電気回路 - utsunomiya university電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 •...

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電気回路 第5章 回路素子の応答 過渡現象 スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 • 数学的には微分方程式で記述 ラプラス変換法を用いると容易に解ける – ヘビサイド(1850-1925)が独学で開発した演算子法ブロムウィッチが1916年にラプラス(1749-1827)変換 を用いて数学的に完成させたもの – フーリエ(1768-1830)変換法の拡張 電気回路(過渡現象論),自動制御の主題 抵抗を流れる電流の瞬時値 i は抵抗両端の電圧瞬時値 v R に比例. 5-2 CR直列回路 コンデンサの瞬時電荷を q とすれば dt dq i = また, より Ri R = v C q C = v E q C dt dq R C R = + = + 1 v v 5-2-1 微分方程式と解法 ・充電過程 5-2 CR直列回路 (例題5-1) 5-1 抵抗回路 (5-6) CR t e k CE q + = = = CR t C e E C q 1 v 1階の線形微分方程式 ここに,k t = 0 における初期条件で決まる任意定数. t = 0 q = 0 とすれば,k = CE.よって = CR t e CE q 1 電流 i と,コンデンサの電圧 v C を求めると , CR t e R E dt dq i = = 特解 補関数 E q C dt dq R = + 1 充電過程の解 (例題5-2~5) (5-6) (5-22) (5-18) 微分=0 のときの定常解 一般解同次方程式の一般解 任意定数を含まない解 過渡

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Page 1: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

電気回路

第5章 回路素子の応答

過渡現象

• スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化

• 数学的には微分方程式で記述

• ラプラス変換法を用いると容易に解ける– ヘビサイド(1850-1925)が独学で開発した演算子法を

ブロムウィッチが1916年にラプラス(1749-1827)変換

を用いて数学的に完成させたもの

– フーリエ(1768-1830)変換法の拡張

• 電気回路(過渡現象論),自動制御の主題

抵抗を流れる電流の瞬時値 i は抵抗両端の電圧瞬時値 vR に比例.

5-2 CR直列回路

コンデンサの瞬時電荷を q とすれば

dtdqi =

また, , よりRiR =vCq

C =v

EqCdt

dqRCR =+=+1vv

5-2-1 微分方程式と解法 ・充電過程

5-2 CR直列回路(例題5-1)

5-1 抵抗回路

(5-6)

CRt

ekCEq−

⋅+=

⎟⎟

⎜⎜

⎛−==

−CRt

C eECq 1v

1階の線形微分方程式

ここに,k は t = 0 における初期条件で決まる任意定数.t = 0 で q = 0 とすれば,k = −CE.よって

⎟⎟

⎜⎜

⎛−=

−CRt

eCEq 1

電流 i と,コンデンサの電圧 vC を求めると

,CRt

eRE

dtdqi

−==

特解 + 補関数

EqCdt

dqR =+1

充電過程の解(例題5-2~5)

(5-6)

(5-22)(5-18)

微分=0 のときの定常解一般解は

同次方程式の一般解

任意定数を含まない解

過渡解

Page 2: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

τt

CRt

eREe

REi

−−== CR=τ : 時定数

指数関数的変化が初期値の 1/e になる時間

時定数(じていすう)

37 %

(5-20)

01=+=+ q

CdtdqRCR vv

CRt

keq−

=一般解:

t = 0 でのコンデンサの電荷は CE であるからCRt

CEeq−

=

CRt

C EeCq −==v CR

t

eRE

dtdqi

−−==

放電過程(例題 5-6)

(5-23)

(5-25)(5-26)

(5-24)

2TCR <<

2TCR <<

5-2-1 CR直列回路

における矩形波応答

時定数 τ

例題 5-7

例題 5-8

QCUSによる

シミュレーション

Page 3: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

一般解 は…

右辺 = 0 とした同次方程式の一般解( n 個の任意定数を含む) ・・・ 補関数

右辺 = f(t) まで考えた方程式の

任意定数を含まない解 ・・・ 特 解

の和で表される.

定数係数 n 階線形

微分方程式の解構造

)(11

1

10 tfyadtdya

dtyda

dtyda nnn

n

n

n=++++ −−

L

a0, a1, ... , an: 定数

○ 時間を独立変数とする線形微分方程式では…

補関数: 過渡現象を表す解(過渡解)n 個の任意定数の具体的な値は n 個の

初期条件で決まる.安定な回路では t → ∞ で 0 となる.

特 解: 定常状態を表す解(定常解)

一般解 = 補関数 + 特 解

過渡解と定常解

微分の項をゼロに

ERidtdiLRL =+=+vv

⎟⎟

⎜⎜

⎛−=⎟

⎜⎜

⎛−=

−−τtt

LR

eREe

REi 11

RL

=τ : 時定数

5-3 LR直列回路(例題5-9~11)

(5-27)

(5-28)

Page 4: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

QCUSによる

シミュレーション

ECq

dtdiLRiCLR =++=++ vvv

,dtdqi =

2

2

dtqd

dtdi

= を使って整理

EqCdt

qdLdtdqR =++

12

2

LEq

LCdtdq

LR

dtqd

=++1

2

2より

この定数係数の2階線形微分方程式の解は

012

2=++ q

LCdtdq

LR

dtqd

同次方程式 の解(補関数)と

LEq

LCdtdq

LR

dtqd

=++1

2

2

の特解の和で与えられる.

5-4 LCR直列回路

(5-32)

(5-33)

012 =++LC

mLRm

012

2=++ q

LCdtdq

LR

dtqd

に対する次の特性方程式

の2根により,決定される.

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−±−=

CLRR

Lm 4

21 2

補関数 は,(i),(ii),(iii)に対応して3種類(i) m が2実根 : R2 > 4L/C(ii) m が重根 : R2 = 4L/C(iii) m が2複素根: R2 < 4L/C特 解

この場合の特解は CEqp =

tmtmC ececq 21

21 +=

補関数

Page 5: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

特性方程式は負の相異なる2実根 m1 = −p1, m2 = −p2 をもつ.

,421 2

1 ⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−−=

CLRR

Lp ⎟

⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−+=

CLRR

Lp 4

21 2

2

CEececq tptp ++= −− 2121 c1,c2: 任意定数

一般解は 補関数 + 特 解 より

tptp epcepcdtdqi 21

2211−− −−==

任意定数 c1,c2 の具体値はt = 0 における q,dq/dt の値

から決められる. R2 > 4L/C の場合の電荷と電流

5-4-1 R2 > 4L/C の

場合(過制動)

(5-36)

特性方程式は重根 をもつ.LR

2−=−α

一般解は 補関数 + 特 解 より

CEectcq t ++= − 21 )( α c1,c2: 任意定数

tt ecectcdtdqi

1

21 )( ααα −− ++−==

任意定数 c1,c2 の具体値はt = 0 における q,dq/dt の値

から決められる.

5-4-2 R2 = 4L/C の

場合(臨界制動)

(5-40)

特性方程式は複素根 −α + jβ, −α − jβ をもつ.

一般解は 補関数 + 特 解 より

,2LR

=α 2

2

41

LR

LC−=β

CEtataeq t ++= − )sincos( 21 ββα a1,a2: 任意定数

( ) ( )[ ]taataaedtdqi t ββαββαα sincos 1221

+−+−== −

任意定数 a1,a2 の具体値はt = 0 における q,dq/dt の値

から決められる.

R2 < 4L/C の場合の電荷と電流

5-4-3 R2 < 4L/C の

場合(不足制動)

(5-44)

QCUSによる

シミュレーション

( ) 6

323

1002.010204102

××

( ) 6

323

101.01054103

××

( ) 6

323

1001.0101004101

××

Page 6: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

R2 > 4L/C の場合

(過制動)

R = 3 kΩ, L = 5 mH, C = 0.1 μF

R2 = 4L/C の場合

(臨界制動)

R = 2 kΩ, L = 20 mH, C = 0.02 μF

R2 < 4L/C の場合

(不足制動)

R = 1 kΩ, L = 100 mH, C = 0.01 μF

機械とのアナロジー

• バネ k ⇔ 1/C• ダンパー r ⇔ R• 質量 m ⇔ L

m

r

k

)(2

2tFkx

dtdxr

dtxdm =++

F(t)

EqCdt

dqRdt

qdL =++1

2

2

Page 7: 電気回路 - Utsunomiya University電気回路 第5章回路素子の応答 過渡現象 • スイッチを入れた直後の電圧,電流の変化 •数学的には微分方程式で記述

ラプラス変換による解法

• CR直列回路

)()(

11

1/1

)()(1)(

1

tueREti

CRsR

E

sCR

sEIsE

sI

CRI

tEudttiC

tRi

EqC

Ri

CRt

−=

+=

+=∴=+

=+⇒

=+

u(t) は単位

ステップ関数

逆ラプラス変換

ラプラス変換による解法

• LR直列回路

⎟⎟

⎜⎜

⎛−=

⎟⎟⎟⎟

⎜⎜⎜⎜

+−=

+=∴=+

=+⇒

=+

−)()()(

11)(

)()()(

/ tuetuREti

LRssR

ERsLs

EIsERILsI

tEutRitidtdL

ERidtdiL

RLt

CRt

eR

CQEdtdqi

−−==

/0

コンデンサが電荷 Q0 (< CE) をもっているとき,スイッチSを閉じてからのコンデンサの電荷 q と回路を流れる電流 i を求めよ.

EqCdt

dqRCR =+=+1vv

この微分方程式の一般解は

CRt

ekCEq−

⋅+=

t = 0 で q = Q0 より, CEQk −= 0

( ) CRt

CRt

CRt

eQeCEeCEQCEq−−−

+⎟⎟

⎜⎜

⎛−=−+=∴ 00 1

第5章 演習問題 2

スイッチSを閉じてコンデンサを完全に充電しておき,次にSを開く.Sを開いてからの経過時間 t とコンデンサ両端電圧 vCの関係を求めよ.ただし,rS << R とする.

スイッチSを閉じて定常状態に達したとき,rS << R より vC ≒ E.

よって,コンデンサに蓄積している電荷は CE.

スイッチを開いたあとは

RiCq

C ==v

コンデンサの電荷 q の時間変化が流れ出す電流になるから

idtdq

−=dtdqR

Cq

−=∴ ⇒ 01=+ q

CRdtdq

t = 0 で q = CE を考慮すると、解は CRt

CEeq−

=

両辺の自然対数をとって,整理するとC

ECRtv

ln=

第5章 演習問題 3

∴ CRt

C Ee−

=v