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Page 1: 幸福論 › hp › hsato › CUBE › project2012 › … · Web view「幸福とは一体何か」という答えは、おそらく100人いたら100通りの答えがあるはずだ。そして、同じ人物であっても環境や精神的状況が異なると幸せの感じ方も異なってくるであろう。しかし、人間の幸福の感じ方には共通点があるのではないかと私は仮定した。

幸福論―「幸福の国」から学ぶ―

目次はじめに第 1章 なぜ今「幸福」に注目が集まるのか第 2章 既存の社会・経済指標からみる「幸福」(1) 個人の幸福(2) 国全体の幸福

① 幸福度ランキング② 社会・経済指標と幸福度数の関係性

(ア) 10カ国の社会・経済指標比較(イ) 10年間の社会・経済指標の変化と幸福度数の関係性

a. 第 3次教育機関への入学率b. 失業率c. 自殺率

③ 世界価値観調査第 3章 「幸せの国」ブータン(1) 歴史・現状(2) ブータンで生まれた国民総幸福量(GNH)

① なぜGNHは生まれたのか② 定義

(3) なぜ国民の 9割以上が幸福と感じることができたのか(4) チベット仏教第 4章 デンマーク(1) 歴史・現状(2) なぜGNHランキングで首位になれたのか(3) デンマークの課題第 5章 そして、日本(1) なぜ日本は幸福度が低いのか(2) ブータン、デンマークに学ぶおわりに謝辞

甲南大学マネジメント創造学部 4学年10981041 北嶋千紘

Page 2: 幸福論 › hp › hsato › CUBE › project2012 › … · Web view「幸福とは一体何か」という答えは、おそらく100人いたら100通りの答えがあるはずだ。そして、同じ人物であっても環境や精神的状況が異なると幸せの感じ方も異なってくるであろう。しかし、人間の幸福の感じ方には共通点があるのではないかと私は仮定した。

はじめに 私は、大学 2年生のときに米カリフォルニア州への半年間語学留学を経験した。海外で暮らし、日本製品が愛用されていたり、普段気付かなかった日本の良さが見えてきたりするうちに日本への愛情が増していった。卒業研究のテーマを決める時期に、年間 3万人以上が自殺している日本の現状を知った。「なぜこんなに恵まれた国にも関わらず、自殺者が多いのか」、「日本は実際、幸せなのだろうか」私は、そんな疑問を持った。 「幸福とは一体何か」という答えは、おそらく 100人いたら 100通りの答えがあるはずだ。そして、同じ人物であっても環境や精神的状況が異なると幸せの感じ方も異なってくるであろう。しかし、人間の幸福の感じ方には共通点があるのではないかと私は仮定した。もしも、その共通する部分が見つけられたならば、幸福度を高める上で役立つのではないかと考えた。 この論文では、幸福を科学的に分析し、ブータンとデンマークの事例を挙げ、どうすれば日本の幸福度を高めることができるのかを考察していくことにする。 第 1章では、現在、世界中で幸福に注目が集まっている理由について記述していく。 第 2章『既存の社会・経済指標からみる「幸福」』では、10カ国を取り上げ、幸福度分析を独自に実施した。また、World Values Surveyが実施した幸福度調査結果も記述する。 第 3章では、幸福の国「ブータン」について述べることにする。ブータンが今日までどのような歴史を辿ってきたのか、なぜ国民の 9割以上もの人が幸福を感じられたのか、などを考察していく。 第 4章では、2006年に実施された GNHランキングで首位となったデンマークの事例について考察する。歴史や現状、そして首位になれた理由や課題について言及する。 第 5章では、日本がなぜ幸福度が低いのか、また、どうすれば将来的に日本全体の幸福度を上げることができるのかを考えていくことにする。上記の 2カ国から学んだことも説明する。

第 1章 なぜ今「幸福」に注目が集まるのか 現在、世界中では幸福に関するあらゆる取り組みが行われてきている。まず、注目すべきはブータンの事例である。ブータンは世界で唯一、国民総幸福量(GNH)を増加させることを国の政策目標として掲げている国であり、1972年、第 4代ワンチュク国王が在任しているときに GDP至上主義脱却を初めて謳った国である。その取り組みは、国際機関、さまざまな国に注目されるようになった。例えば、経済開発協力機構(OECD)は 2004年以降、世界フォーラムを定期的に開催しており、そこでは幸福度指標についての議論が行われている。フランスでは、2008年 2月にサルコジ前大統領がノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ米コロンビア大学教授などに依頼し、委員会を発足させて幸福度調査を行った。そして、2009年 9月にはフランスで報告書(通称、サルコジ報告)が提出された。また、イギリスでは、2009年 3月に持続可能な発展委員会が「成長なき繁栄」報告書を提出している。さらにカナダやオーストラリアでも幸福度指標を作成する取り組みが行われている。そして、日本では、2010年に民主党政権が 2020年までに国民の幸福感を引き上げる目標を提示し、東京都荒川区は「幸福実感都市」として地域の荒川区民総幸福度(GAH)を上昇させるなど国内でも幸福への関心は高まりつつある。 18世紀には、政治哲学者が個人と公共の道徳の適切な目標として幸福を盛り込むことを提唱するなど、幸福への関心は高かった。フランスでは 1793年憲法に「社会の目標は一般の幸福である」と掲載し、アメリカでは独立宣言に幸福追求権が盛り込まれた。1974年には、アメリカの経済学者リチャード・イースタリンがある論文を書き、その当時の経済認識に大きな衝撃を与えた。その内容は、「経済的に豊かになれば、必ずそれに伴って幸福度が増すというわけではない」、「所得もある一定のレベルを超えると幸福との相関関係がなくなる」という謂わば「幸福のパラドックス」を示唆したものであった。それまでの人々は、経済的に豊かになればなるほど、人間の幸福度は高まっていくと信じて止まなかったため、この論文は定説を覆すものだった。

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図 1-1 日本における 1人当たりの実質GDPと生活満足度出典:「国民生活選好度調査各年」内閣府より

 日本では、内閣府の調査が始まった 1978年から 2005年の間は一人当たりの実質 GDPはほぼ右肩上がりとなっている。しかし、それに相反するかのように「生活に満足・まあ満足している」と答える人の割合は下がっている。1955年から 2005年の間の高校・大学の進学率も 1947年から 2005年までの平均寿命もどんどん伸びている。一見すると豊かさが増しているかのように見える日本ではあるが、人々の幸福度は増しているわけではないのである。 近年の日本は、「未来に希望が持てない社会」であるといえる。1950年から 1970年代前半までの高度経済成長を経て日本は経済大国となった。経済が順調に成長してきた後、1990年初めにバブルが崩壊する。1993年から 2005年にかけては就職氷河期と言われ、今もなお雇用確保は日本の大きな問題となっている。2000年代後半からは、派遣切りなど更に追い打ちをかける。2008年にアメリカで起こったリーマンショックにより、日本でも大きなダメージが与えられた。2011年 1月にはアメリカに次ぐ、世界第 2位であったGDPは中国に抜かれてしまう。国際的競争力では、韓国に追い上げられ、世界市場が奪われてしまっている現状にある。毎年、内閣総理大臣は交代し、政治も不安定だ。2013年卒の新卒者の内定率は、前年に比べ改善されたものの、その割合はまだ良いものであるとはいえない。グローバル化が進み、国内だけでなく、他国とも競争していくことが求められ、現在、多くの日本人は「閉塞感」を感じている。また、それに拍車をかけるように、2011年 3月 11日には、東日本大震災が発生し、今「幸福とは何か」という再考が始まったように思う。 こうした状況は日本だけではない。アメリカでは、上述の 2008年のリーマンショックだけでなく、2007年にはサブプライム住宅ローンの問題なども起きた。アメリカ経済分析局、総合社会調査によると、アメリカでは1人当たりの所得が大幅に増加したにも関わらず、幸福度の平均水準は過去 50年間でほとんど上昇していない。また、女性に関しては幸福度が低下している。社会状況が悪化するにつれ、生活満足度も低下している。アメリカ国勢調査局、人口動態調査の 2008年のデータによると、学歴による格差がますます広がっているという。学士号を持つ人々と高校卒の人々の所得の推移をみていくと、1975年時点で学士号を持つ人々は、高校卒の人々の所得より 60パーセントほど所得が多かった。それも 2008年までには 100パーセントにも所得格差が広がった。2011年 9月に始まったニューヨークのウォール街でのデモ発生には、1パーセントの富裕層がアメリカ全体の 25パーセントの所得を受け取っているという背景がある。こうした所得格差の拡大は、確実にアメリカでの不満を生み、幸福度にも悪影響を及ぼしているといえよう。 フランスでは上述のように前大統領のサルコジが、幸福を調査する委員会を発足させた。それは、国民の満足度を測る上では、GDPに代表される経済や社会に関する統計情報に満足できなかったからだといわれている。GDPは市場での生産指数を示すものであり、つまるところ物質的な豊かさを示すものである。社会構造が変化してきた今、GDPに代わる新しい幸福指標を作る必要があるといわれている。 幸福度指標や調査にはさまざまな種類がある。国連開発計画が毎年測っている人間開発指数(HDI)や上記の国民総幸福量、世界価値観調査(WVS)、総合的社会調査(GSS)などがある。また、日本では、内閣府が実施している国民生活に関する世論調査、国民生活選好度調査、 Japanese

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General Social Surveys(JGSS)、生活者の価値観に関する調査(日本人の意識調査)などがあり、その関心の高さが伺える。このように世界中で幸福度の指標を作る動きが広がっている。しかし、具体的に「幸福を指標化する」とはどういうことなのか。一般的に幸福は主観的なものとして捉える人々が多いのではないかと思う。私自身、幸福について論じるにあたり、「幸福について論じることに一体意味はあるのだろうか」と感じたことがある。

図 1-2 Bruno.S.Frey1による幸福の概念

 図 1-2は Bruno.S.Freyの考える幸福の概念を示している。幸福は、客観的幸福と主観的幸福に分けることができる。主観的なものについては測ることが難しいが、客観的なものについては指標化することが可能であるといわれている。客観的な幸福は、社会や生活環境が影響するため、こちらについては社会・経済指標を測ることが幸福度を測ることに繋がる。実際に幸福度調査の調査項目を見ると、客観的なデータだけでなく、個人の感じ方で 10段階評価するものはあるものの(ただ単に幸せですかと尋ねるのではなく、段階でいうとどれぐらいですかと問う)、数字として表れたものを使用する。 幸福を指標化することに対する、批判や課題もある。幸福は心の持ちようなのではないか、幸福なんて測れるものではないのではないかとの意見もある。測ったところで意味がないのではないか、多様な価値観を無視し、選択の自由に反するのではないかという批判、幸福を客観的に測ることが難しいという課題などもある。私自身、幸福について調べてみて、調査方法や項目が統一されていないためにランキングの結果が大きく異なることが課題であると感じた。どのランキングや調査が信憑性の高いものなのかがわからず、一苦労した。しかし、幸福指標作りをしたり、幸福度ランキングを作成したりすることで、その国や地域の理解が深まる。本当に下位の国や地域が幸せでないかというとそうではないはずだ。しかし、下位となる原因や理由はそれなりにあるはずなので、欠けている部分は、他で成功しているものを応用するとよい。幸福の指標化はまだまだ発展途上であり、問題はたくさんあるが、世界全体で幸福を求めていることは確かである。

第 2章 既存の社会・経済指標からみる「幸福」 幸福を指標化する動きが国内外で広がりつつあるが、実際のところ、幸福は定義づけることも厳密に測定することもできないと考える。1日の間でも人の幸福感は大きく変化するし、自分が幸福だと感じていたとしても実際それが本当に幸福であるとは言い切れない。ただ、幸福は定義づけられないが、幸福に影響を与える要素はわかる。そこで、Digner and Seligmanは 2004年に幸福に影響を与えている要素を 6つに分けている。先行研究からわかる主な幸福度決定要因を挙げ、そのいくつかに関する世界各国の経済・社会指標をみていくことにする。

(1)個人の幸福 まずは、個人の幸福にどういった要素が影響しているのかということを見ていくことにする。 2004年に Diener and Seligmanが幸福に関する多くの文献を通じて幸福要素を 6つの分野に分類している。それらは、所得、社会状況、仕事、身体的健康、精神的疾患、社会的関係である。他方、内閣府の幸福度調査では、幸福度を判断するときに重視した項目として 10 項目挙げられている。家計の状況(所得・消費)、就業状況(仕事の有無・安定)、健康状況、自由な時間・充実した余暇、仕事や趣味、社会貢献などの生きがい、家族関係、友人関係、職場の人間関係、地域コミュニティーとの関係、その他、である。実はこれら全てが幸福度を決定づける要素であると言われているが、大きくまとめれ

1 スイス、チューリッヒ大学経済学部教授。4

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ばDiener and Seligmanの 6分類に当てはまっているといえよう。 一方、図 2-1では、General Social Survey(GSS)に基づき、”Determinants of Happiness(幸福の決定要素)”として、以下 11 項目を定義している。この調査では、①一般的な幸福度、②言語テストにおける正答数、③家族の収入、④最終学歴、⑤政治的観念、⑥宗教への取り組み、⑦性別、⑧年齢、⑨

生まれ年、⑩人種、⑪その他の問いに回答してもらった。Meng Hu's Blogというブログ上で猛虎という人物がロジット関数を用いてこれらのデータを構成する要素がどの程度幸福度を左右するかということを調査している。後に結婚に関する質問も加えられ、分析が行われている。 幸福度にプラスの影響を与える項目は、言語テストの正答率、家族の収入、最終学歴、政治的観念、宗教への取り組み、性別、その他であり、中でも家族の収入と性別は幸福度に大きな影響を与えている。また、幸福度にマイナスの影響を与える項目は、結婚、年齢、生まれ年であることがわかっている。中でも結婚は、幸福度を大きく左右するという結果が得られている。 この分析が示すものは、高齢者に比べて若い人の幸福度は高いということ(病気になりがちであることが理由。)、所得が高まれば幸福度も高まるということ、どんな状況においても福祉と幸福に正の関係が見られるとは限らないということなどである。 また宗教については、例えば道教と仏教には、「欲望は消費を促し、個人を貪欲にさせる」という考えがあり、精神的な豊かさが幸福に影響する

という。このように宗教的観念も幸福度に大きく影響しているようだ。後の章にて、ブータンの国教であるチベット仏教について記述する。また他の先行研究より、「社会や他人との絆」は幸福度を左右する重要な要素であると言われている。2004年のDienerと Seligmanは未婚の人々や離婚を経験した人々に比べ、既婚者は幸福度が高いということを示している。既婚者は長生きで、鬱病にもかかりにくく、自殺もせず、健康の問題を抱えることが少ない傾向にあることがわかっている。

表 2-1 幸福度への影響についてロジット関数を用いて表したグラフhttp://analyseeconomique.wordpress.com/2012/08/31/determinants-of-happiness-gss/より引用

5

プラスの影響を与える要素

言語テストの正答数

家族の収入

最終学歴

政治的観念

宗教への取り組み

性別

その他

マイナスの影響を与える要素

結婚

年齢

生まれ年

図 2-1 幸福に影響を与える要素

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(2)国全体の幸福① 幸福度ランキング これまでは、個人の幸福にどのような要素が影響しているかを見てきた。次に国全体の幸福について記述する。2006年にイギリスの社会学者、エードリアン・ホワイト氏が世界の 178カ国の約 8万人以上に聞き取り調査を行い、100種類のレポートを分析し、幸福度をランク付けした GNHランキングの結果(表 2-2)を提示することにする。その計算方法は非公開となっている。尚、このランキングでは紛争国は除外されている。

表 2-2 GNHランキング 2006年調査 1

位から 5位はデンマーク、スイス、オーストリア共和国、アイスランド、バハマである。幸せの国として注目されているブータンはこのランキングでは 8位である。日本は、178カ国中の 90位と低い順位と示している。このランキングで下位の 3カ国は 176位がコンゴ民主共和国、177位にジンバブエ共和国、178位がブルンジ共和国であった。

表 2-3 World Data of Happiness

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デンマークスイス

20061~10位順位 国名 順位

1位 11位2位 12位

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順位 国名 幸福度 順位 国名 幸福度 順位 国名 幸福度1 コスタリカ 8.5 11 オーストラリア 7.7 134 ニジェール 3.82 デンマーク 8.3 12 コロンビア 7.7 135 モザンビーク 3.83 アイスランド 8.2 13 ルクセンブルク 7.7 136 ケニア 3.74 スイス 8 14 アイルランド 7.6 137 コンゴ(ブラザビル) 3.75 ノルウェー 7.9 15 オーストリア 7.6 138 マダガスカル 3.76 フィンランド 7.9 16 オランダ 7.6 139 シエラレオーネ 3.57 メキシコ 7.9 17 ドミニカ共和国 7.5 140 ジンバブエ 38 カナダ 7.8 18 ブラジル 7.5 141 ブルンジ 2.99 スウェーデン 7.8 19 ベネズエラ 7.5 142 タンザニア 2.810 パナマ 7.8 20 アメリカ 7.4 143 トーゴ 2.6

World Data of Happiness1 10~ 位 11 20~ 位 134 143~ 位

  表 2-3は、オランダ・エラスムス大学の名誉教授、ルート・ベンホーベン博士が行った約 150カ国の幸福度調査の結果である。1970年から 2010年まで調査し、0から 10段階で幸福度を調査したものをランキングにしている。これを上図の 2006年のGNHランキングと照らし合わせてみると、多少の違いはあるものの、上位国や下位国には同じような国々がランクインしている。この 2つのランキングからわかることは、①北欧 5カ国が上位であること、②経済発展が進んだ先進国が上位というわけではないということ、③アフリカの国々が下位であること、である。 ② 社会・経済指標と幸福度の関係性(ア) 10カ国の社会・経済指標比較 次に、さきほどの 2006年のGNHランキング上位国とその他先進国を含む 10カ国を取り上げ、各国の社会・経済指標と幸福度の関係性をみる。GNHランキングで 1位となったデンマーク、幸福の国と呼ばれるブータン、ランキング上位のニュージーランド、ノルウェーの 2カ国、アメリカ、韓国、ドイツ、イギリス、中国の主要国、そして日本とする。分析する社会・経済指標は、Diener and Seligmanの 6分類、GSSの調査などを参考にして選択し、各国を比較していくことにする。まずは、2006年にGNHランキングが行われたということで、この年の社会・経済指標と幸福度数の関係性を示そうと思う。World Data of Happinessの幸福度は、10段階で数値化されているので、こちらの結果を示すことにする。

表 2-4 幸福度分析データ 2005年版

国名GNHランキン

2006グ 年順位(位)

1970年から2010年の平均幸

※0 10福度 から

国全体の名GDP 10目 ( 億USドル)

1人当たりの名目

GDP US( ドル)

平均寿命(歳)

失業率(%)

100人口(万人)

1人当たり平均年間総実労働時間(時間)

ジニ係数

自殺率(人

/ 10万人)

投票率(%)

3第 次教育機関への入学率(%)

消費税率※(%)

2012年度

デンマーク 1 8.3 257.68 47,617.12 77.84 4.82 5.41 1,579 0.32 2004( ) 9.6 84.54 57 25ブータン 8 ND 0.8 1,208.95 64.88 2.3 0.66 ND ND ND 54.87 2007( ) ND ND

ニュージーランド 18 7.9 111.57 26,936.99 79.85 3.83 4.14 1,811 0.34 2003/ 2004( ) 12.2 80.29 79 15ノルウェー 19 7.5 304.06 65,646.21 80.04 4.62 4.63 1,420 0.28 2004( ) 10.9 77.44 76 25アメリカ 23 7.4 12,622.95 42,628.55 77.34 5.08 296.12 1,799 0.38 10.1 47.52 2006( ) 64 州によるドイツ 35 7.1 2,771.06 33,603.03 78.93 11.21 82.47 1,434 0.3 2004( ) 9.7 77.65 36 19イギリス 41 7.1 2,298.64 38,159.27 79.05 4.8 60.24 1,673 0.34 2004/ 2005( ) 6 61.36 51 20中国 82 6.3 2,256.92 1,726.05 72.17 4.2 1,307.56 ND ND ND ND ND 17日本 90 6.5 4,571.87 35,780.57 81.93 4.43 127.78 1,775 0.32 2004( ) 19.5 67.46 44 5韓国 102 6 844.87 17,550.88 78.43 3.73 48.14 2,351 0.31 2006( ) 24.7 59.98 51 10

2005年の社会・経済指標

参考文献 11,35,36,38,42,44,60,世界銀行データより作成  上の表 2-4は、2005年(2005年のデータがなければ、近い年のデータを使用している)の 10カ国の基礎データと 2012年度の各国の消費税率を示したものである。 

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図 2-3 所得不平等と幸福度数の関係性図 2-2 1人当たりの名目 GDPと幸福度数の関係性

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0.00

10,000.00

20,000.00

30,000.00

40,000.00

50,000.00

60,000.00

70,000.00

0 2 4 6 8 10

デンマークニュージーランドノルウェーアメリカドイツイギリス中国日本韓国

(USドル)

1人当たりの

名目 GDP

幸福度数 幸福度数

ジニ係数

0

0.05

0.1

0.15

0.2

0.25

0.3

0.35

0.4

0 2 4 6 8 10

デンマークニュージーランドノルウェーアメリカドイツイギリス日本韓国

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 2 4 6 8 10

デンマークニュージーランドノルウェーアメリカドイツイギリス日本韓国

(%)

幸福度数

3次教育機関への入学率

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

0 2 4 6 8 10

デンマークニュージーランドノルウェーアメリカドイツイギリス日本韓国

投票率

幸福度数

(%)

 図 2-2については、1人当たりの名目 GDPと幸福度数の関係性を示している。ノルウェーが最も高く、次いでデンマークが高い。1人当たりの名目 GDPは北欧が高い傾向にあるようだ。韓国と中国が10カ国の中では低い。2005年現在の国全体の名目 GDPでは、アメリカ、日本、ドイツが大きい。しかし、こちらの結果は幸福度に影響がみられない。ただ、1人当たりでみていくと幸福度との関係性はあるようだ。経済が豊かになればなるほど幸福度が高まるわけではないという幸福のパラドックスがいわれているが、ある程度の経済的な豊かさは幸福度を高めるためには必要だということがここからもわかる。 図 2-3については、ノルウェーが低い値を示している。第 1章でも述べているが、2011年 9月のウォール街でのデモが起きているように、アメリカの所得格差は他国と比較しても大きいことがわかる。幸福度が比較的高いニュージーランドも所得格差が大きいことが示されているため、幸福度に大きく影響するわけではなさそうだ。後の章でも説明していくが、ブータンが国策として取り組んでいる GNHの 4つの柱のうち 1つは「公正で持続可能な社会経済発展」というものである。ここでは、国民皆が、また全ての地域が恩恵を受けることを可能にすること、また格差を生まないようにすることがいわれていた。格差を生まないようにしていくことは、幸福度を高めるために必要なことだとこの結果からも感じた。 次に、図 2-4については、第 3次教育機関への入学率を示している。第 3次教育機関とは、大学や職業専門教育を指す。最も高いのはニュージーランドである。次いで、ノルウェー、アメリカ、デンマークとなっている。この国々は GNHランキングで上位となっているため、「教育」は幸福度への影響があるといえるはずだ。2005年の時点ではあるが、日本の第 3次教育機関への入学率は他国に比べて低い傾向にある。大学全入時代を芳しく思うわけではないが、幸福度を高めることを考える上で、日本の教育は検討すべきポイントであると私は考察する。 最後に図 2-5についてである。これは、投票率を見ているが、デンマークが最も高く、次いで、ニュージーランド、ドイツ、ノルウェーとなる。これらの国々も幸福度が高い傾向にあり、投票率、つまるところ政治への関心の高さは幸福度に影響すると考えられる。日本は、昨今でも話題となるように投票率は高いとはいえない。

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図 2-4 第 3次教育 入学率と幸福度数の関係性

図 2-5 投票率と幸福度数の関係性

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 幸福度に影響を与えていると思われる指標を見ていくと全てに幸福度との相関がみられるわけではないことがわかった。しかし、あらゆるデータを見ていくうちに幸福度が高い国々は比較的どの指標においても良い数値を示していることに気付いた。やはり、幸福度というものは単一要素で決定するわけではなく、数多くの要素が複雑に絡み合っているということがここでもわかった。 (イ) 10年間の社会・経済指標の変化と幸福度数の関係性

 2006年に GNHランキングが作成されたので、前年の 2005年を基準に先ほどの社会・経済指標を 5年遡って確認し、変化が幸福度にどのように影響を与えているのかということを分析している。以下の図 2-6から 2-8はその推移を示した。数々の社会・経済指標を見たが、その中から特徴的なものについて、特筆しようと思う。尚、この 3つの指標に関しては、データを集められなかった国がある。

a. 第 3次教育機関への入学率 図 2-6 2000年から 2005年までの第 3次教育機関への入学率の変化

  2000年から 2005年の 5年間を見てみると、最も減少しているもののニュージーランドが高い数値を示している。最も増加が著しいのは、アメリカである。2005年の時点で幸福度が高い国々が第 3次教育機関への入学率が高いため、教育は幸福度に影響を与えているといえそうだ。ただ、ほとんどの国で上昇しているため、変化率は影響があるとは言い切れない。オランダの Hartogと Oosterbeekが1998年に教育が個人の幸福感に影響を与えるのかどうかを研究している。この研究結果からは、高いレベルの教育を受けた人々が幸福を感じているというわけではないということがわかっている。原因として知的な人々が他人より高い願望を持っており、自分の望ましいとする状態を常に高めようとするからであると 2002年に Freyと Stutzerは述べている。しかし、「教育の質」についての国際比較をしたデータはないため、具体的に教育に関する何が幸福度と関係しているのかはわかっていない。

b. 失業率図 2-7 2000年から 2005年までの失業率の変化 5年間の失業率の変化を見ると、ドイツが最も上昇している。反対に減少しているのはニュージーランドである。ただ、幸福度の高い、デンマークやノルウェーの失業率が上昇しているため、幸福度に大きく影響しているとはいえなさそうだ。 先行研究では、失業と幸福には関係性があるということがいわれている。また、2003年にHelliwellが貧しい国に比べ、経済的に豊かな国は失業によって大きな悪影響をもたらされているということを

述べている。これは、精神的にダメージを受けることが要因であると考えられている。 フロー心理学というものがある。フローとは、自分の目標とスキルが上手くバランスのとれた状態を示し、この状態にあると脳がとてもくつろぐ。フローそのものは幸福ではないが、人生をより豊かにしてくれる状態であるといえよう。人を最もこの状態にしてくれるものが仕事である。人は仕事を嫌なものとして避けがちだという矛盾を抱えるものの、それは、私たちに誇りとアイデンティティをもたらし、心を充たしてくれるものなのかもしれない。職業に就けないということは、経済的安定を得られないと同時に、幸福感さえも得ら

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れないという。そういった意味でも、幸福度を高めるために失業率の改善は必要であると感じた。

c. 自殺率図 2-8 2000年から 2005年までの自殺率の変化 自殺率は 10万人当たりに何人が自殺しているかという数字で表わされている。このグラフから日本と韓国が高い割合を示し、かつ上昇傾向が見られる。自殺率が高い国の特徴として挙げられることに「旧社会主義国家」があるが、それらに並び日本と韓国は自殺率が高いことがいわれる。GNHランキングにおいて韓国は 102位、World Database of Happinessでは、0から 10の間で幸福度は 6.0ということがいわれている。これは他の国と比べて低い数値である。韓国の他のデータをみると平均労働時間が長く、投票率が低いことが挙げられるが、第 3次教育機関への入学率は高く、失業率もさほど悪くはない。この国の 1970年から 2010年の平均幸福度が低くなってしまった大きな原因として自殺率が高すぎ、また 5年間で最も高い上昇率を示していることが考えられる。これは、日本でも同じことが考えられるはずだ。先進国の中でも異常に自殺率の高い日本であるが、原因として日本に自殺の文化が根付いていることが挙げられていた。第 5章でもこれについて述べたいと思う。 ③ 世界価値観調査 次に、1981年から 2007年にWorld Values Survey(世界価値観調査、以下WVSと記載する。)が実施した幸福度調査、分析について説明する。WVSは、アメリカ政府が出資している非営利機関であり、長年に渡りデータ調査を行っている。彼らは、52カ国、35万人もの人々を対象にインタビューを実施した。その結果、Ronald Inglehartらがまとめた Development, Freedom, and Rising Happinessという論文から得られた結果を紹介する。

主観的幸福感=生活満足度-2.5×幸福

 まずはこの調査の方法を説明する。WVSは、「生活満足度」に関する質問を行い、1から 10で評価してもらう。全く生活に満足できていない場合は 1、反対にとても満足している場合が 10である。また、「幸福」に関する質問も行った。これは、1から 4で評価を行い、1がとても幸せ、4が全く幸

せではない、となる。この 2つの質問から得られた数字を元に定義したものが、主観的幸福感(Subjective well-being、以下、SWBと記述する。)である。主観的幸福感は上の式で求められ、最も大きくて 7.5、最も小さくてマイナス 9となる。

図 2-9 各国の 1人当たりのGDPと SWB

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 幸福度に影響を与える項

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デンマークニュージーランドノルウェーアメリカドイツイギリス日本韓国

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 図 2-9は、各国の 1人当たりの GDPと生活満足度、幸福から導き出された SWBを示したものである。1人当たりの GDPが小さいとき、その大きさが 1 単位上がったときの SWBの増加分は大きい。しかし、徐々に主観的幸福度の増加分は減少してくる。この曲線は、1人当たりのGDPの大きさが決まったときに示される主観的幸福度であり、62パーセントの確率でこのようになると予想されたものだ。この曲線に近ければ近いほど、主観的幸福度を決定する要因が経済の規模に大きく依存するといえる。ただ、この図を見る限り、曲線から大きく外れている国がほとんどである。その場合、主観的幸福度を決定する要因は経済的要因以外の要素に依存しているといえる。 また、WVSは、生活満足度と幸福に関する質問の他にも質問を行っている。ドラッグ依存症、異なる人種、エイズ病患者、移民、外国人労働者、ホモセクシャル、異なる宗教、アルコール依存症などの人が近隣に住んでいない方が良いかという質問を行っているが、これは社会的寛容度を示すためのものである。生活における信仰の重要度や国に対するプライドの質問もある。 このWVSの調査より、宗教や社会的寛容度が高い国々は、主観的幸福度も高い傾向があることがわかっている。図 1を見ていくと、旧共産主義国の多くは、曲線の下、かつ 1人当たりの GDPが低い部分に集まっている。旧共産主義国の多くは宗教ではなく、共産主義のイデオロギーの下国家運営を行ってきたために、崩壊後は心のよりどころを失ってしまった。つまり、国に対するプライドが低下してしまったのである。また、共産主義が崩壊したことにより、民主化が進み、国民の自由度は上がったものの、経済的に衰退した。そうした要因から、多くの旧共産主義国は SWBが曲線より下に位置する。旧共産国の幸福は上昇したようだが、生活満足度は低下している。逆にラテンアメリカ系の国家は、曲線の上、かつ 1人当たりのGDPが低い部分に集まっている。これらの国々は、宗教や文化が SWB上昇に大きく影響している。ラテンアメリカ系の人々は、神を強く信じ、国の誇りも持っ

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ていること、かつ、楽観的な性格であるためにこのような結果が出た。

表 2-5 さまざまな変数がどれくらい SWBに影響を与えるか

 表 2-5は、SWBにさまざまな変数がどれくらい影響を与えるかを示した回帰分析の結果である。幸福と生活満足度を除いた全ての変数を利用し、回帰分析を行った結果が、Model 1.1である。これを見ると、1 単位上がったときに主観的幸福に大きく影響するものは、宗教と社会的寛容度、そして民主主義となった。

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表 2-6 さまざまな変数がどのくらい主 SWBの増加分に対して影響を与えるか

  表 2-5では、SWBそのものに対する影響を見ていたが、表 6は増加分に対する影響について回帰分析を用いて見ている。ここでいえることは、主観的幸福の増加分に対しては、自由な選択が強く影響しているということである。つまり、主観的幸福に最も影響を及ぼしているのは、自由な選択であるといえる。表 2-5で示した回帰分析においては、自由な選択があまり効いていなかった。その理由は、他の変数が自由な選択と重なり合っていたことがいわれていた。ここで突然自由な選択と出てきたが、これは、経済発展、民主主義、社会的自由化から成り立つものであると論文で言われている。そして、自由な選択が多くできる社会において SWBが高い傾向にあるという結果が得られている。InglehartとWelzelによると、幸福度と生活満足度が高い社会では、いくつか特徴がある。それは、腐敗した政府でないこと、性差がほとんどないこと、民主化がより進んでいることだ。この特徴に当てはまっている国が後に説明するデンマークである。 国全体の幸福に影響を与える要素は、どの国も同じというわけではない。また、図 2-9を見るとデンマークは、1人当たりのGDPも高く、曲線より大幅に上回っていることがわかる。こうした国は、自由な選択が幸福度に大きく影響を与えているようだ。おそらくデータ不足のためにこの調査の対象から外れているブータンは、1人当たりのGDPは低く、曲線より大幅に上回っているのではないかと考察する。調査期間の間をとり、2001年の 1人当たりの名目 GDP(786.40USドル)、2006年のGNHランキングを参考にし、ブータンが図 2-9のどこに位置するかを分析した。その結果、星印の辺りなのではないかと考える。そして、チベット仏教を国教としていることが理由に挙げられる。後のデンマークとブータンの章で詳しく考察していくことにする。  第 3章 「幸せの国」ブータン 2006年に行われた GNHランキングでは、ブータンは第 8位であった。しかし、ブータンは国民の97パーセントが「幸福である」と答えたことがあるという国家である。そういったことから「幸福の国」と呼ばれ、近年注目を浴びている。しかし、分析を進めていくうちに気になることがあった。他の上位国は、経済規模がある程度大きいといえる一方、ブータンの経済規模は大きいとはいえない。また、平均寿命も他国に比べてかなり短い。このようにまだまだ発展途上国でありながら、如何にし

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てGNHランキングで高い位置に着くことが出来たのか、また、アジアで最も幸福となった理由をこの章では追求していくことにする。

(1) 歴史・現状 ブータンの歴史を説明する。8世紀頃にインドのダラムサムからチベット仏教が伝来し、12世紀にはブータンの人々に浸透する。17世紀には移住してきたチベットの高僧、ガワン・ナムゲルがブータンを統一する。1907年には東部トンサ郡の支配的郡長であったウゲン・ワンチュクが初代の国王となり、世襲君主制をとり始めた。1952年に即位した、第 3代国王は近代化政策を実施した。第 3代国王即位時、首相が暗殺される事件などを機に首相の職が失われ、国王が自ら政治を行うようになる。後の第 4代国王が王制を放棄する姿勢を見せる。王制に対して何も不満を持っていなかったブータン国民に対して国王は民主化の必要性を説いたという。第 4代国王は自ら王位を退き、現在の第 5代国王となる。2008年には現在のティンレイ首相が総選挙により選出され、ようやく立憲君主制となった。 2005年の国勢調査において 97パーセントの国民が幸福であると答え、「幸せの国」と呼ばれているブータンであるが、現在どのような国家であるのかを説明していくことにする。ブータンの基礎データを記述する。(2012年 12月現在、外務省より)ブータン王国は、面積が約 38,394平方キロメートル(だいたい九州と同じくらい)で人口は約 70.8万人の小国である。首都はティンプーである。民族は、チベット系、東ブータン先住民、ネパール系等である。国民は公用語のゾンカ語などを使用している。学校の国語の授業はゾンカ語で行われているが、それ以外は英語で行われている。チベット系の仏教徒、ヒンドゥー教などが宗教である。立憲君主制をとっている。主要産業としては、農業(米や麦など)、林業、電力などが挙げられる。ほぼ全ての消費財についてはインドなどの他国からの輸入に依存している状況である。そのため、ブータン国内のルピーがなくなるという事態が起こり、結果としてインフレとなった。識字率は 2011年の段階において 59.8パーセント、2011年の初等教育就学率は 95.1パーセント、2010年の乳児死亡率は 1,000人中 43.7人である。約 450 億円の予算が充てられる教育費と医療費は無料であるが、インドなどの他国からの援助がなされているといった現状だ。ブータン全体の失業率は 3パーセントであるが、若者は 9パーセント、また都市部の若者については20パーセントまで高い失業率を記録しているといった現状だ。(現地の人々の話によると、日本と同様に職業を選択しなければあるといった状況である。)失業者の増加により、首都ではドラッグが横行しているという事態が起きてしまっている。ブータンは発展途上国ではあるが、平均 10パーセントの経済成長率を誇っている国である。この国の経済は世界的に見ても小さい。それは、人々の幸福を守るために GDP至上主義から脱出したということもあるが、物々交換が行われていたり、ほとんどの国民が農民で、自給自足の生活をしていることからだともいわれている。 最後に余談ではあるが、ブータンと日本の関わり合いについて説明する。ブータンでは、西岡京治さんという日本人が有名であり、とても尊敬されている。現在、農業国と呼ばれるブータンであるが、50年ほど前は今に比べて農業は発展していなかった。そんなときに JICAの指導員である西岡さんはブータンのパロという地へ入り、日本式農業を伝えた。1992年 3月 21日に亡くなるまでの 28年間、西岡さんはブータンを非常に発展させ、「ブータン農業の父」として今でもブータンの人々に愛されている。その象徴的なエピソードとして、ブータンで西岡さんの国葬が行われたということがある。外国人の国葬が行われたこと、また、ブータン人 5000人以上が参列したということは大変異例である。 西岡さんの功績を説明する。西岡さんは、農業の機械化を早い段階から進めたり、並木植えを伝えたりした。そうすることで収穫量は飛躍的に増えたのである。今までにない種をブータンへ持ち込み、ブータンの野菜の種類も増えていった。農作物を売り、お金へ替える方法もブータンへ伝えた。やはり、ブータンでも外国人が他国で何かをすることに抵抗を持つようであり、初めのうちは西岡さんの話は受け入れてもらえなかったようだ。そんなときに西岡さんはブータンの民族衣装を着て打ち解けようと試みたり、増収という結果を示したりすることでブータンの人々からの信頼を得ることができた。また、焼畑農業を行い、「死の村」と呼ばれたシャムガンを生まれ変わらせようと西岡さんは考えた。そんなときに村人との 800 回以上もの話し合いを行い、年間 3万トンの収穫量という結果を示した。今日、ブータンが農業国となったのは、西岡さんの力が非常に大きい。 (2)ブータンで生まれた国民総幸福量(GNH)

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① なぜGNHは生まれたのか GNHがどのようにして生まれたのかをここでは記述する。GNHを提唱したのは、ブータン王国の第 4代国王のジグミ・シンゲ・ワンチュク(1972年から 2006年即位)である。ブータンは、中国とインドにも挟まれている小さい国家である。1975年にシッキムがインドに併合されてしまったことからブータンは、ブータンの独自性で自国を守ろうとした。そこで第 4代の国王は、GNHを国の政策目標に掲げたのである。途上国の間では経済発展を目標としてきた 1970年代において斬新な考えだった。1998年に韓国にて国連アジア太平洋ミレニアム会議が開催されたが、そこでブータンの首相であったリョンポ・ジグミ・ティンレイが GNHに関する内容を演説し、世界にその考え方が注目されるようになった。政府の組織図をみてみると、ティンレイ首相と同じ位に GNH委員会を設置しているぐらいなので、ブータンが如何にGNHを重要なものと捉えているかがわかる。

② 定義 実際、国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)に正確な定義はない。「1972年に、ブータン国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱した「国民全体の幸福度」を示す”尺度”」(Wikipediaより)」というように書かれていたが、ブータン国民もよく GNHを理解出来ていない人々も多いようだ。ブータン国王は GNHの考え方についてこのように述べている。『(引用 2)国として、経済基盤は必須であり、ブータンも当然経済発展は心がけている。しかし仏教国としては、経済発展が究極目的ではないことは、経済基盤が必須であることと同様、自明のことである。そこで、仏教国の究極目的として掲げたもの、それが『国民総幸福』である。しかし今考えると、『幸福(happiness)』というのは非常に主観的なもので、個人差がある。だからそれは、国の方針とはなりえない。私が意図したことは、むしろ『充足(contentedness)』である。それは、ある目的に向かって努力するとき、そしてそれが達成されたときに、誰もが感じることである。この充足感を持てることが、人間にとってもっとも大切なことである。私が目標としていることは、ブータン国民の一人一人が、ブータン人として生きることを誇りに思い、自分の人生に充足感をもつことである。』ブータンではこのように、個人が願う生き方が出来るような国を築くために GNHを国策としているといわれている。日本やアメリカの憲法においても実は幸福についての記述があるが、これらは「幸福追求権」である。

表 3-1 ブータンのGNHの 4本柱、9指標、32指針4本柱 9つの指標 32の指標

1. 公正で持続可能な社会経済発展 1. 2. 3. 暮らし向き 健康 教育1. 2. 3. 4. 生活水準 困窮 健康 健康に関わる

5. 6. 7. 8. 知識 ヘルスバリア 教育 ゾンカ 地元の伝説や民話の知識

2. 自然環境保全 4. 生態系 9. 10. 11. 環境悪化 環境知識 植林

3. 伝統文化の保全とその促進 5. 6. 7. 文化 時間の使い方 心の健康8. コミュニティーの活力

12. 13. 14. 伝統的レクレーション 方言 価値伝 15. 16. 承 伝統工芸職人技能 地域における祭 17. 18. 19. り 相互扶助関係 基本的教訓 時間

20. 21. 22. メンタルヘルス 精神性 感情のバラ 23. 24. 25. 26.ンス 相互扶助関係 家族 親類 27. 28. 29. 安全 社会交流 社会支援 コミュニ

ティ信頼感

4. 良い政治 9. よい政治 30. 31. 政府のパフォーマンス 制度に対する信 32. 頼 自由

参考文献 21を基に作成

 ブータン発のGNHは、HDI(Human Development Index:人間開発指数)と似ていると平山修一氏は言う。HDIとは、1990年に国連開発計画(UNDP)の「人間開発報告書」で用いられた指標である。出生時平均寿命、教育達成指数、27 歳以上人口の就学年数、1人当たりの GDPを指標化している。GNHのHDIとの違いは、自然環境保全、伝統文化の保全とその促進の 2点がないことである。なお、HDIは 169カ国を調査対象としており、代表的な幸福度指標だと言われている。 ブータンの GNH指数は 4本柱と 9つの指標、32の指針、更にその中にある 72の項目から構成され、

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数値を出すことができる。数値は、Oxford Poverty & Human Development Initiativeの考えた貧困どの多面的計測方法を参考にされたが、2010年現在、測定方法すら確立されていない現状のため、ブータンでの実用化はされてはいないようだ。GNHが GDPと異なるのは、単一の指標ではないことである。GDPは経済面での評価のみであるが、GNHはGDPでは補えなかったような複数面に注目している。平山修一氏が『「幸福度」は開発目標となりえるか?―ヒマラヤの章ごくブータンの試みを検証する―』の中で、GNPの問題点を具体的に 4点挙げている。(GDPと GNPがどちらも経済面でしか評価していないことが共通して言えるため、ここに記述する。)「(引用 1)1. 個人の実質的所得・支出と言う概念から実質国民所得という概念を導くことが出来ない、2. GNPは社会活動の多くの部分が排除されてしまう、3. 効用が破壊される場合も、部分的に生産として測定される為、GNPを引き上げてしまう、4. 幸福は「相対的な所得」に大きく依存するが、GNPは所得配分と言う側面が無視されている」 GNHの 4本の柱についてみていくことにする。①公正で持続可能な社会経済発展については、もし経済開発等を行うにしても格差を生むものは行わないという考え方に基づいている。②自然環境保全については、自然は人間のより良い生活になくてはならないものとみなされているためである。生態系を破壊してはならないとされている。③伝統文化の保全とその促進については、社会が変化しようとも伝統文化は継承、適応させようという考えに基づいている。④良い政治は、全ての国民の声を大事にした透明性の高い政治を行おうというものである。これらはどれか一つが欠けて良いというものではけしてなく、どれもが大事であるといわれている。 しかし、ブータンは仏教国であること、小さい国家だからこそきちんとした調査が行えることなどいくつかの理由から GNHをそのままそっくり他国で使うことは難しい。ここで私は、自らが信仰する宗教の考え方に幸福も左右されるのではないかと考察した。ブータンにおける GNHの調査方法は、約 800 項目の質問が書かれたアンケート冊子を数 1,000人のブータンの人に配布、集計するというものである。 ブータンでは、この調査により見つかった課題に取り組むことで国民の幸福度を高めることを目的としている。

(2)なぜ国民の 9割以上が幸福と感じることができたのか 上述にもあるようにブータンで 2005年に行われた国勢調査には、97パーセントの国民が幸せであると回答している。また、第 2章にあるように、2006年に行われた GNHランキングでは、第 8位という結果は、アジアの中では最高順位であり、178カ国という多い国の中でのこの順位は非常に高いものであるといえる。 ブータンがこんなにも幸せだと感じている理由は何なのか。私が感じるブータン幸福の理由を主に3つ挙げてみることにする。①チベット仏教、②人との繋がり、③医療費・教育費が無料、である。 第一に、チベット仏教は、ブータンの国教であり、人々の日常生活に大きな影響を与えている。第2章の図 2-3 の各国の 1人当たりのGDPと SWBにおいて、ブータンはおそらく線より上に表わせるだろう。ブータンが経済発展の進んだ国ではないのに、線より上に表われている理由としてチベット仏教が人々の生活に根付いていることがあるはずだ。そして、チベット仏教があるからブータンでGNHが生まれたといえる。これは、後に詳しく説明していくことにする。 第二に、人との絆がとても強いこともブータンの特徴である。大人数で住むことが普通であり、孤立してしまうという状況がないようだ。だからこそ、ブータンにはホームレスも孤児もいない。誰かが必ず面倒を見るという文化が根付いているようだ。また、具体的な数字はないものの、ブータンの離婚率は高いと「幸福王国ブータンの智恵」で言われている。人との繋がりをとても大切にするという印象のブータンに離婚率の高さは驚くべきことだろう。これは、発展途上国故の問題かもしれないが、以前のブータンには結婚に関する法律がなかったために、男女が同棲することで結婚したものと捉えていた。よって、同棲をやめることにより、婚姻関係が解除されたと考える。後に婚姻届が作られたものの、そのときの感覚が残っているのか、離婚を重大なことと受け止めないようである。また、離婚後の夫婦に子供がいる場合も母親の家族が面倒を見る文化があり、こうした状況においても孤立することがない。あらゆるブータン特集をみていると、日本人がブータン人のお宅に訪問するときは必ず、近親の人々を集めておもてなしをしている。外国人に対する振る舞いを見ていても人との繋がりを大切にする国民性が表われている。

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 最後に、医療費・教育費が無料であることで、経済的な裕福さを問わず、誰でも医療・教育を受けることができる。GNHを高めるための政策であるようだ。これは、後の章でも述べるが、デンマークとも共通した部分である。教育は国を発展させると考えられていることもデンマークと共通する。医療に関しても仏教の考えが影響し、文化を壊さないために医療技術の発展を避けているという現状がある。 2012年 10月 23日に私は、ブータン王国プナカ県知事であるクンゼン・ツェリン氏にお話を伺った。「経済発展をしつつ、幸福度を高めるということは可能であるか」と質問してみた。先述のようにブータンの GNHは、4本柱から成り立っている。その 4本柱の一つに経済成長があり、それは突出したものではない。バランスを上手にとっていくことができれば、経済の発展も幸福の追求も可能なのではないかというように話された。 しかし、私はこのお話を全て素直に受け入れることができなかった。理屈では、経済発展と幸福の共存は可能だということがわかったとしても、人間の欲望には勝つことはできないのではないかと感じたからだ。より良いもの、より良い生活を知ってしまったとき、本当にブータンの人々は欲望を抑えて身の丈に合った成長などと言っていられるのだろうかと考えた。しかし、ブータン社会の大きな特徴である「チベット仏教」がそれを可能にしているということがわかった。

(4) チベット仏教 なぜブータンの人々は、経済成長と幸福の共存は可能であると考えるのだろうか。人の欲望は抑えられることができないのではないか。そんな疑問を持ちながらブータンについて調べていると興味深いことがわかった。ブータンは世界で唯一チベット仏教を国教としている国であり、人々の生活は仏教哲学の下に成り立っているのである。 インドのブッダガヤで悟りが開かれたのが仏教の始まりである。仏教は大きく、上座部仏教と大乗仏教に分かれる。ブッダガヤで生まれた直後にチベットに入った大乗仏教がチベット仏教である。チベット仏教には 4大宗派がある。そのうちの 1つであるカギュー派、その中でさらに分かれている支派の 1つ、ドゥク派というものがブータンの国教となる仏教だ。チベット仏教の考え方として、世の中の全ての生きとし生けるもののため祈るということがある。この考えがブータンの人々に浸透しているようである。 「足るを知る」という言葉にあるように、欲するのではなく、今あるもので十分と考える。1人だけの幸せを考えるのではなく、全体の幸せを考える。「輪廻転生」の考えから、今が一番大切、次世代のことも考える。そのような考えからGNHも生まれた。 日常生活の様子からもチベット仏教が根付いていることがわかる。ブータンの人々は、家庭に必ず仏間を設けている。家畜の豚も殺生することはなく、これには「利他の精神」が根底にある。得を積むため、メモリアルチョルテンという仏塔の周りをひたすら歩く。マニ車を回す。こうした行動は全てチベット仏教に基づくのだ。ブータンの人々の心の拠り所となる、チベット仏教。他国に比べて経済規模は小さくとも、幸福度が高い国づくりを可能としている大きな要因としてチベット仏教の力があるようだ。

第 4章 デンマーク 2006年のGNHランキングより、世界で最も幸せな国とされた「デンマーク」に焦点を当て、その歴史と現状を見た後に、ランキングで首位になれた要因の分析を行う。そして課題についても見ていく。

(1) 歴史・現状 高負担高福祉は、デンマークの長い歴史の中で培われたものだという。以下、簡単にデンマークの歴史を説明していく。793年からアメリカへ進出するなど勢力を増したバイキングであるが、800年ごろにバイキング王のグーフレドは君主制をとり始める。後、デンマークのマーガレット 1世は、スカンジナビア半島を統一する。キリスト教ルーテル派を 1536年、クリスチャン 3世即位時に国教とし、現在も国教としてあり続けている。北ドイツのハンザ同盟との覇権争いを繰り返し、 2度の敗北はあったものの、北欧 3国統一後には勝利を掴んだ。現在は、国家財政が黒字であるデンマークであるが、ナポレオン戦争に加担し、インフレを引き起こした結果、国家が破綻してしまった歴史もある。

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1864年には再びドイツと戦争をしており、このとき、領土を奪われてしまっている。そんなとき、エンリコ・ムリオス・ダルガスという人物がデンマーク原野開発会社を設立し、残った原野を 20年ほどかけて農地へ変えたという。1849年にはデンマーク憲法が発効され、絶対君主制から現在の立憲君主制へと移行している。高福祉の発端は、16世紀のルターの宗教改革であり、カトリック系の教会が消え、貧困者救済を行政が請け負うようになったことだといわれている。 ドイツとの戦争を繰り返したり、土地を奪われ、占領されたりという歴史の中から「自国の利益は自分たちで守ろう」という精神が生まれた。また、国教であるキリスト教の精神を教育の中でしっかりと培っているからこそ、共生という意識が芽生えてきたという。デンマークで有名なアンデルセンの童話、「おやゆび姫」、「裸の王様」などからも人々は哲学を学び、民度が高まっていると言われている。 以下、デンマークの基礎データを記述する。(2012年 10月現在、外務省より)デンマーク王国は、フェロー諸島及びグリーンランドを除いて面積が約 4.3万平方キロメートル(だいたい九州と同じくらい)で人口は約 558万人。(2012年デンマーク統計局より)ブータンよりやや面積や広く、人口は8倍ほどだが、こちらも小国である。首都はコペンハーゲンである。国民はデンマーク語を使用している。国教は、福音ルーテル派である。主産業としては、流通・運輸、製造、不動産、ビジネスサービスなどが挙げられる。失業率は、2011年 IMF統計によると 6.1パーセントである。

(2) なぜGNHランキングで首位になれたのか イギリスの社会学者が実施した 2006年のGNHランキングで首位となったのは、デンマークである。また、2008年にWorld Values Surveyが行った幸福度調査でもデンマークは首位となっている。そして、2012年にコロンビア大学地球研究所が行って発表したWorld Happiness Reportでもデンマークは 1位となっている。この 3つの幸福度調査では、評価方法が違うことにより、2位以下は大きく変わっていた。数多くの幸福度調査が行われている中でデンマークがこれほどまでに首位となっていることはとても興味深い。 デンマークでは、「高負担高福祉」の北欧型である。北欧の社会福祉制度は通称「スカンジナビアモデル」と呼ばれるが、デンマークでもこのモデルが採用されている。デンマークの社会福祉制度は、「ゆりかごから墓場まで」面倒を見るものである。病院の入院費・治療費、小学校から大学までの教育費や社会教育費まで無料で受けることができる。 第一に医療に関して見ていく。デンマークでは、どんなに高度な手術を受けようとも、どんなに入院しようとも入院費や治療費は国が負担してくれる。また、患者に付き添う場合であっても宿泊代、食事代が無料となる。また、医療経済学の専門誌「HEALTH ECONOMICS」に載せられたロンドン大学政治経済学部の E・モサイアロス博士らの調査によると「自分の国の医療に満足している人の割合」に、90.0パーセントという高い割合でデンマークが一番高いという結果が出ている。これは、調査対象となった EUの 15カ国中で最も高い割合となった。デンマークの国ごとの一人当たりの年間医療費は、1201USドル(1993年の為替レート)である。

図 4-1 医療費と医療満足度との関係性http://www.yuki-enishi.com/medical/medical-01.html より

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 図 4-1は、「市民の目から見た EU15カ国の医療システム」、「先進 10カ国における医療満足度」という 2つの論文をもとに作成された医療費と医療満足度の相関関係を示したグラフである。一般的には、医療費が高ければ高いほど、自国の医療に対する満足度が高まるということが「市民の目から見た EU15カ国の医療システム」の中で言われている。しかし、デンマークは医療満足度が高く、医療費も安価ということがわかる。 第二に教育に関しては、デンマークでは原則無料で受けることができる。日本では、小学校の 6年間と中学校の 3年間が義務教育期間として設けられている。デンマークも日本とほぼ期間は同じ 10年間(幼稚園クラス、初等教育、中等教育)が義務教育期間として定められているが、日本とは義務教育期間が終了した後も継続して無償で教育を受けることができる点が異なっている。 デンマークでは、18 歳になると親から経済的に援助してもらうことがなくなる。その代わりに日本円で約 10万円の就学支援金というものが毎月国より支給される。また、自宅から通える距離に居住していようが入寮することができる。このように日本とは全く異なる環境にある。デンマークでは、教育費を無料にすることで国民全員に学習の機会を設けている。そうすることで各家庭の経済状況に関係なく教育を受けることができる。デンマークの教育で特徴的だといえるのが、就業のための教育であることだ。デンマークの高校、大学には入試はないものの、卒業することが大変難しい。(コペンハーゲン大学では、70パーセント程度が留年し、入学生に対して卒業生が 30パーセント程度の割合。)卒業と同時に学生は就業資格が与えられる。この資格は、特定の職業に就くための資格であり、取得していればどんな職業にも就けるというわけではない。もしも転職をしたいのであれば、再び教育機関へ通い、資格を取得する必要がある。デンマークの勤続年数は 8年程度であるため、多くの人が転職をするために教育を受けるということがわかる。 そして年金に関してみると、18 歳以上のデンマーク国民は年金(日本の国民年金とは別で生活費のようなもの)を受給することができる。(ただし、精神的・肉体的に就学も就職も困難な場合である。また、若者が年金生活をすることはめったにないといわれている。)2007年 8月の時点で、年間 300万円ほどの年金が受給された。国民の約 40パーセント以上もの人は、所得の支援を受けている。しかし、高額所得者で国民年金を受給することができない場合もある。国民年金の他にも労働市場付加年金、早期退職年金がある。 デンマークの国教は、デンマーク国立国教会(キリスト教)である。聖書の中には「自分を愛するように、あなたの隣の人を愛せよ」(『ヤコブの手紙』2章 8節)という言葉があるが、ケンジ・ステファン・スズキ2氏は、デンマークにはこうした考えが根底にあるのではないかと考えているようだ。 このように高福祉を実現できているが、その背景には「高い割合での税金徴収」がある。デンマークでは、国への納税率が 69.5パーセントと非常に高い水準となっている。日本と同じように直接税(国税、所得税)と間接税(消費税、自動車登録税、酒税、煙草税など)の 2種類分かれている。こ

2 1944年に岩手県に生まれ、1979年にデンマーク国籍を取得した人物。19

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の間接税がデンマークの社会福祉費用へと回されている。消費税は 25パーセントととても高い割合となっている。これは、生活必需品であろうが一律の割合となっている。この 25パーセントという割合は、2012年現在において諸外国と比較しても非常に高いといえる。実際にデンマークの国民も消費税に関しては高いと感じているようだが、それが当たり前であるというように思っているようだ。しかしデンマークは地理的に恵まれているのか、食糧自給率は 100パーセントを超えており(カロリーベースでは 300パーセント以上の食料自給率を誇っている)、25パーセントの税がかかろうとも食糧は安く手に入れることができるようだ。 デンマークでは、税金が公平に徴収できるような仕組みがきちんと整えられている。例えば、アルバイトであろうとも所得税を納めなければならない。アルバイトをする際は、無税カードか納税カード(3万 2200クローネ以上か未満かで決定)が必要になり、そのカードから納税の義務が生じてくる。一人一人が国民背番号を持ち、事業を行う際には事業所登録番号を持つことになっており、その番号がなければ事業の運営が行えなかったり、銀行口座が開設できなかったりとさまざまなペナルティがなされることとなっている。こうすることで、徴収漏れや脱税といったことが防がれ、公平に税金を徴収するシステムが上手く機能しているのである。 これだけ高い消費税をとるデンマークであるが、負担を減らす政策も行っている。デンマークには国内メーカーがなく、全てが他国からの輸入に頼っている。よって自動車にかけられる税金は非常に高い上、自動車の定価も高い。よって、国は自転車に乗ることを推進しており、自転車専用レールもあるほど整備された環境にある。高い医療満足度を誇りつつ、医療費を抑えることができる工夫も数多くなされている。デンマークには総合病院で勤務する医師とは別に「家庭医」という医師が存在している。国の制度として家庭医が存在しているために、国民皆が彼らとの関わりを持っている。家庭医は薬を出さなかったり、95パーセントほどの病状を解決したりと家庭医の役割は非常に大きい。大病に関してはすぐに治療を行うが、多少のことでは行わない。患者が薬を欲すればすぐに提供してくれる日本の医療とは大きく異なる点である。その他、病院と自治体は、常に顧客満足度調査を行い、フィードバックを実施する。こうした数多くの工夫がデンマークの医療の質を高めているといえよう。 国民意識が高いことも幸福要因に考えられる。デンマークでは選挙権が 18 歳から与えられ、投票率も 80パーセント以上である。(2005年の時点でのデンマークの投票率は 84.54パーセントである。)2007年の総選挙における討論会のテレビ放送の視聴率は 74パーセントであったといわれている。高い税金を納めていることで、一体どのように利用されているか、政治家を監視しようとする。また、若い人に向けた政策をとることで日本のような「票集め」に走ることもなく、質の良い政治が行われる傾向にある。 この国民意識の高さを培ったのは、国を挙げて力を注いできた教育である。教育が国家をよりよくしていくという考えが根底にあるようだ。戦争のために国家財政が破たんした際にこの考えがあったからこそ、1814年の学校教育義務化が実現したのである。デンマークの学校には、「学校運営委員会」の設置が義務化されている。これは、学校教員・職員、保護者、生徒が一緒になり授業計画を行ったり、学校の運営を考えたりするものだ。15 歳頃には、政党に所属する子どもも出てくるようだ。子どもの頃から自主的に考えて行動することに慣れてきた結果が、80パーセントを超える選挙投票率を導いていたり、市民の取り組みが国家プロジェクトとして始動したりするなど国民が国を動かそうとする原動力となっているようである。

表 4-1 北欧 5カ国の主要社会・経済データ比較

2006 GNH年ランキング(位)

1970- 2010年の平均幸福度

2004 4年 月現在の%消費税率()

2000年の租税%負担率() %投票率() GDP国全体の名目

10 US( 億 ドル)1人当たりの名

GDP US目 ( ドル)失業率%()

第三次機関入%学率()

100人口(万人)

10自殺率(万人当たり/人)

合計特殊出生率(人)

デンマーク 1 8.3 25 69 84.54 257.68 47,617.12 4.82 57 5.41 9.6 1.8

アイスランド 4 8.2 24.5標準消費税 14食料品消費税 53.5 83.6 2007( ) 16.32 54,420.04 2.06 74 0.3 10.4 2.05

フィンランド 6 7.9 22標準消費税 17食糧消費税 49.4 65.02 2007( ) 196.12 37,316.14 8.4 73 5.26 16.5 1.8

スウェーデン 7 7.8 25標準消費税 12食料品消費税 54.4 81.99 2006( ) 373.94 41,368.90 7.63 76 9.04 11.5 1.77

ノルウェー 19 7.9 24.5標準消費税 14食料品消費税 43.1 77.44 304.06 65,646.21 4.62 76 4.63 10.9 1.84

5 2005北欧 カ国比較 年版

参考文献 11,35,36,38,42,44,60、世界銀行のデータを基に作成

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表 4-2 世界の国家統治に関する調査出典:Morgenavision Jyllands-Posten Sondag den 17.sept.2006, Erhvervs Magasinets.5

国名 2006 GNH年 ランキング(位) ①民主主義 ②治安 ③公共サービス ④規律 ⑤法整備 ⑥汚職 合計点デンマーク 1 100 78 99 98 99 98 572アイスランド 4 96 100 100 98 100 100 594フィンランド 6 100 98 99 99 98 100 594スウェーデン 7 98 89 96 92 96 97 568ノルウェー 19 99 92 98 92 99 97 577

 上のようにデンマークの特徴を記述してきたものの、こういったものは北欧全体にもほとんど共通して言えることなのではないか。表 4-1は、北欧 5カ国(デンマーク、アイスランド、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー)の主要な社会・経済データを比較したものである。これを見てもわかるように、北欧 5カ国の間にはあまり大きな差異が見られないように思う。歴史的に見ると、1387年から 1412年頃にデンマーク王家のマーガレット 1世がスカンジナビア半島を制覇したために、北欧 3国があらゆる面で似ているということがいわれている。事実、2006年に行われたWorld Governance Index.(表 4-2)では、代表的な北欧 5カ国で比較すると、デンマークの治安の数値が多少低いこと以外、大きな差異が見られなかった。(このときのデンマークは、テロ発生の可能性があったため、少し低めの数値が出ている。)また、デンマーク大使館の中島健祐さんにデンマークと他の北欧諸国では何か違いがあるのかどうかを伺ったところ、定量的なデータがないためわからないとのことだった。 私が北欧 5カ国と比較し、デンマークの良い特徴だと感じたのは、投票率の高さと税率の高さである。また、第 1章の幸福度分析の中で得られたデンマークの特徴は、ここでも投票率の高さ、格差の小ささ、第 3次教育機関への入学率の高さ、消費税率の高さであった。投票率は、GNHランキングが行われた 2006年に近いもので見ていくと、フィンランドが 65.02パーセント(2007年)、アイスランドが 83.60パーセント(2007年)、ノルウェーが 77.44パーセント(2005年)、スウェーデンが81.99パーセントである。そんな中、デンマークは 86.59パーセント(2007年)であった。北欧諸国の投票率を見ているとどの国も高い割合を示しているが、その中でもデンマークの投票率は群を抜いて高い。そして税金に関するデータは、2004年 4月現在、上記にもあるように 25パーセントである。他の北欧諸国でも 25パーセントや 24パーセントがあるが、食料品の消費税がどの国も 10パーセント台である。一方デンマークは、食料品も一律 25パーセントの税率となっている。また、2000年の租税負担率は、フィンランドが 49.4パーセント、アイスランドが 53.5パーセント、ノルウェーが 43.1パーセント、スウェーデンが 54.4パーセントであることに対し、デンマークは 69.0パーセントとここでも高い。高負担である北欧諸国の中でも更にデンマークは高負担であるといえる。所得格差については、デンマーク国内の問題として挙げられているが、世界の主要国と比較してみるとその格差は小さいといえる。また、第 3次教育機関への入学率は 10カ国のうちで最も高い。これは、上記にもあるようにデンマークが戦後から教育に力を注いできたこと、転職の際に必要となる資格を得るための入学ということがこの入学率の高さをもたらしたのではないかと考える。 デンマーク大使館の中島健祐さんに仕事をされている上でデンマークという国について感じていることを教えていただいた。①スウェーデンやフィンランドより民主主義が進んでいるように感じている。(個人の意見が反映されやすく、それを国民も実感することができている。)②他の欧州諸国に比べて電子政府であったり、行政面での IT化が非常に進んでいたりするため、国民が効率的に生活を送ることができている、③先人の教育理念が生活、教育面で受け継がれていながら、経済や技術も発展している。つまり、物質的な側面と精神的な側面で上手くバランスがとれた国、④デンマーク人は基本的にプラス思考である、という 4点を挙げられていた。

(3)デンマークの課題 「消費税 25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし(ケンジ・ステファン・スズキ著)」によると、デンマークの課題として、離婚率の高さ、自殺率の高さ、所得格差の大きさが挙げられていたが、最も大きな課題として、極端な移民規制を挙げることにする。

図 4-2 移民人口比率http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1171.html より

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 また、デンマークの課題として注目を集めているのは移民規制である。図 4-2は、OECDのInternational Migration Outlook 2012から作成された移民人口比率を示したグラフである。移民統計の取り方は 2通りあり、各国により異なるデータを採用している。この図を見てみると、移民人口比率が高いのは、スペインやスウェーデン、ドイツなど他国であることがわかる。年々、緩やかな上昇比率を示すものの、デンマークの移民人口比率は他国と比べて低い。しかし、デンマークは昨今、欧州の中で最も移民規制が厳しい国であると言われている。そんなデンマークは、 1960年代の後半から1970年代にかけて、移民を受け入れてきた。トルコ、パキスタン、旧ユーゴスラビアより移民を受け入れることで、人件費を抑えることができたためだ。1980年代から 1990年代には主にイスラム系の難民が流入した。この時代もデンマークは他国から移民を受け入れる体制をとっている。 その後、2001年 9月 11日、アメリカで同時多発テロが発生したことをきっかけに、デンマークではイスラム系人種の移民規制が始まる。その規制は、EU委員会から人権侵害の疑いから警告を受けるほどだ。高度な技術を要する職種(IT 専門家、介護士など)の受け入れには積極的であるが、移民に関する法律は改正を重ね、今日に至っている。 2006年には、ムハンマドの風刺画がデンマークの新聞に記載されたがために、イスラム教徒からの反発を招いた。(上述のWorld Governance Index.(表 4-2)にて、デンマークの治安指数が低めに出たのはこのためである。)デンマークには表現の自由は民主主義の基礎という概念があるものの、他文化を侮辱、超発するようなこの出来事に関していえばデンマークに非があるように私は感じる。 2011年 9月 15日には中道左派勢力が政権奪還したことで、反移民・反イスラム勢力への寛容度は多少高まったようである。 移民を規制することがデンマークの問題としていえるかはわからない。デンマークの国益を守る上で規制することは、必要かもしれない。しかし、2012年 10月 11日に放送された「BS世界のドキュメンタリー」という番組でのデンマークへ移民した人々の立場を見ていると、デンマークの高等教育を受けたものの、医療系職種に就くのに時間がかかったり、暴言を吐かれたりと差別を受けた人々もいた。規制はしても差別はあってはならない。イスラム系の人種とデンマーク国民がどう上手く関わっていくかは今後の課題であると感じた。

第 5章 そして、日本(1) なぜ日本は幸福度が低いのか

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 日本は、2006年に発表されたGNHランキングやWorld Data of Happinessの結果から見ても、日本は幸福度が低いといえる。1人当たりの GDPと SWBの関係を示す図 2-9においても曲線の下に位置している。1人当たりの GDPでは同じぐらいの数値であるにも関わらずなぜデンマークと日本には SWBに大きな差が出てしまったのだろうか。 日本の幸福度を低下させている要因は現状を見てみてもたくさん挙げられるはずだ。しかし、今回私は、大きな要因として考えられる 2つのことを取り上げて説明していくことにする。1つは自殺者数の多さ、もう 1つは投票率や図 5-3などで表わされる政治への不満である。

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010男性 22144 23080 24963 23272 23540 22813 23478 22831 23472 22283女性 8898 9063 9464 9053 9012 9342 9615 9418 9373 9407総数 31042 32143 34427 32325 32552 32155 33093 32249 32845 31690

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

40000

(年)

(人)

~19歳

20~29歳

30~39歳

40~49歳

50~59歳

60~69歳

70~79歳

80歳~

自殺者数 552 3240 4596 5165 5959 5908 3673 2401

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000(人)

図 5-1、5-2共に「平成 22年中における自殺の概要資料」より作成出典:警察庁生活安全局生活安全企画課

 図 5-1は、2001年から 2010年までの 10年間の日本における自殺者数の推移を示したものである。これを見る限り、毎年自殺者数は 3万人を越えており、その数にあまり変化が見られない。図 5-2は、年代別に 2010年の自殺者数を見たものであるが、最も多いのは 50代である。その 50代の自殺原因として最も多いのは、健康問題である。その中でも「病気の悩み・影響(鬱病)」が 1299人と最も多い原因とされている。10代以外はどの年代も、自殺原因で一番多いものは、健康問題である。60代以上になるとその中でも身体の問題が自殺原因として挙げられるものの、20代から 50代は、鬱病で自殺する人が多いという結果が出ている。経済・生活問題以上に健康問題、特に鬱病が原因となっていることに焦点を当てる。私たち 20代の自殺原因の特徴として挙げられることに「就職失敗」がと多いことがある。(153人)日本社会は、ストレスに侵されているように思う。学歴社会が今もなお存在し、大企業に内定を貰った人の出身大学を見ると偏差値の高い大学である。就職活動においては数十社受験することが当たり前だ。学校や職場での人間関係が上手くいかない。心を開ける友人が少ない。そんな悲しい現状が日本にはある。また、将来に希望が持てない社会でもある。老後、年金が受給できるかさえわからない。少子高齢化がますます進む。毎日のようにテレビでは殺人が起きたというニュースが流れる。そんな日本の未来に対して多くの人が悲観してしまう現状にある。

図 5-3 政府の信頼度と国をリードする政治家の能力相関(日本とOECD諸国等)http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5212.html より

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図 5-1 2001年から 2010年の自殺者数の推移

図 5-2 2010年の年代別自殺者数

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出典:OECD, Government at a glance 2011(Figure Ⅱ.2.)

 2つ目に日本の幸福度を下げている要素として考えられるのは、政治への不満である。図 5-3は、政府の信頼度と国をリードする政治家の能力相関を示したものである。これを見ると、日本は 2008年現在、政府への信頼も国のリーダーを有能だと感じる割合もとても低い。他国と比較しても低いことがわかる。昨今の日本のリーダーを見ていくと、有能だと感じる人物がいなかった。2006年 9月26日に小泉純一郎氏が退任してからというもの、ほぼ 1年毎に首相は交代している。大臣の不正献金や発言などが問題となり、就任後すぐに辞任というニュースもよく耳にする。こうしたリーダーたちの様子を見ていると政府に信頼することができるわけもない。ただ、そんな政治家を選出しているのは、私たち国民である。2009年の投票率は 69.27パーセントと高いとはいえない。国民の政治への関心も薄れているようだ。そんな国民の心を掴むために政治家たちは芸能人候補者を立てたり、実現するかもわからないマニフェストを掲げたりという票集めの政治をしているようだ。政治家だけでなく、私たち国民こそ国のことを真剣に考え、政治参加をしていかなければ国の幸福度を高めることは難しいであろう。

(2) ブータン、デンマークに学ぶ 図 2-9に示されるように、ブータンとデンマークは 1人当たりの名目GDPの大きさには差があるにせよ、曲線より上部に位置する。反対に、日本はデンマークと 1人あたりの名目 GDPの大きさはほとんど同じであると示されているが、SWBの値には大きな差がある。この 3国に共通していえることは、経済的要因以外の他の要因によって SWBが左右されているということだ。ブータンとデンマークについて調査してみて、SWBが高い値を示す要因がある程度わかった。ブータンは、宗教心の強さ、また絆にある。一方、デンマークに関して言えば、民主主義の深度にあると思う。そして、日本の SWBが曲線より下に位置する要因として、上述のような 2点を挙げてみた。 ブータンから学ぶべきことは「絆」、デンマークからは「政治への関与、信頼」である。 ブータンは、発展途上国であり、GNHの項目にあることをそのまま実行に起こすことは難しいように思う。また、日本は仏教国とはいえども、宗教が生活に根付いていない。ただ、人との絆を大切にすることはこの国でも実行できるように思う。結婚している人が幸せだというデータもあることから、絆は疎かにできない。自殺者が毎年 3万人を超えており、その大きな原因が鬱病ということだった。日本では他人との関わり合いが減ってきている。人との絆が強くなれば、自殺の予兆に気付くこともできる。話し相手がいることで、悩みが解決できるかもしれない。ブータンの生活を調べていくと、家族や周りの人々を本当に大切にしていることがわかる。そこには笑顔が溢れていて、温かさを

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感じられる。また、日本では、2011年 3月 11日に発生した東日本大震災を受け、家族や周りの人々との絆を改めて考えるきっかけとなった。毎日の生活の中で、日本人は少しずつ絆の大切さを忘れかけている。昨今の日本社会を見ていて、日本人の人間関係の希薄さが表れたように思われた。 デンマークは経済的にも豊かな国であり、日本の幸福度を高めるために参考、応用できる部分が多いように思った。デンマークの政治への関与、信頼は、幸福度を高めている大きな要素であると感じた。反対に日本の幸福度を下げているのは、腐敗しきった政治であるように思う。まず、日本でできることは、政治への関心を高めることではないだろうか。教育の中に政治を取り上げ、自国について知識を深める。まず、自分たちの国の政治が如何に腐敗しているかを知ることが大切であり、そこから国を変えていく力が生まれると、私たちの国、日本の幸福度は高まるのではないかと考察する。

おわりに 幸福について 1年間研究すれば、幸福を語ることができる。そんな安易な考えで研究を進めていた。しかし、これだけ調べてみても幸福が未だに何なのかがわからない。幸福は、漠然とした概念であるからだ。主観的な側面と客観的な側面、どちらも持ち合わせている。そして、測ることができるといわれる客観的な側面も複数の要素から成り立っている。また、ロジット分析からもわかるように、 1つ 1つは影響力も違っている。だからこそ、社会・経済指標と幸福度の関係性や 5年の変化を見ても、完全相関のものは 1つもなかった。世界中で幸福に注目が集まる中、幸福度ランキングがたくさん作られている。複数のランキングを見ていると順位が大きく異なっていることがわかる。どれが本当に正しいのかなど誰にも評価できないことにも幸福度を測定する難しさが表れる。ただ、幸福の国として注目されるブータン、また数ある幸福度ランキングで首位になる確率が高いデンマークの事例を見ていると、注目されたり、首位に選ばれたりする理由が見えてきた。そのまま日本に応用することは難しいにせよ、参考にしていく必要はあると感じる。

謝辞 最後になりますが、卒業論文を書くにあたり、たくさんの方々にご協力していただきました。担当教授である、甲南大学マネジメント創造学部、佐藤治正教授には何度もアドバイスをしていただきました。そして、数十回の論文添削にも応じてくださりました。専門外の分野であるにも関わらず、私の研究テーマに興味を持ち、共に学んでくださったことをとても嬉しく思っております。 また佐藤ゼミ所属の学生の皆様にも感謝を申し上げます。幸福について研究をするにあたり、プレゼン発表の中で数々の貴重なご意見や参考となる資料の紹介など皆様のご協力があったからこそ私は卒業論文を書き上げることができたと思っております。 本当にありがとうございました。 参考文献【書籍】1. 大竹文雄、白石小百合、筒井義郎『日本の幸福度―格差・労働・家族』(日本評論社、2010年 7

月 25日)2. ジョセフ・E・スティグリッツ、アマティア・セン、ジャンポール・フィトゥシ『暮らしの質を

測る―経済成長率を超える幸福度指標の提案』(金融財政事情研究会 、2012年 4月 20日)3. デレック・ボック『幸福の研究』(東洋経済新聞社、2011年 10月 6日)4. 枝廣淳子、草郷孝好、平山修一『GNH(国民総幸福)―みんなでつくる幸せ社会へ』(海象社、

2011年 12月 7日)5. ジェフリー・サックス『世界を救う処方箋「共感の経済学」が未来を創る』(早川書房、 2012年

5月 25日)6. M.チクセントミハイ『フロー体験入門 楽しみと創造の心理学』(世界思想社、 2012年 1月 30

日)7. M.チクセントミハイ『フロー体験 喜びの現象学』(世界思想社、2011年 9月 30日)8. 齋藤利也、小原美代子『幸福王国ブータンの知恵』(光文社、2012年 7月 20日)9. 田中公明『図説 チベット仏教』(春秋社、2012年 4月 27日)

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10. ケンジ・ステファン・スズキ『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか』(合同出版、2009年 9月 15日)

11. ケンジ・ステファン・スズキ『消費税 25%で世界一幸せな国 デンマークの暮らし』(角川 SSコミュニケーションズ、2010年 11月 25日)

12. 浦川邦夫『幸福度研究の現状―将来不安への処方箋』(2011年 7月)13. 河野健一『デンマークにおける右派ナショナリズム政党の台頭と移民政策の変容―コペンハーゲ

ンからの報告―』(2009年)14. 警察庁生活安全局生活安全企画課『平成 22年中における自殺の概要資料』(2011年 3月)15. 経済協力開発機構(OECD)『図表でみる世界の主要統計 OECDファクトブック(2008年版)

―経済、環境、社会に関する統計資料』(明石書店、2009年 3月 31日)16. 経済協力開発機構(OECD)『図表でみる世界の主要統計 OECDファクトブック(2010年版)

―経済、環境、社会に関する統計資料』(明石書店、2011年 3月 30日)17. 経済協力開発機構(OECD)『図表でみる世界の主要統計 OECDファクトブック(2006年版)

―経済、環境、社会に関する統計資料』(明石書店、2007年 2月 1日)18. ジグミ・ティンレイ『地球規模での幸福な経済成長の実現―GNHの国、ブータンからの提言―』

(2011年 11月 10日)19. Ronald Inglehart, Roberto Foa, Christopher Peterson, Christian Welzel『Development, Freedom, and Rising

Happiness A Global Perspective(1981-2007)』(Psychological Science、2008年)20. 平山修一『ブータンの公共哲学GNHを分析する』(21世紀社会デザイン研究学会、2010年)21. 平山修一『「幸福度」は開発目標となりえるか?―ヒマラヤの小国ブータンの試みを検証する

―』22. 週刊東洋経済(2012年 4月 7日)23. 特号 アエラ(朝日新聞出版、2012年 7月 2日)24. 日経ビジネス(2001年 9月 24日)25. 日経コンピュータ(2011年 10月 13日)26. 日経ビジネス(2011年 10月 17日)27. 「幸福度の国際比較(世界価値観調査)」(http://www2.tten.ne.jp/honkawa/9480.html)28. 「図録▽自殺率の国際比較」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2770.html)29. 「幸福の国のブータン便り・第八稿「く」~「グロスナショナルハピネス~GNH」編 | 女性誌ト

リニティ:女性向けスピリチュアルマガジン」( http://www.el-aura.com/%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E3%81%AE%E5%9B%BD%E3%81%AE%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3%E4%BE%BF%E3%82%8A%E3%83%BB%E7%AC%AC%E5%85%AB%E7%A8%BF%E3%80%8C%E3%81%8F%E3%80%8D%EF%BD%9E%E3%80%8C%E3%82%B0%E3%83%AD/)

30. 「国民総幸福量 - Wikipedia」( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%B7%8F%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E9%87%8F)

31. 「国民総幸福量 - Jinkawiki」( http://kwww3.koshigaya.bunkyo.ac.jp/wiki/index.php/%E5%9B%BD%E6%B0%91%E7%B7%8F%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E9%87%8F)

32. 『ブータン館』(http://bhutan.fan-site.net/)33. 「医療費と医療の質の部屋」(http://www.yuki-enishi.com/medical/medical-01.html)34. 「旬」 世界幸福度ランキング(http://syunnavi.net/p/?p=prere/pre_view&rno=580)35. 「世界経済のネタ帳」(http://ecodb.net/)36. 「OECD iLibrary: Organisation for Economic Co-operation and Development」(http://www.oecd-ilibrary.org/error/authentication;jsessionid=fq8fi4clo9f8q.x-oecd-live-01)

37. 「Determinants of Happiness (GSS) « Analyse Economique」(http://analyseeconomique.wordpress.com/2012/08/31/determinants-of-happiness-gss/)

38. 「World Database of Happiness」(http://www1.eur.nl/fsw/happiness/)

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39. 「Denmark: The Happiest Place on Earth - ABC News」(http://abcnews.go.com/2020/story?id=4086092&page=1#.ULeIC-TzU_c)

40. 「Welcome Bhutan - Go Bhutan, Visit Bhutan, Travel Bhutan, Visa Bhutan, Hotels Bhutan and fly to Bhutan」(http://www.bhutan.name/index.html)

41. 「Bhutan's Wiki | Euromoney country risk」(http://www.euromoneycountryrisk.com/Wiki/Bhutan)42. 「Voter turnout data for Japan (Parliamentary) | Voter Turnout | International IDEA」(http://www.idea.int/vt/countryview.cfm?CountryCode=JP)

43. 「統計局ホームページ/日本の統計-第 22章 教育」(http://www.stat.go.jp/data/nihon/22.htm)44. 「Tertiary education entry rates - Education: Key Tables from OECD - OECD iLibrary」(http://www.oecd-ilibrary.org/education/tertiary-education-entry-rates_20755120-table2)

45. 「www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h19/pdf/percapita.pdf」(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h19/pdf/percapita.pdf)

46. 「IMF -- International Monetary Fund Home Page」(http://www.imf.org/external/)47. 「幸せ経済社会研究所」(http://www.ishes.org/)48. 「3.北欧の社会保障政策の特徴 - 矢崎化工 kaigo-web –」

(http://www.kaigo-web.info/kouza/hokuou/no3/index.html)49. 「世界価値観調査 – Wikipedia」( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BE%A1%E5%80%A4%E8%A6%B3%E8%AA%BF%E6%9F%BB)

50. 「主観的ウェル・ビーイング(Subjective Well-being) | ポジティブイノベーションセンター」(http://positiveinnovation.org/content/188)

51. 「図録▽主要国の移民人口比率の推移」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1171.html)52. 「外務省: ブータン王国」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/data.html)53. 「うつ 症状・うつ症状・不登校などの心の病~人に聞けない心の病~」(http://www.syutom.net/kokoro-yamai/index.html)

54. 「図録▽政府の信頼度と国をリードする政治家の能力の相関(日本とOECD諸国等)」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5212.html)

55. 「 日 本 の 歴 代 内 閣 総 理 大 臣 」 ( http://www.d4.dion.ne.jp/~warapon/archives/politics/prime-minister.htm)

56. 「Suicides 2009 - Suicides - OECD iLibrary」(http://www.oecd-ilibrary.org/social-issues-migration-health/suicides-2009_20758480-2009-table10)

57. 「World Values Survey」(http://www.worldvaluessurvey.org/)58. 平 山 修 一 「 GNH の 応 用 -GNH と 戦 後 の 平 和 復 興   そ の 1- 」

(http://www.gnh-study.com/studies/indicate.html)59. 「Stiglitz report calls for measure of 'well-being' alongside growth - FRANCE 24」(http://www.france24.com/en/20090914-stiglitz-report-calls-measure-well-being-alongside-growth-)

60. 「■世界の消費税(付加価値税)の税率……平成 24年度版」(http://www.kanzeikai.jp/index.asp?patten_cd=12&page_no=380)

61. 「図録▽幸福度の国際比較(世界価値観調査)」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/9480.html)

62. 朝日新聞 2012年 6月 21日 朝刊 37ページ63. 朝日新聞 2012年 6月 6日 朝刊 10ページ64. 朝日新聞 2012年 5月 11日 夕刊 2ページ65. 朝日新聞 2012年 5月 8日 夕刊 2ページ66. 朝日新聞 2012年 7月 1日 朝刊 1ページ67. 朝日新聞 2012年 7月 1日 朝刊 2ページ68. 読売新聞 2012年 2月 23日 夕刊 11ページ69. 日本経済新聞 2011年 9月 16日 夕刊 2ページ

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70. 日本経済新聞 2011年 5月 13日 朝刊 6ページ71. 日本経済新聞 2006年 2月 5日 朝刊 5ページ72. 日本経済新聞 2011年 7月 4日 夕刊 7ページ73. 日本経済新聞 2011年 11月 2日 地方経済面 東京 15ページ74. テレビ番組「ブータン~ほほえみと幸せの国~」75. テレビ番組「旅のチカラ」76. テレビ番組「アナザースカイ」77. テレビ番組「未来世紀ジパング」78. テレビ番組「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」79. テレビ番組「ブータンを世界一幸せにした日本人」

引用1. 平山修一『「幸福度」は開発目標となりえるか?―ヒマラヤの小国ブータンの試みを検証する

―』(182頁)2. 今枝由郎『ブータンに魅せられて』(枝廣淳子、草郷孝好、平山修一『GNH(国民総幸福)―み

んなでつくる幸せ社会へ』(海象社、2011年 12月 7日))(165-166頁)

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