Titleファイナンシャル・ステイトメンツからファイナンシャル・リポーティングヘ-FASB概念ステイトメントにおける外部会計情報の拡充-
Author(s) 照屋, 行雄
Citation 沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 11(1-2): 97-126
Issue Date 1987-03-31
URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/6760
Rights 沖縄大学経済学会
ファイナンシャル・ステイトメンツカコら
ファイナンシャル・リポーテイングヘ
ーFASB概念ステイトメントにおける外部会計情報の拡充一
照屋行雄
●●●●●●
IⅡⅢⅣVⅥ
はじめに
ファイナンシャル・ステイトメンツの範囲と限界
ファイナンシャル・リポーティングの概念と目的
ファイナンシャル・リポーティングの範囲と情報特性
ファイナンシャル・リポーティング開示の特徴と問題点
おわりに
Iはじめに
企業を取り巻く経済的社会的環境の変化は、企業会計に対する社会の新しい要求
を生み出す結果となる。そして、それはやがて、企業会計の目的と機能を大きく変
えることを通じて、企業会計の内容を再構築する方向に作用する。1960年代後半
から1970年代にかけてわれわれが、経験した会計の変化は正にこのことの歴史的
証左といえよう(注1)。
企業会計の主目的が、伝統的な経営業績の測定情報の作成から経営意思決定のた
めの計画及び予測価値情報の提供に変化することに伴って従来の財務諸表による過
去志向的計数的`盾報は、その利用の限界が指摘されるようになった。今日ますます
会計I盾報の量的質的拡充が求められているのである。このような会計'情報開示の拡
充の要求に応えて、従来の財務諸表の範囲を越えて、さらにそれ以外の財務的及び
非財務的情報を加えた幅広い会計'情報の提供を目指して、そのための概念フレーム
-97-
ワークの構築に取組んでいるのがアメリカ財務会計基準審議会(FinancialAccout-
ingStandardsBoard,以下FASBという。)である。FASBは従来のファイ
ナンシャル・ステイトメンツから、さらに範囲の広いファイナンシャル・リポーテ
ィングへの'情報開示拡充の方向を主張しているのである(注2)。
本稿は、かかるFASB概念ステイトメントにおける外部会計情報の拡充の試み
を研究することによって、現代企業会計における情報開示の特徴とその問題点を探
ることが主な目的である。論述の展開に当っては、まず、伝統的なファイナンシャ
ル・ステイトメンツの'情報の範囲と限界を明らかにし、次にFASBの主張するフ
ァイナンシャル・リポティングの目的や範囲を述べろ。そして、最後に、ファイナ
ンシャル・リポーティング開示の特徴と幾つかの問題点を指摘したいと思う。
Ⅱファイナンシャル・ステイトメンツの範囲と限界
アメリカ公認会計士協会(TheAmericanlnstituteofCertifiedpublicAcco-
untants,以下AICPAという。)の会計原則審議会(AccountingPrinciples
Board,以下APBという。)のステイトメント第4号は、財務会計の基本目的を、
「財務諸表の利用者が、経済的意思決定を行なう上に有用な、企業に関する計数的
財務'盾報を提供すること」と規定していろ(注3)。そして、計数的な財務'情報を
提供する手段となる財務諸表には、「(1)財政状態、(2)経営成績、並びに(3)その他の
原因による財政状態の変動を、適正に表示する」と述べ、財務諸表の範囲が明定さ
れている(注4)。その他の原因による財政状態の変動というのは、所有主(株主)
持分の変動や運転資本の運用状態が代表的なものである。そして、これら財務諸表
に対する注記、例えば、重要な会計方針やセグメント別情報などは、「財務諸表が、
完全であるために不可欠な構成要素である。」とされていろ(注5)。
ここにいう財務諸表は、FASBが概念ステイトメント第1号(Statementof
FinancialAccountingConceptsNo、1,以下SFACNo.lという。)で、
伝統的な財務諸表としてあげた次の5つの書表にほかならない(注6)。
(a)貸借対照表または財政状態表(balancesheetorstatementoffinancial
position)
-98-
(b)損益計算書(incomeorearningsstatement)
(c)利益剰余金計算書(statementofretainedearnings)
(d)所有主(もしくは株主)持分変動表(statementofotherchangesinow-
ners,orstockholders,equity)
(e)財政状態変動表(資金運用表)(statementofchangesinfinancialpo-
sition(statementofsourcesandapplicationsoffunds)
上記財務諸表のうち(a)が期末時点での財政状態についてのI情報を示すのに対して、
(b)~(e)の諸表は-会計期間の財政状態の変動に関する情報である。(b)と(c)は会計実
務においては損益計算書の中で結合して作成されるのが一般的となっていろ(注7)。
そして、このような財務諸表に加えて、豊富で詳細な注記(Notes)がディスクロー
ズされるのがアメリカの財務諸表体系の一つの特徴となっていろ。この注記は、わ
が国における財務諸表注記及び附属明細表を合わせ含む性格のもので、財務諸表に
記載された財務会計'情報が要約的なところから、これを内容面で補足説明したり、
また、金額の計上根拠を明らかにするなど、重要な会計情報を提供する。ちなみに、
1985年度のゼネラル・モータース社のアニュアル・レポート(GeneralMotors
AnnualReportl985)でディスクローズされた注記(NotestoFinancialSta-
tements)は、重要な会計方針、株主持分、セグメント別情報及び偶発債務など17
項目にのぼっていろ。
このような財務諸表は、株主や債権者などの企業の利害関係者が、当該企業に対
する経済的意思決定を行う際の最も重要な財務会計I情報であることはいうまでもな
い。しかしながら、企業の経済活動が複雑多様になるに伴い、外部利用者はこれま
でよりもさらに多くの財務情報を求めるようになっていろ。その結果、伝統的な財
務諸表の提供する財務情報に批判ないしはその限界が各方面で指摘されていろ。そ
こで次に、現行の財務諸表の提供する財務会計'情報の特徴と限界を明らかにしてお
きたいと思う。
まず第1に、財務諸表は過去の取引結果についての情報であり、従って、利用者
のすでに行った意思決定の成否を評価するのには役立つが、将来の予測に当っては
かなりの限界があるということである。財務諸表は、「過去の業績を報告し、将来
-99-
の見込みについては、正面きった報告をしてこなかった」のである(注8)。勿論、
現行の会計にあっても将来の見積りに基づいて計上金額が算出され、それが財務諸
表上で重要な財務会計情報として提供されるものがある。固定資産の減価償却計算
での耐用年数の見積りや売掛債権の貸倒見積りなどがそのよい例である。しかしな
がら、財務諸表には一部将来の見積りに基づく数値I情報が含まれるとはいえ、基本
的には過去'盾報である。企業環境が不安定かつ不確実な今日の状況下にあっては、
未来指向的な意思決定にとって過去的財務'情報の利用にはかなりの限界がある。
第2に、財務諸表による情報は、経済的意思決定のための重要な財務数値I盾報で
あるが、しかし、業界や経済全般の見通しなど他の'盾報をもって補足されなければ
ならない。企業の財務諸表は、当該企業の過去の特定期間における特定の局面での
財産の運用実績を、特定の測定方法によって示したものである。しかも財務諸表上の
'盾報は実績の要約的なものであり、それのみで充分なI肩報とはいえない。また、不
確実性下にある企業に関する経済的意思決定を正しく行おうとする利害関係者にと
っては、財務諸表の'盾報だけでは不十分である。意思決定者は、財務諸表を基本`情
報としながらも、業界や経済界の見通しなどの'情報や、企業の生産数量の変化とか
従業員組織の状況などの非財務的`情報や非数値的情報をも収集利用して、自らの意
思決定の質を高めなければならない。
また第3には、財務諸表上の数値は、複雑な会計計算の所産であり、見積りと判
断に基づいたものであり、さらには、注記にある情報によってその内容_上の意味が
修正されたりする性格のものであるから、利用に当っては慎重な考慮が必要である
(注9)。財務諸表上の一つの重要な金額、例えば純利益は、売上高や売上原価な
どの幾つかの構成要素の加減結果を示したものであり、しかも、売上原価算出に当
っての棚卸計算方法や有形固定資産の減価償却計算に当っての耐用年数算出などに
は見積りや判断が伴う。また、一つの財務諸表上の金額は他の財務諸表の金額と密
接に関係していろ。従って、このような'性格存もつ財務諸表の利用者は、意思決定
に達する上で、「純利益の構成要素の動向や、見積りと判断のもたらした効果や、
注記に示されていろ'情報の指示するありうべき効果や、これに類する諸要因を考慮
に入れなければならない」(注10)。
さらに、第4には、恒常的なインフレーションの下で、貨幣価値の甕動のもたら
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す財務上の影響額を財務諸表の上で正しくディスクローズすべきであるという問題
が提起されて久しい。現行の財務諸表は損益の認識において発生主義を、また期末
資産の評価において取得原価主義を採用しており、インフレーション会計の導入は
その枠組を修正することになる。正規の財務諸表の上に貨幣価値の変動を表示する
か、あるいは財務諸表上の数値を補足する形でインフレーション会計情報を提供す
るかのどちちかで情報開示の方法が考察されることが求められるのである。なお、
このインフレーション会計情報の開示方法について、FASBは、1979年の財務
会計基準第33号で補足情報(Supplementarylnformation)としてのディスク
ロージャーを要求しているが、これについては次章で検討することにしたい(注
11)。
最後に第5には、現在の財務諸表は期中のキャッシュ・フローに関する情報を十
分には与えてくれないという批判がある。最近アメリカでは運転資本もしくは財政
状態の変動よりもさらに将来の企業の期待キャッシュ・フローの受取額に関する
'盾報開示の要求が強まっていろ。キャッシュ・フローに関する'情報は従来の財務諸
表では満足に得られないので、キャッシュ・フロー計算書の作成などそれを補完す
るディスクロージャーがますます期待されていろ。
以上現行の財務諸表の範囲を述べるともに、財務諸表の提供する`情報の特徴とそ
れの利用に当っての幾つかの限界を考察した。これらの財務諸表の限界は、企業の
活動の複雑化に伴う財務諸表I盾報の質的充実と、不確実性下での意思決定情報の量
的拡大が追求されなければならないことを企業会計に求めているのである。外部会
計情報の拡大を指向するFASBの概念ステイトメントは、まさにこのような方向
にそった努力の成果である。そこで次章では、FASB概念ステイトメントの主張
するファイナンシャル・リポーティングについて、まずその概念と目的を検討する
ことにしよう。
Ⅲファイナンシャル・リボーティングの概念と目的
FASBの概念ステイトメントは、1978年にその第1号が公表されてから今日
までに第6号を数えているが、そこでは主としてファイナンシャル・リポーティングに関連
-101-
する問題領域が取扱れている。すなわち、「このステイトメントにおける目的はフ
ァイナンシャル・ステイトメンツにより伝達される会計'盾報に限定するものではな
い」という(注12)。ファイナンシャル・リポーティング(FinancialRepor-
ting,財務報告)をファイナンシャル・ステイトメンツ(FinancialStatements,
財務諸表)と明確に区別された概念として使われているので、まず初めに、ファイ
ナンシャル・ルポーティングの概念を、概念ステイトメント第1号及び第5号に従
ってみることにする。
FASBはファイナンシャル・リポーティングを、財務諸表を含む非常に広い範
囲のものに解していろ。すなわち、「ファイナンシャル・リポーティングは財務諸
表のみでなく、企業会計システムによって作成される情報一企業の資源、債務、利
益など-に直接または間接に関連する情報を伝達するその他の手段をも含むもので
ある」とする(注13)。企業の経営者は、「企業外部の利害関係者に対し、権威
あるプロナウンスメントや法規や慣行によって開示することが要求されろ'情報や、
あるいは経営者自身が彼らのために有用と考えて自主的に公表する'情報亮、正規の
財務諸表以外のファイナンシャル・リポーティングの手段によって、伝達すること
がある」のである(注14)。そして、'情報によっては財務諸表によるI盾報がより
有用であるものもあれば、財務諸表以外のファイナンシャル・リポーティングの手
段による場合がより有用であったり、あるいは財務諸表以外の方法によるディスク
ローズのみでしか提供できない'盾報もあるとして、ファイナンシャル・リポーティ
ングと財務諸表の特徴や範囲を明らかにしていろ(注15)。
他方、社会的信頼性という点になると財務諸表よりは財務報告の方がやや劣ると
いえる。なぜなら、財務諸表は外部の会計士による監査が強制されるが、財務諸表
以外の財務報告情報は、一部監査もしくはレビューを受けるものもあるが、多くが
監査やレビューのない経営者による報告であるためである(注16)。
さて、このようなファイナンシャル・リポーティングの目的が次に明らかにされ
なければならないが、FASBは、財務報告はそれ〔1体で終るものではなく、企業
活動における合理的な経済的意思決定のための有用な'情報を提供することが意図さ
れていろと考えろ。従って、財務報告の目的はこれら情報利用者の要求に応えるも
のでなければならず、それはすぐれて情報利用者の経済活動やその意思決定に依存
-102-
する性格のものであるという(注17)。そこで、FASBは、財務諸表を含む財
務報告の目的は、「国内における経済的、法的、政治的及び社会的環境状況によって
影響を受けろ。また、それは財務報告の提供し得る情報の特徴やその限界によって
も影響を受けろ」と述べ(注18)、財務報告の目的の設定に当っての規定要因と
して、「環境状況」と「財務情報の特徴と限界」の2つをまず認識する(注19)。
ファイナンシャル・リポーティングは本来外部報告と内部報告の両側面を有する
が、FASBの関心は外部報告に置かれていろ。なぜなら、確かに経営者も外部利
用者と同様に財務報告の提供する'盾報の主たる利用者には違いないが、しかし彼ら
の第一の任務は外部利用者に対し外部財務報告を行なうことにあるからである。そ
のような意味で、FASBがファイナンシャル・リポーティングという場合、企業
による外部財務報告(allexternalfinancialreportingbybusinessenterpri-
ses)を指することになる(注20)。また、ここでいう目的はあくまで財務報告
の目的であって、決して'情報利用者の目標を示したものではなく、ましてや経済社
会全体の目標を指すものでもないと断っていろ。経済的意思決定そのものはあくま
で投資家や債権者などの'盾報利用者の行う行為であって、財務報告はその任にあず
からない。財務報告の役割は、「利用者に対し、公正で(even-handed)、中立的
な(Neutral)あるいは偏りのない(unbiased)'情報を提供すること」である(注
21)。
以上のような財務報告の機能や目的の性格を明らかにした上で、FASBは財務
報告の目的としてつぎの3つをあげていろ。
第一「財務報告は、現在並びに潜在的な投資家や債権者やその他の利用者が、
合理的な投資、信用供与及びその他の同様な意思決定をする上で有用な情
報を提供すべきである。」(注22)。
第二「財務報告は、現在並びに潜在的な投資家や債権者やその他の利用者が、
配当ないし利子からの期待キャッシュ受取額や証券ないしローンの売却、
償還、もしくは満期による受取額の金額、時期及び不確実性を評定する際
の手助けとなる情報を提供すべきである。」(注23)。
第三「財務報告は、企業の経済資源、それらの資源に対する請求権(すなわち、
他の企業(entity)や所有者持分(equity)に資源を移転しなければな
-103-
らない当該企業の債務)、並びに企業の経済資源やそれらへの請求権に変
化をもたらす取引、事象及び状況の影響についての`盾報を提供すべきであ
る。」(注24)。
上の目的は、「より一般的なものから、より特殊なものへ」という規定のされ方に
なっていろ。すなわち、第一番目に、投資や信用供与などの意思決定に有用な情報
という最も広範な目的が規定され、2番目には、さらに焦点を狭めて、投資家や債
権者の第一義的関心事である投資等からの受取キャッシュの予測に関する情報を提
供することが財務報告の目的という。そして、最後に、企業のキャッシュ・フロー
予測を評価する上で有用な経済資源及び債務、並びにそれらの変化に関するより特
殊な』情報が提供されるべきであるという(注25)。これら3つの目的についての
FASBの説明をもう少しみてみよう。
第一の目的はかなり広い定義であり、財務諸表を含む財務報告が企業外部の利害
関係者、とりわけ投資家と債権者の合理的な経済的意思決定のために有用な'情報を
提供するものであるととは一般に異論なく受け入れられろ。実際、すでに1973年
のトルーブラッド・リポート(『財務諸表の目的」、AICPA)でもそのことが
第一の目的にあげられていろ(注26)。この第一の目的のI情報利用者が合理的な
経済的意思決定(すなわち、投資、信用供与その他の同様な経済上の意思決定)を
する上で有用な全ゆろ情報が含まれる。それは外部報告情報のみならず内部報告情
報も含み、また、財務報告が提供する一般目的外部財務報告情報以外の財務'情報や
その他の情報をも含む広範な目的である(注27)。
ここでの投資家や債権者は、直接的な関係者のほか証券アナリスト、ブローカー、
弁護士、行政当局、あるいは投資家や債権者の利益代表などの間接的な関係者も広
く含んでいろ。また、財務報告の目的は主として投資家と債権者に焦点があてられ
ているが、しかし、だからといってそれらに限定したり、あるいは他の利用者の情
報利用を排除するわけではないという。むしろ逆に、「ここでの目的を満足させろ
‘情報は、将来の企業の支払能力に関心をもつか、あるいはいかにしたら投資家や債
権者はうまく事を運ぶかということに関心をもつ全ての人々に役に立つ情報でなけれ
ばならない。」のである(注28)bところで、FASBが財務報告の目的をこの
ように現在並びに潜在的な投資家及び債権者に焦点をおく理由は次の諸点である
-104-
(注29)。
①投資家と債権者は、財務報告による'情報の際立った外部利用者であり、しか
も、彼らは欲する1情報を命令して獲得する権限を持っていない。
②彼らの行う意思決定や情報の利用については、これまで他の外部利用者に比
べ極めて広く研究され、記述されてきた。
③また、彼らの行う意思決定は経済における資源の配分に重大な影響を及ぼす。
④さらに、投資家や債権者のニーズに適合する』情報は、一般に、彼らと同様企
業の財務的側面に本来的関心をもつその他の利用者集団にとっても有用である
ように思われろ。
次に、第二の目的はより具体的となっていろ。FASBは、多様な潜在的情報利
用者の共通した関心事は、好ましいキャッシュ・フローを生み出す企業の能力にあ
ると認識し、外部財務報告の焦点を投資及び信用供与のための情報におかれると説
明していろ(注30)。投資家や債権者などの期待純キャッシュ受取額(prospec-
tivenetcashinflows)の金額、時期及び不確実性を評定するのに役立つ情報を
提供すべしという第二の目的は、FASBのこのような認識をもっともよく表明し
たものである(注31)。人々が投資とか信用供与を行うのは第一義的には保有現
金資源を増加させるためであり、従って、自らの意思決定が投資額の回収のみなら
ず、それを上回る報酬をもたらすことを望んでいろ。また、これらの意思決定には、
通常「現在のキャッシュを将来のキャッシュとの間での選択一例えば、証券やロー
ンの現在の価額と、配当金や利子あるいは売却による将来の期待キャッシュ受取額
との間の選択」も含まれる(注32)。
他方、企業も、投資家や債権者と同様、より多くのキャッシュを獲得するために
非現金資源にキャッシュを投下する。企業活動の成否はやはり投資額を上回る報酬の
大きさによってきまるのである。企業活動は通常現金支出に始り現金収入で終るサ
イクルとして説明されるが、実際の活動局面では、財貨の取得や長期にわたる回収、
販売と代金の回収というようなプロセスを経ろ。FASBのいうキャッシュ・フロー
はこれらの流れにそったキャッシュのインフローとアウトフローのことである(注
33)。
最後に、第三の目的は、「財務報告は、投資家や債権者等が企業の財務的強弱を
-105-
判断し、財務流動性や支払能力を評価する上で助けとなるように、企業の経済的資
源や債務や所有者持分に関する情報を提供すべきである」とする(注34)。ここ
での‘盾報は_期間の企業の業績(とりわけ利益(erning)とその構成要素)を評
価するためのものであり、しかもそれは経済的資源のキャッシュ・フロー潜在能力
と負債支払キャッシュ能力の直接的な指標となる。従って、「これらの資源と債務
は将来の純キャッシュ・インフローもしくは将来の純キャッシュ・アウトフローの
かなり信頼し得る測定基礎となり得ろ」のである(注35)。
Ⅳファイナンシャル・リポーティンケの範囲と情報特性
前章ではFASBの研究対象とするファイナンシャル・リポーティングの概念と
目的をやや詳しく考察した。簡約すれば、FASBは拡大する1情報要求に応えて、
従来のファイナンシャル・ステイトメンツの限界を指摘し、それを中心領域に含み
ながらもさらに広範な外部財務'盾報を提供するファイナンシャル・リポーティング
を構想する。そして、その財務報告の目的を、(1)投資と信用供与等の経済的意思決
定に有用な'情報の提供、(2)期待キャッシュ受取額の評定に役立つ情報の提供、及び
(3)企業の経済的資源、これらの資源に対する請求権(債務)及びそれらの変動につ
いての情報の提供、の3つとするのがFASBの立場である。
さて、このような財務報告の目的を満足させる‘情報の種類や開示形態、さらには
そこでの情報の質的特性はどうなのか、これが本章での考察課題である。
FASBは、従来の財務諸表とファイナンシャル・リポーティングの目的は本質
的には同じであるという。また財務報告の中心はあくまでも財務諸表であるとしな
がらも、提供されなければならない盾報の中には、財務諸表以外の手段による方が
より望しいか、あるいは財務諸表では提供できないものがあると考えている。けだ
し、投資家や債権者等が投資及び信用供与等の経済的意思決定を合理的に行う上で、
企業会計システムにより作成される情報(すなわち、企業の経済資源、債務及び利
益等に関する'情報)に、直接的もしくは間接的に関係する有用な情報をできるだけ
多く伝達されることが必要であり、しかもそれらの情報は財務諸表のみで十分に伝
達できるものではなく、それ以外の手段による伝達が駆使されなければならないか
-106-
丸詞鮪雪,坐
↑Iシ|◎で刀s騰什珪剖翻鯛-1-↓’
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調墨塁諸貫』
ふニヤ
107
らである。従って、FASBの財務報告の範囲は、財務諸表をメインに、それ以外
の情報すなわち財務諸表注記(NotestoFinancialStatements)、補足情報
(Supplementarylnformation)、その他の財務情報(OtherMeansofFinanc-
cialReportmg)及びその他の情報(Otherlnformation)が加わった広い内容
となっている。企業が財務諸表以外の財務的あるいは非財務的情報を提供する動機
は、一万、権威ある会計プロナウンスメントや法規や会計慣行による社会的要請と、
他方、経営者の株主等に対するアカウンタピリティー遂行の一環として、有用と思
われる1情報の自主的開示(VoluntaryDisclousure)に基づいていると考えられ
る(注36)。ここで、一般目的外部財務報告を中心としたFASBのファイナン
シヤル・リポーティングの範囲を図解すれば第1図の通りである(注37)。
FASBは財務諸表を狭義に解し、会計原則(GAAP)に基づく会計実務にお
いて一般に財務諸表体系の一部とみなされている財務諸表注記を、財務諸表情報を
拡張ないしは説明する役割をもつ情報として、正規の財務諸表から除外していろ。
その財務諸表は、基本的には企業会計システムによって作成される会計i情報を、いわ
ば科目名と金額によって表示した正規の一覧表のことであり、それはある時点にお
ける企業の財政状態とある期間内における数櫨の財政状態の変動を表示する(注
38)。具体的には、財務諸表には企業の経済的資源、資源への請求権(債務及び
所有主持分)及びそれらの変化が、会計認識手続によって資庫、負債、収益、費用
などとして正式に記載されるのである(注39)。
一般目的外部財務報告において提供すべき各種の情報は、次のような数種の財務
諸表によって十分にディスクローズされる。
(a)財政状態表(StatementofFinancialPositionattheendoftheper-
iod)
(b)稼得利益及び包括的利益計算書(Statemento(earningsandcompre-
hensiveforthepeiod)
(c)キャッシュ・フロー計算書(StatementofCashFlowsduringtheper-
io。)
(d)所有者投資及び配当計算書(StatementofInvestmentbyandDistrib-
utiontoowners)
-108-
FASBのこの新しい財務諸表体系では、従来の貸借対照表及び損益計算書とい
う名称にかえて、「財政状態表」及び「稼得利益及び包括的利益計算書」としてい
ろ。包括的利益という新しい用語は、稼得利益(従来の純利益に近似)より広く、
「所有者による投資やそオ'への配当に伴う持分変化を除いた、取引やその他の事業
からもたされる-期間中に認識された企業のすべての持分(純資産)変化」を指す
概念として考えられている(注40)。また、財務報告の主目的の一つが、企業の
期待キャッシュ受取額の金額、時期、不確実性に関する情報の提供にあるところか
ら、正規の財務諸表の一つに「キャッシュ・フロー計算書」が、加えられている点
が重要な特徴となっている。APBオピニオン第19号(1971年)公表後、財政
状態変動表がアメリカの会計実務において一般に作成されてきたが、最近キャッシ
ュ・フロー情報に対する関心が高まっている。FASBはこのSFAC研究プロジ
ェクトの考えを基礎に、1986年7月31日付でキャッシュ・フロー計算書公開草案」
(FASB、fExposmeDrafts-StatementofCashFlows今,Jnly31,1986.)
を公表した(注41)。キャッシュ・フロー計算書による情報開示は、単に-計算
書のみの問題にとどまらず、財務会計全体の概念的枠組の再構築という問題として
とらえられる必要があり、極めて重要な意味もっているといわなければならない
(注42)。
財務諸表への注記は、正規の会計認識のプロセスを経ない情報なので、FASB
は、補足情報その他の財務報告情報と同様、正規の財務諸表に含めていない。注記
は、重要な会計方針や資産・負債の代替的測定尺度のように、認識された財務諸表
構成要素に関する量的質的情報を提供する(注43)。AICPAの監査基準書で
は注記情報は正規の財務諸表とともに公認会計士による監査対象となっていろ。な
お、SEC(SecuritiesandExchangeCommisson)のレギュレーションS-X
210には全般的注記事項として12項目が列挙されているが、企業によっては
事情に応じてそれ以上の注記が記載されることになる(前述のGM社の1985年ア
ニュアル・レポートには17項目が記載されていろ。)
次に、補足情報は、財務諸表や注記による情報に対する追加的情報とか、目的適
合的ではあるが財務諸表の4つの認識規準のすべてを満足せしめ得ないような情報
を開択する財務報告の有力な手段である(注44)。補足情報もその開示の'性格に
-109-
より、財務諸表及び注記事項に付属する情報と開示要求に基づいて利用可能となる
情報の2種類が考えられる。前者の代表的な例が物価変動情報(財務会計基準第
33号、改訂)とオイル・ガス埋蔵量情報(同第69号)である(注45)。物価
変動情報が財務的貨幣的情報であるのに対して、埋蔵量情報は非財務的物量的情報
である。他方、後者には企業の社会責任情報や組織1情報が含まれ、外部利用者の要
求があれば開示されなければならない情報である。
企業の経営者は、財務諸表、注記及び補足情報のようにGAAP(主にFASB
のプロナウンスメント)によって開示することが求められている情報のほかに、S
ECレギュレーションS-Kなどが公表を要求したり、あるいは経営者自身の判断
で外部利用者の意思決定のために有用と思われる情報を、コスト<ベネフィット基準
に従って、任意に提供することが期待されている。これらの任意情報としては、中
間財務諸表(主に四半期別報告書)、財務予測情報、現在価値情報あるいは会計士
による特別財務諸表分析(長文式特別監査報告)などがあげられろ(注46)。
以上の財務報告は、一般的外部財務報告の範囲に含まれるものであり、FASB
が公表する財務会計基準(SFAS)の適用領域ということになる。これらの情報
は財務会計情報が中心であることは言うまでもない。FASBのファイナンシャル・
リポーティングは、このような一般目的外部財務報告情報に加えて、主要財務情報
の説明や分析、さらには予算や計画などをその他の財務報告手段として提供するこ
とを求めていろ。例えば、説明分析情報としては「経営者の討議と分析」や「株主
への挨拶」が代表的なものであり、企業予算や資本計画は後者の好例である。この
うち「経営者の対議と分析」(Managementdiscussionandanalysis)はSEC
レギュレーションS-Kにより年次報告書(AnnualReport)への記載が義務づけ
られているもので、企業の財務流動性、資本源泉、経営成績及びその他の事項(物価
変動の影響や予測情報など)についての経営者の分析と説明である。主要財務諸表
をより深く理解する上での分析情報としての役立ちが期待されていろ(注47)。
さらに、FASBは、ファイナンシャル・リポーティングによる情報は最終的に
はその他の種々の情報と結びついて経済的意思決定に参加することを認識している。
すなわち、「財務報告は、企業に関する経済的意思決定を行う人々にとって必要と
される情報源泉の一つにすぎない。従って、企業並びに利害関係者は、意思決定を
-110-
行なうに際して、相互に複雑な内的関係を有する様々な要素によってそれぞれ影響
を受けるものである」という(注48)。競争や注文残高に関する資料、アナリス
ト報告書、経済統計(経済予測など)、ジャーナリスト分析記事さらには政治的状
況に関する情報などが、投資や信用供与等を行う者にとって、決定の質をより高め
る上で有用なものとなる。
さて、財務諸表以外のファイナンシャル・リポーティングの手段により伝達され
る情報は、どのような開示形態をとるのであろうか。最も代表的な報告形式として
は、会社年次報告書(CorporateAnnualReports)、企業説明書(Prospectus)、
SEC提出用年次報告書(AnnualReportsfiledwithSEC)などがあり、こ
れらには財務諸表とその他の財務的・非財務的情報が含まれろ。また、財務諸表を含ま
ないその他の財務報告の手段としては、新聞発表、経営者の経営見通し発表、ある
いは企業の社会責任に関する声明などがありうる(注49)。FASBは、財務諸
表以外の報告情報は種々の事項にまたがるので、その開示形式も各種のものがあり
うるとして財務報告の開示形態についての標準的様式を提案することをしない。S
FAC研究プロジェクトの範囲外ということもあるが、企業の自主的創造的工夫に
信頼を置いているものと思われる。
ところで、FASBは、「財務報告の目的」(SFACNbL1,1978)に続き、
「会計情報の質的特性」(SFACNU2,1980)を公表して、財務報告の提供す
る会計'情報の質的特性を明らかにしている(注50)。FASBの提示している会
計情報特性の分析は本稿の直接の目的ではないので、ここではその概観を紹介する
ことにとどめたい(注51)。会計情報が意思決定のために有用であるためには、
まず目的適合性(Relevance)と信頼性(Reliability)を備えていなければなら
ない。両者は会計情報が有用となるための不可欠の二大要素である。目的適合性と
信頼性を高めることが、結局意思決定の質を高めることになる(注52)。そして、
目的適合性の構成要素としては、フィードバック価値(Feedbackvalue)と予測価
値(PredictiveValue)、及び適時性(Timeliness)がある。また、信頼性は事
実写象性(RepresentationalFaithfulness)と検証可認性(Verifiability)と
中立性(Neutrality)によって支られろこになる。他方、目的適合性と信頼性
-111-
の相方に影響し合う比較可能性(Comparability、継続:性Consistencyを含む)が
第二義的特質としてあげられろ。そして、情報利用者側が備えるべき特性として理
解可能性(Understandability)がとくに強調されている。以上のような特性が会
計情報の有用性及び利用可能性を決定する実質的要素であるが、FASBは、すべ
ての会計`情報はそのようなテストを受ける前に、重要性(Materiality)という認
識条件と「コスト<ベネフィット」(Benefit>Costs)という制約条件をパスし
なければならないとする。とくに「コスト<ベネフィット」基準は、財務報告によ
って提供されるすべての情報について考慮されることが期待されている(注53)。
以上のような会計情報の諸特性は一つの階層構造(AhierarchyofAccountmg
Qualities)をなすろものとみなし、それを第2図のように提供している(注54)。
<第2図会計情報特性の階層構造>
IlIW糯llilll(llI111Illlll淵Mll会計情報の利用者達
普遍的制約
利用者固有の諸特質
ベネフィット>コスト
理解可能Ⅱ二
意思決定有用性
ZmI-JE的意思決定特有の諸特質 目的適合性 信lWWli
L璽廻|応詞罷i正司 事実写像性第一義的諸特質の構成要素
二義的で相互作用
的諸特質中立性比較可能性
(継続性を含む)
認識のための関門 重要性
-112-
Vファイナンシャル・リポーティング開示の特徴と問題点
これまで述べてきたFASBファイナンシャル・リポーティング開示の特徴を整
理すれば、以下の通りである。
まず第一の特徴は、財務報告の範囲を財務諸表や注記を含むかなり広範なものと
概念することによって、現代の多様な情報要求に応えようとしていることである。
財務諸表や注記は独立の会計士によって監査されるので社会的信頼が高いのである
が、しかし財務諸表によって伝達される会計'情報には、先に指摘した如く利用上の
限界が認められろ。財務報告による情報開示はそのような限界を超える手段を提供
したことになる。フレグム(E、H、Flegm)もこの点を評価して、「監査された
財務諸表と脚注が財務報告領域の(主要な部分であるが)一部にしかすぎないとい
うことを認めることによって、FASBは、歴史的原価ベースの財務諸表の高度に
望ましい客観性を留保しつつ、会社に対するインフレーションのインパクトという
ような高度に目的適合的であるが、主観的データの報告に適応させるための根拠を
得たのである。」と述べていろ(注55)。
第二の特徴は、財務報告によるディスクロージャー・システムの構築に当って、
利用者志向的アプローチ(あるいは意思決定=有用性アプローチ)を採用している
点に見い出せる。FASBは、まず外部'情報利用者の情報要求の共通部分を特定し、
それを満たすための情報開示システム並びに情報特性を設定するという方法をとっ
ている。そして、各種の潜在的利用者の主たる'情報要求が、好ましいキャッシュー・
フローを造り出す企業の能力に関する情報の開示にあると判断することから、財務
報告の目的が企業の純キャッシュ・インフローの予測を評定する上での有用な情報
の提供におかれることになる。このような特徴について、津守常弘教授は、「『基
礎的概念構造jの第二の特徴は、1930年代に開始された会計原則運動以来支配的
であった『古典的接近法(ClassicalApproarch)』を放棄し、『会計選択』という
概念を用いて『意思決定=有用性アプローチ』(Decision-UsefulnessAppoarch)
を適用していることであり、…(以下略)…。」と指摘されておられる(注56)。
次に第三の特徴としては、提供される情報の内容に関するものである。すなわち、
財務報告がかなり広範な'情報を伝達するシステムとはいえ、やはりその中心領域は
財務諸表であり、従って、財務諸表による会計,情報の特徴を強くもつということが
-113-
いえる。そたはまず第一に、その性格が財務的なもの、とりわけ貨幣単位による金
額表示情報が主であり、第二にも大部分がすでに起った取引や事象の財務的効果を
反映した歴史的なものであり、さらに第三には、提供される情報は正確な測定値と
いうよりも、むしろ見積りや判断を含み、かつ会計ルールによって算出された概算
値であるものが多い。この特徴は第一の特徴とは立場を違えた視点での指摘である
といえよう(注57)。
また第四の特徴を、前章でも述べた通り、正規の財務諸表の一つに「キャッシュ・
フロー計算書」があげられている点に認めることができよう。企業の-期間のキャ
ッシュの受取と支払に関する情報がキャッシュ・フロー計算書で明らかにされるの
で、外部の情報利用者は、それと他の財務諸表(特に稼得利益及び包括的利益計算
書)の'情報を用いて、企業の流動性、財務弾力性、収益性及び財務リスクの評価を
行なう。財務報告の目的が企業の期待キャッシュ受取額に関する意思決定に役立つ
情報の伝達にあるところから、このキャッシュ・フロー計算書がFASBの新しい
財務諸表体系に正式に組み込まれたことは、財務報告開示システム全体において極
めて特徴的なことといわなければならない。
最後に、第五の特徴として指摘しておきたいことは、財務報告の提供する情報特
性の1つに利用者側の理解可能性をあげていることと、報告される'情報について認
識前提(thresholdforrecognition)と提供制約(pervasiveconstraint)の2
要件を指摘している点である。FASBは、財務情報は用具であって、それを使う
能力や意思のない者あるいは誤用する者にとってはそれほど役に立たないと明確に
指摘し、利用者が提供された財務`情報を意思決定のために有効に使うためには、一
定水準の知識や処理能力が必要だし、少くとも学ぶ努力が要求されると述べている
点は注目される(注58)。他方、会計情報として有用であるかどうかは、目的適
合性や信頼性などの諸特性によってテストされるが、そもそもかかるテストを受け
る資格があるかどうか、つまり財務報告による提供価値性を判断すべき認識前提と
して「重要性」基準があり、さらに、目的適合性や信頼性に合致して有用と判断さ
れる情報であっても、常に「コスト<ベネフィット」基準により制約される、つま
り、コストを大きく上回るベネフィットが期待される時その`情報は外部利用者に伝達
され、意思決定に供されることになる。財務会計情報特性の階層構造におけるこれ
-114-
ら2つのフィルターが、最終的に提供される財務`盾報の質的範囲の画定に大きく影
響することになる。
以上FASBファイナンシャル・リポーティング開示の諸特徴をみてきたのであ
るが、他面で、そこにはまた幾つかの問題点も指摘することができる。これらの問
題点は、FASBの会計情報開示の拡張という方向に照して、むしろ将来において
解決していかなければならない研究課題と理解すべきものであろう。
FASBの財務報告開示システムのもつ問題点の第一は、財務予測情報の開示を
どうするかという点である。いうまでもなくすべての経済的意思決定は未来に関す
ることがらに向けられている。勿論過去と現在に関する財務'情報は、未来に効果が発
現する意思決定においても有用な'盾報となるが、しかし、今日のような複雑多様な
企業経営環境の下では未来予測のための情報が多く必要とされる。だからこそ、
1978年のトループラッド・リポート(「財務諸表の目的」)では、財務諸表の目
的の一つは、「未来予測に有用な情報を提供することであり、財務的予測は、それ
によって利用者の予測がより確実になるときには、提供されなければならない」と
して、整然とした形式の企業活動の予測データを公開することを提案しているので
ある(注59)。FASBのSFACNbL1(「財務報告の目的」)では、この財務
予測'盾報の提供は財務報告の目的からオミットされている(注60)。AICPA
は1980年に「財務予測のレビュー指針」CItheGuideforaReviewofaFin-
ancialForecast.)なるものを公表し、財務予測情報開示のための好ましい実務指
針を提供した。また、SECも予測情報の公開を奨励し、それと一体の予測に対す
る保護条項(、Safeharbor今Liabilityrule)を公布した(注61)。アメリカの
実務においては、財務予測`情報については会社年次報告書の中の「経営者の討議と
分析」セクションで-部ディスクローズされているが、一般的外部財務報告の充実
を目指すFASBにとっては、財務予測情報のディスクロージャーの問題は今後の
重要な課題の一つといえよう(注62)。
第二の問題点は、財務報告の提供する会計情報特性の決定と特性相互の関係に解
決すべき問題が残されている点である。SFAC第2号で示された会計'盾報特性の階
層構造は、目的適合性と信頼性を中心に財務データの諸特質を抽出しているが、そ
れに含めるべき特性として他に客観性(Objectivity)や実施可能性(Feasibi-
-115-
lity)なども考えられろ(注63)。また、情報特性相互間で特にコンフリクト
が生じうるが、その際特性間でのトレード・オフのバランスをとることに、特別な
考慮が必要となる。FASBは、二大要素である目的適合性と信頼性の情報特性間
でコンフリクトが生じた場合、どれが相対的に優先されるか、あるいはどのように
して適切な両者間のトレード・オフをはかるか、については明確な指針を示してい
ない。そればかりか、財務諸表情報では信頼性が、それ以外の財務報告情報では目
的適合性が優先されるとの見解は1つの見方にすぎないとも述べている(注64)。
これは、どちらかというと、FASBが財務諸表情報についても第一義的には目的
適合性が優位におかれるべきであるという考えを示すものである(注65)。
問題の第三は、財務諸表以外の財務報告I盾報の開示形式についてである。FASB
は、-組の財務諸表体系は示しているが、それらの標準様式については明らかにし
ていない。加えて、財務諸表以外の財務情報の開示形式についても、情報の多様性
に照して各種のものがありうるとして、会社年次報告書などの幾つかの実務にお
いて用いられている例を紹介するにとどめていろ。しかし、外部利用者の意思決定
に有用な財務j盾報を提供するためには、提供されろ`情報の範囲や質的特性を合理的
に定めると同時に、'情報伝達の形式についても創意工夫が施されなければならない
ことはいうまでもない。ただし、「提供される財務情報は、それについての学習に
よって利用可能とならなければならないし、さらに、財務報告は情報を適切に利用
するために学ぼうとするすべての利用者一専門家であろうと素人であろうと-にと
って利用し得る情報を提供しなければならない」(注66)。従って、特に財務会
計についての専門家でない多くの利用者の情報利用の便宜をはかる目的から、財務
諸表以外の財務報告の手段による提供情報についても、必要な開示形式のモデルを
提案し、実務の改善と発展に貢献することが、FASBに期待されているように思
われろ。
次に第四の問題点として、財務報告の要約情報化の要求に対するFASBの対応
の問題を指摘することができる。FASBの財務報告の展開にみられるように、現
代のディスクロージャー・システムにおいては利用者の'情報要求の増大に伴って、
開示情報の量的質的拡充がはかられているのであるが、しかし、他方で増大するこ
のような財務I情報は、一方'情報提供者たる企業や監査に当る公認会計士にとっても、
-116-
他方情報利用者たる投資家や債権者の例にとっても、過剰情報となっていろという
問題提起が行われている(注67)。FASBもすでにこの問題については調査並
びに研究をすすめているが(注68)、要約財務報告(SummaryFinancialRe-
porting)の主目的が、財務報告の利用者により効果的な情報の伝達をはかること
にあるため、FASBとしても要約財務報告のあり方についての検討作業を継続し、
そのための概念的フレームワークの構築をはかるべく目指す必要があろう。なお、
注意しなければならないのは、ここでいっている要約財務報告は、例えば、SEC
提出用年次報告書に含まれる監査対象の正規の財務諸表にとってかわる報告書では
ないということである。むしろ監査された正規の財務諸表から抽出された財務情報
が要約財務報告書に記載されるのであり、しかも、証券アナリストのような専門家
の利用に供するために引続き従来の詳細な情報(フォーム10-Kに含められる)
が公表されるべきである。
最後に第五の問題点として、FASBの財務報告開示システムの展開が、公認会計
士の自主性や創造性の弱体化をもたらすという懸念を生んでいる。財務報告概念の
採用によって多種多量な財務情報を提供するべきであるとするFASBの方向は、
権威ある財務会計基準設定主体であるFASB自体に、従来以上に多くの領域でよ
り詳細な財務会計及び報告基準の作成を強いることになる。個別的で詳細な会計情
報作成の基準をFASBが提供すれば、それを必要とする企業や公認会計士の作業
はそれだけ容易になると同時に、社会的信頼も容易に確保できることになる。そう
すれば、とりわけ会計専門家としての個々の会計士の監査及び指導の局面で、自主
的判断の余地が狭められ、他方で創造的努力が減退する結果にむすびつく。そして、
専門家としての自己啓発力が弱体化すれば、やがては公認会計士に対する社会的信
頼はうすれ、行政当局の介入という事態を招きかねないのである。公認会計士の専
門家としての自主性や創造性をどう育て、そして自己啓発力をどう高めるかという
問題もFASBの関心の対象にならなければならないといえる。
Ⅵおわりに
以上アメリカのFASB概念ステイトメントに展開されている外部財務情報開示
-117-
システムについて、その目的や情報開示の範囲、及び開示システムの特徴と問題点
もしくは課題を、ステイメントの説明に即して考察してきた。
FASBは、1973の設立以来今日まで、アメリカ現代会計におけるGAAP形
成の最も権威ある民間セクターとして認められており、これまで10O近い会計基準
を公表してきていろ。そして、1978年からは、FASBの公表する会計基準の概
念的基礎を提供する目的で、概念構造プロジェクトをスタートさせ、すでに6つの
ステイトメント(SFACNoL1~NbL6)発表していろ。SFACは、いずれも財務
会計基準そのものではなく、従って、企業や公認会計士等は必ずしもそれに拘束さ
れるものではないけれども、これまでにFASBが公表してきた会計基準の基礎を
なす基本的考え方や、将来においてFASBが発表する会計基準の概念的枠組みを
提示するものであるため、極めて重要な意義をもっていろと考えられろ。
本稿で扱ったように、すでにFASBの構想する財務報告の範囲の概観は提示さ
れたけれども、財務諸表とそれ以外の財務報告情報の性格や機能、あるいは財務諸
表以外の財務情報の質的特性や作成システムや構成要素などについての究明は今後
の課題となっていろ。しかしながら、本稿での考察を通じて、現在のアメリカのデ
ィスクロージャー・システムの特徴と問題点が明らかとなり、同時に、SFACに
描かれた財務報告の概念フレームワークが将来会計実務に反映されていくという範
囲内で、将来の」情報開示制度が展望されたように思われろ。このようなFASBの
ディスクロージャー・システム充実の試みは、わが国の企業会計の理論研究並びに
制度の改善整備に当っても大いに参考となることは間違いない。FASBのこのプ
ロジェクトの研究動向を注意深く見守ると同時に、この問題についての分析と研究
を引続きすすめてゆきたいと考えていろ。
-118-
(注)
1ゼフとケラーは、1970年代における会計の特徴的変化として次の4つをあげ
ている。
①会計基準設定プロセスそれ自体(特に鯛EconomicConsequense”をめぐ
って)
②あくなき会計概念フレームワーク研究
③会計情報開示の拡張
④発生主義会計に代えてキャッシュ・フロー会計の導入
Cf、StephenAZeff&ThomasF、Keller,cQFinancialAccountigTheory,,
ThirdEdition(MacGraw-Hill,1985),pp、ix.x、
2ファイナンシャル・ステイトメンツはすでに財務諸表としてわが国の会計学文
献で定着しているが、ファインシャル・リポーティングはまだ定まった訳語がな
い。財務報告と訳している文献が多くみられるので概ね間違いはないが、FASB
の定義を正しく伝える訳語としては必ずしも唯一のものではない。以後の本稿に
おいては、読み誤るおそれのない場合には、紙幅の関係もあり、各々財務諸表及
び財務報告という用語を使うこととする。
3AocountingPrinciplesBoard,?,BasicConceptsandAccounting
PrinciplesUnderlyingFinancialStatementsofBusinessEnterprisesv
APBStatementAM,AmericanlnstituteofCPAs(October,1970),
Par、73.(川口11項一訳『アメリカ公認会計士協会・企業会計原則』同文館、昭
和48年、42頁)
41bid.,Par、75(川口Ⅱ項一訳前掲書、42頁).
51bid.,Par・10(川口11項一訳前掲書、15頁).
6FASB,耐StatementofFinancialAccountingConceptsNql-Objectives
ofFinancialReportingbyBusinessEnterprises,,(November,1987),
Par、6.
ここでは、FASBは望ましい財務諸表の種類を示したのではなく、あくまで実
務で広く用いられている代表的な例を掲げたにすぎないと断っている。
7APB,wOpinionsML30-ReportingtheResultsofOperations,,,(AICPA,
-119-
1973).なお、損益計算書が「損益及び利益剰余金結合計算書」として作成され
ることは、昭和49年改正以降のわが国企業会計原則の要求するところでもある。
8)11口順一訳『アメリカ公認会計士協会・財務諸表の目的』同文館、昭和51年、
11頁(TheStudyGroupontheObjectivesofFinancialStatements,
wObjectivsofFinancialStatements,,,AICPA,1973).
9APB,StatementhM,AICPA(October,1973),Par、39.(111口順一訳
前掲書、25頁)。
101bid.,Par、39.(川口11項一訳、前掲書、25頁)。
11Cf,FASB,QvStatementofFinancialAccountingStandardNq33-
FinancialReportingandChangingPricesヅ1979.
12FASB,SFACihl,Par,5.
なお、FASB概念ステイトメントのとっているアプローチのフレームワークを
示せば次の図の通りである(WilliamCNorby,纐AccountingforFinancial
Analysis',,(FinancialAnalystsJournal,,(March-April,1982),
P22、図Aを参考に筆者が-部補正)‐しべル
〔几
容
ay
-120-
131bid,Par、7.
141bid,Par、7.
151bid,Par、5.
161bid,ParBJ
171bid,Par、9.
181bid,Par、9.
19山形休司教授は、この2つの目的規定要因をFASBが財務報告基礎概念を導き
出すための「前提」として考えることができるとし、このようなFASBの思考
様式は、同じく前提から基礎概念を導出して概念フレームワークを構築しようとし
たアンソニー(RN・Anthony,1983.)の伝統的会計の考え方に近いアプロー
チよりもすぐれていると述べておられろ(山形休司箸『FASB財務会計基礎概念J
同文館、昭和61年、100~101頁参照)。
20外部報告の潜在的利用者としては、「所有者、債権者、供給先、潜在的投資家
及び債権者、従業員、経営者、取締役、顧客、財務アナリスト及びアドバイザー、
ブローカー、証券引受人、証券取引所、弁護士、エコノミスト、税務当局、行政
機関、立法機関、財務情報紙誌社、労働組合、取引団体、企業研究家、教員及び
学生、並びに一般大衆」などがある(FASB,SFACND1Par、24)。それらの
潜在的利用者のうち投資家、債務者、顧客及び経営者のように特定企業に直接的
利害関係のある利用者は、「一般に、彼らの意思決定が期待キャッシュ・フロー
の金額、時期及び不確実性に関連することから、好ましいキャッシュ・フローを
生み出す企業の能力に関心がある。」(Ibid,Par’25)。
21FASB,SFACML1,Par、33.
221bid.,Par、34.
23Ibld・Par、37.
241bid,Par、40.
25ここでの財務報告の目的の規定の仕方についてのFASBのアプローチには有力
な批判がある。ドプチ(NicholasDopch)とサンダー(ShyamSunder)は、FASB
の財務報告の目的はすでにその欠陥が指摘されているトルーブラッド・リポート
(TruebloodReport,AICPA,1973)に大きく依拠しており、何の目新し
-121-
い発展もないと批判する。とりわけ第3の目的は、目的というよりも目的のため
の手段にすぎきいと指摘している(NicholasDopchandShyamSunder,
q0FASHsStatementsonObjectivesandElementsofFinancialAccoun‐
ing:AReview,,,TheAccountingReview:VO1LV,hhl(January,1980)PE2-3)。
また、山形教授も、ドプチらの批判を紹介しながら、FASBの目的規定の問題
点を指摘しておられろ。すなわち、目的の第2は一般目的の特殊化をはかりなが
ら、情報利用者も投資家と債権者に限定されているのにその明示がない点が問題
であり、また、第3の目的は目的の表明ではなくて提供される情報の性格と特徴
を述べたものであると解される(山形休司著、前掲書、119~121頁)。
26トルーブラッド・リポートでは財務諸表の目的となっているが、FASB概念ス
テイトメントAhlは、「基本的には、財務報告と財務諸表は同じ目的をもつ」
(SFAChhLPar、5)と解しているので、トルーブラット・リポートの第1の
目的とSFACnhlの第1の目的は殆んど同じ内容と解釈されろ。
CfTheStudyGroupontheObjectivesofFinancialStatements,
op・Cit.,(川口順一訳、前掲書参照)。
27FASBは、財務報告を一般目的外部財務報告と規定していながら、その一般目
的の設定に当っては-一般目的外部報告を含む広範な定義を行っているのは確かに
論理的な矛盾がある。
28FASB,SMCMI1,Par、32.
291bid.,Para30
301bid.,Pars、25&30.
3lこの第2の目的の要求する情報は冠「キャッシュ・フロー'情報」(cashflow
informatin)、「現在価値'情報」(currentvalueinformation)、あるいは
「経営予測情報」(managementforecastinformation)と解する意見もあるが
(公開草案への意見表明の中で)、FASBはそれらを否定するわけではないが、
財務報告の目的を「期待純キャッシュ受取額」(prospectivenetcashinflows)
に関する情報の提供におくと説明している(SFAC,ibILpar、37.footnote、6)。
321bid.,par、38.
-122-
331bid.,Par、39,footnote8、
341bid.,Par、41.
これは伝統的会計でいう期末財政状態(貸借対照表)や期間経営成績(損益計
算書)の測定及び報告を行うことを要求するものであると解されろ。
351bid.,Par、41.
361bid.,Par、7.
37この図解は概念ステイトメント第5号のパラグラフ8(FASB,WStatement
ofFinancialAccountingConceptsih5-RecognitionandMeasurement
inFinancialStatementsofBusinessEnterprises,,,(December,1984),
Par、8)に示されている図表(「投資、借用供与及びその他の同様の意思決定に
際して使われる`情報のタイプの例示」、ParB)に基づきながら、さらに説明や
理解を容易にするために、次の2つの文献で示された図解をも加味して、筆者に
おいて適当に修正を施したものである。
FASB,InvitationtoComment,耐FinancialStatementsandOther
MeansofFinancialReportingl,(May,1980),P、2.
NortonMBedford,@℃omprehensiveAccountingConcepts/,Vol.I(mext‐
bookforGraduate・atUniversityoflllinois,Unpublished),1985,
P、206.
38FASB,SFACMLLPars、6-7&SFACIb5・Par、5.
39ここで認識(recognition)とは、「ある項目を資産、収益、費用などとして
財務諸表に公式に記載する(formallyrecordingorincorporating)プロセ
スであり、それは、「当該項目が財務諸表の合計額の-部となると同時に、文字
と数字の両方で表現されることを含む」と定義される(SFACMI5・Par、6)。
そして、このような財務諸表認識の規準(fandamentalrecognitioncriteria)
として、①定義(Definition)、②測定可能性(Measurability)、③目的適合
性及び④信頼性(reliability)、の4つをあげて説明していろ(Ibid.,Par、
63)。
40FylSB,SFACNOL5・Par39.
41アメリ力においてキャッシュ・フロー'情報に関心が高まった理由については、
-123-
武田安弘稿「諸外国におけるキャッシュ・フロー情報の開示問題」(「企業会調
1987年1月号、88~89頁)参照のこと。
42武田安弘稿、前掲論文、89頁。
43注記'情報の中には、偶発事象のように認識されなかった財務諸表構成要素に係
る情報も含まれる(FASB,InvitationtoComment,op・Cit.,Par,53,並び
に広瀬義州稿「財務諸表、注記および補足情報のデイスクロージャー」、『福岡
大学商学論劃(第29巻第2.3号(昭和59年11月)、589頁参照)。
44FASB,SFACMl5・Par、7-b・補足情報を提供する手段として補助財務諸表
(SupplemeutaryFinancialStatements)が、有用と考えられるが、その際の
認識規準は主要財務諸表の4つの認識規準に準ずる内容となるであろう(Ibid.,
Par、7.footnote5)。
45Cf、FASB,90StatementofFinancialAccountingStandardsML33-
FinancialReportingandChangingPrices.,,(asamended),1979.
FASB,徹SFASML69-轍DisclosuresaboutOilandGasProducing
Activities/'1982.
46FASBは、今までのところ中間財務諸表(InterimFinanciallnformation)
あるいは四半期別財務報告書(QuarterlyFinanciallnformation)の開示を
要求せず、企業の自主性に委ねているが、しかし、公表するに当ってはAPBオー
ピニオン第28号(改訂版)の基準に合致しなければならないとしている(APB
OpinionNbL28asamended,。,InterimFinancialReporting、''1973.)
47アメリカ年次報告書における「経営者の討議と分析」をめぐる法規制や、デイ
スクロージャーの実態については、平松一夫著「年次報告書分柵(中央経済社、
昭和61年、95~109頁)が大変参考になる。
48FASB,SFACハhl,Par22.
491bid.,Par、7.
50FASB,QwSFACML2-QualitativeCharacteristicofAccountinglnform‐
ationlMay,1980.
51SFACML2の分析については、最近の文献として、山形休司箸、前掲書が大変
しい゜
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52FASB,op.cit,Par、33.
53FASB,SFACハhLPar、23.
54FASB,SFACML2・Par、32.Figurel(山形休司箸前掲書131頁)。
なお、図の表類は筆者の用語によった。
55山形体司著、前掲書、117頁(この部分はフレグムの文献、伽Accounting,,,
(P220)よりの引用として紹介されているところであるが、筆者の手元に同文
献がないので、山形教授の著書よりの再引用としたことを断っておきたい)。
56津守常弘稿「FASB『基礎的概念構造プロジェクト」の到達点と問題点」、『企
業会i;tlvoLMIll(1985年11月号)、6頁。
57以上の第三の特徴については、SFACML1で財務会計の目的を設定する前の規
定要因としてあげた「財務報告'情報の特徴と限界’(Parsl7-22)を参照の
こと。
58FASB,SFACMLPar,36.
59川口11項一訳『アメリカ公認会計士協会財務諸表の目的』同文館、昭和51年、
88頁(CftheStudyGroupofOFS,op.cit.)。
60N・DopuchandS.Sunder、op・Cit.,p、3.
61CfJackC、RobertsonandFrederickG・Davis,轍Auditing,,Third
Edition,(BusinessPublictions,Inc.),1982,PP、711-714.
62FASBも財務予測'盾報の重要性については一応認識しており、概念構造プロジ
ェクトの中で今後検討したいとしているが、(SFACIhlPar、60)、現在まで
のところまだ着手されていない(少くとも、公開革変の公表までは到っていない。
63FASBは、それらを除外した理由を簡単に説明している(SFAClNh2Pars,
158-160)。
641bid.,Pars、42-43.
65Cf・FASB,wDiscussionMemorandum-ConceptualFrameworkfor
FinancialAccountigandReporting:ElementsofFinancialStatements
andtheirMesurement,,,(December,1976),Chapter、7.
66FASB,SFACObL1,Par、36.
67Cf・AICPA,PrivateCompaniesPracticeSection,。,SunsetReyieu)
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ofAccountingPrinciples,,,AICPA,1982.
AICPA,vQReportoftheCommitteeonAccountingStandard80ver‐
load”,AICPA,1983.
68この問題についてのFASBの調査並びに研究については、平松一夫箸、前掲書、
(199-204頁)及び同「外部情報会調(中央経済社、昭和55年、第8章を
参照のこと。
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