y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1...

19
1 原子崩壊 0 20 40 60 80 100 0 5 10 15 20 25 30 時間(年) 質量 系列1 3. 微分方程式 3.1. 微分方程式とは 放射性物質の現在(時刻 x)の質量を y とするとき、時間に対する質量の変化率は質量に比 例する。すなわち、 y’= −λy (3.1) が成立する。ここに λ>0 である。上のような方程式を線形微分方程式(linear differential equation)という。この方程式の解は、C を定数として y = Cexp(−λx) (3.2) で与えられる。このことは、(3.2)を時間 x で微分することで、直接確かめることができる。 時刻 x=0 のときの質量を y 0 とすれば、C= y 0 が分かり、 y = y 0 exp(−λx) (3.3) が得られる。定数を決定するために与えた条件を初期条件という。この関数は指数分布の 密度関数と同じ型のものである。質量が半減するまでの時間(半減期)は y 0 /2 = y 0 exp(−λx) から、 T = (1/λ)log2 で与えられる。時刻 x での質量と変化率の比の値は(3.1)から y’/y = −λ で、一定である。この比は寿命分布で考えたハザードに相当し、指数分布のハザードが一 定であることと同様の結果である。この定数 λ を反応速度定数と定義し、下の図のように表 現する。連続時間モデルでは矢線で変化の方向、その上の数値で反応速度を表わす。 y 0 = 100, λ = 0.05 とした原子崩壊のグラフを図 3.2 に示す。 λ 放射性物質 y 原子崩壊後の物質 z 3.1. 物質変化の状態図 3.2. 原子崩壊のグラフ

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Page 1: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

1

原子崩壊

0

20

40

60

80

100

0 5 10 15 20 25 30

時間(年)

質量 系列1

3. 微分方程式

3.1. 微分方程式とは

放射性物質の現在(時刻 x)の質量を y とするとき、時間に対する質量の変化率は質量に比

例する。すなわち、

y’= −λy (3.1)

が成立する。ここに λ>0 である。上のような方程式を線形微分方程式(linear differential

equation)という。この方程式の解は、C を定数として

y = Cexp(−λx) (3.2)

で与えられる。このことは、(3.2)を時間 x で微分することで、直接確かめることができる。

時刻 x=0のときの質量を y0とすれば、C= y0が分かり、

y = y0exp(−λx) (3.3)

が得られる。定数を決定するために与えた条件を初期条件という。この関数は指数分布の

密度関数と同じ型のものである。質量が半減するまでの時間(半減期)は

y0/2 = y0exp(−λx)

から、

T = (1/λ)log2

で与えられる。時刻 xでの質量と変化率の比の値は(3.1)から

y’/y = −λ

で、一定である。この比は寿命分布で考えたハザードに相当し、指数分布のハザードが一

定であることと同様の結果である。この定数 λ を反応速度定数と定義し、下の図のように表

現する。連続時間モデルでは矢線で変化の方向、その上の数値で反応速度を表わす。y0 = 100,

λ = 0.05とした原子崩壊のグラフを図 3.2に示す。

λ

放射性物質 y 原子崩壊後の物質 z

図 3.1. 物質変化の状態図

図3.2. 原子崩壊のグラフ

Page 2: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

2

式(3.1)は左辺にあつめると、方程式

λy + y’= 0

になり、一般にxとその関数yおよびその導関数 )(,...,,, nyyyy の関数として表現される方程

0,...,,,, )( nyyyyxF (3.4)

を常微分方程式という。上の方程式で )(ny が最高階の導関数であるとき、第n階微分方程式

という。方程式(3.1)は第1階微分方程式である。微分方程式を満たす関数yを決定することを

微分方程式を解くという。微分方程式は(3.2)のように任意定数を含めた解をもち、微分方程

式の階数nと同じ数の定数を含む解を一般解という。任意定数に特別な値を与えて決定した

解を特殊解または特別解という。上の例では初期条件つまり初期の質量を与えることによ

り、特別解(3.3)が決定されている。微分方程式を解く前に、微分方程式を作ってみることに

する。

例3.1. xx eCeCy 3

2

2

1 を一般解とする微分方程式をつくる。任意定数が2個あるので第2

階導関数までが必要になる。第1階と2階導関数を求めると

xx eCeCy 3

2

2

1 32 と xx eCeCy 3

2

2

1 94

を得る。この3つの式から定数 1C と 2C を消去して

065 yyy

が求められる。この方程式が第2階線形微分方程式である。

例 3.2. 主軸が y軸上にある放物線群2

2

1 CxCy が満たす微分方程式を求める。第1階

と 2階導関数を求めると、

xCy 12 と 12Cy

が求められる。この 2個の方程式から 1C を消去して

0 xyy

得られる。

次に積分することにより求められる微分方程式を解く。

例 3.3. xxy 32 の一般解および 0x で 0y かつ 1y である特別解を求める。与式

を積分して

1

2

233

31 Cxxy

を得る。ここに 1C は積分定数である。さらに上式を積分して、一般解

21

3

214

121 CxCxxy

を得る。 0x のとき 1y であるから、最初の式から 11 C が分かる。さらに 0x のと

き 0y であるので、第 2の式から 02 C を得る。以上から、求める特別解は

xxxy 3

214

121

Page 3: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

3

となる。

問 2.1. xxy 3sin2 の一般解および 0x で 0y かつ 1y である特別解を求める。

問 2.2. 1C と 2C を任意定数とする次の方程式から微分方程式をつくれ。ただし、mと nは 0

でない定数とする。

(1) xCxCy sincos 21

(2) nmeCeCy nxmx 21

(3) mxCmxCy sincos 21

(4) mxmx xeCeCy 21

問 2.3. 傾き aで y切片が bの直線群が満たす微分方程式を求めよ。

問 2.4. 原点を通る円群を表す方程式が満たす微分方程式を求めよ。

微分方程式(3.4)に解が存在することを前提に解法の研究が歴史的に行われてきたが、「解

が存在するかどうか」の判定をすることの重要性は 19世紀に入ってコーシ-によって提唱

され、リプシッツにより「解が存在する」ための条件が与えられた。コーシーは導関数)(,...,,, nyyyy の関数に条件

n

n yxyyxyyxyyxy )(,...,)(,)(,)( 0

)(

201000 (3.5)

を与えて、微分方程式(3.4)を解くことを考えた。この条件を初期条件という。微分方程式の

解の存在定理は次のように与えられている。

定理 3.1. 関数 )(,...,,,, nyyyyxF が初期条件を含む適当な領域で定義され、各変数に関し

て連続、かつ )(,...,,, nyyyy に関して連続な第1階編導関数をもつならば、 0xx の近く

で(3.4)を満たす解 )(xfy が存在し、ただ一つである。

2. 第 1 階微分方程式

この節では変数分離型の微分方程式と線形微分方程式を取り扱う。最初に変数分離型の

微分方程式の解法を説明する。関数 )(xF と )(yG に対して、

)(

)(

yG

xF

dx

dy

で示される方程式を変数分離型の微分方程式という。微分の定義から

dxxFdyyG )()(

となり、両辺を積分して

CdxxFdyyG )()(

を得る。ここにCは積分定数であり、この場合は一般解の任意定数となる。

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4

例 3.4. 微分方程式 dxdyxy

y 1

12 を解く。両辺を積分して

1

2

21 log)1log( Cxy

を得る。この結果から

xeyC112

となり、平方することで

22 1 Cxy

がわかる。ここに 12CeC である。

問 2.5. 次の微分方程式を解け。

(1) xyy tan)1( 2 (2) 0)cos(sin)cos(sin dyxxdxxx

(3) ydxxxyxx )1()1( 22 (4) ydxxdy cottan (5) 21)1( yyxxy

問 2.6. 0)1(cos2 dyxydx の解で 0x のとき 0y となるものを求めよ。

次に線形微分方程式の解法を与える。第 1階線形微分方程式は

)()()( 10 xqyxpyxp

で表現される。この方程式は 0)(0 xp に対して意味をもつので、上の方程式の両辺を

)(0 xp で割ったものを改めて

)()( xqyxpy (3.6)

で表現する。まず、 0)( xq の場合を解くことにする。このとき、方程式は

0)( yxpy (3.7)

となり、変数分離型であるから、

dxxpdyy

)(1

と変形できる。両辺を積分すると

1)(log Cdxxpy

を得る。従って

dxxpCy )(exp (3.8)

である。ここに、 1CeC とする。この解は斉次方程式(3.7)の解であり、この解を 1y とし

ておく。目的の方程式は(3.6)であるので、定数Cを xの関数と考えて、(3.6)を解く方法を与

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5

える。この方法を定数変化法という。(3.8)を(3.6)の解と仮定して、改めて xで微分すると

dxxpCyxpdxxpxCpdxxpCy )(exp)()(exp)()(exp (3.9)

が得られる。(3.6)と(3.9)から

dxxpCxq )(exp)(

を得る。このことから

dxxp

xqC

)(exp

)(

となり、積分することで

1

)(exp

)(

dx

dxxp

xqC

を得る。これを(3.8)に代入すると

dxxpdx

dxxp

xqy )(exp

)(exp

)(2

が得られる。この関数を微分すると

dxxpdx

dxxp

xqxpdxxp

dxxp

xqy )(exp

)(exp

)()()(exp

)(exp

)(2

2)()( yxpxq

であり、微分方程式(3.6)を満たすので、 2y は特別解である。ここで 21 yyy が(3.6)を満

たすことは微分することで直接確かめられるので、一般解は

dxxpCdxdxxp

xqdxxpy )(exp

)(exp

)()(exp

Cdx

dxxp

xqdxxp

)(exp

)()(exp (3.10)

である。

例 3.5. 22 xyy を解く。まず、 02 yy を解いて

xCey 2 (3.11)

を得る。ここで、任意定数を変数uと見なして、

xuey 2

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(3.11)を xで微分すれば

xxx euyeuuey 222 22

となる。これを与えられた微分方程と比較して、

22 xeu x

である。従って、xexu 22 を xで積分して

dxxeexdxexu xxx 222

2122

Cexeexdxexeex xxxxxx 2

412

2122

212

212

2122

21

を得る。従って、一般解は

41

212

21222

412

2122

21 xxCeeCexeexy xxxxx

である。

例 3.6. xyyx sin2 を解く。まず、 02 yyx を解くことを考える。この方程式は変

数分離型であるので

dxdyxy21

として、両辺を積分することで Cxy log2log が出る。すなわち、 2

1

x

Cey である

ので、定数Ce を改めてCと置くことで 2

1

xCy と表現できる。与えられた方程式を解く

ために、定数変化法を用いる。定数Cを xの関数と見なして 2

1

xuy を xについて微分する。

212

xxuyy

この方程式を問題の方程式と比較すると

xux

sin1

となるので、 xxu sin を積分することで関数uが決定できる。部分積分を用いて

Cxxxxxu cos2sin2cos2

となる。以上から、一般解

222 sincossincos 111

x

C

xxxxxCxxxy

を得る。

問 2.7. 次の線形微分方程式を解け。

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7

(1) xyy 3 , (2) xxyxy sincossin , (3) xxyxy )1( 2

問 2.8. 半径 Rで高さ H の円柱状の容器を垂直に置き、水を満水させている。その底には半

径 rの穴があり、それを栓で塞いでいる。その栓を抜くと底から水面までの高さ yと穴の面

積に比例して毎秒あたり水が流れ出す。その比例定数を として、水面までの高さが H21 に

なるまでの時間を求めよ。

3. 高階線形微分方程式

第 2節で取り扱った線形微分方程式(3.5)の一般化として、第 n階線形微分方程式の標準形

は次のようになる。

)()()()()( 1

)1(

1

)(

0 xqyxpyxpyxpyxp nn

nn

(3.12)

0)( xq のとき同次線形微分方程式といい、

0)()()()( 1

)1(

1

)(

0

yxpyxpyxpyxp nn

nn (3.13)

となる。また、係数 )(xpk (k=1,2,…,n)が定数のときは、定数係数の線形微分方程式と呼ば

れ、ここでは次式で表現する。

)(1

)1(

1

)(

0 xqyayayaya nn

nn

(3.14)

01

)1(

1

)(

0

yayayaya nn

nn (3.15)

ここでは、定数係数の微分方程式(3.14)の解法を考える。まず、同次線形微分方程式(3.15)

の性質を考える。 )(xyk (k=1,2,…,m)が(3.15)の解であるとき、それらの一次結合

m

k

kk xyC1

)(

も解になる。(3.15)の解 )(xyk (k=1,2,…,n)が定数 kh (k=1,2,…,n)が全て 0になる以外に

0)(1

n

k

kk xyh

となることがないとき、一次独立という。これらの解の一次結合

n

k

kk xyC1

)(

が解になることは直接(3.15)に代入して示されるので、この解が一般解である。(3.14)の特別

解を )(x とするとき

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8

)()(1

xxyCn

k

kk

は(3.14)の解になる。逆に )(xy が(3.14)の解とすると )()( xxy は(3.15)の解となるので、

一般解は

)()()(1

xxyCxyn

k

kk

(3.16)

である。

定理 3.2. 関数 )(xyk (k=1,2,…,n)が一次独立であるための必要十分条件はローンスキー行列

)1()1(

2

)1(

1

21

21

n

n

nn

n

n

yyy

y

y

yy

yy

の逆行列が存在することである。

証明 方程式

0... 2211 nn yCyCyC

が成立するとする。この両辺を 1n 階まで微分すると

0

0

0

2

1

)1()1(

2

)1(

1

21

21

n

n

n

nn

n

n

C

C

C

yyy

y

y

yy

yy

が得られる。ローンスキー行列が逆行列をもつので、 0kC (k=1,2,…,n)が分かる。従って

関数 )(xyk (k=1,2,…,n)は一次独立である。

同次線形微分方程式(3.15)の n個の一次独立な解を求めることを考える。関数rxey

の性質を調べる。

ryrey rx , yryry 2 ,…, yry nn )(

であるので、これらを(3.15)に代入して

01

1

10

rx

nn

nn eararara

を得る。従って、

0)( 1

1

10

nn

nn ararararf (3.17)

となり、 rxey が解であるとき、上の方程式を満たすことが分かる。この方程式を特性方

程式という。上の方程式が異なる n 個の解 nrrr ...,, , 21 をもつとき、解xrxrxr neee ...,, , 21 が一次

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独立であることを示す。この場合のローンスキー行列の行列式は

11

2

1

1

211

11

2

1

1

21

111

exp

21

21

21

n

n

nn

nni i

xrn

n

xrnxrn

xr

n

xr

xrxr

xrxr

rrr

rrrr

ererer

er

e

erer

ee

n

n

n

である。このとき

0

111

11

2

1

1

21

ji

ji

n

n

nn

n rr

rrr

rrr

であるので、ローンスキー行列は逆行列をもつことが分かる。このことより、解xrxrxr neee ...,, , 21 は一次独立であり、(3.15)の一般解は

xr

n

xrxr neCeCeC ... 21

21

で与えられる。

例 3.7. 0103 yyy を解く。特性方程式をつくると

01032 rr

であり、これを解いて、 5 ,2r を得る。このことから、一般解は

xx eCeCy 5

2

2

1

である。

例 3.8. 0 yyy を解く。特性方程式をつくると

012 rr

であり、これを解いて2

31 ir を得る。一般解は

xxxxx iiii

eCeCeeCeCy 2

3

2

3

21

2

31

2

31

2121 (3.18)

である。オイレルの関係は

sincos ie i

であり、

となる。一般解(3.18)は実数であるから、 12 CC となる必要がある。 21 DDと を任意の実数

の定数として iDDC 211 とすれば

xixexixexx ii

2

3

2

3

2

3

2

3 sincos ,sincos 23

23

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10

xxDeyx

2

322

31 sin2D cos22

1

が一般解である。従って、任意定数 21 22 DDと それぞれ 21 CC と に置き換えると

xCxCeyx

23

223

1 sincos2

1

が解である。

例 3.9. 044 yyy を解く。特性方程式 0442 rr を解いて、 2r (重解)を

得る。このとき、 xx xee 22 , が解になることは直接確かめられる。これらは一次独立な解で

あるから、任意定数 21 CCと に対して、一般解は

xx xeCeCy 2

2

2

1

である。

定理 3.3. 特性方程式 0)( tf の解 rが m 重解であるとき、 rxmrxrx exxee 1,...,, は微分方程式

(3.15)の解である。

証明 証明を略す。

上の定理の解が一次独立であることは示されるので、例 3.8の要領で一般解を求めること

ができる。

問 2.9. 次の線形微分方程式を解け。

(1) 043 yyy , (2) 032 yyy , (3) 09124 yyy ,

(4) 09 yy

最後に、定数係数の微分方程式(3.14)で 0)( xq 場合の解法を考える。

例 3.9. xeyyy 2103 を解く。例 3.7の結果から 0103 yyy の一般解は

xx eCeCy 5

2

2

1 (3.19)

である。定数 1C と 2C を xの関数として、この解 yを微分すると、

52 5

2

2

1

5

2

2

1

xxxx eCeCeCeCy

となる。与方程式の特別解を求めるために、次の条件をおく。

xx eCeCy 5

2

2

1 52 (3.20)

このとき、

05

2

2

1 xx eCeC (3.21)

を得る。(3.20)を微分して

xxxx eCeCeCeCy 5

2

2

1

5

2

2

1 25452 (3.22)

(3.19), (3.20), (3.22)を与方程式に代入して

xxx eeCeC 25

2

2

1 52 (3.23)

を得る。(3.21)から

xeCC 7

71

271

1 ,

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11

が分かり、これを解いて、

xeCxC 7

491

271

1 ,

となり、これを(3.19)に代入して特別解は

xxx exexey 2

491

712

4912

71

を得る。従って、一般解は

xxxxx eCeCxexeCeCy 5

2

2

1491

712

491

715

2

2

1

である。

微分方程式(3.15)の特性方程式が異なる n個の解を持ち一般解が

xr

n

xrxr neCeCeCy ... 21

21 (3.24)

で与えられるとき、定数 kC を xの関数として変数変化法を用いた解法を与える。

0... 21

21 xr

n

xrxr neCeCeC

0... 21

2211 xr

nn

xrxr nerCerCerC

……………

0... 22

22

2

1121 xrn

nn

xrnxrn nerCerCerC (3.25)

の条件をつけて、(3.24)を微分すると

xr

nn

xrxr nerCerCerCy ... 21

2211

xr

nn

xrxr nerCerCerCy 22

22

2

11 ... 21

………………

xrn

nn

xrnxrnn nerCerCerCy 11

22

1

11

)1( ... 21

xrn

nn

xrnxrnxrn

nn

xrnxrnn nn erCerCerCerCerCerCy 11

22

1

112211

)( ... ... 2121

であり、これを方程式(3.14)に代入して

0

21 )(11

22

1

11 ... a

xqxrn

nn

xrnxrn nerCerCerC (3.26)

を得る。従って、 1n 個の方程式(3.25)と(3.26)を合わせて、関数 kC が決定される。

問 2.10. 次の線形微分方程式を解け。

Page 12: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

12

(1) xyyy sin124 (2) xyyyy 3106116

(3) xxeyyy 54 (4) xyyy 2sin

4. 連立線形微分方程式

A と B の 2 種類の物質の間の変化が可逆的である場合を考える。通常の化学反応や生体

内成分の増加減少などを考えれば、図 3.3のようになる。

λ1

Aの量 y1 Bの量 y2

λ2

図 3.3. 物質量の可逆変化

図 3.3から微分方程式を作れば

22111 yyy

22112 yyy

である。この方程式を行列表現して

2

1

21

21

2

1

y

y

y

y

(3.27)

を得る。ここで、行列

21

21

の固有値は-(λ1 + λ2)と 0で、 対応する固有ベクトルは

(λ1, − λ2), (1,1)

である。それぞれを(3.27)の左から掛けて、次の方定式を得る。

λ1y1’ − λ2y2’ = −(λ1 + λ2) (λ1y1 − λ2y2) (3.28)

y1’ + y2’ = 0 (3.29)

これを、初期値 y1 = C, y2 = 0 (t = 0)で解くと、(3.28)から

λ1y1 − λ2y2 =λ1Cexp(−(λ1 + λ2)t)

y1 + y2 = C

すなわち、

122211

21

1 ,)(exp yCytC

y

(3.30)

を得る。(3.30)をグラフにすると、図 6.4のようになる。この図から分かるように、見掛け

上で 2 種類の物質量が変化しない平衡状態に到達することが理解できる。平衡状態は双方

Page 13: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

13

物質量変化

0

20

40

60

80

100

120

0 5 10 15 20

時間

A

B

向の変化率が釣り合っている状態である。

図 3.4. 物質 Aと Bの時間変化: C = 100, λ1 = 0.5, λ2 = 0.3

平衡状態に到達したときの平衡量を求める。y1’ = y2’ = 0より、(3.28), (3.29)と(3.30)から

λ1y1 − λ2y2 = 0

y1 + y2= C

が分かる。これを解いて

12

21

21 , yCy

Cy

を得る。平衡量が反応速度定数の比の値になることは直感的に予想がつき、計算上で導出

されることが面白い。図 3.4のときは

y1 = 37.5, y2= 62.5

である。

問 3.11. 初期値 y1 = C1, y2 = C2 (t = 0)で、図 3.3のモデルを求め、C1 = 30, C2 = 70, λ1 = 0.5, λ2 =

0.3で変化のグラフを描け。

上の例のような方程式(3.27)を連立線形微分方程式という。ここでは定数係数の連立線形

微分方程式を取り扱う。xの関数 nyyy ,...,, 21 に対して、その導関数が

nnnnnn

nn

nn

yayayay

yayayay

yayayay

2211

22221212

12121111

で示されるときを考える。これを行列で表現すると

Page 14: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

14

nnnnn

n

n

n y

y

y

aaa

aaa

aaa

y

y

y

2

1

21

22221

11211

2

1

(3.31)

となる。線形微分方程式(3.14)は

)1(

21 ,...,, n

n yyyyyy

のようにおくことで、上の方程式の特別な場合になる。すなわち、

nnn

n

nn

ya

ay

a

ay

a

ay

yy

yy

yy

0

12

0

11

0

21

32

21

,

,

,

である。次のように行列とベクトルをおく。

nnnnnn

n

n

y

y

y

y

y

y

aaa

aaa

aaa

2

1

2

1

21

22221

11211

, , yyA

このとき(3.31)は

Ayy (3.32)

で表現できる。行列Aに対して、の n次方程式

0

21

22221

11211

nnnn

n

n

aaa

aaa

aaa

を行列Aの特有方程式といい、その解を固有値とよぶ。行列Aが異なる n 個の固有値

nrrr ...,, , 21 をもち、その固有値に対する列固有ベクトル ),...,2,1( nii h を列ベクトルとす

る行列 nhhhH ,...,, 21 を用いて、

yHz1

のように変換すれば、

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15

zz

nr

r

r

00

00

00

2

1

が成立する。上の方程式を成分ごとに示すと

),...,2,1( nizrz iii

となり、

),...,2,1( nieCzxr

iii

が得られる。従って、(3.32)の一般解は

ny

n

r

r

eC

eC

eC

2

1

2

1

Hy

で与えられる。方程式

nir iii ,...,2,1 Ahh

が成立するので、固有ベクトルを求めるためには

0h

i

innnn

ni

ni

raaa

araa

aara

21

22221

11211

(3.33)

を 満 た す 解 を 求 め れ ば よ い 。 固 有 ベ ク ト ル nii ,...,2,1 h の 成 分 を

ninkhki ,...,2,1;,...,2,1 とすると、(3.32)の一般解は

n

j

xr

ijji niehCy j

1),...,2,1(

で求められる。

例 3.10. 微分方程式

2

1

2

1

31

43

y

y

y

y

を解く。固有方程式は

031

43

Page 16: y x20131220).pdf3 となる。 問2.1. y c 2x sin3x の一般解および x 0 で y 0 かつ y 1 である特別解を求める。 問2.2. C 1 と C 2 を任意定数とする 次の方程式から微分方程式をつくれ。

16

より、 0562 であり、固有値 5,1 を得る。次に固有ベクトルを求める。 1 の

とき、

021

42

21

11

h

h

を 211 h として解けば、 121 h を得る。 5 とき

021

42

22

12

h

h

から、解 1,2 2212 hh が求まる。以上から、微分方程式の一般解は

x

x

eC

eC

y

y5

2

1

2

1

11

22

すなわち

xxxx eCeCyeCeCy 5

212

5

211 ,22

である。

問 3.12. 次の連立線形微分方程式の一般解を求めよ。

2

1

2

1

31

22

y

y

y

y

例 3.10. 微分方程式

2

1

2

1

31

13

y

y

y

y

を解く。固有方程式は

031

13

で、 i 3 を得る。 i1 のときの固有ベクトルを求める。連立方程式

01

1

21

11

h

h

i

i

は不定であり、 111 h とすると ih 12 が求まる。 i1 のときは

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17

01

1

22

12

h

h

i

i

から、 112 h として ih 22 が得られる。従って、一般解は

xixi

xixi

xi

xi

ieCieC

eCeC

eC

eC

iiy

y)3(

2

)3(

1

)3(

2

)3(

1

)3(

2

)3(

1

2

1 11

である。実数解は定数が複素共役、すなわち 12 CC で無ければならないので、 CC 1 と

おいて

xixi

xixi

ieCCie

eCCe

y

y

)3()3(

)3()3(

2

1

である。また、 ikkC 21 として

xkxke

xkxke

y

yx

x

cossin2

sincos2

21

3

21

3

2

1

で一般解を表現することもできる。

問 3.13. 微分方程式

2

1

2

1

31

12

y

y

y

y

を解け。

問 3.14. 微分方程式

3

2

1

3

2

1

12171

7101

594

y

y

y

y

y

y

を解け。

5. 微分方程式の級数解法

微分方程式は陽に解けるものばかりでない。ここで級数を用いて解く方法を考える。簡

単のために、方程式

yy 2' (3.34)

を次のようにして解いてみる。この解としての関数 yがテイラー展開できて

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18

...2

210 xaxaay (3.35)

で示されるとき、形式的に項別微分すると

...32' 2

321 xaxaay (3.36)

である。(3.35)と(3.36)を(3.34)に代入して

...222...32 2

210

2

321 xaxaaxaxaa

を得る。これを項別に比較すると

,...24,23,22,2 34231201 aaaaaaaa

を得る。したがって

,...!4

2,

!3

2,

!2

2,2 0

4

40

3

30

2

201 aaaaaaaa

となる。この形式的な比較から

xeaxxay 2

0

32

0 ...!3

2

!2

221

(3.37)

が分かる。逆に、(3.37)が微分方程式(3.34)をみたすことが示される。この結果は線形微分方

程式の解法でも求めたものと一致する。

第1階微分方程式は

),(' yxfy

で表現される。上の右辺の関数が byax ||,|| でテイラー展開(べき級数展開)ができる

とき、関数は 0,0 yx の近傍で解析的という。この場合は微分方程式の解が存在し、そ

の解は 0,0 yx の近傍で解析的である。

例 3.11. 微分方程式 xyxy sin2' を級数を用いて解く。

...2

210 xaxaay

とするとき

...32' 2

321 xaxaay

...!5

1

!3

1sin 53 xxxx

であるので、

...!5

1

!3

1...)(2...)32( 532

210

2

321 xxxxaxaaxaxaax

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19

となる。両辺を比較して

,...0,!5

1)25( ,0 ,

!3

15 ,04 ,13 ,0 6543210 aaaaaaa

を得る。帰納的に

,...,!79

1,0,

!57

1 ,0 ,

!35

1 ,0 ,

3

1 ,0 76543210

aaaaaaaa

が得られ、

...!79

1

!57

1

!35

1

3

1 753

xxxxy

が解である。

問題 3.15. 例 3.11線形微分方程式を変数変化法で解き、その解をテイラー展開せよ。

問題 3.16. 22' xyyxy を解け。