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© JMA Research Institute Inc. Vol.19 2018.8 日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク(MDB)では中国やASEAN各国を中心としたア ジアの現地事情について、現地語を活用した調査で情報を入手し、日本企業の皆様の海外ビジネス活動を お手伝いしています。 アジア現地通信では、現地取材で入手したアジア各地のトピックスをお届けいたします。 CONTENT 配車アプリ市場 ローカルスタートアップが急伸(ベトナム) ハノイやホーチミンなどの首都圏でも鉄道が未整備であるベトナムではバスが唯一の交通機関となってい る。自動車の普及率がまだ低い同国では、街中のタクシーも生活者にとっては重要な移動手段である。そ んな中UberやGrabなどの配車アプリもタクシー市場でシェアを伸ばしている。交通外資系配車アプリが シェアを伸ばす中、2018年6月にAber、FastGoの2つの地場配車アプリが登場した。 廃プラスチック流通フローの可視化と高品質プラスチックへの再生を実現(インド) インドでは、ごみを排出する際に分別はされておらず、リサイクルまでの一連のフローも管理されてい ない。そこでインドのスタートアップBanyan Nationは、ごみの回収からリサイクルまでのフローをデー タ収集・可視化するプラットフォームを構築した。これにより、廃プラスチックをバージンプラスチック に近い品質に戻すリサイクル技術をもつ同社が、インドの廃プラスチックを効率的にリサイクルできるよ うになり、注目されている。 MDBアジア現地情報サービスについて MDBアジア現地情報サービスでは現地メディアの調査だけでなく、内容に応じて政府機関・業界団体・ 民間企業への問合せや、現地店舗への視察等を行っております。これによりウェブだけでは明らかになら ない現地の実態についてもアプローチをかけることが可能です。 情報収集にお困りの方は、お気軽に以下までお問い合わせをお願い致します。 (株)日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク 東京 〒100-0004東京都千代田区 大手町2-2-1 新大手町ビル2階 担当:若林 TEL.03-6202-1428 [email protected] 大阪 〒541-0042大阪市中央区今橋3-1-7 日本生命今橋ビル7階 担当:鈴木 TEL.06-6233-2429 [email protected] お問い合わせ専用サイト https://mdb.jmar.co.jp/member/SearchOrder

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Vol.19 2018.8

日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク(MDB)では中国やASEAN各国を中心としたア

ジアの現地事情について、現地語を活用した調査で情報を入手し、日本企業の皆様の海外ビジネス活動を

お手伝いしています。

アジア現地通信では、現地取材で入手したアジア各地のトピックスをお届けいたします。

CONTENT

配車アプリ市場 ローカルスタートアップが急伸(ベトナム)

ハノイやホーチミンなどの首都圏でも鉄道が未整備であるベトナムではバスが唯一の交通機関となってい

る。自動車の普及率がまだ低い同国では、街中のタクシーも生活者にとっては重要な移動手段である。そ

んな中UberやGrabなどの配車アプリもタクシー市場でシェアを伸ばしている。交通外資系配車アプリが

シェアを伸ばす中、2018年6月にAber、FastGoの2つの地場配車アプリが登場した。

廃プラスチック流通フローの可視化と高品質プラスチックへの再生を実現(インド)

インドでは、ごみを排出する際に分別はされておらず、リサイクルまでの一連のフローも管理されてい

ない。そこでインドのスタートアップBanyan Nationは、ごみの回収からリサイクルまでのフローをデー

タ収集・可視化するプラットフォームを構築した。これにより、廃プラスチックをバージンプラスチック

に近い品質に戻すリサイクル技術をもつ同社が、インドの廃プラスチックを効率的にリサイクルできるよ

うになり、注目されている。

MDBアジア現地情報サービスについて

MDBアジア現地情報サービスでは現地メディアの調査だけでなく、内容に応じて政府機関・業界団体・

民間企業への問合せや、現地店舗への視察等を行っております。これによりウェブだけでは明らかになら

ない現地の実態についてもアプローチをかけることが可能です。

情報収集にお困りの方は、お気軽に以下までお問い合わせをお願い致します。

(株)日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク

東京 〒100-0004東京都千代田区 大手町2-2-1 新大手町ビル2階

担当:若林 TEL.03-6202-1428 [email protected]

大阪 〒541-0042大阪市中央区今橋3-1-7 日本生命今橋ビル7階

担当:鈴木 TEL.06-6233-2429 [email protected]

お問い合わせ専用サイト https://mdb.jmar.co.jp/member/SearchOrder

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配車アプリ市場 ローカルスタートアップが急伸(ベトナム)

ベトナムはハノイ、ホーチミンでさえ鉄道が未だ整備されておらず、唯一の公共交通機関はバスである。バイクは非常に普及しているが、自動車の普及率がまだ低いベトナムでは、バスだけでは人々の移動を支えるには不十分で、街中のタクシーも生活者にとっては重要な移動手段である。ベトナムのタクシーは初乗りが50円程度だが、1人当たりGDPが50万円超のホーチミンの生活者にとっても安くはない金額である。

そんな中、配車アプリであるUber(アメリカ)、Grab(シンガポール)が2014年にベトナムに登場した。価格はサービスにより若干の差はあるものの、従来のタクシーより2割以上安い。更にスマートフォンの普及率が約8割ということもあり、いつでも気軽に配車依頼ができる利便性から、人気を集めている。配車アプリは2016年頃からタクシー市場におけるシェアを大きく伸ばし、多くの従来型タクシー会社が倒産の危機に追い込まれている。2018年3月にタクシー会社ComfortDelgro Savicoが一時休業と発表、南部の最大手タクシー会社・VINASUNは、2018年第1四半期の売上、利益が前年同期比20%に激減、北部の最大手MAI LINH社は2017年度のタクシー事業の赤字が約540憶VNDとなり従業員3,000人以上を削減したと公表した。2018年3月末に、Uberが東南アジア事業をGrabに売却したことで、Grabがベトナムにおける配車アプリ市場をほぼ独占する形になる。

Source:

Ứng dụng gọi xe ngoại dần thâu tóm thị phần taxi tại Việt Nam

https://doimoisangtao.vn/news/2018/7/5/ng-dng-gi-xe-ngoi-dn-thu-tm-th-phn-taxi-ti-vit-nam

Aber tham gia vào thị trường ứng dụng gọi xe Việt Nam

http://www.thesaigontimes.vn/273679/aber-tham-gia-vao-thi-truong-ung-dung-goi-xe-viet-nam.html

Cạnh tranh với Grab, start-up Việt FastGo ra mắt thị trường

http://vneconomy.vn/canh-tranh-voi-grab-start-up-viet-fastgo-ra-mat-thi-truong-20180612162951194.htm

Bộ GTVT: Nghị định 86 không cấm mà tạo hành lang pháp lý cho kinh doanh vận tải

http://baochinhphu.vn/Hoat-dong-Bo-nganh/Bo-GTVT-Nghi-dinh-86-khong-cam-ma-tao-hanh-lang-phap-ly-cho-kinh-doanh-van-tai/341398.vgp

外資系配車アプリがタクシー市場でのシェアを伸ばす中、2018年6月にAber、FastGoの2つの地場配車アプリが登場した。地場企業の同市場への参入によりGrabの独占が崩されることが期待されている。

Aberはバイク配車サービス「Aber Bike」、タクシー配車サービス「AberCar」、トラック配車サービス「Aber Truck」、など6つのサービスを6月からホーチミン市で展開している。他配車アプリ同様に、従来型タクシーでは一部で採用されているラッシュアワー時の運賃の引き上げも廃止している。また、ドライバーからは収入の20%程度を手数料として徴収しているが、1か月あたりの収入が50万VND(約2,400円)未満のバイクタクシー運転手と500万VND(約2万4,000円)未満のタクシー運転手については、手数料を徴収しないことで、より多い運転手を確保している。

FastGoはベトナムのテクノロジー企業ネクステック(NextTech)により開発され、6月からハノイ市で7月からホーチミン市でサービスを展開している。タクシー配車サービス「ファストタクシー(Fast Taxi)」や高級クラスの配車サービス「ファストラグジュアリー(Fast Luxury)」などに加え、バイクタクシー配車サービス「ファストバイク(FastBike)」も近々展開する計画だという。Aberと異なり、売上の割合に応じた手数料は徴収せず、収入の段階に合わせて固定料金の徴収をしているが収入の割合に換算すると10%以下になるため、他配車アプリよりドライバーにとっては良心的である。

[スタートアップ企業1]

企業名: Aber Vietnam

住所:409 Pham Van Dong Str., 11 Ward, Binh

Thanh Dist., Vietnam

URL: http://aber.com.vn/

[スタートアップ企業2]

企業名: FastGo Vietnam

住所:3F VTC online Build., 18 Tam Trinh Str., Minh

Khai Ward, Hai Ba Trung Dist., Hanoi, Vietnam

URL: https://fastgo.mobi/

ベトナムの現行法に未だ規定されていない配車サービスに対し、多くの従来型タクシー会社の代表としてベトナムタクシー協会が交通運輸省および道路総局に対し、配車アプリの法的規制を求めている。内容の詳細は決まっていないが、タクシーと同じ規制の適用や「電子タクシー」という名称及び表示灯の設置等について、現在ベトナム交通運輸省が車両における運送事業の条件に関する政令第86号の改正・補足案を検討している。

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廃プラスチック流通フローの可視化と高品質プラスチックへの再生を実現(インド)

インドでは、ごみを排出する際に分別はされておらず、この分別されずに捨てられたゴミを回収して、分別し、リサイクル工場などに売ることで生計をたてているkabadiwalaと呼ばれる人たちがいる。この回収からリサイクルまでの一連の流れは管理されておらず、様々なリサイクル業者のもとでリサイクルが行われる。 しかし、プラスチックのリサイクルにおいて、廃棄されたプラスチック製品から塗料や接着剤等を取り 除き、バージンプラスチックに近い品質に戻すことは容易ではない。 インドでは年1,000万トン以上の廃プラスチックがリサイクルされるが、そのうち8割以上が本来の製品よりもダウングレードされた製品へと作り変えられる。たとえばペットボトルがリサイクルされる場合に、また同じペットボトル用としては使えず、カーペットや合成繊維として使われる。

Source: Banyan Nation is out to clean India and the world is taking note https://yourstory.com/2018/01/banyan-

nation-clean-india-world-taking-note/

This startup‘s tech could be tipping point in our fight against plastic pollution http://ecoti.in/6SnpOY

Plastic recycler Banyan Nation makes it to final at WEF?s Circular Economy awards

https://www.thehindubusinessline.com/companies/plastic-recycler-banyan-nation-makes-it-to-final-at-wefs-

circular-economy-awards/article10011138.ece

IoT helps Telangana automate urban waste recycling operations https://www.financialexpress.com/industry/iot-

helps-telangana-automate-urban-waste-recycling-operations/791725/

Circular economy in India https://www.ellenmacarthurfoundation.org/assets/downloads/publications/Circular-

economy-in-India_5-Dec_2016.pdf

[スタートアップ企業]

企業名:Banyan Nation

住所:T-Hub Gachibowli Hyderabad 500 032

URL:http://banyannation.com

そんな中、インドのスタートアップであるBanyan Nationは廃プラスチックをバージンプラスチックに近い品質に戻すことができる独自の熱技術と洗浄技術を開発した。同社のリサイクルしたプラスチックは”BETTER PLASTIC”の名称でメーカーに供給されている。この“BETTER PLASTIC”は、インド最大の自動車メーカーTATA のバンパーや、化粧品大手ロレアルのシャンプーボトルなどに採用されている。現在Banyan Nationは、年間約1,200トンのプラスチック廃棄物から汚れなどを除去し、再生可能な状態のプラスチックにしている。

しかし、前述のとおりインドのごみはkabadiwalaを通して非公式セクターに回ってしまっている。そこで、排出される廃プラスチックをBanyan Nationが管理してリサイクルできるように、ゴミの排出元からリサイクルまでの全てのプロセスに関わる非公式セクターを統合・可視化するアプリケーションを開発した。具体的には、Hyderabadにいる1,500人のkabadiwalaをマッピングし、彼らが取り扱う廃棄物の量や、収集・輸送経路等をゴミ集積所のセンサー、GPSトラックなどを用いてデータを収集し、分析した。 このようにゴミの排出→回収→リサイクルまでの一連のフローを把握し、管理することで、排出される廃プラスチックを同社の技術を使ってリサイクルでき、より効率的にリサイクルを行うことが可能になった。 このBanyan Nationのデジタルアプローチは、Telegana州全体でも採用されることが決定している。 同社は、2018年1月に開かれた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)でサーキュラーエコノミーに貢献した優良企業として、表彰された。

ゴミの排出からリサイクルまでの流れを一貫して管理することで無駄を減らし、また高品質なリサイクルを循環させるBanyan Nationのアプローチは、インドでのサーキュラーエコノミーのモデルケースとして今後が注目されている。