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ィリアムソン・アンプ 目次 出力段 ロードライン ................................... ィリアムソン・アンプ ロードライン ........................ にする .................................... プッシュプルにする ............................... の安定性 ゲイン インピーダンス ........................... ......................................... ..................................... ドライバ ..................................... ....................................... ......................................... ......................................... ポール ........................................ ミニウィリアムソン出力段 ィリアムソン ................................ プッシュプルにする ...............................

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Page 1: Ayumi's Lab. - ウィリアムソン・アンプの解析ayumi.cava.jp/audio/will.pdf1 出力段 ウィリアムソン・アンプの出力段の回路は,図1の通りです.

ウィリアムソン・アンプの解析

Ayumi's Lab.

2003年 8月 25日Revised 2003年 10月 25日

目次

1 出力段 31.1 ロードラインの求め方 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 31.2 ウィリアムソン・アンプのロードライン . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41.3 差動出力段にすると . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 51.4 通常のプッシュプルにすると . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9

2 NFBの安定性 122.1 各段のゲインと出力インピーダンス . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

2.1.1 初段 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 122.1.2 位相反転段 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 122.1.3 ドライバ段 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 132.1.4 出力段 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13

2.2 低域時定数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 132.3 高域時定数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 152.4 ポールの配置 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

A 7119ミニウィリアムソン出力段 18A.1 7119ウィリアムソン出力段 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18A.2 通常のプッシュプルにすると . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

1

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はじめに

ラジオ技術誌 2003年 3月号に,奇しくも氏家氏,竹森氏の両名によってウィリアムソン・アンプの製作記事が掲載されました.これを受けて,D. T. N. Williamson氏のオリジナル記事の翻訳が,同誌 2003年 8月号より始まりました.ウィリアムソン・アンプと言えば,はじめて 20 dBにおよぶオーバーオール負帰還をかけることに成功し,そのための特別な巻線構成を持つ出力トランスを試作した,ということが大きく取り

上げられます.また,そのスタガー比の取り方に欠陥があると言われ,発振しやすいことでも有名

です.

私は,浅野 勇著「魅惑の真空管アンプ」下巻所載の 3C33ウィリアムソン型アンプをコピーする予定で部品を集めていました.このため,ウィリアムソン・アンプの回路に興味があり,また,

氏家氏のある掲示板での発言「ウィリアムソン・アンプは差動アンプである」から,果たしてどれ

だけ差動の効果があるのか検証してみたくなった次第です.

2

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1 出力段

ウィリアムソン・アンプの出力段の回路は,図 1の通りです.

V1

R11 MΩ

R233 kΩ

R347 kΩ

R4470 Ω

C10200 pF

R264.7 kΩ

C18 µF

V2

V3

V4

V5

V6

R522 kΩ

R622 kΩ

R722 kΩ

C28 µF C3

0.05 µF

C40.05 µF

R8470 kΩ

R9470 kΩ

R10390 Ω

R1147 kΩ

R1347 kΩ

C58 µF

R14100 kΩ

R17100 Ω

R19100 kΩ

C60.25 µF

C70.25 µF

R21100 Ω

R22150 Ω

R16100 Ω

R18100 Ω

R23100 Ω

R24100 Ω

R151 kΩ

R201 kΩ

C88 µF

R251200

√Zs Ω

C98 µF

CH130 H 20 mA

CH210 H 150 mA

1.9 V

1.9 V

100 V

320 V

4.4 mA

2.7 V

215 V

105 V

5.25 mA

3 V

10 mA

38 V

450 V125 mA

10 kΩ : Zs

INPUT

OUTPUT

B+

GND

図 1: ウィリアムソン・アンプの回路図

特徴としては,出力トランスのインダクタンスの低下を防ぐための,精密な DCバランス回路を備えている,そのため,無信号時のグリッドの電位はプラスとなっている,自己バイアス抵抗がバ

イパスされていない,などがあります.

1.1 ロードラインの求め方

カソード抵抗が高抵抗 (理想的には定電流源)であれば,信号は 2本の出力管に対称に流れ,各球の負荷インピーダンスは Zpp/2となります.しかし,ウィリアムソン・アンプの場合は,Rk ≈ 300 Ω

のため,とても高抵抗とは言えず,対称の動作をするわけではありません.通常のプッシュプルと

同様に,各球の負荷が一定ではありません.

これまで,通常のプッシュプル出力段と差動出力段のロードラインを求めるプログラムを Rで作成してきましたが,これらの関数ではウィリアムソン・アンプの出力段をうまく扱えません.

通常のプッシュプルと比べて,注意すべき点は以下のようになります.カソードの電位が入力信

号によって変動するので,正味のグリッド電圧の変化が 2本の球で対称ではなくなります.したがって,通常のプッシュプルとは異なり,合成プレート特性が一意に定まりません.そこで,仮に

カソードの電位が Ek になったと仮定し,所定の入力を加えた合成プレート特性を作成し,それと

Zpp/4の合成ロードラインとの交点を求め,プレート電圧とプレート電流を確定させます.プレート電流 (とグリッド電流)から 2管のカソード電流 (Ik)がわかりますから,Ek と IkRk を比較し,両

者の差がなくなる Ek を求めます.

3

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1.2 ウィリアムソン・アンプのロードライン

Williamson氏が作成した出力トランスの一次巻線抵抗は 250 Ωです.電源電圧は 450 Vで,プレート電流は 1管あたり 62.5 mAですから,0.0625 × 125 = 7.8125 Vの電圧降下があり,有効なB電源供給電圧は 450 − 7.8125 = 442.1875 V になります.このとき,DCバランス調整用の可変抵抗分 (25 Ω) を除いたカソード抵抗値は 302.5786 Ω で,これによるグリッドバイアスは Eg0 =

−0.125 × 302.5786 = −37.8223 Vとなります.また,グリッドの電位は,Ec = 0.125 × 25 = 3.125 Vとなります.

Williamson氏のオリジナル回路では,カソード抵抗は,R17 R18 の並列で 50 Ω,100 Ωの可変抵

抗,150 Ωの固定抵抗で構成されていますから,可変範囲は 200 Ωから 300 Ωで,上で求めた値は

調整範囲外です.Williamson氏が使用した KT-66は,エミッションが少し低かったのでしょうか?固定抵抗を 200 Ωに増やしたほうがよさそうです.

ここで,前節で説明した方法でロードラインが引けるかどうか,試してみましょう.

入力信号として ei = 20 Vを加えた状態のプレート電圧,プレート電流を求めてみます.カソードの電位を 41 V と仮定すると,プレート電圧を除く各電極の電位の関係は,図 2のようになります.プレートの電位は,図の B+を中心として,V1と V2で対称の値をとります.したがって,ep1 + ep2 = 2 × (442.1875 − 41)という関係が成り立ちます.

G123.125 V

G2−16.875 V

Ec3.125 V

B+

442.1875 V

K41 V

ei = 20 V

−ei = −20 V

eg1 = −17.875 V

eg2 = −57.875 V

401.1875 V

図 2: ウィリアムソン出力段の電圧 (カソードの電位を 41Vと仮定した場合,入力 20V)

この関係が成り立つように,プレート特性図を Ep = 401.1875 Vのところで対称に貼り合わせます (図 3).入力を加えた状態の各球のグリッド電圧は,それぞれ eg1 = −17.875 V, eg2 = −57.875 Vですから,その特性曲線を描くと,それぞれ曲線AA', BB'となります.したがって,合成プレート特性曲線は CC'となります.プレート特性曲線は,カソードを起点としたプレート電圧に対して描かれており,対アース基準にするため,41 V右方向に移動したものが茶色の曲線です.この曲線と合成ロードライン (Zpp/4)との交点 Dが,この入力に対するプレート電圧 (対アース)と合成プレート電流です.対カソードのプレート電圧は,41 Vを引いた点 Eで,各球のプレート電圧とプレート電流は,それぞれ点 Fと点 Gになります.ここで総プレート電流を求めてみると,

ip = 91.5 + 43.3 = 134.8 [mA]

となりますが,これが総カソード抵抗 Rk = 327.5786を流れると,

0.1348 × 327.5786 = 44.1576 [V]

の電圧が生じてしまい,最初に仮定した 41 Vとは異なってしまいます.

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0 100 200 300 400 500 600 700

Ep (V)

Ip (m

A)

−100

010

0

A

B

C

A’

C’

B’

D(321.7,48.2)E(280.7,48.2)

F(280.7,91.5)

G(280.7,−43.3)

図 3: ウィリアムソン出力段のロードラインの引き方 (カソードの電位 41V)

この食い違いがなくなるまで,カソードの電位を変えてみます.この場合,カソードの電位が

41.63684 Vであれば,各部の電圧が矛盾なく定まります (図 4).このようにして,オリジナルの定数で求めたロードラインは,図 5のようになります1.

信号は,波高値で 41.0569 Vまで加えられます.ロードラインは直線に近いですが,わずかに湾曲しています.湾曲のしかたは,差動出力段とは逆で,通常のプッシュプルと同じものです.注目

すべきは,プレート特性の湾曲部を使っていないことで,出力は減りますが,歪率がかなり低く

なっていることが予想されます.

伝達特性は,図 6のようになります.ご覧のように,ほぼ直線となっています.プレート電流の波形は,図 7のようになります.出力は 12.05 Wで,歪率は 0.123%です.

1.3 差動出力段にすると

比較のため,差動出力段のロードラインを図 8に示します.信号は,波高値で 42.34496 Vまで加えられます.伝達特性は,図 9のようになります.ご覧のように,ほぼ直線となっています.プレート電流の波形は,図 10のようになります.当然ですが,総プレート電流が一定となります.

出力は 12.50 Wで,歪率は 0.400%です.

1出力インピーダンス 0 でドライブした場合.

5

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0 100 200 300 400 500 600 700

Ep (V)

Ip (m

A)

−100

010

0

A

B

C

A’

C’

B’

D(322.9,47.7)E(281.3,47.7)

F(281.3,87.4)

G(281.3,−39.7)

図 4: ウィリアムソン出力段のロードラインの引き方 (カソードの電位 41.63684V)

Ep (V)

Ip (m

A)

0 100 200 300 400 500 600 700

050

100

150

Eg=0V−10

−20

−30

−40

−50

−60

−70

−80

−90

−100

O(401.2, 62.5)

A(152.2,116.6)

B(643.8, 18.3)

図 5: ウィリアムソン・アンプ出力段のロードライン

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−40 −20 0 20 40

−100

−50

050

100

Ei (V)

Ip (m

A)

図 6: ウィリアムソン・アンプ出力段の伝達特性

0 10 20 30 40 50 60

−100

−50

050

100

Time

Ip (m

A)

図 7: ウィリアムソン・アンプ出力段のプレート電流波形

7

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Ep (V)

Ip (m

A)

0 100 200 300 400 500 600 700

050

100

150

Eg=0V−10

−20

−30

−40

−50

−60

−70

−80

−90

−100

O(401.2, 62.5)

A(147.9,112.3)

B(645.5, 12.7)

図 8: 差動出力段のロードライン

−40 −20 0 20 40

−100

−50

050

100

Ei (V)

Ip (m

A)

−40 −20 0 20 40

−100

−50

050

100

図 9: 差動出力段の伝達特性

8

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0 10 20 30 40 50 60

−100

−50

050

100

Time

Ip (m

A)

−100

−50

050

100

図 10: 差動出力段のプレート電流波形

1.4 通常のプッシュプルにすると

Zpp = 10 kΩのまま通常のプッシュプルにした場合のロードラインを図 11に示します.ロードラインはかなり湾曲し,入力が負のピークとなっても無駄な電流が流れているため,出力

がかなり低くなります.

伝達特性は,図 12のようになります.S字形に曲がっているのがわかります.プレート電流の波形は,図 13のようになります.出力は 10.86 Wで,歪率は 1.185%です.

これらの結果からわかるように,ウィリアムソン・アンプは,完全な差動出力段ではありません

が,歪みを差動出力段以上に低く押さえることができています.ただし,差動と異なり,総プレー

ト電流はある程度変動してしまいます.

また,オリジナルの定数のままカソードバイパスコンデンサを加えても,ノンクリップ出力が下

がってしまいます.パスコンを入れる場合は,無信号時のプレート電流を絞るか,低い負荷を与え

るかして,AB級に近い動作にすべきでしょう.

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Ep (V)

Ip (m

A)

0 100 200 300 400 500 600 700

050

100

150

Eg=0V−10

−20

−30

−40

−50

−60

−70

−80

−90

−100

O(401.2, 62.5)

A(165.4,130.0)

B(637.1, 35.6)

図 11: プッシュプル出力段のロードライン

−40 −20 0 20 40

−100

−50

050

100

Ei (V)

Ip (m

A)

−40 −20 0 20 40

−100

−50

050

100

図 12: プッシュプル出力段の伝達特性

10

Page 11: Ayumi's Lab. - ウィリアムソン・アンプの解析ayumi.cava.jp/audio/will.pdf1 出力段 ウィリアムソン・アンプの出力段の回路は,図1の通りです.

0 10 20 30 40 50 60

−100

−50

050

100

150

Time

Ip (m

A)

−100

−50

050

100

150

図 13: プッシュプル出力段のプレート電流波形

11

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2 NFBの安定性2.1 各段のゲインと出力インピーダンス

2.1.1 初段

Ep0 = 87.7 V, Ip0 = 4.25 mA, Eg0 = −2.00 V, µ = 21.5, rp = 9.2 kΩ, gm = 2340 µS, RL = 47 kΩ,Rk = 470//4700 = 427 Ω,

A1 = −µ RLrp + (1 + µ)Rk + RL

= −21.5 479.2 + (1 + 21.5)0.427 + 47 = −15.4 (1)

Zo1 = rp + (1 + µ)Rk//RL = 9.2 + (1 + 21.5)0.427//47 = 13.4 [kΩ] (2)

Ep (V)

Ip (m

A)

0 50 100 150 200 250 300 350

02

46

810 Eg=0V −2

−4

−6

−8

−10

−12

−14

−16

−18

図 14: 初段のロードライン

2.1.2 位相反転段

Ep0 = 146.3 V, Ip0 = 4.30 mA, Eg0 = −4.81 V, µ = 20.1, rp = 9.74 kΩ, gm = 2060 µS, RL =

22//470 = 21 kΩ,

A2 = µRL

rp + (2 + µ)RL= −20.1 21

9.74 + (2 + 20.1)21 = 0.891 (3)

Zo2 =rpRL

rp + (2 + µ)RL=

9.74 × 219.74 + (2 + 20.1)21 = 0.432 [kΩ] (4)

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Ep (V)

Ip (m

A)

0 50 100 150 200 250 300 350

02

46

810 Eg=0V −2

−4

−6

−8

−10

−12

−14

−16

−18

図 15: 位相反転段のロードライン

2.1.3 ドライバ段

Ep0 = 153.7 V, Ip0 = 5.78 mA, Eg0 = −4.51 V, µ = 20.4, rp = 8.64 kΩ, gm = 2370 µS, RL =

47//100 = 32 kΩ,

A3 = −µ RLrp + RL

= −20.4 328.64 + 32 = −16.1 (5)

Zo3 = rp//RL = 8.64//32 = 6.8 [kΩ] (6)

2.1.4 出力段

Ep0 = 401 V, Ip0 = 62.5 mA, Eg0 = −37.8 V, µ = 7.63, rp = 1400 Ω, gm = 5450 µS, RL = 5 kΩ,

A4 = −µ RLrp + RL

= −7.63 51.4 + 5 = −5.96 (7)

Zo4 = rp//RL = 1.4//5 = 1.09 [kΩ] (8)

2.2 低域時定数

Tl1 = C3(Zo2 + R8) = 0.05 × 10−6(432 + 470 × 103) = 0.0235 [s] (9)

fl1 =1

2πTl1=

12π0.0235 = 6.77 [Hz] (10)

13

Page 14: Ayumi's Lab. - ウィリアムソン・アンプの解析ayumi.cava.jp/audio/will.pdf1 出力段 ウィリアムソン・アンプの出力段の回路は,図1の通りです.

Ep (V)

Ip (m

A)

0 50 100 150 200 250 300 350 400

02

46

810 Eg=0V −2 −4

−6

−8

−10

−12

−14

−16

−18

図 16: ドライバ段のロードライン

Ep (V)

Ip (m

A)

0 100 200 300 400 500 600 700

050

100

150

Eg=0V

−10

−20

−30

−40

−50

−60

−70

−80

−90

−100−41

−30

−20

−10

0

10

20

30

41

図 17: 出力段のロードライン

14

Page 15: Ayumi's Lab. - ウィリアムソン・アンプの解析ayumi.cava.jp/audio/will.pdf1 出力段 ウィリアムソン・アンプの出力段の回路は,図1の通りです.

Tl2 = C6(Zo3 + R14) = 0.25 × 10−6(6.8 × 103 + 100 × 103) = 0.0267 [s] (11)

fl2 =1

2πTl2=

12π0.0267 = 5.96 [Hz] (12)

原典には,出力トランスの最大インダクタンスが明記されていませんので,ここでは 800 Hと仮定します.

Tlt =Lp

Zp//r′p=

100 ∼ 80010000//2800 = 0.0457 ∼ 0.366 [s] (13)

flt =1

2πTlt= 0.435 ∼ 3.48 [Hz] (14)

2.3 高域時定数

Th1 = (1 +1A1

)Cgp1 + Co1 + (1 + A2)Cgp2 + (1 − A2)Ci2Zo1

= (1 +1

15.4)4 + 1.2 + (1 + 0.891)4 + (1 − 0.891)3 × 10−12 × 13400= 0.179 [µs] (15)

fh1 =1

2πTl1=

12π1.79 × 10−7 = 890 [kHz] (16)

Th2 = (1 +1A2

)Cgp2 + Co2 + Ci3 + (1 + A3)Cgp3(Zo2//R8)

= (1 +1

0.891)4 + 1.2 + 3 + (1 + 16.1)4 × 10−12 × (432//470 × 103)= 0.035 [µs] (17)

fh2 =1

2πTl2=

12π3.5 × 10−8 = 4.5 [MHz] (18)

KT66三結時の Cg pは発表されていませんが,ここでは 10 pFと仮定します.

Th3 = (1 +1A3

)Cgp3 + Co3 + Ci4 + (1 + A4)Cgp4(Zo3//R14)

= (1 +1

16.1)4 + 1.2 + 14.5 + (1 + 5.96)10 × 10−12 × (6800//100 × 103)= 0.57 [µs] (19)

fh3 =1

2πTl3=

12π5.7 × 10−7 = 279 [kHz] (20)

出力トランスの 1次浮遊容量は不明ですが,ここでは,p-p間で 300 pFと仮定します.出力段の高域時定数 (浮遊容量によるもの) Th4c は,出力管の内部抵抗 rp とトランスの公称一次インピーダン

ス Zp の並列合成値と,浮遊容量と出力管の出力容量の並列合成値によって決まりますが,浮遊容

量にくらべ,出力管の出力容量は 1/10以下なので,ここでは無視して計算します.

Th4c = (2rp//Zp)Cs = (2800//10000)300 × 10−12 = 0.656 [µs] (21)

fh4c =1

2πTh4c=

12π6.56 × 10−7 = 243 [kHz] (22)

15

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出力トランスの漏洩インダクタンスによる時定数 Th4l は,

Th4l =Ll

2rp + Zp=

22 × 10−3

2800 + 10000 = 1.72 [µs] (23)

fh4l =1

2πTh4l=

12π1.72 × 10−6 = 92.6 [kHz] (24)

2.4 ポールの配置

各段のゲインと位相の周波数特性を,図 18に示します.実線は時定数による簡易特性,破線はSPICEによるシミュレーション結果です.

−40

−20

020

40

Frequency (Hz)

Gai

n (d

B)

1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

−40

−20

020

40

Th1

Tl1 Th2

Tl2 Th3

Tl3 Th4c

Th4l

1st

Phase splitter

Driver

Power

OPT

Open loop gain

Frequency (Hz)

Pha

se (d

eg)

1 10 100 1k 10k 100k 1M 10M

−180

−135

−90

−45

045

9013

518

0

図 18: 各段のゲインと位相の周波数特性

16

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両者はおおむね近い結果となっていますが,たとえばドライバ段では,後続の出力段の高域特

性が盛り上がっていると,ミラー容量が増え,その分ゲインが下がります.逆に出力段のゲインが

下がってくると,ミラー容量が減り,ゲインは実線よりも大きくなります.このように,前後のス

テージの特性の影響を受けるので,時定数だけで特性を論じることは危険です.

また,初段,位相反転段の低域特性は,実線よりも破線のほうがゲインが高くなっています.こ

の 2つの段はシングルエンドで,デカップリングコンデンサの容量の影響を受けます.このため,位相も遅れが少なくなります.一方,ドライバ段,出力段はプッシュプルですので,小信号解析で

はデカップリングコンデンサの影響を受けません.よく,「ウィリアムソン・アンプを再現」といい

つつ,デカップリングコンデンサに現代的な大容量のものを使用している例がありますが,こうす

ると発振までのマージンが少なくなっている可能性があります.

さて,発振せずにどこまで負帰還が掛けられるかを調べるには,位相が ±180 変化する周波数を求めます.その周波数のオープンループゲインを Ac とすると,最大の帰還率 βは,1/Ac となり,

中域のオープンループゲインを AM とすれば,負帰還量 F は,

F = 1 + AMβ = 1 +AMAc

(25)

となります.

簡易計算の場合,高域で位相が 180 遅れるのは,周波数が 260 kHzの時で,その時のオープンループゲインは 15.8倍ですから,最大の βは 1/15.8 = 0.0634,負帰還量は,中域のゲインが 98.5倍より,F = 1 + 98.5 × 0.0634 = 7.4 = 17.4 dBとなります.低域,あるいはシミュレーションについても発振しない最大の負帰還量を求めると,次の表のよ

うになります.

周波数 ゲイン β 負帰還量

低域 簡易 2.94 Hz 11.2 0.089 19.8 dBsim 2.61 Hz 8.92 0.112 21.5 dB

高域 簡易 260 kHz 15.8 0.0634 17.4 dBsim 284 kHz 10.6 0.094 20.1 dB

ご覧のように,簡易計算では負帰還を 20 dB 掛けることはできません.シミュレーションでは20 dB掛けられることになっていますが,発振までほとんど余裕がありません.

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A 7119ミニウィリアムソン出力段UMETECHさんの掲示板 http://park2.wakwak.com/˜umetech/cgi-bin/joyful.cgiで,ミニウィリア

ムソンアンプの話題が上り,ARITOさんが 7119を使ったアンプを検討されていました.

A.1 7119ウィリアムソン出力段

ARITOさんの当初の予定は,動作点を Ep0 = 230 V, Ip0 = 16 mAとするものでした.これでロードラインを描いてみると,クリップする前にカットオフしてしまうようです.そこで,動作点を

Ep0 = 210 V, Ip0 = 18 mAとしてみました.7119の最大プレート損失は,2ユニット使用の場合,1 ユニットあたり Pd = 4 W ですので,この動作点で規格内に収まります.グリッドバイアスは

Eg0 = −7.533 Vで,カソード抵抗は Rk = 209 Ωとなります.

ロードラインは,図 19のようになります.

Ep (V)

Ip (m

A)

0 50 100 150 200 250 300 350 400

020

4060

Eg=0V−1

−2−3

−4

−5−6

−7−8

−9−10

−11−12

−13−14

−15−16−17

−18

−19−20

O(210.0,18.0)

A( 75.0,39.9)

B(342.7, 1.6)

図 19: 7119ウィリアムソン・アンプ出力段のロードライン

信号は,波高値で 8.675 Vまで加えられます.KT66よりも直線性が悪いので,ロードラインの湾曲が少し大きくなっています.

伝達特性は,図 20のようになります.ご覧のように,ほぼ直線となっています.プレート電流の波形は,図 21のようになります.出力は 2.597 Wで,歪率は 0.588%です.

A.2 通常のプッシュプルにすると

Zpp = 14 kΩのまま通常のプッシュプルにした場合のロードラインを図 22に示します.

18

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−5 0 5

−40

−20

020

40

Ei (V)

Ip (m

A)

図 20: 7119ウィリアムソン・アンプ出力段の伝達特性

0 10 20 30 40 50 60

−40

−20

020

40

Time

Ip (m

A)

図 21: 7119ウィリアムソン・アンプ出力段のプレート電流波形

19

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Ep (V)

Ip (m

A)

0 50 100 150 200 250 300 350 400

020

4060

Eg=0V−1

−2−3

−4

−5−6

−7−8

−9−10

−11−12

−13−14

−15−16−17

−18

−19−20

O(210,18.0)

A( 83,45.3)

B(337, 9.0)

図 22: 7119プッシュプル出力段のロードライン

ロードラインはかなり湾曲し,入力が負のピークとなっても無駄な電流が流れているため,出力

がかなり低くなります.通常のプッシュプルでは,ARITOさんの当初の動作点のように,プレート電圧を高めにし,プレート電流を絞った使い方のほうがよさそうです.

伝達特性は,図 23のようになります.S字形に曲がっているのがわかります.プレート電流の波形は,図 24のようになります.出力は 2.22 Wで,歪率は 1.76%です.

20

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−5 0 5

−20

020

Ei (V)

Ip (m

A)

図 23: 7119プッシュプル出力段の伝達特性

0 10 20 30 40 50 60

−40

−20

020

40

Time

Ip (m

A)

図 24: 7119プッシュプル出力段のプレート電流波形

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