peripheral arterial disease(pad)の診断と最新の治療戦略

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血栓止血誌 24 (6):685~689, 2013 第6回 DAIICHI-SANKYO SYMPOSIUM FOR THROMBOSIS UPDATE 1. はじめに これまで閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)と呼ばれていた疾患概念は, 最近では欧米と同様に,末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)と呼ばれるようになっ ている.最近,非常に注目されている PAD であ るが,その理由は,PAD が全身性の動脈硬化症 の 1 つであり,冠動脈疾患,脳血管疾患などのイ ベントの発症リスクが高いことにほかならない. 単に下肢の疾患と捉えるのではなく,そうしたイ ベントリスクを軽減し,患者の生命予後の改善を 図ることが治療の大きな目的といえる. 2. PAD polyvascular disease PAD に関しては,その臨床的重要性を示す 2 つの代表的な研究が知られている.1 つは,アテ ローム血栓症リスクを持つ患者を対象とした国際 的な前向き観察研究 REACH Registry 1) である. この研究では,PAD,冠動脈疾患(CAD),脳血 管疾患(CVD)といった動脈硬化性病変はそれ ぞれが合併する頻度が高く,polyvascular disease (多血管疾患)と呼ばれる病態を呈することが報 告された.本研究の日本人データ 2) では,PAD を有する患者の 43.4%が CAD もしくは CVD を 合併しており,CAD を有する患者の polyvascu- lar disease の割合(22.5%),CVD を有する患者 の polyvascular disease の 割 合(22.9%) よ り も 高いことが明らかにされた(1). 一方,ドイツで行われた大規模観察研究 getABI 研究 3) では,足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)が低いほど生存率が低下し, そのリスクは,無症候性 PAD であっても変わら ないことが明らかにされた.また,PAD 患者の 5 年生存率は大腸癌と変らないとする報告もなさ Key words: PAD, polyvascular, disease, ABI, ASO Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略 Current status of diagnosis and therapeutic strategy in the patients with Peripheral Arterial Disease(PAD) 名古屋大学大学院 医学系研究科 血管外科学 教授 古森公浩 Yamazaki T et al. Circ J 2007;71:995–1003より算出 Polyvascular diseaseの割合: 22.5% Polyvascular diseaseの割合: 22.9% Polyvascular diseaseの割合: 43.4% CADからみた場合 CVDからみた場合 PADからみた場合 Japanese REACH Registry CAD CVD PAD CA VD CAD CVD PAD CAD CVD PAD CAD CVD PAD CAD CVD PAD CAD CVD PAD 1 REACH Registry における polyvascular disease の実態

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Page 1: Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略

血栓止血誌 24(6):685~689, 2013

第6回 DAIICHI-SANKYO SYMPOSIUM FOR THROMBOSIS UPDATE

1. はじめに

これまで閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)と呼ばれていた疾患概念は,最近では欧米と同様に,末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)と呼ばれるようになっている.最近,非常に注目されている PAD であるが,その理由は,PAD が全身性の動脈硬化症の 1 つであり,冠動脈疾患,脳血管疾患などのイベントの発症リスクが高いことにほかならない.単に下肢の疾患と捉えるのではなく,そうしたイベントリスクを軽減し,患者の生命予後の改善を図ることが治療の大きな目的といえる.

2. PAD は polyvascular disease

PAD に関しては,その臨床的重要性を示す 2つの代表的な研究が知られている.1 つは,アテ

ローム血栓症リスクを持つ患者を対象とした国際的な前向き観察研究 REACH Registry1)である.この研究では,PAD,冠動脈疾患(CAD),脳血管疾患(CVD)といった動脈硬化性病変はそれぞれが合併する頻度が高く,polyvascular disease

(多血管疾患)と呼ばれる病態を呈することが報告された.本研究の日本人データ 2)では,PADを有する患者の 43.4%が CAD もしくは CVD を合併しており,CAD を有する患者の polyvascu-lar disease の割合(22.5%),CVD を有する患者の polyvascular disease の割合(22.9%)よりも高いことが明らかにされた(図 1).

一方,ドイツで行われた大規模観察研究 getABI研究 3)では,足関節上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)が低いほど生存率が低下し,そのリスクは,無症候性 PAD であっても変わらないことが明らかにされた.また,PAD 患者の5 年生存率は大腸癌と変らないとする報告もなさ

Key words: PAD, polyvascular, disease, ABI, ASO

Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略Current status of diagnosis and therapeutic strategy in the patients with Peripheral Arterial

Disease(PAD)名古屋大学大学院 医学系研究科 血管外科学 教授 古森公浩

Yamazaki T et al. Circ J 2007;71:995–1003より算出

Polyvascular diseaseの割合: 22.5%

Polyvascular diseaseの割合:22.9%

Polyvascular diseaseの割合: 43.4%

CADからみた場合 CVDからみた場合

PADからみた場合

Japanese REACH Registry

CAD CVD

PAD

CADCAD CVDCVDCVDCVDCADCAD

PADPAD

CVDCVDCVDCVD

PAD

CAD CVD

PAD

CAD CVD

PAD

CAD CVDCVD

PADPADPADPAD

CAD CVD

PAD

CAD CVD

PAD

CAD CVDCAD

PADPADPADPAD

CAD CVD

PAD

図 1  REACH Registry における polyvascular disease の実態

Page 2: Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略

日本血栓止血学会誌 第 24 巻 第 6 号686

腕血圧比(toe brachial pressure index:TBI)の測定が有用である.足趾の血管は石灰化を免れることが多いため,透析患者や糖尿病患者においては信頼性のある検査といえる.さらに,運動負荷

(ドレッドミル)後に ABI を測定することにより,脊椎管狭窄症との鑑別ができ,また負荷後の ABIの回復時間により,保存療法か治療か血管内治療かなどの治療選択の目安とすることができる.

一方,重症虚血肢の客観的診断には ABI は不十分である.その場合には,toe pressure と経皮酸素分圧(TcPO2)の測定が推奨される.toe pressure が 30mmHg 以下,あるいは TcPO2 が30mmHg 以下の場合には潰瘍の治癒が望めない.当院でも,重症虚血肢の患者には必ず TcPO2 または皮膚組織還流圧(skin perfusion pressure)を測定し,評価するようにしている.

なお,TASC II7)では,ABI の測定をもとにした診断のアルゴリズム(図 2)が記載されているので,あらためてその手順を確認したい.

4. PAD の治療…TASC II の全体的治療戦略(図 3)

PAD の治療において,まず重要なのがリスクファクターである.禁煙,脂質異常の是正,血糖値の是正,血圧の是正は根本的な治療として行う必要がある.

また,抗血小板療法も必須である.最近,PAD

れており,PAD の生命予後は決して良好ではないことがわかる 4).

3. PAD のスクリーニングとして有用な ABI

PAD をスクリーニングする際に有用となるのが,ABI の測定である.ABI が 0.9 以下の場合には動脈閉塞の疑いがあるとされ,PAD と診断されるが,最近は 0.9~1.0 であっても心血管イベントのリスクが高いことが報告されている 5).これを受けて,2011 年に改訂された ACCF/AHAの PAD ガイドライン 6)では,0.9 以上 1.0 未満を「境界型」と定義し,注意を促している.

ACCF/AHA の PAD ガイドラインでは,そのほかにもいくつかの改訂が行われた.ABI を測定する患者の年齢を従来の 70 歳以上から 65 歳以上へと引き下げたこと,喫煙歴や糖尿病の既往がある患者においては 50 歳以上での ABI 測定を推奨していること,アスピリンの推奨レベルを引き下げたこと(エビデンスレベルが A から B に)などが主な改訂点である.

このように,ABI は PAD の診断を行ううえでもっとも重要な検査といえるが,透析患者,糖尿病患者の場合には,血管の石灰化によって ABIが高値に出ることがあるので注意が必要である.動脈硬化の進行により血管が硬くなり,狭窄・閉塞があってもその状態が数値に反映されないことが起こりうる.そのような患者の場合は,足趾上

TBI;足趾上腕血圧比,VWF;速度波形,PVR;容積脈波記録

・50~69歳で喫煙または糖尿病・70歳以上・労作時の下肢症状または身体機能の低下・下肢血管検査の異常・心血管系のリスク評価

足関節上腕血圧比(ABI)の測定

>1.40 0.91~1.40 ≦0.90

末梢動脈疾患(PAD)

他の原因を評価

跛行症状・ABIトレッドミルテスト

運動後ABI正常:PADは否定

運動後ABI低下

正常な結果:PADは否定 異常な結果

血管検査・TBIまたはVWF

・デュプレックス検査画像・PVR

Hiatt WR. N Engl J Med 2001 ; 344 ; 1608-1621.より許可を得て転載

図 2  PAD 診断のアルゴリズム(TASC II より)

Page 3: Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略

古森公浩:Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略 687

得られるようになってきている.それを受けて,TASC II では大腿膝窩動脈領

域における血管内治療の適応を拡大し,TASC分類タイプAにおいては10cm以下の単分節狭窄,あるいは 5cm 以下の単分節閉塞は血管内治療の範囲とし,また,TASC 分類タイプ B においては,熟練した施設での血管内治療の実施が推奨されている(図 4).なお,TASC 分類タイプ C に関しては,低リスク患者には外科的治療とされているが,いまだ議論のあるのが現状である.TASC分類タイプ D においては,外科的治療が推奨される.

バイパス術か血管内治療か,という点でわれわれが行っている PAD の治療方針を示す(図 5).まず,大動脈腸骨動脈領域では,短い大動脈病変あるいは腸骨動脈病変は血管内治療を第 1 選択とする.浅大腿動脈領域の場合は,TASC 分類でタイプ A,タイプ B については血管内治療を選択する.膝窩下腿動脈領域においては,原則として外科的バイパス術を第一選択とし,ハイリスク例に限り,救肢目的に血管内治療を選択することもある.

最近は,下肢に用いる新しいデバイスも注目されている.薬剤溶出型末梢血管用ステントであるZilver PTX は,国際共同治験において再血行再建術の減少,一次開存率の改善が認められた.また,欧米ですでに承認されている VIABAHN と呼ばれるステントグラフトも,バイパス術と変ら

における心血管イベントの抑制を目的としてクロピドグレルの適応が拡大されたが,アスピリンもしくはクロピドグレルは,PAD の治療に不可欠の薬剤といえる.また,間歇性跛行などの症状の緩和にはシロスタゾールが有効である.

5. 血管内治療か,バイパス術か

最近は,PAD の治療において外科的バイパス術が減少し,血管内治療を行うケースが増えてきているが,どちらを選択するかについては議論のあるところである.

腸骨動脈領域に関しては,以前はバイパス術が行われていたが,現在はそのほとんどが血管内治療で対処できるようになった.当院で血管内治療を行った 218 肢の成績でも,二次開存率は 93.7パーセントと成績は良好である.

問題となるのは,浅大腿動脈領域の治療である.浅大腿動脈領域に関しては,バイパス術の開存率は決して良好ではない.当院の成績でも,5年開存率は 8 割程度であり,2 割は閉塞が避けられない.TASC II においても,大腿膝窩動脈バイパス術後の 5 年開存率は良好とはいえないことが指摘されている.一方,血管内治療の成績も十分とはいえず,特にバルーン治療の成績が良好ではないことが問題となっていた.そんななか,最近は破損しやすかったステントの問題が解消し,Nitinol ステントの登場により,良好な開存率が

近位病変の疑い

病変部位の特定 ・従来の血管造影 ・MRAまたはCTA ・超音波検査 ・血行動態的部位診断

継続 血行再建術 ・血管内 ・外科的

QOLに影響を及ぼすような制限 ・重度の運動制限の病歴 ・トレッドミルパフォーマンス低下 ・質問表による機能の低下

跛行の内科的治療

・監視下運動または薬物治療

症状の改善

リスクファクターの改善 ・禁煙

・LDL-C<100mg/dL,ハイリスクには70mg/dL ・HbA1c<7.0% ・BP<140/90mmHg,糖尿,腎疾患があればBP<130/80mmHg ・抗血小板療法

症状は改善しないか悪化

シロスタゾール

アスピリン クロピドグレル

Reproduced with permission from Hiatt WR. N Engl J Med 2001;344:1608-1621.

QOLの制限または運動能力低下なし ・機能低下について患者を監視

図 3  PAD の全体的治療戦略(TASC II より)

Page 4: Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略

日本血栓止血学会誌 第 24 巻 第 6 号688

よりも劣る,などの所見が得られた.これらの結果より,2 年以上の生命予後が期待でき,かつ使用可能な自家静脈がある場合にはバイパス術を選択し,そうでない場合は血管内治療を選択することが推奨される.

ない有効性があると報告されており,今後の日本での臨床応用が期待される.

6. 重症虚血肢の治療

重症虚血肢の場合には血行再建術の対象となるものは適宜,血行再建術を行い,血行再建術の対象外のものについては,病態により血管内治療もしくは切断術が選択される(図 6).

バイパス術 224 例と血管形成術 228 例を検討した BASIL Trial8)によれば,静脈バイパスの長期結果が良好,血管内治療は早期不全率が高い,さらに,血管内治療が不全であった場合のバイパス術の結果が最初からバイパス術を選択した場合

CLIの確認

血行再建術の対象

適宜,血行再建術

画像診断 (超音波,血管造影,MRA,CTA)

血行再建術の対象外

持続性疼痛と病変 耐え難い疼痛, 感染の拡がり

内科療法 切断

図 6  重症虚血肢評価のアルゴリズム(TASC II)

大動脈腸骨動脈領域(AIOD) 短い大動脈病変及び腸骨動脈病変は 血管内治療が第一選択.

浅大腿動脈領域(SFA) TASC A, Bは血管内治療

膝窩・下腿動脈領域 原則外科的バイパス手術. ハイリスク例に限り救肢目的に血管内治療.

図 5  PAD の治療方針―外科的バイパス術か血管内治療か(名古屋大学血管外科)

Type A 病変:血管内治療

#10cm以下の単分節狭窄

#5cm以下の単分節閉塞

Type B 病変:血管内治療の初期成績が向上し臨床現場で選択されているもの

#5cm以下の多発性の閉塞あるいは狭窄 #膝下膝窩動脈に及ばない15cm以下の単分節狭窄や閉塞 #5cm以下の高度に石灰化した閉塞 #膝窩動脈の単分節狭窄

Type C 病変:低リスク患者には外科的療

Type D 病変:外科的治療

#高度の石灰化の有無を問わず15cm以上の多発性閉塞性病変 #2回以上の血管内治療を行ったにもかかわらず治療を要する再狭窄や閉塞

#総大腿動脈の閉塞#20cm以上の浅大腿動脈閉塞#浅大腿動脈閉塞が

膝窩動脈まで及ぶもの#膝窩動脈や下腿3分枝分岐部の完全閉塞

図 4  大腿膝窩動脈領域の TASC II 分類

Page 5: Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略

古森公浩:Peripheral Arterial Disease(PAD)の診断と最新の治療戦略 689

1350-1357, 2010. 2) Yamazaki T, Goto S, Shigematsu H, Shimada K, Uchiyama S,

Nagai R, Yamada N, Matsumoto M, Origasa H, Bhatt DL, Steg PG, Ikeda Y;REACH Registry Investigators:Prevalence, awareness and treatment of cardiovascular risk factors in pa-tients at high risk of atherothrombosis in Japan. Circ J 71(7):995-1003, 2007.

3) Diehm C, Allenberg JR, Pittrow D, Mahn M, Tepohl G, Haberl RL, Darius H, Burghaus I, Trampisch HJ;German Epidemio-logical Trial on Ankle Brachial Index Study Group:Mortality and vascular morbidity in older adults with asymptomatic versus symptomatic peripheral artery disease. Circulation 120(21):2053-2061, 2009.

4) 古森公浩;末梢動脈閉塞症(Peripheral arterial disease:PAD)に対する最新の治療戦略.日本血栓止血学会誌 24:38-44, 2013

5) Ankle Brachial Index Collaboration, Fowkes FG, Murray GD, Butcher I, Heald CL, Lee RJ, Chambless LE, Folsom AR, Hirsch AT, Dramaix M, deBacker G, Wautrecht JC, Kornitzer M, Newman AB, Cushman M, Sutton-Tyrrell K, Fowkes FG, Lee AJ, Price JF, d'Agostino RB, Murabito JM, Norman PE, Jamrozik K, Curb JD, Masaki KH, Rodríguez BL, Dekker JM, Bouter LM, Heine RJ, Nijpels G, Stehouwer CD, Ferrucci L, McDermott MM, Stoffers HE, Hooi JD, Knottnerus JA, Ogren M, Hedblad B, Witteman JC, Breteler MM, Hunink MG, Hofman A, Criqui MH, Langer RD, Fronek A, Hiatt WR, Hamman R, Resnick HE, Guralnik J, McDermott MM:Ankle brachial index combined with Framingham Risk Score to predict cardiovascular events and mortality:a meta-analysis. JAMA 300(2):197-208, 2008.

6) 2011 WRITING GROUP MEMBERS;2005 WRITING COM-MITTEE MEMBERS;ACCF/AHA TASK FORCE MEM-BERS:2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for the Management of patients with peripheral artery disease (Up-dating the 2005 Guideline):a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on practice guidelines. Circulation 124(18):2020-2045, 2011.

7) Norgren L, Hiatt WR, Dormandy JA, Nehler MR, Harris KA, Fowkes FG;TASC II Working Group:Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease (TASC II). J Vasc Surg 45 Suppl S:S5-67, 2007.

8) Bradbury AW, Adam DJ, Bell J, Forbes JF, Fowkes FG, Gillespie I, Ruckley CV, Raab GM;BASIL trial Participants:Bypass versus Angioplasty in Severe Ischaemia of the Leg

(BASIL) trial:An intention-to-treat analysis of amputation-free and overall survival in patients randomized to a bypass surgery-first or a balloon angioplasty-first revascularization strategy. J Vasc Surg 51(5 Suppl):5S-17S, 2010.

最近では血管内治療とバイパス術を合わせたハイブリッド治療も盛んになっている.病変に応じて,両方の治療を組み合わせることも今後は考慮されていくと思われる.

7. おわりに

PAD は polyvascular disease の代表的な疾患である.PAD の治療においては血管内治療が行われる症例が増加しており,血管病治療のパラダイムシフトが起こっている状況である.今後,DES(薬剤溶出性ステント),DEB(薬剤溶出性バルーン),ステントグラフトなどの新しいデバイスが開発され,血管内治療の頻度はますます増加していくものと思われる.しかし,血管内治療の適応とならない症例も存在することから,やみくもに血管内治療を選択するのではなく,患者の病態を十分に把握して,適切な薬物療法,血管内治療,外科的手術の選択を行っていくことが望まれる.

Disclosure of Conflict of InterestThe author indicated no potential conflict of interest.

文  献 1) Bhatt DL, Eagle KA, Ohman EM, Hirsch AT, Goto S, Mahoney

EM, Wilson PW, Alberts MJ, DʼAgostino R, Liau CS, Mas JL, Röther J, Smith SC Jr, Salette G, Contant CF, Massaro JM, Steg PG;REACH Registry Investigators:Comparative determinants of 4-year cardiovascular event rates in stable out-patients at risk of or with atherothrombosis. JAMA 304(12):