ボーカルサウンドに eclipse td510zmk2 よりリア...

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競合製品と比べて ボーカルサウンドに よりリアルな滑らかさを実現 > 「What Hi-Fi Sound And Vision 2012年8月号」 www.whathifi.com E CLIPSEほど、フォーカスを絞って いるスピーカーは数少ない。同社 製品の製造目標はただひとつ。可 能な限り正確にインパルス信号を再現す ること。 インパルスとは、瞬間的に最大に炸裂 した信号だ。完全に再生された場合、位 相の問題なしに、全周波数帯域を(数学 的に)表すことができる。ECLIPSEの論 理では、スピーカーが適切にインパルス を再現できれば、音質に関する他のすべ ての点にも対応できる。 口で言うのはたやすいが、可動コイル ドライバーを使用した場合、実際には達 成することはできない。従来のマルチドラ イバー設計では、忠実にインパルス信号 を再生することは困難だ。そのため、シン グル・ドライバーを選択したのも当然と言 えよう。 両極の周波数ではシングルドライバ ーの問題は解決できない。 ここでは物理学の法則が邪魔をす る。ECLIPSEのエンジニアがコーン、モ ータシステム、キャビネットの大きさにつ いてどんなに改善しても、シングルドライ バーでは完全で安定した周波数を実現 することは困難である。 低音域では、大量の空気を動かすにす ぎない。本製品に採用された10cmのド ライバーでは、いかに高性能であろうと、 完全で安定した周波数反応の実現は難 しい。後部にバスレフポートを配置したに もかかわらず、特に低音に深みがないの も驚くことではない。 高音域でも同じだ。ドライブユニット は、適切に高音を再現するには軽量かつ 堅牢でなければならない(1秒間に何千 回も振動する必要がある)。さらに ECLIPSEが選んだドライバーのサイズで は、典型的とも言える25mmツイーターと 同じ性能はない。この結果、この価格レベ ルの製品としては高音に洗練さを欠く。絶 対音量、パワーハンドリングおよび感度 (84dB/W/mと低め)が劣るという問題 もある。 しかし、2005年に発売された前バージ ョンと比較すると、可動コイル設計が持つ 限界という制限を抱えながら、ECLIPSE のエンジニアは、TD510ZMK2に対して 大幅な改善を果たしたことは明らかだ。今 回の新製品のほうが、間違いなくよりスム ーズで、重厚で、バランスの良い音質となっ ている。 シングルドライバーのアプローチでは 限界があるが(すべての競合商品にも限 界があるように)、長所は非常に納得のい くものである。 全周波数帯域を実現するために単一の ユニットを使うと、複数のドライブユニット が抱えるインテグレーションの問題を解 消できる。その上、信号位相、シャープな ECLIPSE TD510ZMK2 独特のデザインで、サウンドを完璧に仕上げたステレオスピーカー 価格 £3840 ★★★★★ 特徴 シングルドライブユニット、ABSプラスチック製のカーブ型のキャビネット、力学的エネルギー 管理に対する注意深い配慮の非凡にして絶妙な組み合わせ。 イケているポイント: このECLIPSE製品を特徴付けているのは、シングルドライバー・スピーカ ーの印象的な外観と独特なサウンドだ。 特徴 特徴 1.巧みなキャビネットデザイン 2.革新的な内部構造 3.驚くほどの優れたサウンド 解像度、生き生きとしたダイナミクスを台 無しにするクロスオーバーを必要としな い。すべてのクロスオーバー·ネットワーク にはある程度、これらの問題がある。 もちろん、説得力のあるサウンドを実 現するには、ドライブユニット構成以上の ものが必要になる。多くの革新的な技術 が本製品に活用されている。 例えば、このドライブユニットは通常と は異なり、カーブした筐体にボルトで固定 されていない。その代わりに重い内部アン カーによって支えられ、これによりスタン ドに機械的振動を伝えている。また、ダン パーが効いたキャビネットは、内部構造を しっかりと気密状態で包んでいる。 こうした調整の効果と筐体の材質によ り、キャビネットの振動を最小限にし、明 瞭な音を実現している。キャビネットの卵 型の形状が、内部および外部の反射を 音質的に損なわないようにするのに役立 っている。このため、TD510ZMK2は優 れたステレオイメージと解像度を達成し ている。 TD510ZMK2の低周波には限界があるが、サブを使用して改善で きるのではないかと思われる。ECLIPSEの驚異的なスピードを考え ると、価格が1200ポンドのB&W PV1Dは、理想的な製品と言える。 ECLIPSE/B&Wコンボを何度も微調整し、バランスのとれた性能 を実現した。スケールとステレオサウンドステージングに著しい改善 が見られる。 では、失われたものはあるだろうか?完全なシームレス化には成 功していない。しかし、あと一歩というレベルで、比較できるマルチド ライバー製品の多くと比べた場合、インテグレーションがわずかに 劣る程度だ。ECLIPSEファンであれば、完璧ではないが検討する価 値は十分にある。 スタンドは、 510のサウンドに 影響を与える 不要な機械的な 振動を取り除く。 B&W PV1Dサブウーファーとの併用

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競合製品と比べてボーカルサウンドによりリアルな滑らかさを実現

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0123456789 0123456789「What Hi-Fi Sound And Vision 2012年8月号」 www.whathifi.com

E CLIPSEほど、フォーカスを絞っているスピーカーは数少ない。同社製品の製造目標はただひとつ。可

能な限り正確にインパルス信号を再現すること。

インパルスとは、瞬間的に最大に炸裂した信号だ。完全に再生された場合、位相の問題なしに、全周波数帯域を(数学的に)表すことができる。ECLIPSEの論理では、スピーカーが適切にインパルスを再現できれば、音質に関する他のすべての点にも対応できる。

口で言うのはたやすいが、可動コイルドライバーを使用した場合、実際には達成することはできない。従来のマルチドライバー設計では、忠実にインパルス信号を再生することは困難だ。そのため、シングル・ドライバーを選択したのも当然と言えよう。

両極の周波数ではシングルドライバーの問題は解決できない。ここでは物理学の法則が邪魔をする。ECLIPSEのエンジニアがコーン、モータシステム、キャビネットの大きさについてどんなに改善しても、シングルドライバーでは完全で安定した周波数を実現することは困難である。

低音域では、大量の空気を動かすにすぎない。本製品に採用された10cmのドライバーでは、いかに高性能であろうと、完全で安定した周波数反応の実現は難しい。後部にバスレフポートを配置したにもかかわらず、特に低音に深みがないのも驚くことではない。

高音域でも同じだ。ドライブユニットは、適切に高音を再現するには軽量かつ堅牢でなければならない(1秒間に何千

回も振動する必要がある)。さらにECLIPSEが選んだドライバーのサイズでは、典型的とも言える25mmツイーターと同じ性能はない。この結果、この価格レベルの製品としては高音に洗練さを欠く。絶対音量、パワーハンドリングおよび感度

(84dB/W/mと低め)が劣るという問題もある。

しかし、2005年に発売された前バージョンと比較すると、可動コイル設計が持つ限界という制限を抱えながら、ECLIPSEのエンジニアは、TD510ZMK2に対して大幅な改善を果たしたことは明らかだ。今回の新製品のほうが、間違いなくよりスムーズで、重厚で、バランスの良い音質となっている。

シングルドライバーのアプローチでは限界があるが(すべての競合商品にも限界があるように)、長所は非常に納得のいくものである。

全周波数帯域を実現するために単一のユニットを使うと、複数のドライブユニットが抱えるインテグレーションの問題を解消できる。その上、信号位相、シャープな

ECLIPSE TD510ZMK2独特のデザインで、サウンドを完璧に仕上げたステレオスピーカー

価格 £3840 ★★★★★

特徴 シングルドライブユニット、ABSプラスチック製のカーブ型のキャビネット、力学的エネルギー管理に対する注意深い配慮の非凡にして絶妙な組み合わせ。イケているポイント:このECLIPSE製品を特徴付けているのは、シングルドライバー・スピーカーの印象的な外観と独特なサウンドだ。

特徴

特徴1.巧みなキャビネットデザイン2.革新的な内部構造3.驚くほどの優れたサウンド

解像度、生き生きとしたダイナミクスを台無しにするクロスオーバーを必要としない。すべてのクロスオーバー·ネットワークにはある程度、これらの問題がある。

もちろん、説得力のあるサウンドを実現するには、ドライブユニット構成以上のものが必要になる。多くの革新的な技術が本製品に活用されている。

例えば、このドライブユニットは通常とは異なり、カーブした筐体にボルトで固定されていない。その代わりに重い内部アンカーによって支えられ、これによりスタンドに機械的振動を伝えている。また、ダンパーが効いたキャビネットは、内部構造をしっかりと気密状態で包んでいる。

こうした調整の効果と筐体の材質により、キャビネットの振動を最小限にし、明瞭な音を実現している。キャビネットの卵型の形状が、内部および外部の反射を音質的に損なわないようにするのに役立っている。このため、TD510ZMK2は優れたステレオイメージと解像度を達成している。

TD510ZMK2の低周波には限界があるが、サブを使用して改善できるのではないかと思われる。ECLIPSEの驚異的なスピードを考えると、価格が1200ポンドのB&W PV1Dは、理想的な製品と言える。

ECLIPSE/B&Wコンボを何度も微調整し、バランスのとれた性能を実現した。スケールとステレオサウンドステージングに著しい改善が見られる。

では、失われたものはあるだろうか?完全なシームレス化には成功していない。しかし、あと一歩というレベルで、比較できるマルチドライバー製品の多くと比べた場合、インテグレーションがわずかに劣る程度だ。ECLIPSEファンであれば、完璧ではないが検討する価値は十分にある。

スタンドは、510のサウンドに

影響を与える不要な機械的な振動を取り除く。

B&W PV1Dサブウーファーとの併用

高負荷な楽曲でも魅惑的なサウンド効果が期待できる。これらのスピーカーは、 どんなにかすかなリズムトラックでも捕え、楽しさを完全に再現する。

「What Hi-Fi Sound And Vision 2012年8月号」 www.whathifi.com0123456789

2.5mの距離)、TD510ZMK2を、視聴者のすぐ前で交差するような角度で設置するとよい結果が得られた。簡単に調整できるスピーカー部は、耳の高さに調整し、背面の壁からも離しておくのが理想的だ。

これで最高の結果が得られ、素晴らしく安定したサウンドが楽しめる。ボーカルや楽器は、非常に安定して定位され、パ

ン効果が思う存分に発揮される。例えばベートーベンの「ピアノ協奏曲

第5番」のような24-bit/192kHzの録音の場合、ソニックピクチャー内に楽器を配置 するのは非常に簡単だ。ピンポイントの明瞭さにより、ステレオイメージングにおける深度を簡単に判別することができる。これは簡単なことではない。

適切にインパルスを再現するという目的を考えると、TD510ZMK2が自信を持ってリードする音も、後続残響音も再現していることは当然だと言えよう。それ以

TEMPTATIONS

評価 ★★★★★長所: 明確な洞察力に基づいた設計と、驚きの敏捷性、堅固なステレオイメージング、素晴らしい作り。短所:両極の周波数の問題、セットアップがやや煩わしい点。判定タイミング、ディテールやイメージングを何よりも大切にするなら、最適の製品 。

詳細

設計者のメモ「わたしたちの課題は、インパルス応答を維持しながらパワーと周波数帯域を改善することにありました」 * 柴田清誠

ECLIPSEエンジニア

仕様タイプ: フロアスタンディング能率: 84dB/W/mインピーダンス: 6 Ω最大出力: 50Wバイワイヤー: なし色: 3色寸法: 98 x 38 x 39cmドライブユニット

ECLIPSEは、この10cmユニットに真剣に取り組み、製品を生み出すまで、40個以上の試作品を製作。 新ユニットでは新形状のグラスファイバー製のコーンを採用。従来の製品より軽量かつ高性能となり、音の伝わりが約40%と著しく増加した。歪みレベルも低減。

クランプ調節スピーカーは便利な調節可能なクランプによって所定の角度に保つことができる。ベストなサウンドを得るには、耳の高さにする必要があるので、調節できることは嬉しいことだ。Zモデルではない、 通常のTD510MK2にはフロアスタンドの代わりに台座が付属されているが、価格は半額だ。つまりこのエレガントで長いスタンドは、製造コストのおよそ半分を占めていることになる。

内部アンカードライバーユニットは、ECLIPSEがアンカーと呼ぶ部品に設置されている。アンカーとは的を得た名前だ。アンカーはドライブユニットを固定するだけの重い物体ではなく、スピーカーが生成するエネルギーをスタンドに伝播させる。TD510ZMK2は、従来製品よりも高密度のアンカーを搭載している。

キャビネットこのカーブしたキャビネットはABS(プラスチックのレゴブロックと同じ原料)製で、従来より14パーセント大型化された。 この形状のキャビネットを使用することで、木製パネルが必ず抱える音色と屈曲の問題が回避され、滑らかな形状で、反射の影響を抑えている。 筐体はアンカーの広げたアームで支えられており、ただスピーカー内部をカバーするようになっている。

上に、このスピーカーは、考え付くどのマルチドライバーの競合製品と比較しても、良質の録音のペースとリズムを見事に再現している。

TD510ZMK2はダイナミックな巧妙さを備えた素晴らしい方法で、耳を傾ける価値がある音を生み出している。プリンスの「When Doves Cry」のようなハードな楽曲であっても、聴き応えのある音を

実現している。これらのスピーカーはどんなにかすかなリズムトラックをも捕え、楽しさを完全に再現する。

もちろん、どんなスピーカーにも妥協がある。ECLIPSEは、テンポをはずさず、驚くほどにディテールを再現するスピーカーを製作することを選択した。耳にしたことのあるどの競合他社と比較しても優れている。明確かつ直感的な方法で、非常に複雑な音楽を編成する。

おそらく同社がこれまでに作ったスピーカーの中で最もバランスのとれた製品であるが、好き嫌いが分かれるだろう。 しかし今までの競合製品がまねのできないようなことをやっているのは確かだ。

例えば、「50 Words For Snow」を唄うケイト・ブッシュの歌声も、真っ直ぐに伝わってくる。従来の他社製品と比べて、低音のダイナミクスの真に迫った滑らかさによって、ケイト・ブッシュの歌声がより強く説得力を持つ。本製品と比べると、中音専用ユニットがある3ウェイデザインのスピーカーでも曖昧でぼやけて聞こえるほどだ。

ECLIPSEのアプローチもうひとつの優れた点は、洗練されたステレオイメージングの方法だ。比較的近くに座り(約