がん、脳卒中、心臓病や糖尿病、成育医療と長寿医療を所管するすべての国立高度専門医療研究センターとの共同プロジェクトであり、その事務局を社会精神保健研究部が担当しています。(図1)

フォローアップシステム開発の経緯

非感染性疾患(世界保健機関は心血管疾患、糖尿病、がん、慢性閉塞性肺疾患を例示)に共通する危険因子(喫煙、運動不足、不健康な食事、過度の飲酒)への介入方法を洗練させることは、身体疾患の予後改善に不可欠な研究テーマです。うつ病等の精神疾患があると、これらの危険因子の数が増えたり、治療方針を守らなくなったりします。そこで、治療・服薬中断が想定される患者像をモデルとした慢性疾患患者のフォローアップシステムを、情報通信技術(Information and Communication Technology: ICT)を活用して開発しました。開発で最も苦心した課題は、個人情報保護の基準が高いわが国で広く活用されるために、どのようにICTを組み込むのが最適かというテーマでした。最終的に、個人情報は患者手帳や診療録等の従来の書面に残し、ICTでは匿名性の高いIDのみを用いて患者・家族と支援関係者との連絡ノート部分を拡張するというコンセプトで構築しました。

システム概要

開発したシステム(患者手帳に基づく「連絡ノート型」フォローアップ支援システム:仮称)は、台帳機能、情報共有機能、およびリマインダー機能のサブシステムから構成されています。「台帳機能システム」で担当者が登録患者を確認し、「情報共有システム」で登録された関係者のみ患者の状態を適時に発信・閲覧・共有ができ、「リマインダーシステム」で利用者・患者・家族の携帯電話やスマートフォンに連絡して本人の返答を集約できます。なお、服薬状況が確認できるシステムを現在追加構築中です。都道府県や市町村などの地方自治体や各保険者組織で活用いただき、住民の健康維持向上および重症化予防に活用されることを願っています。

情報共有システム

サブシステムのひとつである情報共有システムは、地域連携会議(複数の組織からの専門職で構成され事例検討などを行う会議)メンバーのうち、主治医から許され、本人が了解した登録メンバーしか見ることができない「連絡帳」です。携帯電話やスマートフォンからも、時間差がほとんどなく意見交換ができるのが特徴です。本人の治療に関係する保健医療福祉関係者で最近の情報を共有したいとき、往診などが必要な場合に連絡したいときなどに活用できます。

モデル地域との運用を調整・準備中

開発したシステムは、モデル地域で運用・調整を準備しています。それぞれの疾患では、地域連携クリティカルパスが患者手帳形式で作られています。バインダー形式にすることにより、現在本人が必要な要素のみを持ち歩けるようにし、この手帳をフォローアップシステムと連動させつつあります。モデル地域の運用を通じて、導入時点での疾患を基本とした複数の疾患モデル開発した後、全国で希望する地域に拡大する予定です。

Laboratory

研究部では、精神科医療における評価や質改善に関する「保健医療サービス研究」を行っています。(1)身体疾患と精神疾患との融合領域研究(今回紹介したナショナルプロジェクト)(2)管理研究(医療の質、医療安全)(3)政策研究(医療計画、診療報酬)  などを行っています。精神科入院医療の質に関する国際プロジェクトや全国の診療レセプト  分析などの研究成果は国際誌に掲載されつつあります。

患者手帳に基づく「連絡ノート型」フォローアップ支援システム(仮称)

【◯◯病】(疾患共通)

患者手帳(発行)

本人の了解の下に登録番号管理

No. 187-001-0001

連携会議 連携会議

適時の情報共有

情報提供と情報収集サイト(リマインダーシステム)

地域連携会議のサポートサイト(台帳機能システム)

治療支援サイト(情報共有システム)

・担当患者のフォローアップ・主治医等への報告・地域連携会議での事例検討

電話(面接)

担当者 報告

患者本人・家族の入力

【参加可能者】・連携会議メンバー・本人の了解

Copyright © 2012 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

】】

国立高度専門医療研究センター(6NC)

ItoH.,FrankR.G.,NakataniY.,FukudaY.,PsychiatricServices2013.伊藤弘人、杉浦伸一、野田広、樋口輝彦 社会保健旬報2013関連URL: http://mhcnp.jp

国立精神・神経医療研究センター

各地域の拠点病院モデル地域

国立がん研究センター(がん)

国立国際医療研究センター(糖尿病等)

国立成育医療研究センター(成育医療)

国立循環器病研究センター(循環器病)

国立長寿医療研究センター(長寿医療)

研修・臨床相談

研修・臨床相談

研修・臨床相談

研修・臨床相談

研修・臨床相談

【B. 実施施設の認定】B1. 研修修了者B2. 学会(同等の研修実施組織)B3. 拠点病院(先進病院)・地域連携モデル

研修・臨床相談

【A. メンタルケアモデル開発と研修】A1-A2)プログラム開発とNCNPでのモデル実施A2)各NCでの研修A3)各専門疾患の拠点病院での実施

NC:国立高度専門医療研究センター  NCNP:国立精神・神経医療研究センター

国立高度専門医療研究センター共同プロジェクト身体疾患患者へのメンタルケアモデル開発ナショナルプロジェクト

【C. 基盤整備】・臨床支援ネットワークシステム・多施設臨床研究支援

【※進捗管理】・NC所属精神科医等のネットワークの強化・モデル地区構築

図 1

伊藤弘人部長

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新たに開設された専門疾病センター:睡眠障害センター

新たに開設された専門疾病 センター:睡眠障害センター病院 睡眠障害センター

日本では、成人の約5人に1人が睡眠の問題に悩んでいることが明らかになっています。睡眠障害は、心身の不調や生活の質の低下などをもたらすとともに、子どもの健康な発育にも悪影響を及ぼします。また、睡眠障害による眠気や集中力低下は事故を引き起こし、日本に経済的な損失ももたらします。こうした点からも、睡眠障害の医療は非常に重要と考えられますが、総合的かつ専門的に検査・診断・治療できる医療機関は日本では非常に少ないのが現状です。一方で、脳科学分野としての睡眠科学や、社会学としての睡眠学などの基礎研究も重要です。睡眠障害センターのミッションは、脳科学、社会学と睡眠医歯薬学を統合した医療・研究体制を整えて、睡眠障害の予防・診断・治療を行うことです。

総合的な医療の提供

睡眠障害の原因は多岐にわたり、複数の原因が重なることもみられます。そのため、関係のある診療科が共同で診療する必要があります。当センターでは、様々な診療科や、検査部・看護部・臨床心理・薬剤部などの多部門が連携して診療にあたり、患者さん一人一人に対して、専門的で最適な医療を提供しています。

夜間の睡眠状態を調べる終夜睡眠ポリグラフ検査、日中の眠気を測定する検査を専用病室にて行い、適切な診断と治療方針を決定しています。また、アクチグラフという小型携帯型の行動計を装着することで、長期間にわたって睡眠覚醒リズムを測定しています。さらに、生物リズムの変調が疑われる場合には、より詳細な生物リズムの測定も可能です。このような専門的かつ詳細検査を行うことにより、睡眠障害を正確に診断し、適切な治療につなげています。

治療面では、時間生物学的治療法など先進的な治療も実施しています。

新たな治療法の開発に向けて

睡眠障害の新たな治療法の開発を目指して、精神保健研究所・神経研究所と共同研究を行っています。そのひとつに、不眠症に対する認知行動療法があります。この治療法は、不眠症を長引かせてし

まう生活習慣と身体反応に焦点をあてて、それらをカウンセリングなどで修正していくことによって、不眠症状を改善させる方法です。実際にこの治療法を実施することによって、不眠症状の改善と現在服用中の睡眠薬の減量が可能であることが明らかになってきています。

精神保健研究所・精神生理研究部では、睡眠覚醒や体内時計のメカニズム解明のための研究、睡眠不足や不眠症に陥った人々の脳機能の変化と原因究明研究を行っています。こうした基礎研究の結果から、睡眠障害の予防法の開発、新たな診断法の開発、予後判定、新たな治療法開発が期待されます。

スペシャリストの育成と情報発信

睡眠医療の向上のための人材育成も、睡眠障害センターのミッションの柱です。医師・看護師・検査技師・臨床心理士を対象に、オープンな形式でケースカンファレンスやレクチャーを実施しています。また、全国の医療関係者を対象に認知行動療法セミナーを開催し、不眠症に対する認知行動療法を実際の臨床で実施できる人材育成に努めています。

一般の人々に、睡眠や睡眠障害に関する正しい知識を知ってもらえるように、パンフレット・ホームページ・市民公開講座などで情報発信しています。また、睡眠医療を専門としない医師向けにも、講演などで最新の情報をお伝えしています。

今後の睡眠医療

現在、睡眠障害を複数の診療科によって総合的に診療できる医療機関は、非常に限られています。実際に睡眠障害を診察する機会が多いのは、地域のクリニック、総合病院、精神科専門病院などです。こうした医療機関とネットワークをつくって連携を密にすることが、睡眠医療の向上につながります。当睡眠障害センターが、この「地域睡眠医療」に貢献していけるよう、取り組んでいきます。mg

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Insomnia Severity Hypnotic Usage (Daily Dose)

不眠症に対する認知行動療法(CBT‒I)の実施により、不眠重症度の改善と睡眠薬の減量が認められた。

2Weeks 4Weeks

不眠症に対する認知行動療法セミナーの様子

睡眠障害オープンレクチャーの様子

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)には、現在7つの専門疾病センターがあります。

パーキンソン病・運動障害疾患センター

てんかんセンター 地域精神科モデル医療センター 睡眠障害センター 統合失調症早期診断治療センター

筋疾患センター 多発性硬化症センター

1:亀井医長(中央)と睡眠障害センタースタッフ   2:PSGモニター室   3:アクチグラフ(小型携帯型行動計)によるデータ。行動量を継時的に測定することで、睡眠覚醒リズムを判定。診断や治療効果の検証に用いる。青色が睡眠状態。

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パーキンソン病臨床研究サポートチーム:T

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設立

パーキンソン病臨床研究 サポートチーム: Team JParis設立病院

当院が専門とする疾患は治療が難しいものも多いですが、パーキンソン病は比較的治療研究が進んでいる分野です。しかし世界中で進行している研究から実際の使用可能な薬剤や治療法にするための治験や臨床研究には患者さんのご協力が不可欠です。当院神経内科では治験管理室と共同で、患者さんに治験や臨床研究について理解を深めていただきパーキンソン病の治験・臨床研究を進めるためのサポーターとなっていただく患者さんのグループ、パーキンソン病臨床研究サポートチーム(Japan Parkinson disease Investigation Support Team:愛称Team JParis〈チーム ジェイパリス〉)を2012年に構築し、2013年1月より参加募集を開始しました。

Team JParisでは

1. 治験・臨床研究について正しい情報を提供 2. 現在施行中の治験についての最新情報を提供 3. 臨床情報データベースを構築し、サポーターの

一人一人に適合する治験等を紹介。治験等に参加するかどうかをサポーターご自身が

決定できるように、正しい情報を迅速に提供します。サポーターには年2回のニューズレターとホーム

ページ(2013年秋公開予定)で情報を提供します。

Teamの広がり

Team JParisでは、まず当院受診中の患者さんを対象にサポーターを募集し、2013年秋をめどに通常は近隣の医療施設に通院しているが、治験・臨床研究には当院で参加可能な患者さんに対象を広げます。さらに、2014年度をめどに国内の主な施設と共同で、我が国全体のパーキンソン病の治験・臨床研究を推進するチームとなる予定です。

パーキンソン病患者さんの 包括的ケアを目指して

当院では病院全体の協力で、パーキンソン病患者さんの包括的ケアを目指して様々な取り組みをしています。2012年の事業として代表的な2点をあげます。

LSVT-BIG日本初講習会の実施パーキンソン病での効果が明らかになっている代表的な運動療

法であるLSVT-BIGは特定の資格を持った理学療法士(PT)および作業療法士(OT)しか施術することができず、これまでは海外に研修に行く必要があったため、2012年4月現在でこの資格をもつPT/OTは日本では当院の4人のみでした。この療法を広く我が国で行えるようにするために、2012年7月14、15日に当センターで日本初のLSVT-BIG講習会をアメリカから講師4人を招き、約80名の日本人PT、OTの参加で開催しました。当日は20人の患者さん、ご家族がボランティアで協力してくださいました。

「やさしいパーキンソン病の自己管理」患者さん、ご家族、及び医療関係者にできるだけわかりやすく

かつ正確にパーキンソン病を理解していただくために、パーキンソン病診療に日々かかわっている様々な当院スタッフ(神経内科、脳外科、精神科、リハビリテーション科、在宅支援室、看護部、薬剤部)が協力して書きました。2009年に発行し大変好評であったために、2012年5月に改訂版を発行しました。

パーキンソン病に対する運動療法

ニュースレター

あなたの希望を薬にかえる患者さんのグループ

❷ ❹

❶ ❷

1:アメリカから招聘した講師の先生方   2:最初は講義です。 3:実技指導の時間です。このように大きく体を動かします。   4:患者さんにもご協力いただき、試験に合格して資格をとることが出来ました。

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バイオバンク~次世代の医療のために~

バイオバンク ~次世代の医療のために~トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)

精神疾患や神経疾患には原因がまだ不明で、治療法が確立していないものがたくさんあります。新しい診断法や治療法の開発には、血液、尿など臨床検体を用いた研究が不可欠です。そこで、NCNPでは臨床検体と臨床情報(診断、症状など)を「バイオバンク」に集め、NCNP内はむろん、国内外の他の研究機関や製薬会社などとも協力して解析し、原因の究明や新しい診断・治療法の開発を目指そうとしております。

NCNPにおけるバイオバンク

NCNPでは、これまでの筋バンクの経験や、病院と連携した脳脊髄液の収集体制をベースに、2012年の終わりから試験的にバイオバンクの検体収集を開始し、2013年より本格稼働を開始しました。説明・同意取得、問診・症状評価などをTMCの心理士が担当し、集めた情報はデータベースに登録されると共に、電子カルテにも反映することで、医療(情報)の質の向上にも貢献することを目指しております。センター病院との密な連携により、参加者は順調に増えてまいりました(月約40人)(図1)。

システマティックな検体と情報の管理

収集した検体や情報を確実に管理するため、バイオリソース管理室内で専用のデータベース・システムを開発し、参加者の登録から、匿名化、検体の管理、そして研究用情報の払い出しまでを一元的に行っております。検体はバーコード付チューブに分注・保存することで作業が軽減し、安全性も高まりました。さらに、病院医療情報室と協力し、バイオバンクの調査結果を電子カルテに反映させたり、電子カルテの病名などの医療情報を安全にデータベースに受け入れたりする、情報連携も進んでおります(図2–4)。

他のナショナル・センターとの連携

この事業は、国立がん研究センター、国立循環器病研究センターなど、6つのナショナルセンターが連携して行っております(ナショナルセンター・バイオバンク・プロジェクト)。それぞれ専門をもつ国立高度専門医療研究センターが連携することで、主要な疾患をカバーし、高品質の診療情報を確保しようという目論見です。そして、検体の一覧と相談窓口を中央バンクに置くことで、ワンストップサイトをつくろうとしております(図5)。

図1:バイオバンクの研究概要

図2:バイオバンク・データベースの画面例

図3:2Dバーコード付保存チューブ 図4:バイオバンク調査結果の電子カルテ用出力

バイオバンクロゴ

ナショナルセンター・バイオバンク・ネットワーク次世代医療のための臨床基盤整備事業

中央バイオバンク・事務局(カタログDB公開+窓口機能)

産学官の研究者等からの利用申請

6NC共通プラットフォームによる連邦型ネットワークの構築病名登録

がん研究センター

(連携病院等)

連携機関とともに、ネットワークを順次拡張していく予定

循環器病研究センター 精神・神経医療研究センター 国際医療研究センター 成育医療研究センター 長寿医療研究センター

共通問診票 倫理審査 試料の収集・管理 諸手続き 左記の標準化と情報共有

(連携病院等) (連携病院等) (連携病院等) (連携病院等) (連携病院等)

NCの専門性を活かした疾患別ネットワーク構築を検討(カタログ情報や試料の保管等について連携)

がん関連バイオバンク

DB

循環器病疾患関連バイオバンク・DB

精神・神経・筋疾患関連バイオバンク

DB

感染症・代謝疾患・免疫異常等関連バイオバンク

DB

成育疾患関連バイオバンク

DB

老年病関連バイオバンク

DB

図5:ナショナルセンター・バイオバンクのネットワーク図

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試験として実施

研究所で生まれたシーズを 病院でFirst in human 試験として実施トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)、病院、神経研究所

当センターの研究所にはオリジナルのシーズ(医薬品候補物質)が数多くありますが、その一つが神経研究所免疫研究部において開発され、多発性硬化症再発予防薬として期待された化合物です。2011年から医師主導の早期探索的臨床試験によるFirst in human試験を実施するための準備が開始されました。First in human試験とは、その名の示す通り、実験動物を用いた非臨床試験を重ねてその効果と安全性に関する検証を十分行った上で、はじめてヒトを対象として実施される試験のことを指します。一方、病院では一般病棟のベッドを使用したFirst in human試験を実施するための体制整備の強化を目標に、実施病棟となった一般病棟では看護師長・副看護師長が中心となり、治験責任医師および分担医師との業務分担や不測の事態に十分対応できるよう救急体制を構築することで、安全で円滑な治験が出来る体制を整備しました。

本試験は2012年11月に開始され大きな有害事象もなく進んでいる一方で、筋ジストロフィーに対する新たなシーズのFirst in human試験の準備も並行して行われており、2013年度は2試験が同時に行われる予定です。

基礎研究の成果を臨床試験の 実施につなぐ専門スタッフ

TMCには薬事承認審査機関経験者および臨床研究支援アドバイザーといった専門家がおり、シーズの臨床への橋渡しを支援するためのプロジェクトマネージャーとして研究プロジェクト全体を管理・支援・調整します。医薬品医療機器総合機構(PMDA)の薬事戦略相談から試験実施計画書(プロトコル)の立案に関して、企業治験を数多く実施している治験管理室の臨床研究コーディネーター

(CRC)が連携して進めていきます。両者はさらに、センター内の治験審査委員会への申請および、PMDAへの治験計画届出の支援を行い、医師主導治験が開始されます。

❶ ❷

病院でのFirst in human試験の実施体制整備

本試験では、設備的にHCUに準じる病床がある一般科病棟が実施病棟となりました。そこでは、本試験の被験者への看護体制の強化を図るため、当該病棟の看護師5名に加えプロトコルを熟知したCRC看護師1名の計6名の専属チームを組みました。また、日中の被験者観察および快適な環境を整備するため併せてクラスター病棟(治験専門病棟)を利用することとしました。

院内の体制として、重篤な有害事象発生時には、緊急時対応マニュアルに定められた連絡体制の下、緊急時対応チーム(総合外科、総合内科、手術部の医師で構成)が主治医とともに対応しています。一方、三次救急など院内で対応が困難な事象については、速やかに病院間連携により適切な対応を行う体制を整えました。

今回の試験開始に伴い、他院への緊急搬送に備え、緊急時対応チームの医師を中心とした救急対応・搬送の訓練を実施しました。

治験・臨床研究推進のための今後の取組み

高度専門医療研究センター病院という当院の機能と規模から、引き続き病院全体が治験・臨床研究に対応できる体制を整えています。具体的にはセンター内の連携体制をより強固なものにしていくほか、入職時オリエンテーションでの医師・医療従事者への教育、全員参加が義務つけられている医療安全セミナーで、特にFirst in human試験についてとりあげる等、2014年までに病院スタッフ全員が治験・臨床研究に関わる体制を構築中です。治験のみならず、当センターが主体となり実施する臨床研究の推進をはかるため、TMCと病院による研究支援・実施体制の整備を行っていきます。

臨床研究(医師主導治験)支援機能フローチャート

研究者 トランスレーショナルメディカルセンター治験管理室

シーズ(有形・無形)

試験(治験)薬概要書

試験(治験)実施計画書

症例報告書・説明書

(治験計画届出)

試験(治験)薬の入手

IC取得

進捗管理

品質管理DM/モニタリング

安全性情報管理

統計解析

総括報告書作成

計画・立案

試験(治験)実施

研究相談窓口

安全性評価委員会治験管理室

倫理委員会・IRB審議

プロジェクトマネージャー指名(TMC機能調整会議)

プロジェクトマネージャーが管理・支援・調整

試験実施計画書等作成検討会

臨床研究支援室治験管理室

治験管理室CRC

データマネジメント室及びCRO

生物統計解析室

臨床研究支援室

(戦略(治験)相談)

一次救命二次救命処置

外科・内科的専門的治療

重篤な有害事象発生時の対応

NCNP内で対応できない診療科の専門治療を実施

NCNPの診療科を超えた、密な連携による治療を実施

consultation

response

FIH実務担当医師

搬送病院重篤な有害事象発生時の

初期対応者総合外科・総合内科・手術部

の医師らによる院内救急時対応チーム

1:プロジェクトマネージャーを中心とした医師主導治験の準備   2:専属チームによるFirstinhuman試験実施体制

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28 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 29National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

筋ジストロフィー臨床試験ネットワークを発足

筋ジストロフィー臨床試験 ネットワークを発足トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)

筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク(Muscular Dystrophy Clinical Trial Network: MDCTN、ホームページhttp://www.mdctn.jp/)は、2012年12月に設立した神経筋疾患を対象とした臨床試験ネットワークです。神経筋疾患のほとんどは希少疾病と呼ばれる患者さんの数が少ない疾患ですが、質の高い臨床試験を行うには、協力いただく患者さんをできるだけ多く、かつ正確に把握しておくことが重要です。しかし現実には神経筋疾患のような希少疾病では、どこにどれくらいの患者さんが存在するのかを把握しておくことは大きな困難を伴います。MDCTNの加盟施設は図に示されているように広く全国に存在しますので、神経筋疾患を持つ患者さんを網羅的に把握することが可能となっています。また様々な専門職が関与することによって質の高い(ICH-GCP準拠と表現されます)多施設での共同研究の実行や支援を行うほか、製薬企業から依頼される治験に関しても、治験の実現可能性調査への協力、治験を実施する施設の選定、実際の治験を支援する仕組みなどの機能も備えています。そのほか臨床試験を行うスタッフへの教育・研修機能、評価法の標準化などの活動を通して、神経筋疾患の医療の向上に寄与することを目標としたチームです。まだできたてほやほやのチームですが、できるだけ早く体制を整備したうえで、様々な臨床試験、臨床研究を展開し、成果をできるだけ早く患者さんやご家族に届けたいと考えています。

筋ジストロフィーとは?

筋ジストロフィーは骨格筋の壊死・再生を主な病態とする遺伝子変異に基づく疾患と定義されています。筋ジストロフィーにはデュシェンヌ型、ベッカー型、肢帯型、福山型など様々なタイプが存在しますが、それらの共通の特徴として、進行性、希少性(患者さんの数が少ない)、難治性(根本的な治療法が存在しない)といった特徴を持っており、そのような特徴から希少疾病の代表的な疾患とも言われることがあります。約50年にもわたる臨床研究に加えて最近では核酸医薬、分子標的薬と呼ばれる画期的な治療法の検証(治験)が行われています。このように筋ジストロフィーの医療は大きく変わろうとしています。

筋ジストロフィー臨床試験ネットワークのロゴマークの由来は?

このロゴマークは五本の矢印がメインに構成されています。五本の矢印は、医師・研究者、治験コーディネーターや理学療法士などの医療従事者、患者さん・ご家族、患者・家族会、製薬企業・規制当局など、立場の違う人たちが協働で共通の目標に向かって活動している状況をイメージしています。未来指向型のチームを構成し、新しい医療の開発を目指しています。

臨床試験ネットワークとは?

臨床試験ネットワークとは治験や臨床研究を効率よく進めていくために病院が連携し、チームを組んで、一体的に治験や臨床研究を行うことを目的とした組織です。厚生労働省、文部科学省合同で示されている、「臨床研究・治験活性化5か年計画2012」(2012年3月30日)と同アクションプラン(同年10月15日)では中長期的に目指すこととして、ネットワークを活用した症例集積性の向上が提示されています。我々が提案している臨床試験ネットワークは、この指針にもマッチしており、神経筋疾患のみならず、希少疾病全体の新規治療法の開発にも参考となる仕組みであると考えています。

❶NHO旭川医療センター❷NHO八雲病院❸NHO青森病院❹NHOあきた病院❺NHO西多賀病院❻NHO新潟病院❼NHO東埼玉病院❽国立精神・神経医療研究センター❾10東京女子医科大学11NHO下志津病院12北里大学13NHO箱根病院14信州大学

15NHO医王病院16名古屋市立大学病院17NHO鈴鹿病院18滋賀県立小児保健医療センター19NHO宇多野病院20大阪大学 NHO刀根山病院 神戸大学 鳥取大学 NHO徳島病院 NHO大牟田病院 原病院 NHO熊本再春荘病院 熊本大学

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筋ジストロフィー臨床試験ネットワークの症例集積性神経筋疾患のほとんどは希少疾病ですが、本ネットワーク加盟施設全体で、このように多くの患者さんを把握しています。医薬品開発のデザインを考える時のデータの提供、効率的な治験の遂行を行える体制を構築しています。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー29.4%

ベッカー型筋ジストロフィー9.2%

肢帯型筋ジストロフィー9.8%福山型先天性

筋ジストロフィー7.2%

先天性筋ジストロフィー2%

先天性ミオパチー3.7%

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー6.6%

筋強直性ジストロフィー22.5%

DMRV 1.7%

脊髄性筋萎縮症 5.1%

ミトコンドリア病 2.5%ボンペ病 0.3%

約5700名

筋ジストロフィー臨床試験ネットワークの加盟施設一覧(2013年3月現在)このように加盟施設は全国網羅的に存在しています。

正常な筋細胞

筋ジストロフィーの筋細胞

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30 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 31National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

統合的脳画像を用いた多施設共同研究拠点への飛躍

統合的脳画像を用いた多施設共同研究拠点への飛躍脳病態統合イメージングセンター(IBIC)

MRIやPET(Positron Emission Tomography)などを用いた脳画像は精神・神経疾患の病態解明や治療法の開発に必須となってきています。この目的のためには数多くの症例の画像を収集する必要がありますが、撮像機種間差や撮像法などの施設間差を最小限に留めなければ、信頼できるデータは得られません。脳病態統合イメージングセンター(Integrative Brain Imaging Center: IBIC)は、MRIやPETを用いた多施設にわたる画像共同研究ネットワークの中核として飛躍するために、ハードおよびソフト両面の整備を進めています。

ホットラボのGMP化推進

Good Manufacturing Practice(GMP)と は、 医 薬品や医療用具、食品などの安全性を含む品質保証の手段として、工場などの製造設備(ハード)およびその品質管理・製造管理(ソフト)について、事業者が遵守しなければならないことを明確にした基準のことです。このGMP基準がPET検査に用いる標識薬品のホットラボラトリー(ホットラボ)での製造基準に世界的に用いられ始めています。日本でも、GMPに準拠した施設で製造されたPET標識薬品を用いて治験薬の効能評価が始まっており、今後、ますます、臨床治験にPETが応用されていくと考えられています。

GMP準拠施設となるためには、ホットラボのクリーン度を上げるために施設改造を行い、標準作業手順書を作製し遵守するなどの高いハードルがありますが、IBICはNCNPのホットラボをGNP準拠化し、2014年からの運用開始を目指して進めています。

マイクロドーズ試験への準備

マイクロドーズ試験は、動物での薬理動態からヒトでの動態を予測することは困難のため、有害事象が起こらない微量のPET標識候補薬をヒトに投与して臨床治験候補薬を絞ることをいいます。今まで、日本の製薬メーカーは、海外でPETによるマイクロドーズ試験を行ってきました。IBICはGMP準拠のホットラボを整備することにより、国内でのマイクロドーズ試験の拠点になるべく準備を進めます。

図5:コンピュータによる海馬の体積自動測定アルツハイマー病、アルツハイマー病に移行した軽度認知障害、移行しない軽度認知障害、および健常者での海馬の1年間での萎縮率に差異がみられる。萎縮体積はアルツハイマー病でも0.3cc、健常者では0.1cc未満に過ぎない。

図3:歪み補正によるMRI補正目視でも、補正前は歪みが明瞭である。円柱が歪み、ヒト脳でも頭頂部と頚部でゆがんでいる。

図2:J-ADNIでのMRIコアで開発されたMRI補正パイプラインMRIの幾何学的歪みと信号値不均一補正をコンピュータで自動的に行う

図1:PET標識薬品による臨床治験薬の効能評価例)アミロイドPETによるアルツハイマー病根治治療薬の効能評価GMP準拠ホットラボ施設での製造が必要

図4:信号値不均一性補正によるMRI補正補正前の信号値のムラが、補正により改善されている。

J-ADNI、J-ADNI2への参画

本邦における認知症患者数は300万人を超えることが示され、その半数以上はアルツハイマー病によるものと目されていることから、アルツハイマー病に対する根本治療薬の開発は急務といえます。アルツハイマー病の根本治療薬の薬効評価基準の最適化を行うために、アルツハイマー病の病態を忠実に反映するバイオマーカーが切に求められるようになった背景のもと、2008年より健常高齢者、軽度認知障害及びアルツハイマー病の縦断的バイオマーカー研究として世界的に標準化された方法で神経画像を主としたJapanese Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(J-ADNI)研究が全国38施設で実施されています。また、J-ADNIを引き継ぐJ-ADNI2では、発症前期アルツハイマー病や早期および後期の軽度認知症害患者の縦断的観察が全国41施設で開始されようとしています。IBICは、これらの研究において、MRI研究の中心的役割を果たしています。

多施設共同研究におけるMRI画像解析拠点

J-ADNIでは、縦断的観察において高精度の体積測定法をMRIにより確立することを目指してきました。これは、根本治療薬が海馬などの特定の領域の萎縮を抑えることができるかいなかを客観的に評価するためです。この測定精度は0.1ccレベルが要求されます。ただし、MRIによる体積測定では、MRI特有の幾何学的歪みという問題が大きく立ちはだかります。IBICでは、この歪みを模型を用いて補正する方法を世界に先駆けて確立しました。また、信号値不均一性の補正も自動的に行うことができます。これらの補正により、アルツハイマー病、アルツハイマー病に移行した軽度認知障害、移行しない軽度認知障害、および健常者での海馬の萎縮率を測定し、これらの群で明らかな差異があることを見いだしました。さらにJ-ADNI2では、構造的MRIに加え、安静時の機能的MRIを担当することになり標準的撮像法を設定しました。2013年度からの本格的な研究に向けて、解析体制を整えています。

PET標識薬品による臨床治験薬の薬効評価

PET標識薬品による薬効評価

アミロイドPETによる薬効評価

第Ⅰ~Ⅲ相 臨床治験 承認申請

GMP準拠施設ヒト用PET装置

投与前 投与後

サイクロトロン・ホットラボ(標準化合物製造)

アルツハイマー病 軽度認知障害(アルツハイマー病移行)

軽度認知障害(非移行)

健常者

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認知行動療法の研修と普及

認知行動療法の研修と普及認知行動療法センター(CBT)

認知行動療法センターでは、認知行動療法を多くの方に活用していただくことを目的として様々な活動に取り組んでいます。これまでに、認知行動療法について一般の市民の方々に広く知っていただく市民講座や、専門家向けの研修を実施してきました。他にも、精神保健福祉分野に限らず、法律や教育などの幅広い分野でも活用していただけるような活動支援や、しっかりとした科学的な裏付けを確認する研究も実施しております。また、海外の先端的な専門機関との連携や情報交換を進めています。

CBTセンターの市民講座

CBTには、考え方や行動を少しずつ変えていくためのコツや方法があります。そのエッセンスをお伝えするのが市民講座です。やる気を出して生活を楽しむコツ、人と上手に接するコツ、うまく発想転換をするコツなど、生活に役立つ方法をCBTの観点からお伝えしています。2012年度は全部で18回、延べ401名の方が参加されました。

認知行動療法とはなんでしょうか?

気分が落ち込んだり、ものごとがうまくいかないとき、「自分なんてだめだなあ…」と考えたり、「もうやめておこう」と行動が起こせなくなったりすることはありませんか?そうした考え(認知)や行動が悪循環すると、ますますつらくなって、どんどん気分が落ち込んでしまうことがあります(右図)。

認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:以下CBT)は、そうした考えや行動に目を向けます。そして、それまでとは少しだけ違う考え方や行動をちょっとずつ試してみます。すると、今までとは違う考えかたや、やってみようとも思わなかった行動が、案外自分の役に立つことがあることに気づいたりします。

CBTでは、そのような考えや行動の実験を通して、自分に合った生活の仕方を見つけていきます。一般的には、専門のセラピストと一緒に50分くらい取り組んで、それを毎週16回続けます。CBTはうつや不安などの様々な気分や感情の苦しみを和らげ、自分自身をよく知り、自分なりの折り合いを見つけて生活していく役に立ちます。

専門家への研修講座

CBTセンターでは、精神保健福祉分野で活躍される専門家の方々に向けて、CBTの基本的な実施法から、より高度な最新治療まで、幅広く研修を実施しております。例えば、うつ病や不安障害、統合失調症に対する認知行動療法や、基本的なコミュニケーションスキル研修などがあります。2012年度には32コースの研修が開かれ、延べ1535名が参加しました。当センターの研修情報は、以下のウェブサイトをご参照ください。http://www.ncnp.go.jp/cbt/training.html

考え・気分・行動は影響し合います

悪循環のスパイラル

考えうまくいってない点、悪い点に注目した考え

気分心配、落ち込み、不安、怒り等

行動困難な状況を避ける引きこもる等

❶ ❷

ホームページ上の研修情報 研修テキスト

1:センター長 大野裕 2:2013年9月にボストン大学のバーロウ先生を招聘して研修等を行いました。

宮城県女川町の被災地支援も行っております。研修に参加された方が作成されたCBT理解のための紙芝居です。

市民講座の様子

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Operations and Management 2012–2013

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NCNPの活動 2012–2013社会と NCNP をつなぐ広報活動、NCNP の資源を生かした社会貢献や人材育成への取り組みをご紹介します。

センター病院

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NCNPの活動2012–2013

1 広報活動 NCNPの医療と研究活動を広く知っていただきご理解いただくため、情報発信を強化しています。

NCNPは2012年に独立行政法人化後3年目を迎えました。脳とこころの医療と研究に関するNCNPの活動や成果を、国民・患者さん・研究開発関係者等の皆様にわかりやすく、的確にかつタイムリーに伝え、さらに皆様の理解や意見をいただき研究・医療活動等に反映させていくことが大変重要と考えています。NCNPでは、企画戦略室に広報グループを発足し、NCNPの広報に関する活動を総合的に取り扱う体制も確保し、情報発信の強化に努めています。

市民公開講座 http://www.ncnp.go.jp/general/symposium.html

2012年9月15日(土)、「脳と心の医療と研究最前線」と題した市民公開シンポジウムを開催し、350名を超える国民に参加頂きました。私たちの取り組んでいる新しい医療や研究の現状、また、今後何を目指していくのか、その方向性について、現在の第一線にいる研究者や医師などの職員から、分かりやすくお伝えし、ご理解いただけるよう対話型イベントを企画・実施致しました。また、当日の様子は、10月20日(土)読売新聞朝刊に採録記事広告として掲載されました。また、他にも多くの市民公開講座を開催しております。

プレスリリース http://www.ncnp.go.jp/press/press_release.html

新聞などのメディアを通し、NCNPの活動を知っていただくために、最新の医療や研究に関する活動成果を中心にプレスリリースを行い、イベントのお知らせなども配信しています。2012年度は13本の配信を行いました。

YouTube NCNP Channel (動画配信サイト) http://www.youtube.com/user/NCNPchannel

動画配信サイト「YouTube」にNCNP公式チャンネルを開設しました。NCNPの病院紹介映像や、市民公開講座の記録など、さまざまな動画を掲載しています。

広報出版物 http://www.ncnp.go.jp/general/magazine.html

NCNPでは以下の広報出版物を制作し、web公開も行っています。

NCNPパンフレット (日本語版、英語版)

 国民のみなさまにNCNPという組織、NCNPのミッションとその活動を知って頂くために作成しています。 病院や研究所他各施設の概要、沿革なども掲載しています。

NCNP病院「診療のご案内」 患者さんやそのご家族、あるいは医療関係者の方々などにNCNP病院で行われている診療について紹介をしています。

NCNP病院ニュース (年3回発行)

 患者さんやそのご家族、あるいは医療関係者の方々などに、NCNP病院の活動を紹介しています。

NCNP病院看護部ニュースレター(月1回発行) 看護師、あるいはこれから看護師をめざす方々にNCNP病院看護部の活動を紹介しています。

NCNP病院医療連携ニュース (年数回の発行)

 連携医療機関など医療関係者の方々にNCNP病院の活動を紹介しています。

『NCNP精研だより』 (年3回発行)

 研究者や医療関係者の方々などにNCNP精神保健研究所の活動を紹介しています。

『TMC NEWS』 (年4回発行)

 研究者や医療関係者の方々等にNCNPトランスレーショナル・メディカルセンターの活動を紹介しています。

Twitter@NCNP PRTwitterの 速 報 性

を活かして、情報発信強化の為にNCNP公式アカウントを開設しました。

シンポジウムの告知方法や進行方法も分かりやすくしました。

NCNP公式アカウント@NCNP_PR

ベルサール六本木(東京都港区)で開催されたNCNP市民公開シンポジウム「脳と心の医療と研究最前線」の詳細情報をWeb掲載しています。

2012年9月14日(金)東京ステーションコンファレンスで開催した記者会見の様子「国立精神・神経医療研究センターの新しい取り組み」

NCNPでは報道掲載数も大幅に増加しています。上図は、2013年2月1日(金)「筋ジストロフィー臨床試験ネットワーク発足式」の様子です。NHKニュース7等で報道されました。

パーキンソン病と診断され生きる希望を失いかけてい た 読 者 が、2012年11月25日に神奈川新聞 朝刊(共同通信配信)に掲載された記事(左図)を見て、2月にNCNPへのリハビリ入院を経た後、職場復帰を果たしました。

読売新聞の採録記事でも分かりやすいものを掲載いたしました。2012年10月20日(土)読売新聞 朝刊掲載

NCNP病院コンサート新病棟開設以来、2階まで吹き抜ける病院ホワイエで、患者さん

やご家族に毎月お楽しみいただいている病院コンサートです。生演奏は国立音楽大学やプロの音楽家などの地域ボランティア

の方々によるものです。2013年9月4日には、NHK交響楽団にもご協力頂きました。

300名を超える患者さんやご家族が聴き入ったNHK交響楽団メンバーによる弦楽四重奏YouTube

動画配信中!

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NCNPの活動2012–2013

2 社会貢献活動

2012年3月に「災害時こころの情報支援センター」を設置し、災害時に適切な情報を提供し、復旧、援助、医療にあたられている方々が被災者のお気持ちを十分にくみ取って活動できるような基盤づくりの推進も行っています。

福島県知事(県立医科大学付属病院) からの派遣要請による診療支援

2011年4月11日から7月1日まで、福島県いわき市を中心に、福島県立医科大学附属病院のこころのケアチームに参加する形で、医師、看護師、精神保健福祉士、心理療法士、栄養士など11グループが交替で、避難所巡回、講演、健康相談、講話、乳児検診などの支援を行いました。

派遣人数は、医師25名、看護師16名、精神保健福祉士1名、心理療法士1名、栄養士1名、事務1名計45名でした。

独立行政法人国立病院機構花巻病院長 からの派遣要請による診療支援

2011年5月22日から5月29日まで、NCNP病院精神科医師が国立病院機構花巻病院の心のケアチーム

(医師2名、看護師1名、心理士1名、精神保健福祉士1名)に参加し、岩手県宮古市北部で、地元の保健師が個々の被災者対応や支援者対応に加えて、広域の被災支援調整業務に追われる中、保健師と協力して、避難所巡回、市役所、介護施設職員などの支援者面接、保健師の遺族訪問に同行し、被災者の精神的な問題全般への対応と、支援者や遺族への精神的なケアに努めました。

岩手県知事からの派遣要請による 医療福祉相談支援

2011年5月23日から5月27日、5月30日から6月3日まで、岩手県精神保健福祉センターにおいて、職員が沿岸部(大船渡市、陸前高田市、釜石市、大槌町、宮古市、山田町)の広域被災支援業務に追われる中、NCNPから派遣された精神保健福祉士2名が交替で、ひきこもりや自殺予防のための「心の相談電話」、及び地震によるストレス健康相談窓口として、被災者からの「心のケアホットライン」の電話対応を行いました。

福島県(厚生労働省経由)からの 派遣要請による診療支援

福島県相双地域の精神科医療を担う多くの医療機関が多大な被害を受けたこと、また、当該地域の精神科医師不足のことから、南相馬市の雲雀ヶ丘病院より福島県、厚生労働省を通して精神科医師の派遣要請があり、2012年2月13日から2月20日、2月23日から2月28日、3月15日から3月28日まで交替で医師を派遣し、病棟業務、外来業務、日当直業務及び地域の精神保健活動を行いました。

派遣人数は、医師6名でした。

避難所巡回や個別訪問へ向かう、第一グループのメンバー

いわき市総合保健福祉センターに到着した第二グループメンバー

岩手県精神保健福祉センターにて(震災後3ケ月の混乱期支えたメンバーと共に)

被災地を視察。その後、避難所巡回、個別訪問へ向かいました。

福島県立医大こころのケアチーム。(地元の保健師や医師、福島県立医大精神科、NCNPメンバー)朝夕、ミーティングを行いました。

2013年3月11日に東日本大震災における診療支援・医療福祉相談支援活動等に対して、厚生労働大臣より感謝状を受領いたしました。

被災者の支援活動報告

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NCNPの活動2012–2013

人材育成3

私たちTMC(トランスレーショナル・メディカルセンター)は、日常診療で抱く「自分の判断は正しかったのだろうか」「あの病態に影響を与えている因子は何だろうか」などの臨床疑問を臨床研究に転換し、実施するために必要な臨床疫学、生物統計学そして研究倫理などを学ぶ場として、Clinical Research Track(CRT)を運営しています。具体的には、臨床研究デザインに関するワークショップ、EBMや研究倫理に関する様々なセミナー開催に加えて、次世代リーダー育成を目的とした若手研究グループ、そしてプレゼンテーションスキルアップを目指した研究発表会を運営しています。各論のみならず臨床疫学と研究倫理も理解した医療者が、質の高い臨床研究を数多く発信できるようになることを願っています。

全国の医療者に開かれた 研究デザインワークショップ

所属や専門領域に関係なく、医療や公衆衛生の現場で活躍する医療者を対象に、臨床研究を学ぶきっかけの場を提供する双方向性のワークショップを年に2回開催しています。入門編では臨床疑問から PECO(研究質問の構造化)の作成、実践編では研究プロトコル概要作成を目標に、小グループによる演習を行っています。入門編は新入医療者、実践編は全国からの受講者が多く参加しています。2012年度までの講義は収録し、CRT-webで公開しました。

若手研究グループと研究発表会将来の臨床研究を担う若手医療者・研究者を育成

するため、研究計画から学会・論文発表に至るまで実践的な指導を行うプログラムを通年で行っています(2012年度は11名)。プログラム参加者は、若手育成カンファレンスにおいて、その成果を発表します

(2012年度は8回)。

臨床研究倫理講座の開催当センターでは、ヒトを対象とした臨床研究を行

う研究者全員に、研究に先立ってTMC主催の倫理講座を受講することを義務付けられていると同時に、倫理委員会による研修受講記録制度が定められています。倫理講座は、新規対象と更新対象の二種類が準備されています。個々人の受講情報は、TMC内の専用管理システムにより記録され、倫理申請の際に倫理委員会事務局が受講番号及び5年間の有効期限にあるか否かを照会しています。

研究マインドを持つ医療者の育成と臨床疫学・研究倫理研修

2013年8月に、第三回臨床研究入門講座ワークショップを行いました(参加者と講師)

倫理講座

受講者数の推移

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2010年度 2011年度 2012年度

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二年間の受講者数推移

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2011年度入門 2011年度実践 2012年度入門 2012年度実践

一般  NCNP

若手研究グループミーティングの様子

若手育成カンファレンスの様子

ワークショップの様子

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42 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 43National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

監事

監査室長 ●

運営会議

● 理事会● 企画戦略室長● コンプライアンス室長

病院長(糸山 泰人)

センター長(武田 伸一)

研究所長(髙坂 新一) 研究所長(福田 祐典)

センター長(松田 博史)

センター長(大野 裕)

病院 神経研究所 事務部門精神保健研究所 認知行動療法センタートランスレーショナル・メディカルセンター

脳病態統合イメージングセンター

病院 神経研究所 精神保健研究所

トランスレーショナル・メディカルセンター

脳病態統合イメージングセンター

認知行動療法センター

事務部門

● 第一精神診療部● 第二精神診療部● 神経内科診療部● 小児神経診療部● 脳神経外科診療部● 総合内科部● 総合外科部● 外来部● 手術・中央材料部● 放射線診療部● 臨床検査部● リハビリテーション部● 医療連携福祉部● 臨床研究推進部● 薬剤部● 看護部

● 疫病研究第一部● 疫病研究第二部● 疫病研究第三部● 疫病研究第四部● 疫病研究第五部● 疫病研究第六部● 疫病研究第七部● 病態生化学研究部● 微細構造研究部● 代謝研究部● 免疫研究部● 神経薬理研究部● 遺伝子疾患治療研究部● モデル動物開発研究部 ● 実験動物管理室 ● 中型実験動物管理室 ● 霊長類管理室 ● ラジオアイソトープ管理室

● 自殺予防総合対策センター● 災害時こころの情報支援センター● 精神保健計画研究部● 薬物依存研究部● 心身医学研究部● 児童・思春期精神保健研究部● 成人精神保健研究部● 精神薬理研究部● 社会精神保健研究部● 精神生理研究部● 知的障害研究部● 社会復帰研究部● 司法精神医学研究部

● 情報管理・解析部● 臨床研究支援部● 臨床開発部

● 先進脳画像研究部

● 臨床脳画像研究部

● 認知行動療法診療部● 研究開発部● 研修指導部

● 総務課● 人事課● 研究所事務室

● 企画経営課

● 企画医療研究課

● 財務経理課

● 医事室

● 労務管理室

● 情報管理室

● 図書館

● 総務部

● 企画経営部

● 財務経理部

理事長(樋口 輝彦)

理事長 樋口 輝彦理 事 髙坂 新一 糸山 泰人理事(非常勤) 加藤 一郎 山脇 成人監事(非常勤) 長崎 武彦 林 哲治郎

トランスレーショナル・メディカルセンター Translational Medical Center (TMC)

トランスレーショナル・メディカルセンターは、病院と研究所との橋渡しを担います。私たちの役割は、最先端の研究成果を臨床応用に結び付けることと同時に、臨床疑問を基礎研究や臨床研究として展開していくことです。そして、臨床研究に関わる人材育成にも積極的に取り組んでいます。

病院 National Center Hospital of Neurology and Psychiatry

センター病院は、脳および神経・筋肉の病気の原因を解明し、診断・治療を発展させるため、日本の研究と医療をリードする役割を持った病院です。これらの脳や神経・筋の疾患の中には、病気の原因が分からず治療法も乏しい難病も数多く存在しています。また、これらの病気に罹ったために仕事や日常生活が妨げられて「生活の質(QOL)」が低下して困っている方も大勢います。私たちは、これらの心や精神の病気、神経の病気、運動が妨げられる筋肉の病気、発達障害をもつ患者様に対して、人権を尊重しながら誠意をもって、高い医療技術を提供していきます。

神経研究所 National Institute of Neuroscience

神経研究所は、高度専門医療センターの研究機関として、原因や治療法がわからないさまざまな精神・神経・筋疾患・発達障害の病気を対象として、それらの診断・治療・予防法の開発を目指した生物学的研究をおこなっています。分子細胞生物学的アプローチを中心に、生理学や脳イメージングも積極的に取り入れ、特に橋渡し研究や臨床研究に繋がるシーズを生み出す研究に重点を置いています。

精神保健研究所 National Institute of Mental Health

精神保健研究所では、社会で人々が幸福に暮らせるように、「脳とこころの問題」を解決するための研究を、センター病院、全国の医療機関、行政機関と連携し、臨床、施策に直結したかたちで行っています。また、その成果や専門知識を広く社会に還元するよう、専門的研修や一般向けの講演を行う等、年間を通じて、社会と密接に関わる活動も精力的に行っています。

脳病態統合イメージングセンター Integrative Brain Imaging Center (IBIC)

脳病態統合イメージングセンターは、NCNP の二つの研究所並びに病院と密に連携し、精神・神経・筋疾患、発達障害に対する統合的イメージング研究を推進しています。また、イメージングをもちいた多施設共同研究の中核施設として、わが国の臨床画像研究を牽引します。

認知行動療法センター Center for Cognitive Behavior Therapy and Research

認知行動療法センター(CBTセンター)は、日本初の「認知行動療法(CBT)」を専門とする研修・研究センターです。NCNP内の本部とサテライトオフィス(高田馬場)で活動を行っています。私たちは、国内最先端の認知行動療法の研究と研修を通じて、日本の精神医療技術の向上と、よりよい精神医療サービスを患者様に提供できる社会の実現を目指しています。

組織図 各施設の役割2013年10月1日現在

Page 24: NCNP ANNUAL REPORTNCNPの年報2012–2013が完成しましたのでお届けします。これまでは、センター内にある施設ごとに年報を作製して参りました。これら施設ごとの年報は、それぞれの施設の年間の活動を記録し、関係

44 National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP) 45National Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

〒187-8551 東京都小平市小川東町 4-1-1〒187-8502[神経研究所]〒187-8553[精神保健研究所]TEL: 042-341-2711[代表]http://www.ncnp.go.jp/

◆西武新宿線拝島行または西武遊園地行にて「萩山駅」(南口)下車、徒歩 7 分◆JR 中央線国分寺駅乗換え、西武多摩湖線「萩山駅」下車、徒歩 7 分◆JR 武蔵野線「新小平駅」下車、徒歩 10 分

交通アクセス

独立行政法人 国立精神・神経医療研究センターNational Center of Neurology and Psychiatry (NCNP)

沿 革

病院 傷痍軍人武蔵療養所として設立厚生省に移管、国立武蔵療養所として発足研究センター(国立武蔵療養所・神経センター)を併設国立精神・神経センター設置により、同武蔵病院に改称

国立精神衛生研究所として設立精神薄弱部を新設社会復帰部を新設老人精神衛生部を新設国立精神・神経センター設置により、同精神保健研究所に改称。精神保健計画部、薬物依存研究部を新設

昭和 15 年 12 月昭和 20 年 12 月昭和 53 年 1 月昭和 61 年 10 月

昭和 27 年 1月昭和 35 年 10 月昭和 40 年 7月昭和 48 年 7月昭和 61 年 10 月

神経研究所

精神保健研究所

国立武蔵療養所・神経センターとして設立国立精神・神経センター設置により、同神経研究所に改称

昭和 53 年 1月昭和 61 年 10 月

センター 国立武蔵療養所、同神経センター、国立精神衛生研究所を統合し、国立精神・神経センターを設置国立国府台病院が国立精神・神経センターに加入神経研究所に遺伝子工学研究部を新設。精神保健研究所に心身医学研究部を新設精神保健研究所の精神薄弱部を知的障害部に名称変更神経研究所に遺伝子疾患治療研究部を新設精神保健研究所に司法精神医学研究部を新設精神保健研究所が小平地区へ移転全国で初の医療観察法病棟(8病棟)を新設精神保健研究所に自殺予防総合対策センター開設国府台病院は国立国際医療センターへ組織移管。武蔵病院は国立精神・神経センター病院に名称変更トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)発足独立行政法人国立精神・神経医療研究センター設立。センターとして2つ目の医療観察法病棟(9病棟)を新設センター新病院竣工脳病態統合イメージングセンター発足。認知行動療法センター発足

昭和 61 年 10 月昭和 62 年 4 月昭和 62 年 10 月平成 11 年 4 月平成 12 年 4 月平成 15 年 10 月平成 17 年 3 月平成 17 年 7 月 平成 18 年 10 月平成 20 年 4 月平成 20 年 10 月平成 22 年 4 月平成 22 年 9 月平成 23 年 4 月

中央自動車道

東名高速道路

練馬IC

調布IC 高井戸IC国立府中IC

東京IC

所沢IC

大泉JCT

新青梅街道

府中街道

川口JCT

大橋JCT

関越自動車道

東北

自動車道

常磐自動車道

首都高速

美女木JCT東京

外環道路

京葉道路

東関東道

独立行政法人国立精神・神経医療研究センターNCNP

京成特急スカイライナー/アクセス特急

秋葉原 南船橋

八王子 国分寺

萩山

新小平

小平

三鷹西国分寺 成田空港

上野

日暮里

南浦和武蔵浦和JR武蔵野線

JR埼京線

JR京浜

東北線

京成本線/成田スカイアクセス線西武新宿線

拝島線多摩湖線

多摩湖線

新宿線

京急空港線

京急本線

東京モノレール

JR中央本線

JR総武本線JR総武本線

赤羽

羽田空港第 1ビル

羽田空港第 2ビル

羽田空港東京湾

東京

浜松町品川

蒲田天空橋

新宿

高田馬場池袋

JR特急成田エクスプレス

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

JR山手線

〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1 代表: 042-341-2711

平成 22 年 4月 1日

常勤役員3名、 常勤職員 704 名(平成 25 年 4 月 1 日現在)

許可病床数 474 床稼働病床数 466 床

198,001m2

設 立

従 業 員 数

運営病床数

敷地総面積

2012年度の財務状況NCNPにおいては、研究所と病院が一体となり、精神疾患、神経疾患、筋疾患及び発達障害の克服を目指した研究開発を行い、その成果をもとに、高度先駆的医療を提供するとともに、全国への普及を図るため、医業収入、研究収入等の業務収益や、国からの運営費交付金、補助金等収益などにより業務を行っております。

 これまで御紹介してきた研究活動は、運営費交付金に含まれる「精神・神経疾患研究開発費」や、文部科学省科学研究費補助金、厚生労働省科学研究費補助金、独立行政法人科学技術振興機構(JST)及び独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの研究開発推進事業等の競争的研究資金で行われております。(この表では業務収益に含まれます)

貸借対照表 (単位:百万円)資産の部 金額 負債の部 金額

資産 43,467 負債 7,572 流動資産 3,844  流動負債 2,467 固定資産 39,622  固定負債 5,105

純資産の部 金額純資産 35,894

資産合計 43,467 負債純資産合計 43,467

損益計算書 (単位:百万円)科目 金額 科目 金額

経常費用 14,355 経常収益 14,061 人件費 7,326  業務収益 8,620 材料費 1,635  運営費交付金収益 4,619 委託費 1,869  補助金等収益 95 減価償却費 1,430  寄付金収益 64 支払利息 41  資産見返負債戻入 442 その他経費 2,055  施設費収益 128

 その他収益 91臨時損失 27 臨時利益 3

当期純損益 △ 318

業務収益61.3%

運営費交付金収益32.9%

補助金等収益0.7%

寄附金収益 0.5%

資産見返負債戻入 3.1% 施設費収益 0.9%

その他収益 0.6%

NCNP の収益の内訳(2012 年度実績)

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NCNPANNUALREPORT2012–2013

NCNP 最新動向

2013年11月発行

NC

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